キンジ「なんでお前だけこんなに辛い思いしなきゃならないんだよ!」
龍「これは……俺が自分で決めた事だ。例え何度転生しても必ず同じ道を選ぶ!」
憧れはしますが如何せんそんな状況を創り出せるほど私に文才があるかないかと言ったら後者ですが。
『いけー!』『やってまえー!』『いいぞいいぞ!』『もっとやれー!』『ぶっ潰せー!』
周りのギャラリーから聞こえてくる歓声と熱気。
「兄ちゃんっ! いっくぞー!」
目の前でスプのXDM-40をこちらに向けトリガーに指を掛けて発砲して来る向日葵。
………そう。俺は今、強襲科の黒塗りの体育館の中で妹と模擬戦を行なってるのだ。何故そんな事をしているのか? その疑問に答えるにためには、昨日の自室でのアリアとのやり取りから見てもらうしかあるまい。
昨日 少年RとKと少女Aの会話 ~第三男子寮の一室にて~
「
アリアに言われて顔が真っ赤になるキンジ。
さて。状況を説明すると以下の通りだ。
・理子の話を聞いた後部屋に戻りアリアと遭遇。
・理子から得た状況を頼りにアリアと会話。
・アリアに強襲科に戻り実力を見せてくれと催促されキンジが「今は無理だ」発言。
・今に至る。
……まあ、これだけじゃ何が何やら分からんだろうから簡単に言うと、アリアがキンジのHSSのシステムを知らずに発動に協力すると言った。そのせいでキンジの脳内にあんな事やこんな事が導き出されて顔真っ赤と言うことだ。
「教えなさい! その方法! ドレイにあげる賄い代わりに、手伝ってあげるからっ!」
「いや、だから、俺はっ……!」
「なんでもするから! お願いキンジ……教えてよ……!」
アリアがキンジに詰め寄り懇願する。あー、これはマズいのでは?
キンジがヒスると考えていると……ドン! と。キンジがアリアを突き飛ばし、アリアはソファーに尻餅をついてしまう。
「お、おいキンジ……「……1回だけだぞ」って、はい?」
キンジがなんか1回だけと言い放った。何を?
「強襲科に戻ってやってもいい。ただし、『お前と組むのは1回だけだ。』強襲科に戻ってから最初に起きた事件を一件だけ……お前と一緒に解決してやる。ここは譲れない。」
「………」
アリアが先ほど自慢していた形のいいおでこをキンジに向けて何かを考えている素振りだ。キンジが言っているのは多分、『自由履修 』の事だろう。それは単位には反映されないが、自分が在籍している学科以外の科目も自主的に受けられる、とゆう制度だ。武偵はその性質上様々な任務で様々な技術を求められる。なので、生徒達は結構この制度を利用して他の学科の授業を受ける事が多い。
「転科じゃないぞ。あくまでも自由履修だ。それでいいなら……戻ってやるよ。」
「……いいわ。それで手を打つ。あたしにも時間ないし……その一件であんた達を見極めるわ。」
ん? あんた『達』?
「龍もそれで良いよな(わね)?」
「え!? あ、ああ……いいんじゃない?」
何時の間にか俺も話に交わってた。ははは……
そんでもって約束通り今日は自由履修で
俺も巻き込まれた事はともかく、キンジの狙いは何となく分かる。きっとヒステリアモードでない自分の力を見せてアリアの目をごまかすつもりなのだろう。そうすれば、「あたしの目が間違ってたわ」とか言ってアリアは自然とキンジを諦めるだろう。何故かは分からんがアリアは『優秀』な手駒を『出来うる限り早く』手に入れたいらしいからそれ程粘着質ではないだろう。その点も含めてキンジの策はこれ以上ないくらい絶妙だ。
しかし。『俺』はどうなる?
