DMMO-RPG YGGDRASIL
そのゲームはモモンガーー鈴木悟ーーにとって多くの影響を与えたゲームである。
広大なフィールドに多種多様な種族が日夜存在し、未知を追い求める事をプレイヤーに楽しんでもらうという事をテーマにしている。
まぁ、難易度が高すぎたり初見殺しが多かったりとクソ運営と揶揄されることもしばしばあったが
世間一般においても有名なこのゲームは、後もう少しでその12年もの歴史に終わりを告げようとしていた。
しかし、モモンガの顔に翳りはない。
先週侵入してきた者たちによって背の高いアウラのようなアバターになっていたからではない。
全員とは言わずとも、多くのメンバーが少しの時間ながら遊びに来てくれたからだ。
たっち・みー、ペロロンチーノ、弐式炎雷などなど
共に思い出を語り、愚痴を言って笑い合うのは楽しかった
まるで、このギルド全盛の時を楽しめたような気がして
つい先程、最後のメンバーであるヘロヘロが去っていった扉を見る
そして会いに来てくれたメンバー全員がまた会おうと約束してくれた事に感謝する
このゲームで作り上げてきた思い出は失われていないと、確信できたのだから
玉座の間に揃う数多くのNPC。その全てを見下ろしその姿に満足する
例えコレが最後に見るNPCの姿でも。その全てをこの目に記憶に焼き付けられたのだから
金髪の
「ありがとう。アインズ・ウール・ゴウンそしてナザリックに所属する全ての者よ
ここはもうすぐ消えるだろう。しかし故にこそ、この言葉を送ろう
アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!」
動く事の無いNPCが感謝を返してくれた気がした。
残り数秒。変わる事の無い終わりに対し寂寥感と僅かな満足感に身を浸らせ静かに名目する
残り6秒
5
4
3
2
1
0ーーー
風が頬を撫でた。
「へ?」
思考が何故?で埋め尽くされ呆けている間に、轟音と共に地面に足がつく
足から僅かな痛みと衝撃が伝わる。数瞬呆けた後に異常事態が起きていると判断する
「ジ…GMコールを…コンソールが開かない!?何で!?」
焦りが身をジリジリと焼くような感覚の中、必死にコンソールを開こうと画策する。
何とか開かないものかと虚空に手を伸ばして戻す行為を何度かする。しかし、開かない
「クソッ!どうなってるんだ!?」
焦りと苛立ちを込めて思いを強く吐き出す。少し冷静になった頭が状況把握を開始する。YGGDRASILはサービス終了する時間はとっくに過ぎている
しかし、突然転移をさせられてここにいるという事は何らかのワールドアイテムを使われたか、実はサプライズでYGGDRASIL2が始まったなどのことが考えられるがーー
「リアルすぎる…」
そうリアルすぎるのだ。彼のクソ運営といえども法律にはハラスメント規制を徹底するなど、法律には厳格だった。しかし、
更に、髪を触る感覚はリアルの女性を触っているようだ。女性の髪を触ったことが母以外には無きに等しくはあるのだが
又、先程着地時に少し痛みを感じた
要するにリアルな《触覚》と《嗅覚》及び《痛覚》が機能していることになる。コレは電脳法を無視するどころか、破り捨てて踏みつけるレベルである。そんな事をクソ運営がわざわざするとは思えない。ありえない、あり得ないのだが
「ゲームが現実になってるって事か…?」
だとすれば、周囲のことを把握しなければならない。ここは森の外れみたいだが
ユグドラシルのどの世界に該当するのか知りたい
そもそも、魔法が使えるのか?いや、何となくだが使い方はわかる
意識を内側に向け大きく蠢く力の一端を引き出す
「
本当に飛べた…。頬に触れる少し強い風が気持ちいい
検証は必要だが、この調子であるならばYGGDRASIL の力は問題なく使えそうだ
又先程数秒間落下した後、地面に着地したという事は生身の人間であれば死ぬレベルの高度から落下してきたという事だ。その結果、紙で手を切るくらいの痛みしかなかったという事は
恐らく100lvのモモンガとしての強さは引き継がれているからだろう
次に、この世界に転移した仲間がいるか調べる為に
しかし、誰一人として反応はなかった。予想してたとはいえ少し辛い
「最後にここはどの世界なのかだが…」
仮に転移していた場合、どの世界にも該当しない可能性がある。
先程、ゴブリンの集団を見つけたので異形種は多く存在している可能性が高いが
移動しつつアイテムなどを確認していこう
ーーーーーーーー
結論から言うと、持っているアイテムはゲーム終了時点の物だけで、魔法やスキルは問題なく使えた。敵がいないと使えないものはまだ使えていないが、この調子なら一応は安心できそうだ
それでも、油断は禁物だ。敵対ギルドのプレイヤーが転移してきている場合やこの世界の平均が100lvの可能性もあり得るのだから
だがしかしーー
「コレはちょっとなぁ」
眼下で広がるのは、蹂躙だ。
鎧を纏った騎士と思わしき男達が土に汚れた村人と思わしき人達を追い回している
村人が騎士に反抗できるわけでもなく、一方的に切り伏せられていく
理性は諭す。この世界の強さがわからない以上無闇に動いてしまったら殺されてしまうと
感情は叫ぶ。あの人達を見捨てるのは嫌で今すぐ助けに行くべきだと
理性は正論で、感情は暴論だ 命を大事にするのであればそう思う。けれどーー
「『困っている人がいたら、助けるのは当然』でしたよね。たっちさん」
脳裏に浮かぶのは、純白の騎士の姿
仕方ないと諦めて行動を開始するのであった