天獄の熾翼、墳墓の魔王 作:マジックス
五分ほどして、俺はエ・ランテルを離れた。
適当に身を隠しながら悟に見つからないところまで移動する。マジックアイテムで監視されていないことを確認してから《Gate》を開いた。
門の向こうに天空城の白い回廊が現れる。
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
エリシアが俺を迎え入れる。
「アンティリーネの所に行く。なんか面白いことになったら教えてくれ」
「了解しました」
俺はアンティリーネをボコしたあとアンティリーネを天空城に招いていた。
法国の反発も大きかったが神の力で黙らせた。
理由はいくつかあるが一番大きいのはツァーと仲良くなられたら困るからだ。
ツァーもアンティリーネも善側だし腹を割って話したら普通に仲良くなりそう。
可能性は低いが肉壁1相手に共闘して仲良くでもなられたら法国の神としてツァーと協力し、ナザリックと戦うルートに寄ってしまう。
そうなったら多分ツァー本体と戦えない。
流石にツァー本体とのバトルは捨てがたかった。
次点ではこの世界のレベルシステムの実験。
俺自身をもっと強化できるか。そのための情報を詳しく知りたい。
その時にアンティリーネは都合のいい実験対象なのだ。
最後はアンティリーネ自身の強化。
いい感じに整えたら面白くなりそうだからな。
どこまで強くなれるか興味がある。
アレーテイアにジョブ構成を見てもらったが原作と同じだった。
| 職業 | Lv |
| ファイター | 10 |
| バーサーカー | 10 |
| マスターファイター | 10 |
| レッサーワルキューレ/オールマイティ | 5 |
| ウェポンマスター | 7 |
| ローグ | 1 |
| アサシン | 5 |
| エクスキューショナー | 10 |
| クレリック | 10 |
| ハイクレリック | 10 |
| インクイジター | 10 |
| 合計 | 88 |
タレントを最大限扱うためにオールマイティを選んだってところだろう。
だが、色々な武器の練習をする過程で無駄なジョブをいくつか覚えているっぽい。
「つまりアンティリーネはこれから何回か死んでレベルダウンしてもらいたい」
「……は?」
「安心しろ。眠っている間に一撃で殺すから恐怖も痛みもない。寝て起きたらレベルが下がってるから」
「……何を言ってるの」
死ぬのは嫌そうだ。
無理やり殺してもいいけど仲良く殺した方が後々役に立ちそう。
「……アンティリーネにはもっと強くなってもらう必要がある」
「そりゃ強くなれるならなりたいけど……」
困惑しているな。
アンティリーネはどんな感じだっけ?
どうやったら説得できるかな。
「……この城を見て何か違和感を感じないか?」
「違和感も何もずっと
「そう、それこそが違和感だ。なんでこんなところに閉じ込めているかわかるか?」
「……性格が悪いから?」
「1/4くらいは当たっている。がお前に強くなってもらうためだ」
「……どういうこと?」
話が戻ってしまった。
俺じゃ悟の営業トークには勝てないようだ。
流石本職。
あるいはアンティリーネはデミウルゴスじゃなかったのかもしれない。
もうちょっと真面目にするか。
「そうだな………………………。まずは俺の城の住民は全盛期に比べ20%以下だ。ちなみにそれぞれが俺と同じレベルを持っている」
「レベルって何?」
「俺がお前に88って言っただろ? 分かりやすく言えば力の源みたいなもので身につければ身につけるほど強くなるみたいな?
お前は88個身につけている。俺は100個。まぁともかく、今の俺の陣営は貧弱なんだよ。もし法国に全盛期の俺の城並みの戦力を持った存在が現れたらどうなると思う?
法国を守る力を身につけたくないか?」
アンティリーネは法国を守りたい的な感じだったはず。
こういう方面の説得が効果的だろう。
「別に……」
あれ?なんでだ。原作との違いとか……?
