Re:ゼロから始まる廻る呪いに   作:トンパ=ゾルディック

2 / 22
赤血操術と御厨子

「素晴らしいわ……! その肉体、どんな綺麗な腸が詰まっているのかしら!」

 

エルザの瞳が歓喜に濡れる。彼女の速度がさらに跳ね上がり、壁や天井を跳ねながら、四方八方から虎杖を切り刻みにが裂け、虎杖の肌に無数の赤い線が走る。だが、その傷口から流れる血は、地面に滴り落ちることはなかった

 

 「『赤血操術』」」

 

虎杖の意思に従い、空中に飛散した血液が瞬時に硬質化。無数の鋭利な針——『血刃(けつじん)』へと姿を変え、全方位からエルザを襲う。

 

「なっ……!?」

 

驚愕するエルザ。空中での身動きを制限された彼女へ、虎杖はさらに追い打ちをかける。自身の血を掌に集め、超高圧で撃ち出す。

 

「『穿血(せんけつ)』!!」

 

音速を超える血のビームがエルザの肩を貫いた。

激痛に顔を歪めながらも、異常な再生能力で立ち上がるエルザ。

 

「ふふ、あははは! 自分の血を操る魔法? 最高よ、最高! でも、私の渇きを癒すにはまだ足りないわ!」

 

執念深く、ゾンビのように間合いを詰めてくるエルザに対し、虎杖は静かに構えをとった。

宿儺との魂の共生、そして激闘の果てに完全に自分のものとした、もう一つの「呪い」の術式を起動する。

虎杖の手が、空中に見えない「線」を描くように振るわれた。

「——『御厨子』」

 

見えない刃が空間を統べる。エルザが踏み込もうとした床、そして彼女の持つククリ刀が、触れもしないのに細切れにスライスされていく。

対象の耐久性に応じて一刀両断する『解(かい)』の斬撃。

 

「しまっ——」

 

武器を失い、逃げ場を無くしたエルザの胸元に、虎杖の拳がめり込んだ。呪力を極限まで同調させた、黒い火花。

 

 

「『黒閃(こくせん)』!!」

 

空間が歪むほどの衝撃波が盗品蔵を揺らし、エルザの身体は外の広場へと派手にぶち抜かれた。吐血し、満身創痍となったエルザは、虎杖の底知れない強さに戦慄していた。これ以上は命がないと本能で察した彼女は、不気味な笑みを残して闇の中へと退却していった。

 

 

静寂が戻った盗品蔵。

 

「悠仁……あなた、一体……」

 

驚きで声を震わせるエミリアに、虎杖はいつものぶっきらぼうで、どこか優しい笑顔を向けた。

「いや、なんとかなって良かったわ。怪我、ねえか?」

 

フェルトから無事に徽章を受け取り、月の光にそれを掲げるエミリア。その横顔を見ながら、虎杖は思う。この世界に、かつて自分が背負った「呪い」はないかもしれない。それでも、目の前で泣きそうな誰かがいるなら、その手を引く。それが、モジュロの果てに生き残った虎杖悠仁の、新たな生の意味だった。

 

「私の本当の名前は、エミリア。ありがとう、悠仁」

 

異世界の風が、二人の髪を揺らしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。