緋弾のアリア 大空の転生者   作:鉄人56号

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第三話 「奴隷になりなさい!」byピンク色の双剣双銃

「はぁ……またやっちまった……」

 

「そう気を落とすなよキンジ。『事故』だったんだろ?」

 

「そうは言ってもなぁ。……あああ! 思い出せば出すほど死にたくなる程恥ずかしいーーー!」

 

「なら思い出さなきゃ良いのに…」

 

所変わって武偵高の廊下。結局あの後始業式に出れなかったので先程の襲撃の報告も含めて俺達は職員室に行き事を報告。関係無い話だが、何度入ってもあの部屋はやっぱり慣れない。

 

「所でさっきのセグウェイだけど……手口が例の『武偵殺し』に似てないか?」

 

「でも、奴は捕まっているぞ? 今頃留置場で奉仕活動に勤しんでるだろうさ。」

 

模倣犯とかじゃないのか? とキンジが言う。まあ、確かにその線が確率としては一番高いよな。でも、それでも腑に落ちない事がある。

 

「じゃあ何で俺達が襲われたんだ? そもそも、あの忌々しいC4が仕掛けられてたのはキンジの自転車だろ? キンジお前、誰かの恨みを買うような事してんじゃないのか?」

 

「恨みなんて一年の頃俺とおまえで数えるのも億劫になる程買ってるだろうが。誰かなんて分からん。」

 

俺とキンジは一年の頃武偵としてパートナーを組んでいた。両方ともランク分け試験の時に二人してSランクに格付けされてしまっていたので、一年の頃は教師陣から嫌がらせのように危険な『裏任務(クエストリバース)』を回されていた。自慢じゃないが軽く100以上犯罪グループを潰して回る形だったので、なる程。確かに恨み辛みなんて数え切れない位買ってるな。

 

などと思案しながらやっと2ーAの教室に辿り着く。やれやれ。何で新しい教室に来るまでこんなに苦労しなきゃならないんだ……っていうのはまあいちいち嘆いててもやってられないので頭から追い出す。

さて、ちょっと出鼻を挫かれたがこれから始まる新学期に心踊らせ教室の扉をくぐる。

 

「んーー? あ! りゅんりゅんだあ! りゅんりゅんおっひさ~~♪」

 

「朝からハイテンションだな理子…」

 

「キー君もおっひさ~~♪ 元気してたぁ?」

 

「だあっ! もう! 今の俺にお前を相手取る余裕は無い!」

 

キンジはそう言って黒板に張り出されている席の表を確認して指定の席にズカズカと歩みドカッと腰を下ろし不機嫌そうにうずくまる。

 

「あれれ~? キー君ちょっと機嫌わるわるなのかなぁ?」

 

「まあ、色々あってね。しばらくそっとしておいてやってくれ。」

 

「サーイエッサー! 了解です隊長!」

 

ビシッと俺に向かい敬礼してニマッ、っと笑うこの子は俺の友達の峰理子。ハニーブロンドの金髪ツーサイドアップと、男子から『ロリ巨乳』などと呼ばれているほど高校生にしては低い身長と大きい胸が眩しい探偵科でも一緒の奴だ。こんなおどけた喋り方から探偵科の一番のおバカと言われているが、その情報収入能力は俺の知るところ一番のAランク娘だ。下手なSランク武偵より理子の方が優秀だし。俺もたびたび世話になったり、一緒に仕事をするときもしばしばある。去年もクラスメートだったがどうやら今年も同クラスのようだ。

 

「よっ龍。キンジのやつといいお前といい今朝の始業式にも出てなかったみたいだけど何かあったのか?」

 

理子と話しているともう一人俺に声を掛けてくるやつが。

 

「武藤おはよう。何かもう…命の危機に遭ったとだけ言っとく。」

 

コイツの名前は武藤剛気。俺とキンジの悪友だ。所属学科は車輌科(ロジ)。車輌科とは主に乗り物で武偵や物資を運ぶ事を仕事としている。そして武藤は「乗り物」と名の付く物なら何でも乗りこなす。一輪車からロケットまでそりゃあもう幅広く、何でもかんでも。正に車輌科の武偵になるために生まれてきたような男だ。そんな武藤が「ふーん。あっそう。」とあまり驚いた様子も見せず反応する。命の危機に遭う事は、武偵としては割と日常的に起こる事なのでそれぐらいじゃ誰も驚きはしない。

