スポ根みたいな異能力バトル世界で即死チートを持ってしまった   作:maricaみかん

14 / 20
14話 もっと成長できるチャンス!

 なんかレイラが、俺の一挙手一投足を真似するとか言い出した。仲直りできたのは嬉しいんだが、本当にどういうことだよ! ドッキリにしては突然すぎるんだけど!?

 まっすぐに俺を見ている目は、どこまでも真剣。嘘や冗談という雰囲気は、少しもない。

 

 俺はどう返すのが正解なんだよ! こんな状況への対処、誰も教えてくれなかったぞ! 何を言っても困りそうなんだけど!?

 だけど、何も言わないのも違う。せっかく仲直りできたのに、気まずい雰囲気になるのは嫌だ。

 

「そ、その……」

 

 ダメだ。うまい言葉が出てこない。やはり、俺は会話能力が低いのだろう。

 でも、どんな能力をしていたら今みたいな状況に対応できるんだ? 何も分からない。

 さすがにエミリでも……なんかどうにかできそうだな。くっ、俺は弱い……!

 

 レイラは真剣な目で俺を見ている。真剣だからこそ困ってしまう。挙動不審になってしまいそうだ。

 

「僕はソール君と対等になるんだから。同じことくらいできなきゃ、話にならないだろう?」

「同じことをするの意味が、まるで違うのよ! 強さで並ぶことでしょうが!」

 

 スティアの言葉は、俺からしても正しい。一挙手一投足を真似するのは、どう考えてもおかしいよ!

 レイラって、もっと真面目な子じゃなかったっけ? どうしてこんなことに……?

 

 そんなレイラは、真顔のままだ。半笑いとかなら、一緒に笑えたのに!

 

「おかしいかい? ソール君と全く同じ生活をすれば、同じ成長をできるかもしれないのに?」

「そもそも性別も今の能力も違うでしょうが! レイラ、あんたもかなりおかしいわね……」

「ソール君は別格なんだから、普通にしていても追いつけないとも」

「間違ってはいないけど……。でも、何もかもが間違っているわ……」

 

 スティアはもう、頭を抱えてしまっている。俺も頭を抱えたいよ!

 いや、レイラの言う理屈は分からなくもない。ないが、もうちょっとマシな手段なんて、いくらでもあるはずだぞ。

 とりあえず、まだマシそうなものを提案してみるか。いざ。

 

「まずは、今回の戦いを振り返るのはどうだ? なにか良い技が思いつけば……」

「良いわね。あたしとしては、かなり反省点が多かったもの。ソールやレイラの意見も聞きたいわ」

「ソール君の提案なら、是非もないよ。なら、何から始めようか」

「そうだな。せっかくだから、スティアの能力を分析することからにしようか」

「助かるわ。あたしの能力、通じないことが多すぎるのよ……」

 

 スティアは眉間にシワを寄せている。本当に困っている様子。

 まあ、結果だけ見れば三連敗だものな。善戦していると思うし、確かに成長しているのは見て取れるのだが。

 とはいえ、勝てないで成長を実感できるはずもない。それでも、俺にもできることはあるはず。

 今回の反省会で、少しは自信につながってくれればありがたい。

 

「レイラの対策は、本当に有用だったよな。あれにどうやって対応するかが、スティアの課題になりそうだ」

「褒めてもらえて、嬉しいよ。でも、ソール君ならきっと一撃だったよ。それこそ指先でさ」

 

 また真顔で告げてくる。ものすごいことを言われているんだけど。物語のキャラじゃないんだからさ!

 

「俺をなんだと思っているんだ……? いや、不可能ではないが……」

「不可能じゃないって言ったの!? 嘘でしょ!? 指先で!?」

 

 スティアは目を真ん丸にしている。そりゃあ驚くよ。とんでもないことを言っている自覚は、いくらなんでもある。

 でも、真実を隠すことはできない。スティアが戦いに本気だということは、ずっと見てきた。

 そして、俺はできると判断している。なら、伝えるのが誠意だ。一般的には失礼だが、正解のはず。スティアの真剣さを考えれば。

 

 俺はスティアに目を合わせて、ゆっくりと頷いた。

 

「まあ、星枢力(スターサイン)を込めた指なら、気絶くらいはさせられるだろうな」

「うんうん。さすがはソール君だよ。僕も見習わないとね」

「指一本で倒されたら、もう立ち直れないわよ……」

 

