『お客様に、お詫び申し上げます。現在進路には、台風による乱気流が発生しており、これを迂回するため、到着予定が30分ほど遅れることが予測されます……』
そんなアナウンスが飛行機の中に流れる。あれから10分程度経ったが、未だ『武偵殺し』はなんの動きも見せない。
……もしかしたら、杞憂だったのだろうか?
ゴォォォォォン……!
「~~ッ!」
雷雲から発せられる雷の音に目の前の席に座る桃色の髪の少女が身を抱くようにして縮こまる。
「アリア、お前カミナリ怖いのか」
「なっ、な~に言ってんのアンタ? あ、あたしに怖いモノなんて、あ、あるわけ無いじゃない。てゆうかむしろカミナリって何?」
「動揺しまくってそんなこと言われても説得力が皆無な件について」
「うっさい! とにかくあたしはカミナリなんて怖くな」
ゴォォォン……!
「ひぅっ!」
とうとうベッドに駆け込み、頭から布団を被ってしまった。そんなに怖いんかアリア?
「……きんじ、りゅう。なんかやって。気の紛れそうなコト」
涙声で布団の隙間からこっち側を伺いつつ言うアリア。ちっちゃかった椿を彷彿とさせるその行為は、正直見ていて飽きない魅力を発している。
「ほらアリア。これ見て元気出せ」
そう言ったキンジの方を見るとテレビが点けられていた。
『この桜吹雪、散らせるものなら散らしてみやがれぃ!』
これは……遠山の金さんの時代劇だな。つまりキンジのご先祖様の活躍を描いたものだ。ちなみにキンジのお兄さんに聞いた事があったが、やっぱり彼もHSSを持っていたらしい。肌着を脱いで桜吹雪を見せ付ける事によって性的興奮を覚え、ヒスっていたのではないかという説を語ってくれたことを覚えている。
……要約すると脱ぐと興奮するから露出狂なのでは? という事である。
パン! パン!
この乾いた破裂音……銃声!?
「遂に動き始めたみたいだな龍」
「ああ、そうみたいだな」
出来ればこのままなんにも起こらずに着陸まで持って行きたかったんだが……どうやらヤツはそれを許してくれないらしいな……!
通路はすでにパニックになっていた。他の乗客達が狭い通路をあたふたしながら騒いでいる。
銃声のした方には
「…………」
さっきのアテンダントさんがコクピットからパイロットと思わしき2人を引きずって出てきていた。
……ヤツが『武偵殺し』か……?
「動くな! 2人を解放して両手を頭の後ろで組め!」
キンジがベレッタを取り出しアテンダントに向けて警告する。しかし、アテンダントはそんな事に見向きもせずに
「お気を付け下さいでやがります」
こちらに向かって、にぃっ、と笑うと、ピンッ、と音をたてて何かを投げてきた……ってこれは!?
「全員部屋に戻って! ドアを閉め切るんだ!」
即座に叫ぶと同時に、飛来して来るソイツを俺は足で破裂しない程度の力で蹴り返し、そのまま踵を返してキンジを伴い、部屋にダイブする。この間、俺の体感で2秒ちょい。
ドアが締まる直前にシュウゥゥゥ! と聞こえてきた。どうやら間に合ったようだ。他の人達は無事だろうか?
「龍、大丈夫か!? 吸ってないか!?」
「な、なんとかね……」
マジで焦った。あれは恐らく毒ガスを仕込んだ缶だろう。何が入ってたのかまでは分からんが、恐ろしいモノである事には変わりない。
ぐらりっ、とまた飛行機は揺れて、突如機内の証明が消えた。一瞬身構えたがすぐさま赤い非常灯に切り替わり、構えを解いた。
「アリア。お前も聞いてたと思うが、あのヘンな喋り方……やっぱりあいつが『武偵殺し』みたいだ」
「……その言い方だと出てくるのが分かってたみたいね。説明して」
俺も簡易的な説明しか受けてない。ここいらで一旦整理するべきだ。
キンジは説明を始めた……
つまりはこう言うことだ。
『武偵殺し』は最初はバイク、次に車を乗っ取り、3回目のシージャックでキンジの兄さんを殺した。そしてそれは直接対峙して戦っていた。その根拠として考えられるのは『電波を出さなかった事』だ。
それはそのまま直接対決フラグへと立つ。何故キンジの兄さんが狙われたのかは不明。
「そしてここでヤツは恐らく『リセット』したのだと思う」
そう。バイク、車、船とどんどん大きくなっていった乗り物の種類がここで劇的に小さくなる。それは今から約2週間位前の自転車の乗っ取り……つまり、俺とキンジの、世にも珍しいチャリジャックである。
そしてお次はバスジャック。そしてそのまた次が……
「このハイジャック、って訳ね」
「その通りだ。コイツは最初からヤツからのメッセージだったんだと俺は思う。どうやらヤツはターゲットの弱みを握って戦うのが大好きみたいだ。そして、このハイジャックは3件目。シージャックの時と同じならアリア。恐らくお前がターゲットだ。」
理由までは分からんがな、とまで言ってキンジの推理は終わった。確かに謎は多い。
何故3件目で殺すのか。
何故シージャックの時はキンジの兄さんが狙われたのか。
何故……今回はアリアなのか。
そこに……
ポポーンポポポン。ポポーン。ポポーンポポーンポーン……
ベルトの着用サインが、不自然な点滅を注意音と共に繰り返す。
「これ、和文モールスだわ……」
アリアが言って、キンジが解読を始めた。
「オイデ オイデ イ・ウー ハ テンゴク ダヨ オイデ オイデ ワタシ ハ イッカイ ノ バー ニ イルヨ」
「誘ってる……みたいだね」
「上等。やっと『武偵殺し』を豚箱にぶちこめる」
アリアが白銀と漆黒のガバメントをホルダーから引き抜いてマガジンの簡易点検をしている。戦る気マンマンみたいだな。
「俺達も行かせて貰うぞ。最も、龍はともかく、今の俺は殆ど役立たずだがな」
「来なくていい。1人で充ぶ」
ガゴーン! 不意打ちのように先程のカミナリ音が響きアリアが硬直する。
「……どうするアリア?」
「……か、勝手にすれば?」
ま、まだ読んでてくれる人、いるかな(焦)
ども。最近バイト場で色々ありましてやっと暇がとれるようになり、久々に更新させて頂きました。カミナリに怯えるアリア、かわいいよアリア(ハァハァ
そろそろ終わらせんと流石に不味いかなと考えたりしてます。いやぁ、他の作品も書きたくなってたりしてるんで……
でも一番は、こんな駄作を楽しみにしていてくれる天使のような皆様の為に早め早めに書くつもりであります。感想くれたり評価してくれたりお気に入り登録してくれてる読者の方々、本当にありがとう。
では、また次で。次は龍無双……にはならんと思われます。はい。