「法国を守れなければ神官長も、漆黒聖典も、そこに住んでる奴らも死ぬぞ? それでも別にどうでもいいか?」
「それは……」
なんだ、ただのツンデレか。
「すぐに否定できない時点で答えは出たな。安心しろ。さっきも言ったが全然怖くないし痛くない」
「……いや、待って」
「ん?」
「なんで死ぬことが強くなることに繋がるの?」
「ああ、強くなるんだからいいだろ?」
「ちゃんと説明して」
俺、人に説明するのが嫌いなんだよな。
まぁいいや。
「さっきレベルの説明しただろ? あのレベルで身につける力には質があるんだよ。例えばアンティリーネのエインヘリヤルとスルシャーナの貫通即死ではエインヘリヤルの方が強いとされてる。つまりその知識も知らず適当にやったアンティリーネには無駄がある。レベルは世界の限界を超えるとか変な奴とか以外は100が限界だからな。その無駄をそぎ落とすために何回か死ぬ必要があるってこと」
「……つまり、今の私には無駄な力が混ざってるってこと?」
「そう。研究+ガチで頑張ればレアジョブ詰め込めるんじゃない? じゃ、殺していいか」
アンティリーネは決意を固めたように目を閉じる。
「わかった。なるべく痛くないように殺して」
「了解。抵抗するなよ。《
アンティリーネは眠りに落ちる。
ああ、そうだ。
こっちの世界に来てから試していないし機会もないから試しておくか。
「《魔法遅延化》《
タイミングを合わせてアンティリーネの首を刎ねる。
アンティリーネは即死した。
そしてすぐに蘇生魔法が発動し生き返った。
「う、私死んだの……?」
「蘇った感覚はどうだ?」
「確かに、痛みも恐怖もなかった。でも体がだるい……」
「レベルダウンしたからだろうな。《
俺は何度もアンティリーネを殺し、レベルダウンさせた。
念のため殺すたびに疲労回復の魔法をかけた。
最後らへんは
その結果、ジョブはこうなった。
| 職業 | Lv |
| ファイター | 10 |
| バーサーカー | 4 |
| マスターファイター | 2 |
| 合計 | 16 |
強さ的にはクライムとトントンくらいか?
アンティリーネがクライムとトントンか……。
流れ星の指輪があるから無茶してもなんとかなると思って容赦なく殺したけど、クライムと同程度は流石に可哀想だな。
人生で初めて罪悪感というものを感じたかもしれない。
アンティリーネは四つん這いになって必死に立とうとしている。
まるで赤子のようだ。
「た、立て、ない……」
「無理して立とうとするな。安静にしていろ」
哀れだ。
さっさと流れ星の指輪でレベルを上げる実験をするか……。
俺は流れ星の指輪を使った。
俺の意識がどこかに繋がったのを感じた。
いくつかの願いを頭の中で考える。
俺のレベルを101にする、アンティリーネにワールドチャンピオンのクラスを与える、転移前の世界に戻る、願いを無限に叶えるなどは無理そう。
願いがデカすぎると感じる。
多分聞き届けられないだろう。
他にもいくつか気になることはあるけど、とりあえず1つ目の願いは決まった。
“アンティリーネのマスターファイターのレベルを可能な限り上げろ”
| 職業 | Lv |
| ファイター | 10 |
| バーサーカー | 4 |
| マスターファイター | 10 |
| 合計 | 24 |
おー。レベルが上がった。
今のでこの魔法の限界がなんとなく分かった。
叶えられる範囲は捧げた代償に対して世界が極端に損をしない範囲までだ。
もしかしたら使用者によって効力が変わったりもするかもしれない。
例えば俺が5Lv分を使ってアンティリーネのレベルを上げろと願った場合、俺が95~100になった分くらいのEXPがアンティリーネに渡されるということだ。
そうじゃないとEXPを無限に取得とかできるしそこくらいが限界だと思っていたが、大体予想が的中した。
単純に世界も知らないことを教えろというのもできない気がするが。
アンティリーネのレベルが上がったのはマスターファイターのレベル2からレベル10までの必要EXPが指輪に蓄えられた力以下だったからだろう。
失った力を取り戻すという背景と、俺の持つジョブが特殊だったというのも、聞き届けられた一因な気がする。
アンティリーネにワールドチャンピオンのクラスを与えるのは無理そうだったし。
「さっきより……体が楽になった……?」
再び指輪を使いアンティリーネのレベルを上げた。
“アンティリーネのクレリックのレベルを可能な限り上げろ”
| 職業 | Lv |
| ファイター | 10 |
| バーサーカー | 4 |
| マスターファイター | 10 |
| クレリック | 11 |
| 合計 | 35 |
なんかレベル11で止まったな。
「調子はどうだ」
「……何かさっきより楽になって、今までできなかったことができるって分かる」
ふーん?
