一般モブでもネームドキャラとの桃色ルートは開拓可能であるか 作:ホシノ記研究委員会
現在、この手には、人を狂わせる脱法パンが握りしめられている。会場では大勢の人間が正気を失い、見知らぬ相手へ抱きつき、笑いながらダンスを踊っている。
この構図を第三者から見たとき、私はどう映っているだろうか。
答えは簡単。怪しげなパンを配り歩き、露見した途端に証拠を抱えて逃走する犯人である。
しかも運の悪いことに、追いかけてくる相手は「脱法パン絶対ユルサナイ」と憤る公爵令嬢だ。
ロザリンデは、脱法パンの出どころを探して単独、王都の飲食店を何軒も歩き回る執念の人である。己が疑い、捜査した店の従業員が、当の証拠を握って走っているのだ。彼女の中では、裏切られたという気持ちと、気負う必要のない責任感も上乗せされているのだろう。
ただ誤解ですと叫んで済む話にはならない。
立ち止まって事情を説明している時間が、私にはないのだ。説明すれば、まず店の潔白から始めて、隣人の難儀な性格を語り、レーズンパンの熟成について論じ、ゆくゆくは犬の秘密まで話さなければならない。そんな事をしていたら、先輩はクロをどこぞへと連れ去ってしまう。
ゆえに私は走った。ロザリンデから逃げながら、魔女を追うという、実に滑稽な図である。
〇
先輩の足取りは、分かりやすかった。
おかしくなっている人間が多い方へ進めばよいのである。桃色パンをばら撒いているのだから、自然と証言も正確になっていく。
困ったのは、正気を保っているものがどんどん少なくなっていくことだった。
噴水がキャンプファイアーに見えているのか、何人もの生徒が円をつくり、盆踊りを踊っている。その先の花壇では、牛乳瓶の底みたいなメガネをした女二人が固く抱擁を交わしていた。校舎の角を曲がると、下着一枚になった男たちが、相撲大会を開催している。
進むほどに桃色の密度が上がっていく。
彼らに害意はないということは、はっきりさせておきたい。誰も殴らないし、噛みつきもしない。ただ、こちらを見つけると顔いっぱいに笑って、両手を広げ、まっすぐ歩いてくるのである。足取りは遅いが、止まらない。一体を振り払うと、その後ろから二体目が現れる。
前世の私は、この手の映像作品をよく観ていた。死人が群れをなして生者を追い回し、捕まった者が追い回す側へ落ちていくというパンデミックホラーである。
目の前の光景は、実にそっくりであった。ただ一点、悲鳴の代わりに笑い声が響いているところを除いて。
以降は彼らの事を「桃色ゾンビ」と呼ぶことにする。
それにしても、数が多すぎるのではないか。
先輩が配り歩くにしても、限度がある。まかないとして渡してきたレーズンパンの数を遥かに超えている。にもかかわらず、視界に入る桃色ゾンビは増える一方である。
ということは、つまり。
抱擁か。あるいは、口づけか。接触によって伝播している可能性が考えられる。やはり、彼らはゾンビなのだ。
私は進路上の両手を広げた者たちを、全力で迂回することに決めた。
問題は、背後の追手が一向に減速しないことだった。
「お待ちなさいと言っているでしょう!」
振り返るのが恐ろしい。
公爵令嬢というものは、もう少し優雅に歩くものではないのか。丈長のスカートをからげ、髪を乱し、群衆を掻き分けて追ってくる女の姿は、私の知る貴族像から大きく外れていた。
距離はじりじりと詰まっている。こちらは半年の給仕労働で足腰を鍛えたつもりでいたが、向こうは、たった一日で十数軒を踏破した実績の持ち主である。積んでいるエンジンからして違った。
私は走りながら、進路上の出店を確かめた。
