緋弾のアリア 大空の転生者   作:鉄人56号

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コナン君が武偵になったらサッカーボールが凶器になりそうだなぁ……


第十三話 真実は何時も1つ

結局のところ、あの後俺に何か出来る筈も無く、暫くしてから泣き止んだアリアが「1人にして」と言った。……そこで俺達は別れた。

 

そして今現在、教室に居る俺の右席は……案の定誰も居ない。

 

(アリア……)

 

アリアの母親……かなえさんの事を、俺は昨日知ってしまった。

聞く所によると、かなえさんは武偵殺しの冤罪を被らされていて……いや、アリアの話からするともっと沢山の、途方もないくらいの冤罪を着せられて懲役864年という馬鹿みたいな刑を執行させられる一歩手前にいる、との事らしい。

 

『助けてやりたい』とは思う。

 

『力になってやりたい』とも思う。

 

でも思う『だけ』だ。

 

(俺みたいな役立たずがでしゃばってどうなるってんだ……ヒステリアモードでもない俺が……)

 

俺はいずれ武偵を辞める。具体的には来年の3月に。

代々『正義の味方』をやってきた遠山家に生まれてしまった俺だが……そんな事知った事か。

 

あの事件が起きたその日から、武偵なんて辞めてやるつもりで……そのために比較的マトモな探偵科(インケスタ)に転科したってのに。

 

神崎・H・アリア(あいつ)が来ただけで、どうしてこんなにかき乱されるんだ?

 

(何で……今更こんな気持ちになるんだろうな……)

 

「……はい、今日はここまでですね。皆さん、復習をキッチリやって来て下さいね」

 

ぼんやりと考え事をしてる間に授業が終わってしまった。やべ、全然聞いてなかったぞ。せめてノートだけでも龍に写させてもら……

いや、

 

(龍は……入院してるんだったな)

 

その事実を再確認して自己嫌悪に陥ってげんなりしてると携帯の着信音が鳴った。

 

(マナーにするのすら忘れてた……)

 

授業中鳴らなかった事をひっそり安堵しつつ着信履歴を覗くと……何故か今日、姿を見かけなかった理子からだった。

 

『キーくん。授業が終わったら台場のクラブ・エステーラに来て。大事な話があるの』

 

 

 

 

 

モノレールに揺られ、台場に着いた俺は迷いながらも何とかクラブ・エステーラとやらについた。(どうやらお高いカラオケボックスらしい)

 

携帯の画面を覗くと時刻は何時の間にか午後6時。ちょっと見付けるのに苦戦したせいかもうかなりの夕焼け空が広がっていた。

 

(さっさと話聞いて帰ろ……)

 

「きぃーくぅーん! もう、遅いよぉ!」

 

中に入るとスタンバイしていた理子がこちらに小走りでやってきた。

 

「うるせぇ。授業サボって何してんだお前」

 

苛ついてた俺は理子の軽口に一々キレながら奥の部屋に向かう。

 

「ねぇキーくん。アリアとケンカしたでしょ?」

 

「だったら何だ。お前には関係ないだろ」

 

「大ありだよぅ。キーくんはアリアといちゃらぶしてなきゃだめだめなんだから」

 

「お前が何を言いたいのか分からん。もう帰っていいか」

 

さっきからコイツと話してると冗談ナシで苛々が募っていくので早く帰りたいんだが。

 

「ああん、もうキーくんせっかちだよぉ。まだ何にも話してないのに」

 

「じゃあさっさと用件を言え。くだらない用事だったら帰るからな」

 

「じゃあね……」

 

そう言って理子は……ズブッ。

フォークをテーブルの上のケーキに突き刺してにゅっ、と俺に突き出してきた。

 

「はいキーくんアーン♡」

 

「帰る」

 

立ち上がり、ドアノブに手をかけた所で

 

「……『武偵殺し』」

 

な……に……?

 

「キーくんがアーンしてくれたらタダで話してあげてもいいよ?」

 

「……ッチ!」

 

ドカドカとソファに戻り、半ばヤケクソ気味に理子の突き出したフォークに食らいつくと理子は満足気な声で話し始めた。

 

「キーくんは『可能性事件』って知ってる?」

 

「知らん。なんだそれ」

 

「簡単に言えば真実が巧妙に隠蔽されて嘘っぱちになってる事件のコト」

 

「すまん……もっと分かり易く説明してくれ……」

 

「今回の件に当てはめた場合は『武偵殺し』だね。ソイツにやられたのって過去の例を見る限り2人……バイクジャックとカージャックってなってるでしょ?」

 

キーくんとりゅんりゅん入れれば4人だけどぉ、と言って更に理子は続ける。

 

「公にはされてないけど、事故って見せかけてるだけでホントは『武偵殺し』の仕業だって事件のコト」

 

「そんなのがあるのか」

 

「調べたら多分これかなって事件があったからキーくんに見せに来たの」

 

言いながら理子はポシェットからBー5サイズの紙を出して俺に見せた。

 

