天獄の熾翼、墳墓の魔王 作:マジックス
《gate》を使い、番外神官長の所に転移した。
番外神官長も含め神官長達は全員会議室に集まっている。
まぁ外に出ても20万の吸血鬼相手じゃ何も出来ないからここにいるしかないか。
ちなみに外では第一席次がこの建物に吸血鬼が入ってこないように守っていた。
神官長達に向けてスキルを使い、いい感じに神聖な雰囲気を出す。
悟の絶望のオーラの天使版だ。
「よく耐えた。あとは余が引き受けよう」
神官長たちは全員泣きながら跪いて俺に感謝を捧げ始めた。
ちょっと面白い。
サクっと終わらせるか。
とりあえず、何するかわからん鎧ツァーを倒してから肉壁1といい感じに演技すればいいや。
「
遠くから
「
HPとアルベドの評価的にはもう十分オーバーキルだがどうかな?
まぁ行ける行ける。
「
鎧ツァーの後ろに転移する。
気付かれても変な事される前にぶっ壊せば大丈夫だろ。
「
俺の振った剣閃に沿って空間が断裂していく。
見た目は幅2メートルの太さの
俺の剣閃の先に居た鎧ツァーは次元の断層に飲まれ揉みくちゃになり、スクラップになった。
よし、これで不確定要素はなくなったな。
少し離れたところではシャルティアと肉壁1がこちらを見ていた。
適当に手を上げ合図をする。
その後アレーテイアがちゃんと情報系への妨害をしてくれているか確認するために《Message》を使う。
「《Message》」
誰にも繋がらない。
ちゃんと妨害はされているようだ。
これでナザリックもこっちを見ることは出来ないだろう。
まずは肉壁1と情報共有をしとこ。
普通に話したら面倒なことになるかもしれないし、口の動きと喋る内容を変えて話すか。
なんかスパイ映画とかでたまにやるやつ。
設定上、肉壁1も出来るはずだ。
「法国を蹂躙した罪は重い。余が直々に裁こう(肉壁1、とりあえずカイレを使ってシャルティアと2vs1で俺を攻撃しろ)」
「へぇ………?(え………?)」
「法国は余の庇護下にある(え?ってなんだよ。早くしろ)」
「庇護下…?まさかこんなに神聖で素晴らしい存在がこの国を守っていたなんて…(……やだ。主様を攻撃したくない)」
なんか面倒になってきたな。
そういえばソリュシャンもアインズの物を壊すのを死ぬより嫌がっていたか?
俺を攻撃するのはNPCに取って想像を絶する苦痛なのかもな。
「余はこの国の神だ(やだじゃねぇよ。俺の命令)」
「この国の支配者があなたみたいな存在だと知っていたら攻撃しなかったのに(お願い、主様それだけはどうか許して……)」
「今更後悔してももう遅い(他の作戦とか考えるのだるいから無理。見ろよ、シャルティアが律儀に俺との会話を待ってくれているぞ?)」
「アハハ……。もう逃げられないんだね……(そ、そんなお願い…本当に…)」
「裁きの時だ(ちゃんと俺の指示を守れよ?)」
俺は肉壁1に向けて突進した。
肉壁1の動きはさっきより明らかに鈍い。
余裕で盾を抜いて攻撃が当たった。
手を抜いてるな。
まぁいいや、俺の特殊能力で弱体化させたとか言い訳は何でも出来るし。
そもそも法国の人間では強さが違いすぎて手を抜いているとかわからないだろうが。
そんな感じで一方的な展開を繰り広げているとシャルティアが肉壁1側で乱入してきた。
どうやらちゃんとカイレにも指示を出したらしい。
エインヘリヤルを含めれば実質3VS1。
普通なら面倒な相手だが肉壁1がまともに戦ってこないのでPSとステータスで上回っている俺には十分余裕があった。
不浄衝撃盾を避け清浄投擲槍を魔法で防ぎながら、シャルティアを重点的にボコしていく。
エインヘリヤルも神聖属性の攻撃を何発か入れたら消えた。
神官長達を見ると全員泣きすぎて顔がぐちゃぐちゃだった。
おじさん、おばさん達が窓に張り付いて泣いているのは少しシュールだった。
ちょっと面白い。
信仰心も十分稼げただろう。
そろそろ締めるか。
俺はシャルティアの腕を切り飛ばす。
そのまま神聖属性の剣で何度も切りつけた。
もう完全にひん死だろう。
「この程度の力で余の国を襲撃したのか?(次俺が魔法を使うからシャルティアの行動を中止させろ)」
「も、もう無理……! こんなの勝てるわけないよ!(わかった!今すぐ指示させる!)」
「《
光の鎖がシャルティアを拘束する。
シャルティアの動きが止まった。
「お前も随分と抵抗したものだな(肉壁1、今から俺が光を出すから、それに合わせて支配されたふりをしろ)」
「ま、待って……!(し、支配されたふり……?)」
「そろそろ終わりにしよう(説明するの面倒、天才だろ?いい感じによろしく)」