開いたままの天幕。積み上げられた空の木箱。立てかけられた看板。どうやら、祭りの最中に主が桃色世界へ旅立ってしまったらしく、無人である。
私は右手を伸ばし、木箱の山へ全体重を預けた。
出店は見事に崩壊した。木箱が転がり、天幕の支柱が巻き込まれ、布が落ちて道を覆った。看板だけがここに店があった事を示している。
「なんという狼藉を!」
こうなれば、ロザリンデの迂回路は一本しかない。
噴水前エリア、大量の桃色ゾンビたちが円を作って踊る、盆踊り会場である。
「ごきげんよう、ロザリンデ様」
私は振り返らずに叫んだ。
〇
十分に時を稼げいだと判断して、再び聞き込みを再開する。先輩は薬学棟という建物の裏手に向かったという。
「もともと行く予定だった場所よ」
得意げに案内をするイチローに導かれながら、私は薬学棟を目指した。
そして、その手前で、また追っ手の気配が戻ってきたのである。
「お放しなさい! わたくしは……っ、ちょっと、どこを触って、ええい放せ!」
制服はところどころ破れおり、複数の桃色ゾンビに裾を掴まれていた。それでもなお、彼女は前進している。
私は震え上がった。
ロザリンデは疲れることと諦めることは別の話などと言っていた。あの時は立派な心構えだと感心したものだが、追われる側に回ってみると、とんだ怪物である。ゾンビよりも、ずっと恐ろしい。
もはや、最終兵器を使うしかあるまい。
私は横で息を切らしているイチローの鞄に手を伸ばし、中から小瓶を引き抜いた。
「あっ何するの!」
昼に中庭で、イチローが昼食代わりにあおっていたあれである。持ち主に無断で使用することになるが、緊急事態につき許されたい。
私は振り返りざま、それを石畳へ叩きつけた。
瓶が、炸裂する。
名状しがたい異臭が場を制圧する。昼の中庭で栓を抜いただけの時とは規模が違った。悪臭を超えた大悪臭。爆臭である。
「な……っ、なんですの、これは!」
ロザリンデが袖で口元を覆い、たたらを踏む。
勝った、と思った瞬間である。
周囲の桃色ゾンビたちが、一斉に動きを止めた。
両手を広げていた男が、腕を下ろした。抱き合っていた男女が、互いの顔を見て、それから同時に体を離した。手を取り合って回っていた三人が、回転をやめて棒立ちになった。
え? 何このニオイ? ヤバくない?
という顔をしている。
彼らは一様に眉をひそめ、鼻をつまみ、ひっくり返った。ゾンビだった者たちは、極めて人間的な反応を示していた。
爆臭が、彼らを現実に引き戻したのである。
どうやら、あの革靴のジュースには、桃色を打ち消す力があるらしい。「そんなに」と納得いかなさそうなイチローに「胸を張ってください。最高の気付薬を開発したことに」と諭すと「たしかに」と嬉しそうな顔になった。
「待ちなさい……っ、そこの給仕! 話を、聞きなさ……うっ」
袖で顔を覆った令嬢が、爆臭の中心で立ち往生していた。それでも進もうとしているあたり、やはり怪物である。
私はその隙に、薬学棟の裏手へ滑り込んだ。
〇
壁に背を預け、肺へ空気を送り込む。
息が整わない。喉の奥が張り付いて、唾を飲むことが困難だ。
手の中のパンを見下ろす。走っているあいだ握り続けていたせいで、油紙が汗で透けていた。
クロは、いまどこにいる。
あの犬が私の隣を歩いていたのは、ほんの数時間前のことである。一定の歩幅で、人混みでも乱れず、時折こちらを見上げてきた。首の後ろを掻いてやると、尻尾が振られた。
賢いクロが、黙っていなくなるというのは明らかに不自然である。しかも、先輩に連れられて。
薬学棟の裏手には、石造りの階段があった。
外壁に沿って二階へ上がり、さらにその上へ続いている。そしてよく見れば、階段には泥の足跡がつけられていた。大型犬の肉球、それも新鮮な足跡だ。