 スティアは眉間を抑えて、首を振っている。指一本で倒されたら、ショックなのは当たり前だ。実際には、相当苦戦するとは思うが。静止の使い方は、かなりうまくなっているし。

 それでも、9割以上の確率で倒せるとは思う。少なくとも、今のスティアが相手なら。

 

 追い打ちしてもあれだから、今は本音で褒められるところを褒めよう。お世辞は失礼だから、確かな美点を。

 

「スティアの戦いは、かなり上手だったぞ。特に静止の緩急が上手かった。今のスティアには、そう簡単には勝てないと思う」

「勝てる前提で話をされてるのよね……。否定はしないけど……」

 

 ちょっとジトッとした目を向けられている。気を使ったところで見抜かれるだろうから、何を言っても冷たい目にはなった気がする。

 それなら、今の回答が一番マシなはずだ。俺はそう信じている。スティアだって、半端な対応は望まないだろう。

 

「あはは、ソール君らしいね。僕にも、勝てるとは思っているんだろう?」

「正直に言えば、勝てそうだとは思っている。もちろん、勝負に絶対はないが」

「嘘をつかないでいてくれて、ありがとう。僕も、もっと成長しないとね。ソール君のマネをして」

「そこに戻らなくて良いわよ! 新しい技を編み出すとか、あるでしょうが!」

 

 スティアは目をかっぴらいて叫んでいる。それはそうだ。俺だって突っ込みたいよ。

 本当に、レイラに何があったんだ。いや、たぶん俺のせいなんだろうな……。もういっそ、頭を抱えたい。本人の前ではできないが。

 

 仕方ない。今は少しでも話をそらそう。ひとまず、スティアの方を見た。

 

「ああ。スティアにも、まだ新しい技を生み出す余地はあると思う。検証したいことは、いろいろあるぞ」

「そうだね。僕は星枢力(スターサイン)で無理矢理に体を動かしたけど、あれもなんで通じるのか分からないし」

「急に真面目になるわね……。それで、どういうことよ? 何が分からないの?」

「剣を止めた時には、腕の力じゃ動かせないだろう? なら、なんで止まった腕は動かせたんだろうって思わないかい?」

「なるほど、確かにね……。レイラは疲れてるでしょうし、ソールにお願いするわ」

「任せろ。とりあえず、俺を止めてみてくれ」

「分かったわ。圧壊せよ、静止(プリンシパリティ)」

 

 星枢器(シリウス)の大剣を出して、スティアは俺に能力を使う。全身が止まったのを確認して、星枢力(スターサイン)で体を押した。とりあえず、動かせたようだ。

 

「そうだな。次に、俺の星枢力(スターサイン)を止めてみてくれるか?」

「ええ。止まりなさい!」

 

 星枢力(スターサイン)で体を押す動きは、一気に止まる。ここまでは予想通りだ。

 その状態で体を動かすと、問題なく動かせた。ここまで来ると、仮説は絞られてくるな。少なくとも、俺の体と星枢力(スターサイン)を同時に止めることはできなさそうだ。

 いや、一応試すだけ試してみるか。検証は、徹底的にやるのが大事。

 

「じゃあ、体と星枢力(スターサイン)は同時に止められるか?」

「なるほどね。ソール君の考えは、大体分かったとも」

「説明は……後でいいわね。とりあえず試すわよ」

 

 スティアは念じるように力を込めている様子。だが、体と星枢力(スターサイン)を同時に動かしていると、どちらかは常に動いている。スティアはあれこれ止めようとしているが、決して同時には止まらない。

 やはり仮説は正しかったようだ。次の検証が当たっていれば、答えは出そうだな。

 

 俺は星枢力(スターサイン)の珠を出していく。

 さて、どうなるか。

 

「じゃあ、この珠を止めてくれ」

「なにか思いついてるのよね? 全力で行くわよ! ソールの珠よ、止まりなさい!」

 

 スティアが止めた珠を、手で押していく。そこそこ力を込めたら、動いた。

 

「やっぱり、予想通りだったね。物体と星枢力(スターサイン)は同時に止められないようだよ」

 

 レイラは正解にたどり着いていたようだ。詳しい仕組みは分からないが、状態は分かる。物体と星枢力(スターサイン)のどちらかが止められたら、もう片方で動かしてやればいいらしい。