0から覚えさせると力の使い方とか知識が必要でその分願いが大きくなるってところか?
レベル10の薬師が薬を全く作れないんじゃ変だしな。
感覚としては俺や悟がなんとなくで魔法を使えるというのに近いのかもしれない。
クレリックのレベルが無駄に上がってしまった。
とりあえずアンティリーネを殺してレベルを調整するか。
| 職業 | Lv |
| ファイター | 10 |
| バーサーカー | 4 |
| マスターファイター | 10 |
| クレリック | 10 |
| 合計 | 34 |
「……ねぇ、これ本当に強くなれるの?」
「大丈夫大丈夫、100パー強くなれる」
ニンジャと違いワルキューレは裏技的に取得するのはほぼ不可能らしい。
大量に願って少しずつ情報を集めれば行けるかもだが、ヌルゲーになりすぎないように指輪は2個までって決めている。
色々まとめて考えると指輪を使っても俺のジョブを今まで以上に最適化するのは難しそうだ。
「《
「………体は動くけど、違和感が凄い」
「それはよかった」
魔法の練習は俺にはできない。
感覚でいいならできるが多分あてにならないだろう。
なのでアンティリーネに経験値を増加させるアーティファクトを付け飲食睡眠が不要になるアイテム、《維持する指輪》をつけて四六時中俺と試合をさせることでレベルアップを目指す。
無駄なジョブを獲得したら殺してレベルダウンさせる。
そうしたら、いい感じに最適化されていくでしょ。
レベル的にもPS的にも効率がいい訓練方法だ。
「この首輪をつけないといけないの……? 奴隷みたいで嫌なんだけど」
「安心しろ。奴隷のジョブを獲得してもレベルを下げられるから大丈夫だ」
この世界の人間は強敵との戦闘などで肉体・精神・魔力を極限まで使う状況ほど急激な成長が発生しやすいらしい。
さらにアーティファクトの効果アンティリーネ自身の資質を合わせれば通常とは比べ物にならない速さで強くなれるはずだ。
問題は本人のモチベだがアンティリーネはこういう非人道的な訓練に慣れているし、そういう訓練を他の人にもやりがちだから、かなり耐えてくれるだろ。
「一応聞いておくが、どんな風に強くなりたいとかあるか? なければ俺が最適だと思うジョブ構成にするが」
「……強くなれるなら何でもいい」
「それじゃ、ある程度成長の方向を教えておく。面倒だが、その方が効率がいいからな。アンティリーネはタレントが優秀だからそれを活かす方向でビルドを組む。エインヘリヤルに特化させてタイマン向きにしてもいいが俺は万能型の方がいいと思う。理由はエインヘリヤル2体出せる時点でもう十分強い。アンティリーネ本人と合わせれば三対一だ。それでも3体まとめて捌けるような相手には《エインヘリヤル》を多少強くしたくらいじゃ多分勝敗は変わらない。だったら本人にできることを増やした方がいい。強力なスキルを見せ札にして警戒させ別のスキルで狩る戦法とかもできるからな。信仰系魔法は頑張って覚えてくれ。良くも悪くも純粋に魔法の才能とかが重要そうだからアンティリーネに覚えられるかわからんが、あとで必要最低限の覚えるべき信仰系魔法まとめとか作るから独学でよろしく。クレリックなどの信仰系のジョブのレベルの合計値が30になったらあとは全部戦士系に特化させる。エインヘリヤルを強化する、武技を強化するというシナジーがあるから効率的。火力、防御は武技で誤魔化せるだろうから身体能力を効率よく伸ばせるジョブを身につけてもらう。ぱっと思いつくのはファイター、マスターファイター、バーサーカー、クレリック、バトルクレリック、テンプラーあたりか。レッサーじゃない方のジョブを取るには取得時のレベルとかも重要っぽいからレベルを底上げできそうなジョブを選んでみたが、ここは実際に獲得してみるまで何がいいかはわからん。この世界特有のジョブとかあるしな。あとは訓練しつつ、実際に獲得するジョブを確認しながら臨機応変にビルドをしていった方がいいだろう。まぁ俺が教えるから、大体理解していればいい。逐一教えるのが面倒で一気に話したが、大丈夫そうか?」