迷っている余裕はない。私は階段へ足をかけた。
その踊り場で、銀髪の男が両手を広げて立っていた。
「ホシノ嬢」
第二王子ヴィクトールである。
先ほど時計塔の裏手で別れた時とは、様子がまるで違っていた。目の焦点が合っていない。頬が紅潮している。そして何より、こちらへ向かって一歩ずつ、実に嬉しそうに近づいてくる。
ゾンビ化が進行していた。
「君を探していた。ずっと探していたのだ。ああ、会えてよかった。本当によかった。私は君と話したいことが山ほどあってだな、まず第一に君の名の響きが素晴らしく、それから──」
「どいてください」
「君は私の話を聞くべきだ。なぜならこれは、私の生涯において最も誠実な瞬間だからだ」
両手が広がる。
半年前の私であれば、この状況に甘んじて飛び込んでいた。攻略対象が、名もなき給仕へ向かって腕を広げている。私が求めてやまなかった構図そのものであった。
しかし、いまは違う。
「今は……あなたより、クロさんなんです!」
私はイチローの服のポケットに手を突っ込んだ。
「ちょっ、なんでそこに隠したの知ってるの!」
栓を抜き、王子の鼻先へ突き出す。
ヴィクトールの体が硬直した。広げられていた両手が、ゆっくりと下りる。焦点の合っていなかった瞳に、恐ろしい速度で意思が戻っていった。
彼は一度、大きくえずいた。
「くっさ……これは、なんだ!」
「栄養剤らしいです」
私は瓶を押し付けて、階段を駆け上がった。
背後で、イチローが栄養剤の効能をくだくだと説明している声が聞こえたが、今はそれどころではない。
〇
階段を上がった瞬間、花の香りが通り抜けた。
二階建ての薬学棟の屋上は、庭園になっていた。
低い柵に囲まれた平らな面に、鉢と花壇が整然と並んでいる。白、薄紫、淡い黄。学園の生徒が丹精しているのだろう、どれも手入れが行き届いていた。眼下には学園祭の会場が広がり、桃色に沈んだ人々の歓声が、風に乗って遠く届いてくる。
花のあいだに、黒い塊が横たわっていた。
クロである。
私は駆け寄った。外傷はない。呼吸もしている。
ただし、四肢を投げ出し、腹を上に向け、舌を半分出して、口の端からよだれを垂らしていた。尻尾が思い出したように不規則に往復する。ぼんやりと開いた目が、力なく私を見て、それから花の方へ流れていった。
クロが、こんな格好で寝ているのを、私は見たことがない。
店の中央に座っていた時も、私の膝に頭を乗せていた時も、この人は常に芯が通っていた。抵抗をやめた時ですら、そこには意思があった。
いまは、それが抜けている。
「──やあ、来たね」
声は、庭園の奥からした。
花壇の縁に、黒い女が腰かけていた。
黒い上着に、黒いスカート。膝の上には油紙の包みが一つ。眼下の惨状を眺めながら、実に満足そうに足を揺らしている。
半年間、私の隣室に住み、私の売れ残りを食べ、私の手記を読み、感想を述べてくれた女である。
「魔女先輩」
「ふふ。その呼び方は、どうにも慣れないな」
「脱法パンを撒いたのは、あなただったのですね」
先輩は、こちらを見た。
「その通りさ」
あまりにあっさりと認めるので、私は次の言葉を用意していなかった。
「……否定しないのですか」
「なぜ否定する必要がある。この景色を見たまえ」
彼女は眼下を指した。
「学園という場所は、実に不誠実な施設だと思わないかい。若者を集め、制服を着せ、規則で縛り、そのくせ内側では恋だの友情だのと囁き合っている。嘘ばっかりだ。嘘はよくない。だから、僕が裸にしてあげたんだ。あそこにいる連中は、いま誰彼構わず抱き合っている。特別な誰かなど必要なく、ただ欲望のままに他者を消費する。これが本来の人間の姿なんだよ」