「兄ちゃん、あまりちょこまか動くなよ~!」
「アホかお前はっ! 避けなきゃ当たるだろうが!」
かなりの精度で俺の肩や武装を狙い発砲を繰り返す向日葵。その綺麗な手に持ったスプの9ミリパラペラムは今ところ一発も当たってはいないが……かなり危ないところでギリギリ避けられている。俺も負けじと撃ち返してはいる物の、一向に当たらない。向日葵のヤツめ……腕を上げたな? これで座学が出来て振る舞いがもっと女の子らしくなれば
そもそもなんでコイツと戦っているのかは言わなくても大体分かってくれるとは思うが一応説明しておくと……
「日向ぁ……お前向日葵と殺りあえや。」
と、愉しげにボクらの蘭豹先生がおっしゃった。……はあ。
「エット……蘭豹先生? 俺は今日
そう。めんどくさいので出来うる限り穏便で命の危険が無いメニューを選んだのだ。それなのにこの暴力教師と来たら全く……
「いいからさっさとウチの向日葵と殺りあえやって言ってんやろうがぁっ! そんで向日葵の成長に一役買ってから死ね!」
「な・に・が『ウチの向日葵』だあっ! 向日葵は俺の妹だこのヤロウ!」……と言えるワケも無く(むしろ言ってたら今頃俺は運がよければ救護科のベットの上、悪ければあの世行きだろう)やむを得ず妹との激しいバトルに身を投じているワケだ。
世の中は理不尽だっ!
「たあっ!」
「グッ!?」
戦闘中に余計な考え事をしていたせいで向日葵がナイフで斬り掛かってきた事に反応が遅れたが、なんとか回避出来た。あぶねあぶね。
見れば向日葵は、右手に椛とその仲間達作の通常ではあり得ん60センチくらいの折り畳み式サバイバルナイフ(通称『燕』。折り畳み時の動作が燕返しみたいで尚且つカッコイイと向日葵が命名していた)を持ち、左手にはさっきからバンバン弾を吐き出している、クロアチアさんが設計・製造した、スプリングフィールドのXDM-40が握り直されていて、向日葵は挑発するような目でこちらを見ている。……恐らく
「来いよ向日葵。」
「? 兄ちゃん、なんで構えないの?」
「例え模擬戦だったとしても、かわいい妹に暴力なんて振るうかよ。」
「さっきまでバンバン撃ってたクセに……後悔しても知らねーかんな!」
その言葉を皮切りに俺に一気に詰め寄り再び開始される戦闘。あのスプには確か26発弾が装填出来たハズだが、さっきまでの発砲数も含めて今の所全部で8発位のハズだ。それぐらいならば何とか避けられる……と思う。
まず2発。接近しつつ撃ってきたヤツを難なくかわす。あと6!
腕が交差し、向日葵の発砲ルートを出来うる限り潰す……が、やはり何発かは発射される。くっ……やっぱりこの距離じゃかわすのが難しい……! あと3発位か!?
「へへっ! 辛そうそうだな兄ちゃん? 余裕綽々なんかでいるからだよ!」
言いながら燕で斬りつけてくるのも忘れない。流石にこちらは同じく虹を使いガードさせて貰っている。
「そろそろ……終わらせるぜっ!」
男みたいなセリフと共にさっきまでとは比較にならんスピードで俺に剣戟を叩き込む向日葵。……よしっ! ここだ!
「兄ちゃん貰ったぁっーー!」
「あらよっと。」
「ひでぶっ!?」
足下がお留守になっていたので足払いさせて貰いました。まだまだだな向日葵。
「う~~……兄ちゃんの卑怯者ぉぉぉ……」
「足元をおそろかにするお前が悪い。」
その一言でパタリと気絶したっぽい向日葵。あっと、しまった。頭打っちゃってたかな?