 つまり、体が止められたら星枢力(スターサイン)を、星枢力(スターサイン)が止められたら体を動かせば対処できるということ。

 

 スティアの切り札は、一定範囲にあるものを一気に止めるという技。確かに強い。強いが、単純だからこそ限界が見えてきてしまった。

 実際、スティアは眉間にシワができている。かなり難しい顔だし、もう弱点を察しているはず。

 

「これ……対策できないとマズいわよね……」

「訓練を重ねれば同時に止められるのなら、良いが。そうでないのなら、すぐには策が思いつかないな」

「こんな時こそ、星枢力(スターサイン)を放出すれば良いんじゃないかい? 珠とかさ」

「そうよ! ユミナにはあっさり破られたけど、ちゃんと強い能力だもの! ありがとう、レイラ」

 

 スティアは明るい笑顔でレイラにお礼を言っている。やっぱり、優しい人だよな。

 そんなスティアに初対面で剣を突きつけられたんだから、俺の失礼ぶりも分かるというもの。

 

 まあ、当たり前だよな。本気を出して競い合いたい相手に、手加減すると最初から宣言したようなものなんだから。分かっていても、決して能力は使えないが。

 きっと、また本気を出してほしいと言われることもあるだろう。その度に、俺は断り続ける。

 

 たとえ誰からも嫌われるのだとしても、みんなとの友情が失われてしまうのだとしても、使わない。

 

「ソール君……?」

 

 レイラは、俺を心配そうな顔で見ている。眉を下げて、どこか悲しそうに。そうか、顔に出てしまったか。

 表情を作る手段も、覚えないとな。いちいち能力のことを考えるたびに心配させていては、話にならない。

 

 とりあえず、今を乗り切ろう。できる限り頬を緩めて、レイラに返事をする。

 

「いや、どうやって対策したものか考えていてな。スティアが新技を覚えたのなら、それも打ち破らないと」

「ソール君が言いたくないのなら、聞かないよ。でも、言いたくなったら……」

「え……? ソール、なにかあったの……?」

 

 スティアまで心配そうな顔にさせてしまった。少しだけ、目が揺れているし。

 そんなスティアの肩に、レイラはゆっくりと手を置いた。レイラの方を見たスティアに対して、首を振っている。

 

「スティアさん、今は……」

「そうね……。ごめんなさい。話を戻しましょうか」

 

 ふたりとも、気を使ってくれたらしい。なら、俺も合わせないとな。せっかくの気づかいを無駄にはできない。

 とりあえず、スティアの能力についてか。少しだけ、疑問はあるんだよな。

 

「そういえば、なんでユミナさんの体と能力を同時に止められたんだ?」

「あっ、確かに気になるわね。さっきまでの話と矛盾しそうなものだけど」

「ユミナさんに対して能力を使ったって認識で良いのかい? それで、ユミナさんの体を止めたと」

 

 レイラは考え込むような顔をして、ぱっと華やがせた。

 

「ああ。なにか思いついたのか?」

「仮説だけれど、ふたつあるよ。単純に、出力を上げれば改善すること。そして、本当はユミナさんの体だけを止めていたこと」

「なるほどな。どちらもありえそうだ。いずれにせよ、出力の影響は大きそうだ」

「そのふたつなら、ユミナの能力を出力で上回った可能性が高そうね……」

 

 ユミナさんは停止されないという因果を紡いだ。だが、全力ではなかった。対するスティアは全力だった。その差ということ。

 スティアが言うのなら、それが正しそうだ。能力というのは、ある程度感覚的に分かるものだからな。

 俺だって、誰かの能力を殺しても本人は死ななさそうとか、概念を殺せそうとか、そういうことは感覚で分かったし。

 

 とりあえず、スティアは納得している様子だ。役に立てて何よりだな。

 

「俺たちが相手なら、検証はできないからな。まあ、このあたりか」

「そうだね。次は、ソール君のマネをして珠をいっぱい出してみようか。限界まで星枢力(スターサイン)を振り絞って」

 

 レイラは真顔で言いだした。話を戻そうとは言われたが、そこまでじゃないはずだと思うぞ? だいぶ戻っているし。

 というか、当たり前のように限界まで振り絞るとか言っているよ。レイラは努力家だと思っていたが、やりすぎだ。すぐに止めないと。

 

