これからは土日どちらかの5時くらいの投稿になるかもです
「〈上位アンデッド創造〉ーー
静かな声が周囲に染み入るように緩やかに響く。それと同時に目の前の死体の周りに青が巻きついていく。パキ パキ という音と共に急速に死体が膨らみ二つに分かれ、足が腕が鎧が作られていく。数秒後、モモンガの身長を
「
膝をついて臣下の例をとる
(杞憂だったか…。礼の形は指定していないのにここまでの判断ができるならば、ある程度は問題ないだろう。非実体化もできてこの世界においてではあるがレベルも高い以上使える奴で良かった。死体を一体消費して作ったから無駄にならずに済んだな)
鈴木悟にとって何処か外れた思考でありオーバーロードの思考として正しい物であるという事にモモンガは気づかない。死体はエ・ランテルの外街道沿いにゴブリン退治の依頼をしに行った時に打ち捨てられていた死体である。牙や爪などで切り裂かれていたというよりも人間の剣で切り裂かれていた様子だったので、万が一にも問題はないだろう。仮に回収しているのがバレたとしても、モンスターに喰われてしまったことにすれば問題無い。そこまで考えて司令を出そうと意識を切り替える
「
「この
「よかろう…では行け」
「はっ」
厳かに告げた声に対して静かに、だが確かな自信を持って答える
「さてと…アウラ、マーレよこれから冒険者組合の方へ向かおうと思うのだが…せっかくだ。このまま冒険者組合の方へ行きどうすればいいか意見はあるか?」
「意見…ですか?」
「うむ。
いつまでも一緒に居たいという我儘は流石に酷すぎると思っているモモンガは個人行動をする時を考え二人の成長を少しでも促そうとしているので、早速いい問題ができたと満足げだ。
その為、モモンガ様にすら慈悲深い至高の御方にすら自らの不始末で捨てられてしまうのかと、肩を震わせながら戦慄しどうにかして役立とうとする二人にモモンガは気づかない。
「え、えっとさっき迄ぼ、冒険者組合にいたので、偽装の為にもあの人間達の指示に従うとかでしょうか?そ、それとハムスケを連れて行けばに、人間達にもモモンガ様の威光w痛ッ!?…い、痛いよぅお姉ちゃん…」
「マーレ…あんたねぇモモンガ様が目立たない様に動くっておっしゃっていたじゃない。それなのにあんたはまた目立つ様な真似をしようとして…。モモンガ様の話を聞いていないの?」
「う……うぅ。ご、ごめんなさいお姉ちゃん」
「だいたいあんたは」
「二人ともそれくらいにせよ」
「失礼いたしました」
「……偽装の為に冒険者達と同じ行動をするということ、ハムスケを連れていく事は賛成だ。
アンデッドは生者に惹かれるもの。低位のアンデッドであればより顕著にその反応がでよう。その為にそれなりに強くアンデッドに強く惹かれそうなハムスケを連れていこう。それと目立たないという話だが、少しは仲間が分かる様に目立たなくてはならないだろう。プレイヤーに気付かれにくく仲間に気づかれやすい間を模索していくことにする…その事を念頭に置いておけ。良いな?」
「はっ」
「ではマーレの案を採用する事にする。異論はあるか?」
「ありません」「あ、ありません」
「よかろう。なら
そこまで言いかけて
(
「ふむ……これからの方針が決まった。説明する為疑問点があったら言え。良いな?」
「「はい」」
「これから──」
魔王ロールに精神の疲弊を感じながらモモンガ達は動き出す。どこまでも我儘にアウラとマーレ二人の事を、大事な人を最優先にしながら自分ができる最大限を求めて
♢ ♢ ♢ ♢
「ペテル右からスケルトンと
「分かった!」「了解!」
ペテルが一閃の元に二体のスケルトンの頭部と胸部を破壊し、3回剣を振って効率よく
「ダイン!ニニャのーー」
「任せるのである!!」
ルクルットの声に従って横から飛び出たアンデッドに有効な打撃武器であるメイスをスケルトンにダインが叩きつけるのを見ながらニニャが大きく後退する。アンデッドが飛んできた方を見ると、同じく銀級冒険者のチームが他の冒険者によって助け出されたところであった。
「やっぱりジリ貧。このままじゃ全滅する」
「仕方ねぇだろ。この戦いが終わるのはミスリル級が騒動の中心点にいってアンデッドの発生を止めるまでか、住民が全員逃げ切るまでだからな」
アンデッドの大量発生の確認。それに伴うニニャ達漆黒の剣を含む全ての冒険者及び衛兵達が動員されてからかれこれ30分が立っていた。その事に思う事はない。いや突如として発生した大量のアンデッドそれに最悪の儀式[死の螺旋]について思う事はある。けれどーー