「そのために、王都中を騒がせたのですか」
「……最初はね、ただ君の持ち帰る売れ残りが、妙な具合に熟れていて、ひどく甘美な味がした。僕は長年この街にいるが、初めての経験だった。なんだかそれが許せなくてね。つまらなさそうな顔で、楽しそうな日常を語る君に嫉妬していたのかもしれないな。ただ、僕は君だけに矛先を向けたりしない。この世の不条理に挑んだということを分かってほしい」
要するに、モブ代表であるこの私にまで法界悋気を拗らせていたのである。
この人は私が持ち帰ったパンを寝かせ、街へ流していたのだ。その金で肉を焼き、私に食わせていた。
だが、そんなことはどうでもよい。聞かなければならないことは、一つだけだ。
「この犬を……クロさんを、どうして巻き込んだんですか」
先輩は、花の中で伸びている犬へ目をやった。
「その子が悪いんだよ」
「悪いとは、どういう意味ですか」
「今日、まだ計画を始めてもいないうちから、後ろから物音がしたんだ。振り返ったら、その大きな犬が鼻を鳴らして、こちらを見つめていた。実に賢い目をしていたよ。僕が何を持っているか、それが何を引き起こすか、全部わかっているような目だ。会場の誰一人として気づいていなかったのに、その子だけが気づいて、僕を追いかけてきたわけだ」
先輩は肩をすくめた。
「計画を邪魔されては困るだろう。だから一つ、桃色パンをくれてやった。そうしたら、この有様さ」
クロは気づいていたのだ。朝から鼻を鳴らしていたのは、そのためだった。私が無料のパンに気を取られ、隣を歩く娘をどう撒くか算段していたあいだ、あの犬だけが異変を追っていた。
人に戻るわけにもいかず、単独行動を始めたというわけだ。あるいは、最初はアリスの匂いとして引き寄せられていたのかもしれない。
「──そこまでよ!」
後ろから、よく通る声が響いた。
ロザリンデが立っていた。髪は乱れ、服はさらにぼろぼろになり、肩で息をしている。その瞳だけが、満身創痍という言葉を跳ね除けていた。
彼女は私の肩越しに、元凶の魔女を見ていた。
「話は聞かせてもらったわ!」
「おや、ホシノ君以外にもここに辿り着ける人がいたか」
「わたくしはヴァルトハイム公爵家のロザリンデよ。答えなさい。なぜこんなことをしたの。王都の人々がどれだけ不安がっているか、あなたに分かって?」
「分からないね」
先輩は即答した。
「興味が無いんだ。僕は僕が面白いと思うことをやった。それだけだよ」
ロザリンデの顔から、血の気が引いていくのが分かった。
「……ふざけないで」
「ふざけてはいないよ。至って真面目だ」
先輩は立ち上がった。
「しかし、そう睨まれると困るね。どうせ僕を衛兵に突き出す腹づもりなんだろうが……衛兵というのは、証拠がなければ動いてくれないんだろう?」
魔女は私の手を指差した。
「そこのホシノ君が持っているのだけでは、大した証拠にならないだろう。彼女が持って駆け回っているのを大勢が見ているからね。しかし、二つ目の証拠……犯人が手に持っていたパンなんかがあれば、決定的となるだろう。例えば、これだ」
先輩の持っていた包みが開かれる。
中から現れたのは、レーズンパンの成れの果て。桃色の脱法パンである。甘酸っぱい匂いが、花の香りを押しのけて屋上へ広がった。
「待ちなさい、それを──」
先輩は、それを自分の口へ突っ込んだ。
ぐいぐいと押し付けて、パンはあっという間に先輩の口の中に埋もれていく。
「んぐんぐ、ふごっ」
ロザリンデが駆け寄ろうとして、足を止めた。もう遅い。証拠は、この世から消えた。我々は先輩が苦しげに咀嚼するのを待つしかなかった。
