オーバーロードはダークエルフになりました   作:トドロ

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その輝きは死地にこそ

夕陽が傾き夜が現れつつある中

その一団はカルネ村に到着した。帝国の騎士の装備よりも見窄らしい

しかしながら、その団体は先程の部隊とは違い足並みを引っ張る人間がおらず統率が取れている

亜人への警戒だろうか。少し離れたところで下馬した男が名乗る

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長を務めるガゼフ・ストローノフというものである。

王の御命令により、ここ最近近隣を荒らしまわる帝国の騎士の討伐をしに参った。」

 

堂々と力強く宣言するその姿は、言葉に説得力をもたらしていた

一応召喚モンスターを置いていくつもりだが、戦士長に任せれば大丈夫かな

 

「この村の村長か?横にいる人物のことを教えてもらいたい。」

「この方はモモン様といいます。この村が襲われた時に助けてくれた方です」

「初めまして王国戦士長殿。紹介に預かりました私の名前はモモンと申します」

 

丁寧にお辞儀をして、相手の様子を伺う

ほんの少しだけだが、空気が柔らかくなった気がする

 

「失礼だが、何故この村を救ってくれたのかお聞かせ願えないか?」

「…困っている人がいたら助けるのは当たり前。それを憧れの人が信条としていましたので」

「…そうか」

 

少し息を吐いて、項垂れるように呟く戦士長

数秒後顔を改め。後ろを向く

 

「今から私はこの御仁に感謝を伝えようと思う。異論があるものはいるか」

「せ、戦士長!?」

 

亜人に忌避感があるはずの王国の戦士長が頭を下げようとする

相手の部下の驚きの声を聞き流しながら、モモンガは評価を修正する

得体の知れない相手に対して、村を救った人物とはいえ頭を下げようとするということは

政治の類に疎いが故の行動か、もしくはーー

 

(強い正義感を持ち仁義を重んじているのか。この人物はおそらく後者だな)

 

王国最強の戦士であり平民の星だと村長から教えられたガゼフ・ストローノフ

どうやら、その評価に偽りは無いらしい。

 

(あの男の後だから、余計によく思えてしまうな…)

 

比較するには些か低すぎる人間ではあるが、その立場なども含めて

モモンガのレアコレクターの欲望が刺激される。

未だに揉めるガゼフ達に声をかける

 

「戦士長殿、大丈夫ですよ。褒美を求めているわけでは無いので」

「む…そうか。では、いくつか聞きたいことがあるのだがよろしいーー」

「せ、戦士長!!大変です!村の周囲に謎の集団が!」

「何!?」

 

必死にこちらに駆けてくる男。息も絶え絶えになりながらガゼフに状況を伝えて行く

曰く、森の反対側に一個小隊が包囲網を展開中。天使が複数体見えたとの事

曰く、魔法詠唱者(マジック・キャスター)が多く見えるということ

曰く、後少しでここに到達する可能性が高いということ

事情を聞くうちにガゼフの顔に皺が寄って行く。

 

「モモン殿、すまないが行かせてもらう。」

「そうですか……戦士長。恐らく死にますよ?」

 

先程千里眼(クレアボヤンス)で確認した限りでは、男が見た天使は恐らく炎の上位天使(アークエンジェルフレイム)だ。

魔法の武器を持っていないこの部隊であれば、物量差で負けてしまうだろう。

ガゼフが切り札か何かを持っていれば勝てるだろうが、ここまで回りくどい事をしてきた相手だ。恐らく相手方も切り札を持っているだろう その事を考えると勝率は無きに等しい

そんな中、得体の知らない人物からかけられた事実上の死刑宣告に対しガゼフは穏やかに応える。

 

「そうかもな…。モモン殿、差し出がましいとは理解しているがどうかこの村を再び守ってはいただけないだろうか?」

「いいですよ。ただ、一つだけ教えてください。何でそんなに晴れやかな顔ができるのですか?」

 

それはただ一つの疑問 もとより一度助けた命なのだ。カルネ村の住民達は余程のことがない限り守っていこうと思っていた。しかしながら、わからない

何故、死地に笑って向かって行けるのだろうか

 

「私は…私は平民を助ける為に動いてきた。しかし、貴族が権益を握るこの国では立場に縛られて平民達を助けることなど碌に出来なかった。笑ってしまう程に[平民の星]は無力だった

それがどうした。最後の最後に平民を、守りたいものを守れたのだ。例えこの手から零れ落ちた命は希望は多くとも、これに勝ることは無いと考えているよモモン殿。」

 

そう言い切ったガゼフの目はえも言えぬ程に輝いていた。

死地にあって尚輝くその目に、自らの憧れを重ねたのは仕方のない事なのだろうか

 

「ガゼフ殿…コレを」

「…コレは?」

「コレは独り言ですが…。私は国家間の争いに手を出す気はありません。ただし、私は剣を向けられた相手に容赦することもありません」

 

