「レム! 子供たちを連れて結界の中に戻れ! 残りは俺が引き受ける!」「ですが、悠仁くん一人では——」「大丈夫、これくらい慣れっこだから!」虎杖の頼もしい背中に気圧され、レムは子供たち(そして正体を隠したメィリィ)を連れて退避を開始する。一人残った虎杖の周囲を、数百匹のウルガルムが埋め尽くす。「よし……まとめて片付けるか」虎杖は自身の掌を軽く傷つけ、溢れ出た血を空間に散布した。「——『赤血操術』」凝固した血液の弾丸が、彼の意志で一斉に全方位へ撃ち出される。『散弾・血刃』。音速の刃が雨のように降り注ぎ、魔獣たちの肉体を容赦なく狂わせ、一瞬で数十匹を屠る。さらに、生き残りが一斉に飛びかかってきた瞬間、虎杖は腕を優しく一振りした。「——『御厨子』・『解』」見えない細切れの刃が、空間そのものをサイコロ状に裁断する。近づくことすら許されず、魔獣の群れは次々と肉片へと変えられていった。その圧倒的な蹂住は、戦いというより、もはや一方的な「駆除」だった。
魔獣の群れを完全に殲滅し、一滴の返り血も浴びずに森を出た虎杖。村の入り口では、無事だったレムと子供たちが待っていた。「悠仁くん……!」レムが駆け寄る。彼女の瞳には、かつて向けられていた猜疑心は微塵もなく、ただ純粋な憧憬と深い感謝の光が宿っていた。虎杖の圧倒的な強さと、身を挺して(実際は無傷だが)自分たちを守ってくれた誠実さに、彼女の心は完全に救われていた。「おう、みんな無事か? 良かった」虎杖が笑ったその時、上空からふわりと、派手な羽織をまとった男が降り立ってきた。ロズワール・L・メイザース。彼は、森の様子を上空からすべて目撃していた。「いやはや……驚いた、ねえ。これほどの傑物とは。まさかこれほどあっさりと魔獣の群れを根絶やしにしてしまうとは」ロズワールはピエロのメイクの奥の目を細め、いつもと違う、真剣な声音で虎杖を見つめた。「悠仁くん。君の実力、そしてその高潔な魂。ただの『護衛』や『使用人』として扱っておくには、あまりにも勿体なーーい」ロズワールは恭しく胸に手を当て、虎杖に向かって深く一礼した。「どうかな。我が陣営の……いや、エミリア様の正式な『騎士』として、彼女の歩む道を支えてはくれないだろうか?」虎杖は少し照れくさそうに頭を掻きながら、遠くのロズワール邸がある方向を見つめた。エミリアの、あのひたむきな笑顔が脳裏に浮かぶ。「……騎士、か。よく分かんねえ肩書きだけど、エミリアを守るためなら、喜んで引き受けるよ」こうして、呪術師・虎杖悠仁は、異世界ルグニカにおいて、正式に銀髪の少女の「騎士」としての歩みを始めるのだった。