「……っ!? これは!?」

 

そこに記されていたのは驚愕の事実だった。

 

 

『2008年12月24日 浦賀沖海難事故 死亡 遠山金一(とおやまきんいち)武偵 享年19年』

 

 

 

 

 

龍SIED

 

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

走る。走る。走る。羽田空港を目指しただひたすら走る。

 

『今夜7時、羽田空港発のANA600便・ボーイング737-350。ロンドン・ヒースロー行きの飛行機で帰るらしい』

 

「……アリア!」

 

百城先輩の情報を頼りに羽田空港に着いた俺は必死に目的の便を探し……ていると

 

「龍!? お前、なんでこんなところに居るんだ!?」

 

「キンジ! お前もここに居るって事はアリアの事は聞いてるだろ!? 俺はアリアを連れ戻しに来たんだよ!」

 

「……そうか。じゃあついて来い。お前空港は不慣れだろ。こっちだ。」

 

キンジが先導してくれたので目的の便はすぐ見付かった。

 

今まさにハッチが締まりつつある飛行機に何とか滑り込む事に成功し、驚いてるフライトアテンダントさんにキンジが迫る。

 

「武偵だ! 今すぐ離陸を中止してくれ!」

 

「お、お客様!? し、失礼ですがどういう……」

 

「説明してる時間はない! とにかくこの飛行機を止めろ!」

 

アテンダントさんはビビりまくって逃げるように二階へと駆けて言った。

 

「はあ、はあ、こ、これで何とかアリアは助かるはずだ……」

 

「え? 助かるってどういう事?」

 

キンジはやっぱりという顔でこっちを見て説明を始めた。

 

結構難しい話だったので要所要所だけだが

 

『武偵殺し』の本当の目的はアリアだと。

 

「『武偵殺し』は過去にシージャックもしてるんだ。詳しい話はしてる暇が無いから後で話すが、恐らく……被害者は兄さんなんだ」

 

「な……、それは本当かキンジ!?」

 

「ああ。恐らく……な」

 

苦々しい表情で告げるキンジ。

 

「お、お客様ぁぁ~」

 

アテンダントさんが戻って来た。

 

「だ、ダメでしたぁ。き、規則で、このフェーズでは管制官からの命令でしか離陸を止められないって機長が……」

 

「ちぃ……! 後手に回ったか……」

 

「すいません。この便に神崎・H・アリアって言う子が乗ってる筈何ですけど案内お願い出来ますか?」

 

「は、はあ……」

 

「龍。どうするつもりだ?」

 

「簡単な事さ。アリアが危ないなら……『俺達で護れば良い』ってだけだろ?」

 

 

 

 

 

凄いなこの飛行機。一階は広いバーになっていて、二階もだだっ広い。飛行機なんて乗ったこと無いけど明らかに普通の飛行機と違うのは俺でも解る。

途中キンジがテレビで見たことがあるって説明してくれた(『空飛ぶリゾート』って言われてるらしい)が、まあ、俺には一生縁が無さそうなのでスルーした。

 

個室のドアを開けるとそこにいたのは

 

「……き、キンジ!? 龍!? どうしてここに!?」

 

「やあ、アリア。久し振りだね」

 

「……流石、リアル貴族様だな。これ、チケットも馬鹿にならないんじゃねぇの?」

 

「……断りもなく部屋に押しかけてくるなんて、失礼よっ!」

 

「その言葉、そのままそっくり返すぜ」

 

俺はアリアと出会った日を思い出す。

 

……ああ、そういや追い出されましたね俺達。

 

「……なんでついてきたの」

 

「太陽はなんで昇る? 月はなぜ輝く?」

 

「真面目に答えなさい! 風穴あけるわよ!」

 

過去のアリアの言動を真似るキンジ。そのやりとりを見ていてこんな状況でも笑ってる自分がいる事に気付く。

 

「アリア。武偵憲章2条を思い出してみて」

 

「? ……依頼人との契約は絶対守れでしょ?」

 

「そうだ。俺は……俺達はお前と約束した。強襲科(アサルト)に戻ってから最初に起きた事件を、1件だけ、お前と一緒に解決してやる……ってな。まだ『武偵殺し』の1件は解決してないはずだ」

 

「なによ……あんなに嫌がってたクセに……」

 

「そんな事言うなよアリア……キンジはさ、君と同じで素直になれないヤツだけど……本気出せば俺より強いんだぜ。少し拒絶されたくらいで諦めるのは勿体無いって。俺も協力するから……だからさ、1人で頑張るなよ」

 

「龍……でもあたし……あんたにケガさせた……」

 

やっぱ……それ気にしてたんだなアリア。優しいヤツだな君は。

 

「あれは俺が悪いんだよ。アリアが気に病む事なんて無い。そうだよなキンジ?」

 

「ああ……そうだな。むしろ悪いのは俺だ」

 

「違う! あたしが悪いのよ……」

 

「ああもう! 責任の取り合いすんなや!」

 

なんだこのツンデレカップル。

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