「と、忘れずに魔石を回収せねばな」
倒してはい満足、で終わるところだった。
森に来た目的は、自身の研鑽以外にもホーシュに魔石を食わせることで強化を図ることだった。
「……魔石ってどこにあるんだ?」
漫画ではクロマ視点の時に「魔石を摂取させることで死霊を強化している」という情報が出たのだが、肝心の魔石の位置については記述がなかった。
……まあ、明らかにそんなのは読者目線必要ない情報だからな。
「身体強化しながら地道に解体するしかないのか……」
一体どれくらい時間がかかるのやら、とため息を吐く。
その時、ホーシュが倒れ伏した大蛇の頭の上で「きゅっ、きゅっ」と鳴いた。
「どうしたホーシュ」
「きゅっ、きゅきゅきゅっ!!」
ホーシュは自身の足元──丁度大蛇の脳にあたる部分を角でツンツンと刺して意思表示をした。
まるでここに何かがあると言っているような。
「もしかしてここに魔石があるのか?」
「きゅっ」
返事をするように鳴いた。
花咲か爺さんのここ掘れワンワンみたいだな……と思いつつ俺は、魔石を摂取して強化する特性的に、本能が魔石の位置を察知できるのかもしれないと推測した。
「うぇ……見慣れないとなかなかキツイ絵面だ……」
大蛇の頭を近くの岩でかち割ると、盛大に血が噴き出し、俺は思わず顔を顰めながら血飛沫を間一髪で回避した。
軽い吐き気を堪えながら勇気を振り絞って惨状を確認すると、中に拳サイズのオレンジ色の石があるのを発見した。
「これが魔石、ね。思ったよりデカいな」
「きゅっ!! きゅきゅ!!」
「おお、やっぱりこれが欲しいのか。ほれ」
魔石を取り出すとホーシュは、そのつぶらな瞳を輝かせて足元に纏わりついてきた。
地面に魔石を置くと、ホーシュは野性的にボリボリと噛み砕きながら食べ始める。
「思ったより原始的な強化方法だ」
"摂取"とあったから、食べる以外にも触れることで吸収される……みたいな展開もあり得るかと思ったが、普通にバリバリ美味しそうに食べている。
そんな食事シーンをホッコリしながら見ること数分、食べ終わったホーシュが「けぷっ」と可愛らしいゲップをすると、体を少し震わせる。
「きゅっ──きゅぅ!!」
ブンッ、と何かが通り過ぎる音が響いた瞬間、視界の範囲内にある一本の巨木に大穴が空いた。
……まさか今のをホーシュが……!?
「きゅぅ、きゅっ」
木の裏からやけに満足げな表情をするホーシュがトコトコと出てきたかと思えば、俺の眼の前で止まって小さく鳴いた。
ふんふん、と鼻を鳴らすその姿は、誰がどう見ても「褒めて!!」という表情をしていた。
「すごいじゃないかホーシュ!! 身体強化は切ってなかったのに目で追えなかった……!!」
「きゅ〜」
余裕ですと言わんばかりの表情。
思わず撫で回すとぴょいっと抜け出してしまったが、ツンデレを発揮しただけで喜んでることには違いなかった。
「俺もウカウカしてられないな」
ホーシュのリベンジを果たすには俺も強くならなければいけない。どれだけホーシュが強くなったとしても、蘇らせたからには"一緒に"悔いを晴らす。
そう決めている。
「やっぱり師匠、探すか……」
このまま一人で修行するには限度がある。
たった数時間の修行で俺はそれを明確に理解してしまった。
「……行くか」
かなり気が進まないが、一度ウチの公爵家が治めている街──ウィリンドに出向くとしよう。
……まあ、とっくに噂なんて出回ってるし、直接的に仕掛けてこないにしろ、悪口と嫌がらせのオンパレードで師匠なんて見つかりっこないだろうが。
半ば諦観を滲ませた俺は小さく息を吐く。
だがこの時の俺はまだ知らなかった。
この先の人生で、絶対に忘れることのない運命的な出会いを果たすことを。