「今回ばかりは仕方ない…か。」
少なくともどんな相手だろうがどんな企みがあろうが、モンスターと戦う以上思考の一本化ができなければ死んでしまう。ミスリルやオリハルコン、アダマンタイト級であれば大局を見据えて戦う事もできるだろう。ただ、少なくとも銀級である漆黒の剣にとって自分たちより弱いという条件があったとしても、物量戦を強いられている以上目の前或いは周囲の敵を倒す事で自分達の仕事を失敗しない様にする事しかできなかった。
「……刃こぼれが酷いな」
「少々メイスが凹み始めているのである」
そして、いくら本人達に余裕があったとしても武器もそうとは限らない。一応は武器の損耗を避けながら動いていてはいるものの、時間稼ぎ、遅滞行動を前提とした戦闘を行っている以上最小限の動きで戦っている為、武器の損耗は避けられない。
「もう少し時間がありゃ良かったんだけどな」
少し後ろに下がったルクルットの声に同意する。いくらある程度近接戦闘ができるといっても、彼のメイン武器は弓なのだ。回収できるならば回収しつつ戦っているものの、矢が尽きたら彼のできる事、戦闘力は大きく減じる事になるだろう。
この戦いが突発的でないものであれば、普段の依頼の様なものであれば問題なかっただろう。
時間稼ぎや物量戦をこなす為にありあわせのものであっても、長時間戦えるように複数個武器を持ち、損耗を避けるような戦い方を覚えようとしただろう。ただ、突発的なものであったからこそ武器の予備は少なく損耗を避けるような戦いは覚えられていないーー今までの場合、多少大きな武器の損傷ができてでも戦闘を終わらせる事を前提として動いてきた為であるーーそんな中、時間さえあればというルクルットの切実な思いが望みを果たせず終わるような不吉な予感と共に重石のように肩に載るような感覚がした。
「下がれペテル!!」
先程までの程よい緊張感から一転、ルクルットが鋭い声で警告する。ペテルは思考を止めルクルットの声に従って後ろに下がる。長い間過ごしてきた仲間だからこその連携だと言えよう。ペテルの目の前に轟音と共に多数の屍で構成された腕が叩きつけられ、少し粗雑だったレンガの道が大きく削れる。もし仮にペテルがルクルットの声に従っていなかった場合、ペテルは今頃地面のシミになっていたであろう威力である。
「
「どうするペテル!」
「ある程度余力を残す方向で行く!短時間で攻め切るぞ!」
「ターゲットをとる!
二つの魔力の塊が素早く、そして吸い込まれるようにして
「させるかッ!」
「コッチである!」
ペテルとダインが両の足を前から同時に攻撃する。加速した勢いそのまま足に二つの武器が引っかかる事により
「矢ぁ4本分だ!喰らっとけ!」
そう叫ぶと同時に道の傍からルクルットが火を鏃につけた矢を放つ。油を染み込ませた布を鏃に巻き付け、火打石に灯る火で再度火矢を作って放つ事合計3回。ついでと言わんばかりに火打石を
「ヴヴォオオオ!!」
アンデッドにとっての弱点である火による攻撃をくらい、身悶えする
(
「
突き出されたスタッフが眩い光が飛び出し、
「《斬撃》!」
「計画を第二段顔へ移行!繰り返す!計画を第二段階へ移行!!」
冒険者の間合いを縫って馬が一頭駆け抜ける。大声で繰り返されたそれは40分程前に正式に採用された全三段階ある計画の第一段階──墓地のある西側から順に住民たちを一部の金級冒険者と衛兵に避難させ、空いた箇所に冒険者達が対応可能範囲ごとに並ぶ。それにより一時的な防衛戦を築き魔術師組合などとの協力のもとアンデッドの足止めと適度な間引きを前提とした戦いをしつつ、住民の避難を順繰りに混乱少なく進めて行く。それと同時にミスリル級などの強力な冒険者達による少数精鋭が墓地の中心である騒動の中心点に向かっていき可能であれば死の螺旋を止めるというもの──が終了して第二段階である避難誘導をしていた金級冒険者と銅級冒険者を入れ替え、死の螺旋中央部と思しき場所に金級以上が突撃。可能であれば先行しているミスリル級冒険者と協力して死の螺旋の収束を図り、銀級以下の冒険者が東門をアンデッドの撃ち漏らしから守護するというものに移行するということを示していた。
「急ごうペテル」
「分かった。ルクルットは先行してアンデッドが居ないか把握してくれ。ダインはルクルットの近接を頼む。ニニャはダイン達の5m後ろ。俺はニニャの近接をするから、何かあったら報告してくれ。異論は?」
「ないな!」「ないのである!」「僕もないです」
「よし!急ぐぞ──
ズドン!