「限界までは危ないからな!? やめてくれよ!?」

「あたしも同意よ。体を壊したら、結果的に遠回りだもの」

「それもそうだね。なら、今日のところは普通に訓練をするだけにしようか」

 

 普通に頷いてくれた。助かった。以前ほどの無茶は、しなくなってくれたか。

 手の皮がめくれようと汗が止まらなかろうと訓練していた頃は、見ていられなかった。

 止めれば止まってくれるのなら、安心できる。少しだけ、笑顔になれそうだ。

 

「ああ。戦って疲れただろうし、控え目でな」

「とりあえず、今日の残りはずっと訓練するつもりだったんだけど……」

「レイラも相当メチャクチャね!? いや、休みなさいよ! 休みも大事な訓練よ!」

「まあ、そうだな。俺も普通に休日は休んでいるし」

「ソール君がそう言うのなら……」

「あたしの意見を無視しなかった!? レイラ、あんた……」

 

 スティアはレイラを冷たい目で見ている。もしかして、余計なことを言ってしまったか!?

 もしふたりが俺のせいでまた険悪になったとかなら、立ち直れないんだが!?

 

 どうして良いのか分からなくて、ふたりの顔を交互に見る。すると、レイラが頭を下げた。

 

「申し訳ない。スティアさんの意見を軽く見たわけじゃないんだ」

「まあ、ソールとの付き合いは長いみたいだし。逆の立場なら、分かる話ではあるわね」

 

 スティアも落ち着いた様子で対応してくれている。そこまで怒っていたわけじゃなさそうだ。

 ほっ……。なんでもかんでも、俺が間に入らなくて良いんだな。というか、ふたりの方が対人関係がうまくないか?

 

 やはり、まだまだ慣れと勉強が必要かもな。こっちも精進だ。

 

「じゃあ、少しだけ訓練をして終わりにするか。軽く動きなんかを確認して」

「そうね。検証の結果を確かめてみたいわ」

「僕も、ちょっと新しいアイデアを試してみようかな」

 

 そんな感じで、一緒に別々の訓練をすることになった。他の人が気になる動きをしていたら、観察したり教えてもらったり。

 とりあえず、剣の振り方と星枢力(スターサイン)の扱いについては、少しは進められたはず。

 1時間ほどではあったが、かなり充実した時間だった。まさに青春って感じで。滝のように流れる汗も、証のよう。

 

 それから俺たちはクールダウンを済ませて、軽く汗を拭いて水を飲んでいた。

 

「ありがと、ふたりとも。あたしも、まだまだ強くなれそうよ」

「スティアに負けないように、もっと頑張っていかないとな」

「僕もだね。まだまだ、道のりは遠いから」

「じゃ、また明日ね。お疲れ様」

「これからは、僕もお世話になるよ。またね、ソール君」

 

 ふたりは手を振って去っていく。それを見送ってから、俺は後ろを振り向いた。

 

「エミリ、入ってきても良かったのに」

「やっぱり私に気付いてるんだ……。ソール君ってば、相変わらずだよね……」

 

 ちょっと呆れたような目で、俺を見ている。今回は、俺のすぐ近くにいたんだが。以前、30秒くらい走らなきゃダメな距離から気づくなんて気持ち悪いと言われた記憶がある。

 さすがに、今回は気持ち悪くないよな? 祈るようにエミリを見た。

 

 すると、エミリは俺の方を見てニンマリと笑う。

 いったい、どんなことを言ってくるつもりなんだ……。息を呑みそうになりながら、俺はエミリを見る。

 にこやかな笑顔のまま、エミリはもったいぶるように口を開いた。

 

「ねえ、ソール君。休憩は大事だって言っていたよね」

「ああ、そうだな」

 

 俺の言葉に合わせて、上目使いでじっと見てくる。どこか、瞳が潤んでいるように思えた。そして、俺の手を両手で包みこんでくる。

 ごくり。つばを飲んでしまったのが分かる。

 いったい、何の話なんだ……?

 

 俺の顔を見ながら、エミリは満面の笑みに変わっていった。

 

「じゃあ休憩ついでに、これから私とデートしない?」

 

 なるほど、デートか……。それは楽しそうだな……。えっ、デート!?

 

 エミリとデートって、俺は一体何をすれば良いんだ!?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。