Re:ゼロから始まる廻る呪いに   作:トンパ=ゾルディック

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妥協ピエロ

その様子を後ろから眺めながら、ロズワール・L・メイザースは不敵に微笑んでいた。ロズワールは、エミリアが『墓所の試練』に挑み、一度は自身の凄惨な過去(エリオール大森林の記憶)と向き合って挫折することまでは織り込み済みだった。正史のナツキ・スバルであれば、精神的に追い詰めて「エミリア以外を切り捨てる冷徹な駒」にする必要があった。だが、今の虎杖はスバルよりもあらゆる面で頼りになり、かつ底が知れない。もし虎杖を怒らせるような陰湿な罠を仕掛け、それがバレてしまえば、虎杖の圧倒的な武力によってロズワールの計画そのものが物理的に破綻させられるリスクがあった。だからこそ、ロズワールは本来よりも遥かに穏当で、かつ実利的な手を打っていた。(エミリア様が過去に押し潰されそうになっても……悠仁くんの、あのオドを直接叩くような術式『御厨子』と言ったーかなぁ?その打撃があれば、外側からエミリア様の試練空間に無理やり割り込み、彼女を鼓舞して引っ張り上げることすら可能だろーーうさ)ロズワールの思惑は柔軟だった。エミリアが自力で試練をクリアして聖域を解放できれば、王選候補としての箔がつくので万々歳。だが、もしそれが叶わなくとも、虎杖自身が墓所の奥へと踏み込み、その特異な術式で封印そのものを断ち切って、魂を抑圧されている最愛の師『強欲の魔女』エキドナを直接連れ出す道筋でも、ロズワールにとっては全く問題無かったのであった。

 

 

そして、当のロズワールすら知らぬ「最大のイレギュラー」が、聖域の法則を根底から揺るがそうとしていた。本来、墓所の試練を受けられるのは「亜人の混血」か、あるいは「魔女因子を持つ者」だけである。虎杖は外見上、この世界では混血の亜人とは思われていない。だが、虎杖悠仁という肉体の本質は、かつて宿儺を宿し、さらに元の世界で『呪胎九相図』の兄たちを取り込んだ、半分呪い(受胎九相図の残滓)と化した異形の器。その魂と肉体の構造は、この世界の「人間」の枠組みを遥かに逸脱しており、聖域の結界の検知システムを驚くべき形で誤認させていた。「魔女因子」や「亜人の血」を持たずとも、その身に宿る高密度の『呪い(魔女の残滓に極めて近い負のエネルギー)』によって、虎杖悠仁には、最初から墓所の試練を受ける資格が完全に備わっていたのである。「……ん? なんだか、あの奥の建物(墓所)から、妙に俺を呼んでるような気配がするな」虎杖が不気味に佇む石造りの墓所を見つめる。エミリアの過去の救済か、あるいは強欲の魔女との契約による大罪司教の情報収受か。あらゆる陰謀をその圧倒的なポテンシャルで無意味化する特級術師が、ついに魔女の揺り籠へと足を踏み入れる。

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