ペテルが宣言しかけた瞬間、大きな音をたてて何の変哲もない食品店に人が一人突っ込んできた。
思わず呆気に取られ数秒固まってしまう漆黒の剣。防御体勢をとっていてもその呆けた時間は強者にとって十分すぎるほどに長いものだった。
「
「ダ──」「
しわがれた枯れ木の様な声が紡ぐ魔法の詠唱。放たれた魔法が大きな炎となってダインの方向に迫りるのを見てペテルが警告を発する前に、魔法が衝突する前にミスリル級冒険者クラルグラのメンバーの
「
「……とスケルトリルドラゴン……!!」
強力かつ残虐。英雄譚におけるラストボスとして語られることもあり、アンデッドとしてスケルトンなどの一般的なものに次ぐほどの有名度を誇る
「クソッ!」
食品店の中から出てきたのはミスリル級冒険者クラルグラのリーダーであるイグヴァルジ。
体の節々に傷ができており、重症と言わずとも限界が近づいている事を示していた
その姿を見て嘲笑うかの様に、カタリと顎を震わせて
「万事休す……かね?エ・ランテル最高位の冒険者チームのリーダーイグヴァルジ君?」
「チッ…白々しい」
忌々しげに呟くイグヴァルジ。スケルトリルドラゴンに多数の傷がついているものの、どれもこれも浅いものだけである。更に
「だがよ……お前ら!遠距離攻撃を持つ奴らは
「……貴方は私が言葉を介さないとでも?或いは理解できないとでも?」
「いいや?だが、複雑な作戦でもなく分かりやすく有効なんだ。聞かれても変わんねぇだろ」
周囲に冒険者が集まって行くのを感じながらイグヴァルジは笑う。ミスリル級冒険者が、この場における最高位の冒険者が負けそうな顔をしてはならないとでも言う様に。事実、今現在チームの垣根を越えて戦おうとしているもの達は、イグヴァルジが勝利できる様な雰囲気を纏っているからこそ自分たちより遥かに強い存在に立ち向かっているのであり、イグヴァルジ達が倒れた時点で敗北が確定する。
「貴方を優先して殺す事にしましょうか」
「はっ。聞かれても変わんねえってか?真似して楽しいか?」
「いえ…貴方を殺そうとすれば他の人達が巻き込まれるでしょう?各個撃破と攻撃の効率化。それと頭を潰す事は戦闘の基本では?」
飽くまでも余裕そうな雰囲気を崩さず話しかける
「残念だが殺される気はねぇな。テメーを殺せば死の螺旋は止まるんだ逆に殺してやるよ。いや、滅ぼすか?」
「どれでも構いませんが……精々足掻いてみては?」
両者が口撃を繰り出すたびに、戦闘の緊張感は高まっていく。スケルトリルドラゴンが低い唸り声を周囲に染み込ませ、複数人が自分の武器を強く握りしめていく。
「さぁ……2回戦目だ。逃げてくれるなよ」
そう言った瞬間、魔法の閃光と弓を引く音と鎧が擦れる音が響いて──
♢ ♢ ♢ ♢
「終わったな」
「急遽ではあったが……成功してよかったな」
モモンガが今回発案した計画。その内容は簡潔に纏めると
(仮にクレマンティーヌとカジットのことがバレていたとしても、
「さて……晴れて我が配下の末席に加わった訳だが、何かしらの問題があれば後で聞くとしよう。だがまずは、先程言った場所に行って休んでもらう。異論は?」
「ありません」「ございません」
「よろしい。では明日の早朝再び会うとしよう。
黒々とした楕円状の闇が広がる。超常の現象が起きていることに怯えながらそこを通るカジットとクレマンティーヌ。ハムスケは幾度か見たことがあるので余裕そうだ。行き先はハムスケのナワバリなので住むには少し不便だが、一夜を過ごすには十分だろう。二人と一匹が通ったのを見て
(まぁ細かい事は明日しよっと。明日のあたしが頑張ってくれるだろうしね)
そんな無責任とも言える様な思考をしながらモモンガ達は宿に戻る。今日の結果に満足しながら
補足
モモンガ様は金級として避難誘導をしていましたが、適当なモンスターがあらわれた事にして早々に戦線離脱しています。
ンフィーレア君は額冠を被せられましたが、モモンガ様によって額冠は破壊され、目は回復されております。なので、墓地で無事に救出されました。
VSエルダーリッチの戦闘部分を細かく書いた方がいいか
-
はい
-
いいえ