俺の体から黄金の粒子が散って消える。
課金エフェクトというやつだ。
《YGGDRASIL》には文字を出したり歩くたびに花びらを散らしたりと、様々な課金エフェクトが存在した。
戦闘能力には一切影響しないただの飾りだ。
だが、この世界なら話は別。法国の連中には俺が何か凄い力を使ったように見えるだろう。
そして、さらにもう一個おまけだ。
俺は肉壁1に剣を向けた。
俺の剣先から黄金の竜が飛んで行きそのまま肉壁1を貫通する。
「なっ……!? う、嘘……。なんで……?」
まぁまぁいいんじゃない?演技だとはバレないだろう。多分。
「跪け」
「か、体が勝手に……!」
肉壁1は抵抗するように身体を震わせたがやがて力なく膝を折った。
「お前が生み出した吸血鬼どもに命じよ。大人しくしろと」
「はい…」
肉壁1が顔を伏せた。
その直後、街中で暴れていた吸血鬼たちが一斉に攻撃の手を止めた。
俺は肉壁1を連れて神官長の所に移動した。
「この者は完全に余の支配下にある」
神官長たちの視線が一斉に俺の後ろへ向いた。
肉壁1が大人しく頭を下げる。
「ごめんなさい。ぼくは悪い子です」
「おお……」
誰かが声を漏らした。
神官長達が額を床につける。
「御身の御力、まさしく我らが及ぶところではございませぬ。法国をお救いいただき心より感謝申し上げます」
「よい。面を上げよ」
しばらくして一人の神官長が口を開いた。
「恐れながら、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「許す」
「その者の生み出した吸血鬼どもも、すべて御身の命令に従うのでしょうか」
「無論だ。既に殺戮を禁じてある」
「……ありがとうございます。直ちに各所の被害状況を確認させます」
まぁ、予想通りだ。
神官長達は利用できるものは何でも利用する感じだったからな。
肉壁1を俺が支配したと聞いても処刑しようぜとか言ってこないと思っていた。
仮に言ってきても信仰心がここまで高まっていたらどうとでもなるだろうが。
さて、ひとまず法国の方はこれでいいか。
とはいえ、街はまだ酷い状態だろうし、後片付けも必要だ。
神官長たちは相変わらず俺の前に跪いている。
いや、被害状況を確認するんじゃなかったのか?
……ああ、俺が何も言わないから動けないのか。
「其方らは各々の持ち場へ戻り、被害の確認と生存者の救助を進めよ。余はこの者から事情を聞く」
「はっ!」
神官長たちは深々と頭を下げると、次々に会議室を出ていった。
最後の一人が扉を閉める。
さて。
「肉壁1、お疲れ」
「主様ぁ……」
肉壁1が情けない声を出した。
「もうあんなことさせないでよぉ……」
「へー、まぁ結果オーライってことで」
「うぅ……」
肉壁1はまだ不満そうだ。
「それで、主様。これからどうするの? ナザリックと戦うんだよね?」
「そうだな。でもすぐに全面戦争ってわけじゃないだろうけど」
「えー? じゃあいつ戦うの?」
「向こう次第かな。悟の性格なら、いきなり突っ込んでくるとは思えないし」
シャルティアを奪還しようとはするだろうが俺や法国にどれくらいの戦力があるか分からない以上、まずは情報収集を優先するはずだ。
俺の正体を知れば、他のプレイヤーとして接触してくる可能性もある。
まぁ、その辺は実際に動き始めてから考えればいい。
高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するってやつだ。
「ナザリックが何をしてくるか見てそれに合わせてこっちも動く。相手が強い札を切れば俺たちもそれに見合った札を切ればいい」
「じゃあ、ずっと互角になるようにするの?」
「別に互角にすることが目的じゃない。勝てるなら勝つし、負けそうになったら何とかする。
ただ、俺が本当にその気になったら勝負にならないだろ?10年くらい準備してきたんだし」
「ふーん?」
「最初から全部俺の思い通りになったらつまらないからな?」
法国だけじゃない。
ナザリックも、竜王たちも、他にどんな勢力がいるかも分からない。
それぞれが勝手に考えて動けば、いずれ俺にも予想できない展開が起きるだろう。
「主様の予想が外れちゃってもいいの?」
「まぁ、外れてもいいよ」
「ぼくは主様が負けるのなんて絶対嫌だけど」
「だから負けるつもりはないし、負けても負けじゃないように準備してるんだって」
さて、これで準備は整った。
それぞれが敵存在を認識し、俺は法国を手中に収めた。
政治的にも物理的にも情報的にもナザリックとの本格的な戦いの地盤が出来たということだ。
あっちはどう動くかな~。
楽しみだ。