天獄の熾翼、墳墓の魔王 作:マジックス
メルクリウスから残りの報告を聞き終えた頃には、屋敷へ着いてからかなりの時間が経っていた。
もちろん、五百年分の記録を全て確認したわけではない。
七人がこの世界へ来てから何をしたのか。
天空城が何に巻き込まれ、何を失い、何を残したのか。
法国以外の国々へ、メルクリウスがどこまで手を伸ばしているのか。
細かく確認し始めれば、いくら時間があっても足りない。
それでも、今の俺が動くために必要なところは一通り聞けた。
残りは天空城へ戻ってから見ればいい。
「じゃあ、行こうか」
俺が立ち上がると、メルクリウスもすぐに席を立った。
「御意」
《Gate》を使う。
行き先は、現在の天空城へ安全に接近できる座標。
魔法を使う感覚にも、少しずつ慣れてきた。
《YGGDRASIL》では魔法を使うにも操作が必要だったが、今は違う。
使う。
そう意識すれば、自分の中にある魔法へ力が通る。
手を動かそうと思えば手が動く。
それに近い。
目の前の空間が歪み、向こう側へ繋がった。
見えるのは青空。
そのまま門を潜る。
◇
《Gate》を抜けると、視界いっぱいに青と白が広がった。
足元には雲海。
そのさらに上、青空の中に巨大な浮島が浮かんでいる。
白い城壁が島を囲み、その内側から何本もの尖塔が伸びていた。
周囲には大小の浮島。
中央には、それら全てを見下ろすように巨大な城がそびえている。
《天空城》。
最後にここを見てから、俺の感覚では一日も経っていない。
それなのに、あの中では既に五百年が過ぎている。
ギルド拠点には自動修復に近い機能がある。
大きく損傷した時には別途資源も投入したらしいが、普段の損耗程度なら日々の修理で処理できる。
だから、五百年という時間そのものが城を朽ちさせるわけではない。
「本当にあるな」
「はい」
少し遅れて《Gate》を抜けてきたメルクリウスが答えた。
俺は異形形態へ移る。
背中から六枚の翼が広がった。
位置が分かる。
空気を受ける感覚もある。
ゲームのアバターについていた飾りじゃない。
もう完全に俺の身体だ。
そのまま空へ出る。
右へ。
そう思えば身体が傾き、翼が勝手に必要な動きをする。
止まる。
上がる。
向きを変える。
どれも問題ない。
「いいね」
《YGGDRASIL》では、判断した後にそれを操作へ変換する必要があった。
今はその一段階が消えている。
考えた時には、もう身体が動いている。
ただし。
これを俺だけの利点だと考えるのは早い。
アインズも同じかもしれない。
他にプレイヤーがいるなら、そいつらも。
NPCまで同じように動けるなら、《YGGDRASIL》では操作上難しかった動きや連携まで普通に使ってくる可能性がある。
その辺りは、実際に戦わないと分からない。
やがて天空城が近づいてきた。
城門へ続く広い空中回廊。
その入口に、一人の女が立っている。
淡い灰金色の髪。
薄い青灰色の瞳。
白と灰を基調にした長衣。
派手ではない。
それでも一目で分かる。
俺が作った姿だ。
エリシア・アルカディア。
Lv100。
人間種。
メルクリウスと同じく、天空城が俺より先に転移した場合を考えて作ったNPC。
ただし、役割は違う。
メルクリウスが外へ出て社会の中へ入り込むための存在なら、エリシアは天空城を残すための存在。
管理。
保全。
修復。
資産の維持。
外で何が起きても、最後に帰る場所を残す。
その役目を任せていた。
俺が空中回廊へ降りる。
エリシアはすぐには動かなかった。
ただ、こちらを見ていた。
やがて歩き出し、俺の前まで来ると静かに膝をつく。
「お帰りなさいませ。我が創造主」
声は落ち着いていた。
ただ、頭を下げる直前。
一瞬だけ表情が崩れた。
何を感じていたのかまでは分からない。
でも、ゲーム時代ならありえなかった反応だった。
「ただいま」
俺にとっては昨日の続きでも、こいつにとっては違う。
