「あーあ。相変わらず品がないねえ、バテンカイトスは。まあ、僕の妻にしようかなと思ってた子が汚く貪られたり怪我負わされる前に死んでくれたから別にどうでもいいんだけどさぁ」バテンカイトスの肉片の隣で、もう一人の男が退屈そうに髪を掻き上げていた。白髪に白い服を纏った、どこにでもいそうな平凡な風貌の青年——『強欲』担当、レグルス・コルニアス。「な、何者ですか……! まだ魔女教の残党が……!?」クルシュが剣を構え、『鉄の牙』の傭兵たちも色めき立つ。虎杖はレグルスを一瞥し、即座に『解』の斬撃を放った。先ほどの暴食と同じく、一瞬でバラバラにするための不可視の刃。しかし。キンッ!!!大気を切り裂いたはずの『解』の刃が、レグルスの身体に触れた瞬間、まるでガラスにでも当たったかのように虚しく弾け飛んだ。レグルスは衣服の埃を払うような仕草すら見せず、五体満足のまま、そこに立っている。(……あ?)虎杖は驚きに目を細めた。モジュロ最終回時点の虎杖悠仁が使えるのは、純粋な身体能力、赤血操術、そして対象の耐久力に応じて切り刻む通常の『解』。宿儺が使っていたような「世界そのものを断ち切る斬撃」は、虎杖には使えない。レグルスの権能『小さな王』は、自身の時間(変化)を停止させ、この世界のあらゆる物理干渉、魔法、概念的な攻撃すら一切受け付けないという「絶対無敵のバリア」。虎杖の眼が、レグルスの状態を観察する。(なんだこれ。空間を遮断してんのか? いや、アイツの周囲だけ、世界の理から完全に切り離されて止まってる……)その圧倒的な「触れられない、傷つけられない」という絶対の不可侵。虎杖にとっては、あまりにも見覚えがありすぎる、そして世界で最も信頼していたあの男の術式を思い出させた。(五条先生の『無下限呪術』……。いや、術式の洗練さも、纏う格も、先生の足元にも及ばねえ…いや比較する事さえ先生に失礼か。心臓の動きすら不自然だ。……だけど、この『無敵バリア』の性質だけは、最悪な意味で先生のパチもんだわ)「君さあ、人の話を聞かないでいきなり攻撃してくるなんて、一体どういう教育を受けてきたわけ? 僕はね、ただ僕のささやかな権利が守られ、平穏に過ごせればそれでいいと言っているんだ。それを害しようとするなんて、君たちはどれだけ強欲なんだい?」レグルスが身振りを交えて、一方的な自己正当化の演説を始める。彼の足が地面を軽く蹴ると、ただの砂粒が「時間を停止した絶対破壊の弾丸」と化し、凄まじい轟音と共に街道の木々や地面を消し飛ばした。「悠仁くん、危ない!」ロズワールが即座に強力な魔力障壁を展開し、クルシュやレムを後ろに下がらせる。