虚空から取り出したのは不思議な力を感じる木彫りの人形

何の能力を持っているかは分からないが、彼女の拙い建前に苦笑して感謝を伝える

 

「ありがとう。モモン殿 では!!」

「えぇ、では。村長さん村の人たちが集まれるところはありますか?」

 

両者は動き出す

自らの信条に従って、片方は全ての敵を倒す為に。片方は敵を通さぬ守りを作りに

 

 

 

 

♢ ♢ ♢ ♢

 

「もうすぐ…か」

 

その男は無意識のうちにその言葉を呟いていた

そうもうすぐ、もうすぐなのだ。あと少しでこの任務は終わる 人間が人間を殺すこの任務が

そう呟いた男 ニグン・グリッド・ルーインはスレイン法国の特殊工作部隊 

六色聖典が一つ 陽光聖典の隊長を務める男である

 

スレイン法国というのは六大神という神々を信仰する宗教国家である

そして、人類至上主義を掲げ亜人や異形種を敵視する国家でもある

しかし、この主義は人類にとって大枠で捉えるのであれば間違っていないと言えるだろう

 

人類は弱い。他の亜人や異形種に比べて遥かに

ビーストマンは腕力が高く、人間の成人男性の三倍の強さが一般的だ

ドラゴンにブレスを吐かれたら冒険者達の多くはひとたまりも無いだろう

エルフ達は長い時間を使って自らを強化できる為、人間達が手をつけられない強さになる

また、ゴブリンですら一般的な成人男性よりも強い場合もある

こんな人間よりも強く優れた種族が多数存在している世界では人間が団結しなければならないのだ

そうでなければあっという間に人間は淘汰されてしまうだろうから

 

(その為にも今回の任務を失敗してはならない。だが…コレがある限り失敗はあり得ないだろう)

 

出立前に渡された本国の秘宝の一つ

人類が淘汰される事を憐れんだ六大神が残した秘宝 

かつて、魔神を単騎で討伐せしめたという功績を持つそれが封じられた水晶を触る

それが使われることは無いと信じ、今一度この状況を部下に確認する

 

「ガゼフ・ストローノフ達の動きは?それと部隊の状況を報告せよ」

「はっ。ガゼフ・ストローノフ達は今現在村の内部にいます。また、村の包囲は順調です。」

「そうか…そのまま包囲状態を保て。そしてガゼフが出てきたら教えろ。いいな?」

「はっ」

 

部下から少し離れたところに椅子を置きその時を待つ

作戦開始のその時を

 

「王国の無為な延命に寄与する癌か…癌は取り除かねばならぬな」

 

どこまでも無表情にそして傲岸に吐き捨てた男は、

これから殺す男の顔をそして王国の現状を思い出す

 

リ・エスティーゼ王国はモンスターの脅威度が低く豊富な資源を持つ国である

農業に適した肥沃な大地。ミスリルから始まるレアメタルを大量に保有する鉱山

海産資源に適した港などを保有している。つまり、人を救いうる強者が生まれる土壌があった。

そのことに期待してスレイン法国は建国当初から様々な援助をしてきた

 

しかし、モンスターが弱ければ人が団結する要素が少ない。

そのため、いつしか貴族達は権力闘争に明け暮れ始めた

腐敗し始めた王国はその資源のせいで非合法組織の台頭を容易く許し

最早、強者が生まれる土壌など王国にとって猫に対する小判のような物であった

そのため、より活気がありより賢く統率が取れているバハルス帝国に併呑させた方が

人類の益になる。スレイン法国はそう考えたのだ

 

村からガゼフが出てきたという報告を聞き思考を中断させたニグンは宣言する

 

「各員傾聴!!獲物は既に檻に入った。人類の為の大事な一戦だ。

各々が信じる神に祈り、必ずや作戦を成功させよ!!」

「「「はっ!!」」」

 

 

♢ ♢ ♢ ♢

 

 

激突する二つの勢力

結論から言うとそれは一方的な戦いだった

 

ガゼフ・ストローノフ率いる王国戦士団

彼らの装備は見窄らしく、陽光聖典の装備より遥かに劣っている

負け戦に関わらず、彼らの瞳に翳りはない

 

一方ニグン・グリッド・ルーイン率いる陽光聖典

彼らが召喚すると炎の上位天使(アークエンジェルフレイム)は一体一体が王国戦士団の一人を凌駕する強さである。それが魔力が尽きない限り延々と出てくるのだ

更に言うのであれば炎の上位天使(アークエンジェルフレイム)は物理攻撃に対する耐性が高く

魔法の武器などを持っていない王国戦士団にとって相性が悪い

要するにジリ貧であった

 

「武技・六光連斬!!」

 

上段に構えられた剣が煌めき振り抜かれる

六つの残された光る線の通りに、炎の上位天使の体(アークエンジェルフレイム)が両断され光となり消える

 

「武技・流水加速!」

 