「五百年、ありがと」
「勿体なきお言葉にございます」
「立っていいよ」
「はい」
エリシアが立ち上がる。
姿は記憶にあるまま。
けれど、もう俺が書いた設定だけでできている存在ではない。
メルクリウスと同じ。
こいつにも五百年分の時間がある。
「中、見せて」
「ご案内いたします」
◇
城内も、ほとんど記憶通りだった。
使われなくなった区画。
用途を変えた部屋。
警備の都合で経路を変えた場所。
細かな変化はある。
それでも、天空城そのものは残っていた。
倉庫。
工房。
転移設備。
NPC復活設備。
主要な場所を順番に確認する。
どれも問題なく動いている。
失われた資産があることは既に聞いていた。
重要なのは、拠点としての機能が残っていることだ。
それが自分の目で確認できれば十分だった。
途中で足を止める。
「エリシア」
「はい」
「訓練場、使える?」
「問題ございません。能力の確認をなさいますか?」
「うん。先にやっときたい」
《Message》。
《Gate》。
飛行。
最低限のものはいくつか使った。
でも、戦闘はまだちゃんと試していない。
誰かと戦う前に、一度は確認しておきたい。
◇
訓練場へ入る。
地上戦だけでなく、空中戦まで想定した広い空間。
中央まで歩き、二本の剣を抜く。
《天耀神裁・ルクス=アストラ》。
《冥獄虚葬・ノクス=アビス》。
右。
左。
片方を防御へ回しながら、もう片方を振る。
そのまま身体を返して軌道を繋ぐ。
違和感はない。
むしろ、ゲーム時代より自然だった。
「相手、出せる?」
「はい」
少し離れた場所に、人型の訓練対象が現れる。
剣を構える。
開始。
正面から距離を詰める。
相手が武器を振った。
軌道を見る。
避ける位置を決める。
その時には、既に身体が動いていた。
攻撃の横を抜ける。
二撃。
そのまま上へ抜け、相手の視線が上がったところで落下。
背後へ回り、二本を入れる。
終了。
床へ降りる。
「やっぱり楽だな」
見る。
読む。
予測する。
判断する。
そこまでは《YGGDRASIL》で鍛えたものがそのまま使える。
違うのは、その判断を操作へ変える工程。
そこがなくなっている。
俺の戦い方とはかなり相性がいい。
魔法や装備変更も一通り確認する。
大きな問題はない。
次に使ったのは、《
俺とよく似た姿が現れる。
魔法は使えない。
そこはゲーム時代と同じ。
ただ、動かし方は違った。
俺が右へ。
《
それだけで、自分で必要な動きを選んで位置を取った。
一動作ずつ指定する必要はない。
「便利になってるな」
元から強い能力ではある。
でも、今の方が明らかに連携しやすい。
まだ確認していないものは多い。
ワールドアイテム。
召喚。
耐性。
実際に攻撃を受けた場合の防御。
蘇生。
全部試そうと思えば時間がかかる。
今は主要な能力が問題なく使えることが分かれば十分だった。
◇
訓練場を出た後、エリシアと話しながら城内を歩く。
その途中で、メルクリウスから聞いた話を思い出した。
「そういえば、十三英雄に参加してたんだよね」
「はい。主様が残した資料とのズレが大きかったので修正しました」
エリシアは十三英雄の時代、一時的に外へ出て活動していた。
名も容姿も声も変え、経歴を用意し、天空城で使っている装備も避けたらしい。
戦闘能力も必要な範囲に抑えていた。
「ツァーとは結構一緒に動いた?」
「はい。複数の戦闘で共闘しております」
「正体を疑われたと思う?」
少し考えてから、エリシアが答える。
「判断できません」
即答で否定しない。
「今のお前を見て、同じ奴だって分かる可能性は?」
「否定はできません。何を基準に個体を認識しているのかまでは把握しておりませんので」
まあ、そうなるよな。
「天空城の方は?」
「当時の身分から天空城へ繋がった形跡は確認されておりません」
帰還経路も毎回変え、追跡されることを前提に行動していたらしい。