「……お見苦しいところを失礼したね、ロザリンデお嬢様。それから──」
先輩は口元を拭い、私を見た。
「ホシノ君」
「なんですか」
「僕は君に、投資すると言ったね」
焼肉の夜の話だ。
「君が桃色ルートとやらに辿り着くとは思わないと、あの時に言った。しかし、君は今日、犬一匹のためにこの学園を端から端まで走ったそうじゃないか」
先輩は、柵の方へ一歩下がった。
「さすがは、僕の見込んだ盟友だ。その行動力があれば、あるいは──」
「先輩、何を」
もう一歩。
彼女は柵へ背を預け、両手をゆっくりと広げた。黒い上着の裾が、風を受けて膨らむ。
桃色に染まった顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
眼下では、いまも学園中の人間が抱き合い、笑い転げている。それを背にして、この人は楽しげに笑っている。自ら桃色の劇薬を飲み込んで。
「ちょっと、待ってください」
私は駆け出した。
「ここは二階の屋上ですよ先輩! 実質三階! 危ないですって!」
先輩は、下を確かめもしなかった。
「僕の魔法はここまでだ。次は君が魔女となるがいい──」
笑ったまま、後ろ向きに、飛んだ。
「──ホシノ君」
黒の魔女が、柵の向こうへ消えた。
〇
私たちは、悲鳴を上げながら階段を駆け下りた。
ロザリンデが先頭だった。あれだけ憎んでいた相手を追って、一番速く走っていた。
先輩が飛び降りた落下地点へと回り込む。
そこには、刈り取られた雑草の山が積み上げられていた。この棟の管理者が、手入れの後に集めておいたものらしい。
その中心に、黒い女が埋まっていた。
四肢を投げ出し、草にまみれ、空を見上げている。
「先輩!」
私が呼びかけると、彼女はゆっくりと顔を上げた。
そして、笑った。
見たことのない表情だった。
皮肉がない。含みがない。他人の不幸を待ち構える目の光もない。ただ朝の光を初めて浴びた者のような、清らかな笑みである。
「ふふふ。こんにちは」
先輩は言った。
「ここは、どこですか?」
〇
その後のことを、簡潔に記す。
先輩は、住んでいた場所も、三年続けた浪人生活のことも、何一つ思い出せなかった。私のことも、当然のように忘れていた。
ロザリンデは、その場に立ち尽くしていた。
数々の受難を乗り越え、屋上まで辿り着いた末に、彼女が手にしたものは何もない。証拠は魔女の胃の中へ消え、その魔女は記憶を失い、断罪すべき相手はこの世から消えてしまった。
後日、彼女は当店を訪れて、私に頭を下げた。犯人だと決めつけて追い回したことへの謝罪である。私は結構ですと答えたが、あの人は聞かなかった。そして紅茶を一杯飲み、こんなことを言って帰っていった。
断罪はできなかったけれど、悪は去ったのだから、それでよしとするわ。
ロザリンデとは、そういう人である。
〇
イチローの活躍も少し書いておく。
彼女は私より遅れて階段を上がり、ただ一つのことに集中していた。花の中で伸びている黒い犬の傍らに膝をつき、鞄から瓶を出し、栓を抜き、犬の鼻先へ寄せ続けていたのである。
私が先輩と対峙しているあいだも。ロザリンデが詰め寄っているあいだも。彼女は顔を上げなかった。
私たちが階段を駆け下りてしばらくした後、屋上から、けたたましい犬の声が響いた。
正気に戻ったクロが、爆臭をもろにくらい、盛大に鳴いていたのである。
その後、イチローは奔走することになった。桃色パニックから学園を救うため、栄養剤もとい気付け薬を振り撒いてまわったのである。
行く先々で悲鳴があがる中、イチローはこれまでにない充足感に満たされていたとか。
その悲鳴の中に、聖女のようになってしまった先輩のものも、含まれている。