次々と襲いくる炎の上位天使(アークエンジェルフレイム)を前に武技を使って体制を立て直し

近づいてくる天使から切り伏せていく

しかし、その全てを一撃で倒して尚王国戦士団は劣勢である

 

人は疲れる。疲れれば動きは鈍り、反撃は困難になっていく

それは、王国最強であろうとも変わらない

仮に王国の宝とされる四つのアイテムのうちの一つ

活力の籠手(ガントレット・オブ・バイタリティ)を持っていれば疲労しないためニグンに迫れただろう。

 

しかし、ここにはそれが無い

疲れ動きが鈍くなり攻撃を返せなくなった時にガゼフは死ぬだろう

貴族が足を引っ張った結果のことである。それは王国の腐敗を如実に表していた

 

「武技・即応反射!!流水加速!!六光連斬ッ!!」

 

ゆっくりとニグンに迫っていくガゼフ

先程から天使の包囲が迫ってきているのは間違いでは無いだろう

仲間達が着実に倒されていく事を理解しながらそれでも前に進んでいく

 

「ガゼフ・ストローノフに天使を集めろ」

「武技・四光連斬!」

 

最早、立つ仲間はいない。今の限界を引き出しながら攻撃を続ける

手に足に体に天使の剣が突き刺さる

痛みが脳を焼き視界が白と赤に染まっていく。

それでも、こちらを踏み潰す前の蟻を見るような目で見てくる男に対し突き進む

 

「おぁぁああッ!!武技・六光!連斬!!」

 

限界を振り絞って放たれた攻撃が天使を切り裂く

縦に、横に、斜めに!

切り裂き、切り裂き、切り裂き、切り裂き、切り裂いて、更に切り裂く

 

肩に腹に太ももに腕に手首に

敵の剣が突き刺さる。何度も刺されても攻撃をやめない

既に武技は使われていない。

しかしながら、膝をつきながらも消えぬその瞳の輝きに、天使達が少し下がる

 

「俺は王国戦士長!!王の剣にしてこの国を守護する者!!国を汚そうとする貴様らに

負けてたまるかぁぁぁぁッ!!」

 

命を捨てて力を振り絞るその姿は、消えかけの蝋燭が最後に強く輝くようかのであった

 

 

「…無駄だ。あまりにも無駄だガゼフ・ストローノフよ。私達は貴様らを殺し、そして貴様が守ろうとした村の人間も殺す。貴様がした事はこの国にしていたような無為な延命に過ぎん」

「く…くくくくっ…くく」

 

風の音でかき消される程度の微かな笑い声に浮かべるのは満面の笑み

それは今から死ぬ人間の顔では無い

 

「何がおかしいガゼフ・ストローノフ。事実を受け止められないのか?」

「…グフッ。ハァ…ハァ簡単な事だ。あの村には俺よりも遥かに強い御仁がいるぞ

貴様らが差し向けた騎士を殺したと言うのに…ハァ…ハァその力が全く見えない。底知れぬ力を持つ人が…。そんな人が守る場所を突破……出来るわけがないだろう」

 

血反吐を吐きながらそう力強くそういったガゼフの言葉を、ニグンはハッタリだと断ずる

 

「王国最強と謳われる貴様よりも強い存在が、王国にいるとでも?

ハッタリだな。アダマンタイト冒険者は全員別の場所にいるはずだ」

 

そう頬の傷を撫でながら答えるニグンをガゼフは笑う

あの底知れぬ力を持つダークエルフにニグンがあった時、どのような反応をするのかを考えると

あの世への土産話ができたのだから

 

「ガゼフ・ストローノフを殺せ」

 

淡々と呟かれる言葉

せめて最後まで戦い抜こうと膝に無理矢理力を入れた時、横から声がした

 

ーーそろそろ交代だね

 

瞬間、ガゼフの視界が切り替わり目の前に大きな壁が現れる。

混乱が脳内を埋め尽くそうとする中、周りを見ると村人達が心配そうにこちらを見ていた。

 

「…ハァ………ハァ。こ、ここは…?」

「村の倉庫です。モモン様が魔法で守られております」

「そんちょうか………。モ………モモン殿はどこに……?」

「それが…モモン様が消えた瞬間に、ガゼフ殿が現れまして…」

 

懐から落ちた木彫りの人形が光の粒子となって消えていった

部下達は大きな傷を負っているものの胸が動いているので生きているのだろう

後は陽光聖典だがモモン殿がいればーー

 

「大丈夫かーー」

 

安堵ともにガゼフは力を抜く。今これ以上出来る事はないだろう。

倒れ伏したガゼフに慌てて村人達が慌てて近寄る

王国最強と謳われた自分が勝てなかった相手。六色聖典

しかし、あのモモンが負けるイメージは1mmも浮かばなかった

 




モモンガさんの口調は
アウラor鈴木悟orオーバーロードの中のどれかになってます
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