五百年間、不審な観測や接触もない。
なら、今のところ天空城まで辿られている可能性を強く疑う理由はない。
ツァーがエリシア個人を怪しんでいたかどうかとは別の話だ。
「分かった。今すぐ会いに行く理由もないし、その辺は保留でいいや」
「承知いたしました」
◇
次に向かったのは、NPC復活設備だった。
死んだNPCは二十八体。
現在残っている金貨で戻せるLv100NPCは十二体。
全員は戻せない。
だから、最初に誰を戻すかは重要になる。
三体はもう決めていた。
今必要なのは、単純な戦闘力より情報を取る能力だ。
メルクリウスの報告を聞いて、俺の知識と現実が完全には一致していないことは分かった。
真なる竜王の数すら怪しい。
なら、自分たちで調べる力を増やす。
アルゴス・ヴァルナ。
広域偵察、追跡、地形把握、物理的な索敵。
現地へ出て対象を探す役。
アレーテイア・ノエシス。
占術、情報解析、情報戦、対占術。
遠隔から情報を集め、それを整理し、こちらへの探知も防ぐ。
ノクス・ヴェイル。
隠密、潜入、現地確認、対象確保、尋問。
必要な場所へ直接入り、必要な情報を取って帰る。
役割はそれぞれ違う。
「この三体から戻す」
「承知いたしました」
エリシアが復活設備を動かす。
必要な金貨が消費される。
ゲームなら、それで終わりだった。
でも、今は違う。
メルクリウスもエリシアも、生きている。
五百年を過ごした。
なら、これから戻る三体も同じだ。
死んでいた存在が、本当に戻ってくる。
まずはアルゴス。
設備の中央に光が集まり、人の輪郭を作っていく。
やがて光が薄れた。
アルゴスは周囲を見回す。
エリシア。
メルクリウス。
そして俺。
「……主様?」
「久しぶり」
俺を認識すると、すぐに膝をつこうとした。
「待って。先に確認したいことがある」
アルゴスが止まる。
「最後に覚えてること、話せる?」
「はい」
最後の記憶は戦闘中。
七人が既に争っていた時期で、残っていたのは四人。
アルゴスは偵察役として戦場に入り、最後には仕えていた相手を逃がすため、追撃を阻止して残った。
そこで記憶が途切れているらしい。
「身体に違和感は?」
「ございません」
能力。
装備。
記憶。
どれも大きな異常はない。
「今がいつかは?」
「……把握しておりません」
「エリシア、教えてあげて」
現在の年代を聞いたアルゴスが固まった。
本人からすれば、戦場で意識が途切れた次の瞬間。
そこに何百年も挟まっている。
「詳しい話は後で共有する。今はそのまま待ってて」
「……御意」
次はアレーテイア。
同じように復活させ、状態を確認する。
問題はない。
「最後に覚えてること教えて」
「承知いたしました」
「天空城のNPCを、それぞれの御方へ配属していた時期でございます」
「配属?」
「はい。七名の関係が悪化した後、主様より残されていた指示に従い、各陣営の戦力差が大きくなりすぎぬようNPCの配置が行われておりました」
そこで、昔書いた指示を思い出した。
もし七人が決定的に割れた場合。
NPCを一人へ集中させない。
単純な人数ではなく、前衛、後衛、支援、偵察、情報能力、装備まで含めて総合的に分ける。
一方的な戦力差を作らない。
そう書いていた。
実際に使われたのか。
「でも、そこまでどうやって拗れたの?」
エリシアが答える。
大きなきっかけは、真なる竜王との戦闘だった。
七人は強い。
全員ワールドチャンピオン。
それでも死者は出た。
蘇生して、また戦う。
それが何度も繰り返された。
当然、何も残らないわけじゃない。
援護が遅かった。
撤退判断が悪かった。
誰かが危険を背負いすぎた。
逆に、予定通り動かなかったという見方もある。
一つの戦闘で壊れたわけじゃない。
そうしたものが少しずつ積み上がった。
そして、真なる竜王との大規模な戦闘が減っていく。
共通の敵が減れば、今度は互いを見る時間が増える。