ふと隣の教師用の席を見ると何故かはわからんが蘭豹が居なくなっていた。ちょうどいいや。もう結構な訓練したし救護科の生徒に向日葵を任せて今日はトンズラしよっと。
途中で合流したキンジとゲーセンにでも行くかと話が纏まったので一緒に歩いていると門のところにアリアがポツンと佇んでいた。
「キンジ……龍。あんた達、人気者なんだね。少しビックリしたわ。」
「そうかな?」
「俺はあんなヤツらには好かれたくない。」
まあ、確かに今日強襲科の体育館の中を歩いてるときやたら皆、死ね死ね死ね死ね(強襲科では『死ね』が標準語のように使われている)話し掛けて来てたしな……人気か不人気で言ったら、まあ人気なのかもしれない。
「龍はともかく、キンジはさ……人付き合い悪いし、それにネクラの気もあるのにみんなあんた達に一目置いてるのが伝わって来るってゆうか……」
「余計なセリフが多いぞ。」
キンジが口を尖らせてアリアに抗議する。その様が可笑しくて少し笑ってしまう。
「キンジ、龍。ありがとね。」
「何を今更。何もこのままってワケじゃないんだ。事件を一つ解決したら俺達は探偵科に戻るんだからな。そこんところ履き違えるなよ?」
「分かってるよ。……でもさ。」
「「?」」
「強襲科の中でみんなに囲まれてるあんた達……カッコよかったよ。」
アリアが笑みを浮かべて俺達に向き合いそう発言した。……なんだか、アリアみたいなカワイイ娘にそんな事言われると何も言えなくなってしまうな……
「あたしはいつもひとりぼっち。強すぎる事ってゆうのはイイコトばかりじゃないわ。誰も近寄ってこないもの。……あたしは何処に居ても『アリア』のまま。」
「『アリア』?」
「『アリア』ってゆうのはオペラの『独唱曲』の事。一人っきりで歌うトコロ。……あたしの事だわ。」
自虐的に顔を伏せて笑うアリア。その姿は見ていてとても痛々しく、守ってあげたくなるようなイメージを醸し出していた。
「じゃあ、お前は俺と龍をドレイにして
キンジが言うとアリアはキョトンとしてからクスクスと笑い始める。
「あんたも面白いこと言えるのね。」
「なにが面白いんだよ?」
「面白いよ? ねえ龍?」
正直そのツボは俺には分からんかったので適当に頷いておいた。
「今度こそ本気! 本気ったら本気! 本気の本気の本気ィィィ!!!」
ゲームセンターなう。クレーンゲームなう。アリアが身を崩し始めてるなう。
ゲーセンについて来てひょこひょこそこらを見て回っていたアリアがここにある虎なのかライオンなのかよくわからんストラップを痛く気に入り、挑戦するも一向に取れる気配がしない。次で100回目だぞ……いや冗談抜きで。
「はあ。どけ。」
キンジが見てられなくなったのかアリアに代わり財布を取り出しトライオン(仮)に挑戦。さて……お?
「キンジ見てみて! 二匹釣れてる!」
アリアの言うとおり、非常に珍しく狙ったピンクのトライオン(仮)のタグにもう一匹黒のトライオン(仮)が首を突っ込んでいて……なんかキンジがアリアに首輪で引っ張られてるような、そんなシュールな画が展開されていた。って、あらま。
「あっ! もう一匹落ちた!」
そう。黒トライオン(仮)が、せめてもの抵抗か取り出し口付近の
そして合計3匹が取れた。
「やった!」「っしゃ!」「おおっ!」
そんなミラクルプレイを見た俺達は嬉しさのあまり思わずハイタッチをしていた。
「「あ。」」
しかしアリアとキンジはお互いに慌てた様子で「「フン!」」とそっぽを向き合う。息ピッタリな事で。
「すげぇなキンジ。3匹も頂いちゃったぞ。」
「ま、まあバカキンジにしては上出来ね! 褒めてあげてもいいわ!」
そう言って取り出し口に神速の動きで腕を突っ込んでぬいぐるみを取り出すアリア。タグを見ると……【レオポン】と表記されていた。レオってコトは獅子か?
「かぁーわぁーうぃーいぃー!」
お前の方が可愛いじゃね? と言われる位上機嫌な笑顔でトライオン改めレオポンを鷲掴みにしてホッペにスリスリしているアリア。絵になるな。
「キンジ、龍。」
3匹のレオポンの内黒をキンジに、橙を俺に差し出すアリア。くれるってコトかな?
「ありがとうアリア。」
「ま、まあ貰っとく。」
あ。これケータイストラップか。早速おにゅーのケータイに付けてみよう。あ、これヒモ太いくて入りづらい。
俺がストラップに悪戦苦闘しているとそれに触発されたかのように
「キンジ! 龍! 先につけたほうが勝ちよ!」
「なんだそれ。ガキかっつーの。」
「お、……入りそうだ。」
「龍! あんたにも負けないから!」
「……俺だって負けるか!」
「お前等……子供か。」
レオポンを必死になってケータイにくくりつけようとする三人組のシュールな姿がそこでしばらく繰り広げられていた。
……今思えば、この時までが楽しい日常だったのかもしれない。あるいはもう始まってたのだろうか? 俺の……いや、俺達の激動の日々は、刻一刻とその足音を近付けていた。
や、でもやっぱりやってみたいですね~ダークヒーローサイド!
もう私リオン大好きで仕方ないんですよ皆さん!(私男ですが)
この小説見てくれてる方にもテイルズ好きな方居ますでしょうか?