「大体なら大丈夫」
「そうか。ならさっそく訓練を始めるぞ」
それから、アンティリーネにはひたすら俺と戦ってもらった。
最初は酷かった。
レベルが一気に下がった影響で本人の感覚と実際に動く身体がまるで噛み合っていない。
しかし、ずっとボコしていると少しずつ慣れていった。
そして、レベルアップも確認できた。
俺との戦闘を続けているうちにアレーテイアがアンティリーネのレベル上昇を確認した。
経験値増加のアーティファクトもきちんと機能しているっぽい。
一度失ったレベルを取り戻しているからなのか、元々の才能なのか、24時間格上と命がけで戦闘できる環境が原因なのか。
多分全部だろう。
特に俺との戦闘と、アーティファクトの効果がデカい気がする。
そうしてアンティリーネの訓練をしているとエリシアから《Message》が入った。
『ご報告します。肉壁1が行動を開始しました』
『あーはいはい』
「アンティリーネ、少し休憩だ」
「……よかった。流石にあなたも体力切れ?」
「まぁ、そんなとこ」
エリシア、アレーテイアのいる場所に移動した。
いっぱい殺してるな。
後で蘇らせればいい感じに信仰心とか稼げそうだし、都合がいいか。
その後、鎧ツァーとの戦いになっていった。
鎧状態では肉壁1の方が圧倒的に強いみたいだ。
「うーん、ツァー本体は普通に俺より強いかもな……」
「主様より強い……? その可能性は低いと思います」
「エリシアはそう思うのか? まぁ真なる竜王をいっぱい殺してきたんなら、ある程度信憑性はあるか」
俺は転移する前から真なる竜王の強さを守護者のような最適化されていないビルド1.5~2体分だと考えていた。
アンデッドの鎧込みだがキュアイーリムはそのくらいの強さがあると思う。
実際にエリシアが戦った真なる竜王たちは個体にも寄るが大体ワールドチャンピオン1人より少し下くらいだったらしい。
俺はワールドチャンピオンの中でも飛びぬけて強かったがツァーは最上位クラスの竜王らしいし強力なタレントを持っていたら、最適化されたジョブを持っていたら、俺より強いかもしれない。
これ以上考えてもわかることじゃないし今はいいか。
画面に目を戻す。
シャルティアと肉壁1の戦いはそれなりに面白かった。
よくあんなネタビルドでシャルティアと鎧ツァーを相手にできるな。
7割くらい盾のおかげだろうが、3割は本人の技術ってところかな。
しかし、善戦できていたのは途中までだった。
シャルティアがエインヘリヤルを使った途端に形勢が逆転したのだ。
まぁ、仕方ない。
眷属の吸血鬼を使って時間稼ぎすれば確実に勝てるだろうけど後のことを考えてなるべく温存するつもりのようだ。
カイレが肉壁1の眷属になっているからその気になれば終わらせられるというのもあるかもしれない。
最低限、確実に勝てる札を用意して遊ぶってのは俺に似ているかもな。
シャルティアと肉壁1の戦いを観戦していると俺に《Message》が入った。
名前は覚えちゃいないが番外神官長とやらからだ。
アンティリーネを俺の城に連れてくる時、法国に何かあった場合に困るからと俺に確実かつ迅速に繋がる連絡網を求められたのでマジックアイテムを渡しておいたのだ。
アンティリーネを法国に送って欲しいと言われた。
アンティリーネはレベルダウンさせた直後なんだよな~。
とりあえず俺はアンティリーネじゃあの吸血鬼たちに勝てない可能性が高いので俺が行くと伝えた。
「じゃあ、行ってくるわ。合図したら情報妨害よろしく」
さて、法国を助けに行くか。