七人全員で動く機会は減り、少人数で別々に動くようになった。
情報も全部は共有されなくなる。
そのうち互いの行動を警戒し始めた。
最初は妨害や監視程度。
そこから小規模な衝突へ変わり。
やがて、本当に死者が出た。
死んだ者は復活した。
でも。
生き返ったから終わり。
とはならなかった。
むしろ、一度殺し合いが始まったことで、「相手が次は本当に自分を殺すかもしれない」が前提になった。
その段階で、俺の残した戦力均衡の指示が使われたらしい。
「それでNPCを分けた?」
「はい」
メルクリウスとエリシアは長期運用を優先して除外。
残りは能力と装備を基準に調整された。
完全に同じ戦力ではない。
それでも、一陣営が短期間で他を制圧できるほどの差は作らなかった。
そして、その状態で内乱は本格化した。
なるほど。
それなら、長引いた理由の一つにもなる。
「それで、アレーテイアはどこに配属された?」
「配属されておりません」
「される前に死んだ?」
「はい」
少し意外だった。
「何があった?」
「配属を待っていた際、お一人から声を掛けられました」
誰の指揮下へ入るのか。
そう聞かれたらしい。
「何て答えた?」
「その時点では決定しておりませんでしたので、その旨をお伝えしました」
アレーテイアが一度言葉を切る。
「その後、自害を命じられました」
「へぇ、いきなり?」
「はい」
理由は言われなかった。
でも、考えれば大体分かる。
アレーテイアは情報戦特化。
占術。
対占術。
解析。
自分が取れる保証はない。
そして、別の誰かへ渡れば厄介な敵になる。
だったら、配属が決まる前に消す。
既に一度は殺し合いが起きていた。
次に誰が敵になるか分からない。
そんな状況なら、ありえない判断でもない。
「その命令には従わないといけなかった?」
「はい。当時の私はまだ特定の御方の指揮下へ移されておらず、七名より与えられた命令を拒否する条件がございませんでした」
それで通ったのか。
「すぐに?」
「いいえ。先に私が保有していた記録と、占術に使用していた情報媒体を処分いたしました。その後、命令を実行しております」
死ぬなら、情報も残さない。
そこまでやってから自害。
「思ってたより面白いな」
単に仲違いして殺し合っただけじゃない。
関係が壊れていく中で、ちゃんとそれぞれ考えて動いている。
アレーテイアにも異常はなかった。
現在の年代を伝えると、しばらく沈黙した後、静かに頭を下げた。
最後はノクス。
復活させ、同じように状態を確認する。
「最後に覚えてることは?」
「私を囮とした作戦の最中でございます」
「どういう作戦?」
当時、ノクスは敵対する陣営から優先して排除すべき対象と見られていたらしい。
隠密。
潜入。
偵察。
対象の確保。
何度も敵陣へ入り、情報を持ち帰っていた。
そこで、仕えていた側がそれを逆に利用した。
ノクスなら、敵は見つければ追ってくる。
なら、追わせる。
重要な情報を持っているように見せ、わざと痕跡を残して敵を誘導。
待ち伏せへ引き込む。
そこまでは成功した。
ただ、戦闘が始まったところへ第三勢力まで入ってきた。
当時残っていたプレイヤーは三人。
その三陣営が、その場でぶつかった。
ノクスも戦闘へ参加。
最終的には敵NPC三体に捕捉され、さらにその陣営のプレイヤー本人まで出てきた。
そこで記憶が途切れている。
「それなら厳しいな」
「恐れ入ります」
「褒めてないよ」
僅かに頭を下げた。
三体。
死んだ時期はそれぞれ違う。
アレーテイアは、本格的な内乱に入る直前。
アルゴスは四人まで減った後。
ノクスは三人まで減った後。
それだけでも、七人の争いが少しずつ激しくなっていったことは分かる。
「エリシア。最後はどうなった?」
「最後まで残った二名が直接交戦し、双方が死亡しております」
「相打ち?」
「結果としては、そのようになります」
「復活は?」
「行われておりません」