 

「ところでりゅんりゅん。なんと今日! この武偵高のこのクラスに転入生が来るらしいとの事なのです!」

 

「へえそうなんだ。男子? それとも…」

 

「女子かっ!?」

 

武藤がこの話題に凄い勢いで食いついてきた。いつも言っているが武藤は彼女が欲しいらしい。が、去年からのコイツの挙動を見ているとどうやら特定の想い人がいたはず何だが…遂に誰でもよくなっちゃったのか?

 

「それはねぇ……来てからのお楽しみだZE!」

 

「そんな~! なぁ峰! 教えてくれよぉ~!」

 

「どうせその内分かる事じゃないか。」

 

言いながら俺も自分の席を確認して座る。そしてその隣に理子が座る。

 

「むっふっふ~お隣さんだねぇりゅ~んりゅん?」

 

「ああ。そうだな。今更ながらよろしく。教科書とか忘れたりしたら見せてくれな。」

 

「イエ~イ☆ よろしくぅ~☆」

 

何がそんなに嬉しいのか理子は何時もの120%増しでニコニコしていた。

 

そのまま理子と他愛ない世間話をしていると

 

「はぁーい皆さん席について下さいね。HRを始めますよぉ。」

 

おっとりとした動作と言葉で教室に入ってきたあの人は高天原ゆとり先生だ。武偵高の教師にしては温厚すぎると言われる性格と誰にでも優しく接するその姿は何で武偵高の教師をやっているんだと誰もが思う不思議な先生である。武偵高の最後の良心、と言っても過言ではないだろう。

 

「今日はまず転入生の子を紹介しまーす。入ってきて下さい。」

 

ガラガラ。

扉を開けて入ってきたのは……今朝見たピンク髪の命の恩人だった。

俺(キンジも唖然としていた。)が驚いて声も出せずにいるとゆとり先生がアリアに自己紹介を促す。

 

『神崎・H・アリア』

 

黒板に書かれた無機質で綺麗な字を背にアリアが口を開く。

 

「神崎・H・アリア。去年の三学期に転入して来た……よろしく。」

 

………え、それだけですか?

必要最低限の事以外喋るつもりは無い、とでもゆうように不機嫌そうに黙り込むアリア。クラス中がシーンと静まり返る。そしてゆとり先生がこの空気を物ともせずに発言する。

 

「えっと…神崎さんの席は…」

 

「先生。私アイツの隣がいい。」

 

そう言って指差したのは…キンジだった。

 

「な、なんでだよ………!?」

 

キンジは信じられない物を見るようにアリアを見ている。まあ、そりゃあそうだ。あんな事があって、そんな事言われたらキンジでなくとも混乱するだろう。

 

「よ……良かったなキンジ! 何か知らんがお前にも春が来たみたいだぞ! 先生! オレ、転入生さんと席代わりますよ!」

 

武藤が妙に興奮気味に席替えを提案する。…何でそんなにハイテンション?

 

先生も先生で「あらあら。最近の女子高生は積極的ねぇー。」などと言いながら席替えを快諾。周りの生徒達も何やらお祭り気分で騒ぎ立てている。

キンジが慌てて何か言おうとしたがそれを遮るかのように

 

「キンジこれ。さっきのベルト。」

 

そう言ってキンジにベルトを放り投げ、それをキンジがキャッチする。その瞬間、俺の隣の隣人がいきなりガタン! と席を立ちこう言った。

 

「理子分かった! 分かっちゃった! これ、フラグばっきばきに立ってるよ! キー君ベルトしてない! でもそのベルトをツインテールさんが持ってきた! これ、謎だよね!? でも理子には推理できた! できちゃった!」

 

などなどと大声と早口でまくし立てる理子。武偵高の制服を改造したフリフリたっぷりの改造制服を揺らし更に続ける。

 

「キー君は彼女の前でベルトを外すような『何か』をした! そして彼女のところにベルトを置き忘れた! つまり二人は………熱い熱い! 大恋愛の真っ最中なんだよ!」

 

「キ、キンジがこんなにカワイイ子といつの間に!?」「影の薄いヤツだと思ってたのに!」「女子どころか他人に興味なさそうなくせに、裏でそんなことを!?」「龍君とは遊びだったの!?」「サイテー!」「フケツ!」「二股男!」

 

随分と手酷く罵倒されてるなキンジ。あと後半部分に何やら俺まで害に合うような事言ってるヤツいなかった? 気のせいだと信じたい。

 

「お、お前らなぁ……」

 

キンジがもう全部諦め掛けていると

 

バギュンズギュン!!!

