「——あぁ、あぁ、あぁ! なんという不敬! なんという傲慢! なんという、なんという、なんという……ッ!!」狂気に満ちた叫び声と共に、影の中から一人の男が姿を現した。緑色の髪を振り乱し、血走った眼球を極限まで見開いた男——魔女教大罪司教『怠惰』、ペテルギウス・ロマネコンティ。「我が寵愛の信徒たちを、まるで家畜のように屠るとは! あなた、怠惰ですねええええッ!!」ペテルギウスの背後から、常人には見えない漆黒の異形の腕——『見えざる手』が数十本も狂い咲く。だが、魂の輪郭を完全に知覚している虎杖にとって、その『見えざる手』は「見え見えの不格好な腕」に過ぎなかった。「お前さ、うるさい。それに、魂の形がめちゃくちゃに腐ってるわ」虎杖の姿がブレた。爆速の踏み込み。「なっ——」ペテルギウスが驚愕する間もなく、虎杖の拳がその顔面に直撃する。ドンッ!!!呪力を込めた一撃で、ペテルギウスの肉体は頭部から粉砕され、地面に叩きつけられた。しかし、ペテルギウスは『邪精霊』。肉体が死んでも、その本質たる霊体は消滅しない。「ヒハハハハ! 肉体など器に過ぎない! 次は、あなたのその極上の肉体を、私の新しい衣としてーーーッ!!」肉体を失ったペテルギウスの精神体が、霧のような狂気の塊となって虎杖の胸元へと飛び込み、その精神世界(精神の器)へと侵入を試みた。かつて両面宿儺という最悪の呪いの王を宿し続け、なおかつそれを完全に制御・同化した虎杖悠仁という『器』の中に。「う、あ、あああああああッ!? なに、なんだこれは、この内界はぁぁぁッ!!」虎杖の精神世界に足を踏み入れた瞬間、ペテルギウスは絶叫した。そこは、数多の呪いの残滓と、九相図の兄たちの血の絆、そして世界の歪みを調律する絶対的な「拒絶」の檻。宿儺の器として呪いへの耐性がカンストしている虎杖にとって、邪精霊の精神汚染など、蚊に刺されたほどの影響すらない。虎杖は、自身の精神世界の中で、侵入してきたペテルギウスの『魂(オド)の輪郭』をガシリと手で掴み取った。「お前みたいな奴を、俺はもう何人も見てきたんだわ。……消えろ」魂に直接響く、決別の言葉。虎杖が掴んだ手に呪力を込め、そのまま握り潰すように力を込める。「ぎゃあああああああああああッ!? 寵愛が、我が脳が、震え、えええええええ」魂そのものを直接『解』の斬撃で切り刻まれ、打撃によってオドの構造を粉砕されたペテルギウスは、他の肉体(指先)に逃れる隙すら与えられないまま、完全に霧散し、この世界から跡形もなく消滅した。大罪司教の一角が、ルグニカの街道において、何一つの爪痕も残せず完全無欠に『駆除』された瞬間だった。「悠仁……大丈夫!?」駆け寄るエミリアに、虎杖はいつものように振り返り、五条悟の面影を残す頼もしい笑顔を見せた。「おう、大丈夫。ちょっと変な虫が湧いただけだからさ。さ、帰ろうぜ。みんなが待ってる」