そこで終わり。
七人ともいなくなった。
最初は一緒に真なる竜王と戦っていた七人が。
何度も死んで。
戻って。
少しずつ不満を残して。
最後には互いを殺して終わった。
詳しい流れは記録を読めば分かる。
今ここで全部聞く必要はない。
重要なのは、戻した三体が正常に動けること。
そして、これから何をさせるかだ。
「詳しい状況は後で共有して」
五人が頭を下げる。
まずアルゴスを見る。
「お前は真なる竜王関連から。メルクリウスの記録を読んで、今分かってる個体と、正体がはっきりしてない記録を整理して」
「承知いたしました」
「その後、未確認地域も含めて探索案を作って。接触はまだしなくていい」
「御意」
次にアレーテイア。
「お前は記録を一通り見て。占術で確認できるものを分けてほしい」
「畏まりました」
「それと対占術。俺たちが探られた場合に何が見えるかも確認して」
「承知いたしました」
最後にノクス。
こいつには、すぐにやらせたいことがある。
「ノクス」
「御前に」
「ナザリックを監視して」
ノクスが顔を上げる。
「ただし、中には入らなくていい。今は外に出てきた奴だけ見て」
「監視対象に優先順位はございますか?」
「最優先はシャルティア」
原作通りなら、近いうちに外へ出る。
その先で黒色聖典と遭遇し、《傾城傾国》が使われる。
俺が知っている流れの中でも、序盤ではかなり大きな出来事だ。
ただ、この世界の法国は原作と完全には同じじゃない。
五百年前から俺の指示が残っている。
メルクリウスも動いた。
神人の数も違う。
同じことがそのまま起きる保証はない。
むしろ、それを確かめるために見る。
「シャルティアが外へ出たら追って。接触はしない。何をして、誰と会うか見てくればいい」
「承知いたしました」
「ただし、シャルティアが《傾城傾国》を装備した人間を殺そうとしたら守って」
「御意」
「アインズ本人と他の守護者も、外で確認できたら記録して。ただし、無理に近づかなくていい」
「承知いたしました」
これだけでも、ノクスの能力ならかなりやれるはずだ。
ただ、相手はナザリック。
念のため、もう一段重ねておく。
俺は装備していたアイテムの一つを外した。
最終日。
ナザリック第一階層へ潜り込んだ時にも使ったもの。
隠密。
情報遮断。
探知への対策。
ゲーム時代に何度も性能を確認し、実際にナザリック内部でも使ったワールドアイテム。
それをノクスへ差し出す。
「これも使って」
ノクスの目が、俺の手元へ向く。
一拍遅れて、僅かに目を見開いた。
「こちらを、私に?」
「今回だけね」
「ワールドアイテムをお預かりしても?」
「そのために渡してる」
ノクスが両手を出し、慎重に受け取った。
元々の隠密能力にこれを重ねれば、監視役としてはかなり強い。
それに、もし原作通り《傾城傾国》が出てくるなら、その近くへ行くことになる。
ワールドアイテムを持たせておけば、少なくともゲーム時代と同じ理屈なら対策にもなる。
現実化してからの挙動を全て確認できているわけではないが、何も持たせないよりはいい。
「必ずや、御期待に沿う成果を――」
「そうだな。ちゃんと成果を出せよ? ただし、メリットを生むよりデメリットを作らないこと」
ノクスが一瞬だけ黙った。
「……承知いたしました」
「あと、無理そうなら帰っていいから」
「御意」
これでいい。
アルゴス。
アレーテイア。
ノクス。
メルクリウス。
エリシア。
五百年間動いていた二体に加えて、必要な三体も戻した。
死んでいる方がまだ多い。
金貨にも限りがある。
それでも、新世界へ来た直後としては十分だ。
俺自身の能力は使える。
天空城も残っている。
情報を集めるための手も増えた。
俺が知らない間に五百年進んだ世界。
その間に積み上がったもの。
変わったもの。
まずは、それを調べる。
俺は五人を見渡した。
「じゃあ、始めようか」
俺の方も、ここからだ。