卑弥呼転生 ~妹を女王に、現代知識で邪馬台国を作る~   作:露李鈴

44 / 44
第四十話  三輪の国:国の造りと高床式倉庫

「本日は、皆さまに三輪をご案内しようと」

 

 俺達の泊まった住居を、

 朝一番に、マヒトが訪ねてきた。

 

 儀礼的な布地の服ではなく、

 簡素な貫頭衣(かんとうい)をまとっている。

 

 

「二人で行ってくるがよい」

 

「……じっちゃんは、いかないの……」

 

「わしは、農具や人手について、

 三輪の者と詰める役目があるのでな」

 

 シラガは、そこまで言うと、

 イミコに視線を落とす。

 

「今日は、巫女様に、

 兄殿の面倒を見てもらえるかのぅ……」

 

「……んっ、にぃにのこと……みてる……」

 

 自信満々に胸を張る、イミコ。

 その姿に、まわりの口元が自然と緩んだ。

 

 

――――――――――

 

 三輪の朝は早い。

 

 歩き出して、

 すぐ、それが分かった。

 

 水を運ぶ女たち、荷を担ぐ男たち。

 子どもの声、朝の火の匂い。

 

 人が多い。

 

 けれど、ただ騒がしいのとは違う。

 朝の動きが、村の形の中に収まっていた。

 

 

「三輪は、やっぱり違いますね。

 上だけじゃなく、下も、ちゃんとしてる」

 

「下……?」

 

「人が多いと、道が乱れて駄目になるんだけど。

 三輪はきちんと保ってある」

 

 俺は、ドンドンと素足のかかとで、

 地面を叩いてみせた。

 

 小石や、雑草が綺麗に取り除かれてあり、

 その土は固く踏み固められている。

 

 まだ、日常的に靴を履く習慣のない時代。

 

 足回りは、とても大事である。

 

 

――――――――――

 

「……にぃに、あれ……おうち……」

 

 イミコの指さす方に高床式の建物が見えた。

 

 昨日、訪れた三輪の神殿よりは小さい。

 

 だが、その床は地面から持ち上げられ、

 その側面は板壁で備えられていた。

 

 

「あれは、蓄えを置く場所ですね」

 

 マヒトが答えてくれる。

 

「なるほど、高床式倉庫か」

 

 食料を保存する際に最大の問題。

 それが「湿気」に「ネズミ」となるわけだが。

 

「床を上げることで湿気を祓い、

 柱の、ねずみ返しの構造で害獣を払うのですね」

 

「よくご存じで……」

 

「実物は初めて見るので、

 なるほど……こうなっているのか……」

 

「……にぃに、楽しそう……」

 

 名張の村にも必要となる建物だ。

 

 

――――――――――

 

「それにしても、

 やはり、三輪は大きいですね」

 

 三輪の村の外周を歩いてると。

 

 環濠の柵のむこう側にも、

 別の集落が見える。

 

 それらも三輪の国の一部である。

 

 

「大きいというより、繋ぎ止めている、

 ……と、言ったほうが近いかもしれません」

 

 マヒトは小さく呟く。

 

「いくつもの環濠が、三輪に従事してますが、

 志が揃っているわけではありませぬ」

 

 マヒトは、険しい表情を浮かべていた。

 

 三輪之(みわの)真人(まひと)の本家も、

 また、志を別にする家のひとつなのだろう。

 

 

「だからこそ、人も、物も、力も、

 三輪は絶やさぬようにせねばなりません……」

 

 三輪は、決して一枚岩ではない。

 

 そのうえで、実際に束ね続けているからこそ、

 今の、三輪の国があるということか。

 

 一筋縄ではいかない相手だ。

 

 

――――――――――

 

「ん、ここは……」

 

 三輪の村を歩いていると、

 水を打ったように、しんと静まり返った。

 

 あたりに人の気配が少なく、

 この辺りだけ、どこか空気が違う。

 

 

「……にぃに、あれ……」

 

 イミコの視線の先には、小さな鳥居のような。

 

 二本の柱に縄を渡した、

 神域の境を示す標があった。

 

 そのむこう側は緑が深くなり、

 風の通り方まで、どこか違って感じる。

 

 

 その奥に、なにがあるのかは見えない。

 それなのにわかる――

 

 この先には、なにかあると。

 

 

「……むねの、石……熱くなってる……きのせい……?」

 

 イミコが、その胸元を押さえていた。

 

 その指先に触れているのは、

 深い緑色の、ヒスイの勾玉である。

 

 なにかしらの神秘が、

 そこに、あるとでも言うのだろうか……。

 

 

 ちりちりと頭の奥底から、

 ひとつの知識が引きずり出されてくる。

 

 

 ここは、そう、大神神社(おおみわじんじゃ)――

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

八甲田山転生 ~現代知識で雪中行軍を生き抜く。犠牲者は、出さない~(作者:露李鈴)(オリジナル:現代/戦記)

【カクヨム10テーマ小説コンテスト「歴史・時代IF」部門 選考委員セレクト賞 受賞作】▼明治三十五年(1902年) 八甲田山雪中行軍遭難事件▼210名中199名が命を落とした日本史上最悪の遭難事件。▼ ――もし、その地獄の行軍に『失敗の歴史』を知る者がいたら?▼~ 生存率5%の絶望を覆せ ~▼現代日本から、明治時代の「陸軍少尉・小林守」として転生した主人公。…


総合評価:1169/評価:8.66/完結:56話/更新日時:2026年09月16日(水) 21:05 小説情報

戦国爆乳秀吉〜主人公は秀吉を天下人に育てたい〜【一時更新停止】(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル:歴史/戦記)

神様によって女性の方が基本力が強い世界に転生した主人公こと烏丸。▼彼は神様から貰ったネット通販のチートを使って幼なじみの秀吉を爆乳に育てるべく奮闘する。▼バカエロ歴史伝の始まり始まり。▼カクヨムとマルチ投稿▼R-18コーナーは▼戦国爆乳秀吉▼で検索掛ければ出てきます。


総合評価:3252/評価:8.54/連載:64話/更新日時:2026年10月17日(土) 13:59 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル:現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2943/評価:7.66/連載:147話/更新日時:2026年10月22日(木) 10:01 小説情報

四國志(作者:丸亀導師)(オリジナル:歴史/戦記)

紀元前326年▼楚曰く、東の海の果てに東夷有り。100余国に別れて相争う。▼東夷より使者有りけり、その国邪馬台(やまと)国と宣う。▼歴史if


総合評価:859/評価:7.9/連載:61話/更新日時:2026年10月25日(日) 07:32 小説情報

真祖吸血鬼、まだ存在しないアメリカに寄生する 〜合法的な血液供給のため、建国前から国家運用保守を始めました〜(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:歴史/冒険・バトル)

アメリカ建国250年おめでとうございます記念小説です。▼欧州の吸血鬼貴族ヴァレンシュタイン家に転生したルカは、始祖の血を濃く継ぐ「真祖の中の真祖」だった。▼霧化、影操作、自己再生、記憶読取、そして前世の記録から現代の物品や情報を引き寄せる力。▼無法なまでのチートを持って生まれたルカだったが、両親の価値観は最悪だった。人間牧場、血統管理、血の風呂。現代日本人の…


総合評価:1195/評価:6.22/連載:39話/更新日時:2026年08月10日(月) 16:18 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>