 

二つの発砲音。あれだけ盛り上がっていたクラスを凍り付かせたのは…真っ赤になりプルプル震えているアリアだった。

 

「れ、恋愛だなんて…くっだらない!」

 

流石に踊り狂っていた理子も某超時空シンデレラのキラッ☆ ポーズのまま着席する。確かに武偵高では必要以上でなければ発砲は許可するという決まりがある。これは日頃から銃撃に慣れるための措置でもあると思われる。だけど。

なにも新学期早々のHRでぶっ放す必要はないのでは……?

みんなが何も言えないでいるとアリアが口を開く。

 

「全員覚えておきなさい! 恋愛だの何だのと、そういうバカなことを言うヤツには……」

 

こんな刺激的な自己紹介。他にあるだろうか?

 

「…風穴開けるわよ!」

 

 

 

アリアの自己紹介も終わり、新学期が改めてスタート…といっても特にやることは変わらず、今朝までの出来事が嘘だったかのように時間は進んで行った。

昼にあの俺とキンジを襲った武偵殺しの模倣犯と思われる事件の詳細が周知メールで届いた時には滅茶苦茶質問責めされて、今思えばそこまでが今日の慌ただしい大変な出来事だったと思う。

 

「ふんふふーん。ふんふーん。ふんっふんふーん。」

 

鼻歌を歌いながら自室のキッチンで夕食の準備中の俺。今日は本当に色々あって疲れた。でもキンジはもっと疲れていたであろうからせめて栄養満点の美味しい物を食べさせてやろうと今日は奮発して何時も俺が利用している馴染みの肉屋から取り寄せた特上牛フィレ肉のステーキだ。

焼く工程に入り手持ち無沙汰の俺はキンジにステーキを見ててもらうように頼みトイレへ。用を達して手を洗い、トイレから出た直後に

 

ピンポーン。

 

ん? 誰だこんな時間に? 

疑問に思いつつ、扉を開けると、そこには

 

「こんにちは龍。キンジいる? 話があってきたんたけど。」

 

アリアがいた。あまりに普通の話し方だったのでつい…

 

「ああ、居るよ。取り敢えず上がりなよ。」

 

「そう? 悪いわね。」

 

普通に対応して部屋に上げてしまった。そこまでやってようやく

 

「はっ!?」

 

「どうしたの龍?」

 

「あーいや。何でもないよ。」

 

あーやっちゃった。キンジスマン。

 

ガチャリ。

 

「龍。このステーキのソースの味付け…見事だな。やはりお前は遠山に来るべきだと思うぞ。家の専属コックとして働かないか?」

 

と。今度はちょっと考えてみてもいいかな? と思えるセリフをを言いながら、先程作った俺の自作ソースをまたもや味見している。

 

「キンジ。話があるの。」

 

「まあ、冗談だけど。いや、でも割と本気度は高いがお前を雇える程俺に余裕無いしな…って神崎!? お前っ、何で!? えっ!? どうゆうことだ龍!?」

 

「うん。落ち着けキンジ。すっごい既視感だぞ。」

 

「……キンジ。あんた、あたしのドレイになりなさい!」

 

「……………(バタンッ!)」

 

何かキンジの脳が色々と処理限界を超えたらしくフリーズして倒れ込んでしまった。今朝は白雪の方が倒れていたが今度はお前か。

などと俺が考えこんでいるのは状況分析のためとかではなく

 

「龍。あんたもよ。あんたもあたしのドレイに加えるわ!」

 

と言われたことへの現実逃避の為なのである。

 

そうして室内には暫く肉の焼ける音が静かにジュージューと鳴り響いていた。

 

 

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