スポ根みたいな異能力バトル世界で即死チートを持ってしまった   作:忘れられた女神

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5話 もしかして俺もぼっち卒業!?

 スティアと友達になって、星枢決闘(リブラ)は終わった。

 女王様も納得した様子で、最後にちらりと俺の方を見てから去っていく。

 

 まあ、いずれスティアにボッコボコにされるらしいけど。メチャクチャ晴れやかな笑顔で言われたので、かなり怖い。

 本当に最高の笑顔だったからこそ、落差がヤバすぎる。昼の陽気から急に雪山に放り込まれたようなものだろ!

 

 実はスティアが怒っていて、闇討ちの手段を考えているとか?

 ないか。スティアは王女なんだから、権力だけで真正面から俺を叩き潰せる。回りくどい手段なんて不要。そもそも、スティアは騙し討ちするような人じゃない。数日だけの関係でも、俺には分かる。

 どちらにせよ、疑う理由はない。

 

 なら、俺の目的は達成できた。スティアを殺さずに済んで、仲直りもできたんだから。

 

 ひとまずは、いつも通りに訓練に戻っていく。日も傾いていないから、まだ時間があるし。

 いつもの場所に向かうと、エミリが手を振りながら出迎えてくれた。とても落ち着いた笑顔を、俺に向けてくれる。

 

「ふふ、見てたよ。これで、ソール君もぼっち卒業だね」

「そんな言い方しなくても良いじゃん!」

「でも、良いことでしょ?」

「それはそうだけど! スティアと友達になれたのは、素直に嬉しいけど!」

「もう呼び捨てにしてるなんて、今度は女たらしになるつもり?」

 

 後に手を組んで、俺と目を合わせてくる。どこか輝く目で、楽しそうに俺を見ていた。

 スティアとは競い合う友達になっただけ。仮に惚れられていたとしても、まだひとりなんだけど。

 エターナルぼっちキングとまでエミリに言われた俺だぞ。どこにモテる要素があるっていうんだ。

 

 星枢騎士(ゾディアック)の称号なんて手に入れたら、普通は女の子に黄色い声を上げられても良いはず。

 だが、俺の現状を見てみろ。エミリくらいしか話しかけにこないじゃないか!

 

 ただエミリにからかわれるだけで、基本的に何も変わっていない。モテる気配なんて、影も形もない。

 なんで俺は勝ってまで悲しい思いをしなくちゃいけないんだ? なにか悪いことでもしたか?

 

 いや、スティアと友達になれたのは間違いなく良いこと。悲しむ必要はないぞ、俺。

 というか、スティアの話題でからかわれるのはマズい。どうにか話をそらさないと。

 

「スティアとは、普通に競い合うだけだぞ。それが一番じゃないか?」

「まあ、そうだと思うよ。スティア王女は、たぶん一緒に競い合える誰かを求めていたから」

 

 打って変わって、エミリは真剣な目を向けてくる。

 なんだかんだ言って、スティアのことが心配らしい。こういうところがあるから、からかわれていても遠ざけられないんだよな。

 

 スティアは努力家だったみたいだし、俺が本気を出せないことに怒りを向けてくるほど真剣だった。その熱量に付き合うのは、並大抵じゃ足りないんだろう。

 真面目な話をする分には、スティアの話題でも問題ない。この調子で進んでいけば良い。

 

「だったら、全力で向かい合わないとな。それがお互いのためだ」

「そこまで本気になるなんて、玉の輿狙いだったりするのかなー?」

 

 頭を抱えそうになって、でもできない。原因は、分かりきっている。

 

「あたしと結婚しても、別に王になったりはできないと思うわよ」

 

 予想通りに、後ろから声が聞こえてくる。やはり、遠くからスティアが追いかけてきていた。

 やっぱり、余計なことを聞かれていたじゃないか! 話題を逸らせなかったばっかりに!

 完全に不敬罪だよ! どうすれば良いんだよ!

 

 恐る恐る振り向くと、スティアは腕を組みながら俺達の方を見ていた。だけど、最初に会った頃より穏やかな顔に見える。

 

「あはは、スティアさんに失礼だったかな。ごめんね」

「気にしなくて良いわ。こっちこそ、エミリに謝らなくちゃいけないことがあるの」

「本人が気にしていないんだし、私に謝られることじゃないよ。スティアさんの気持ちは、分かるから」

 

 エミリはちらりとこちらに目を向けてくる。本人とは、俺のことだろうな。

 スティアが呼び捨てにしていることと合わせて、なんとなく分かった。

 たぶん、エミリがスティアの案内役だったんだろう。それなのに、俺に星枢決闘(リブラ)を挑むという問題を起こした。その謝罪。

 

 スティアは少しだけ、迷うような目をしている。

 

「でも……。いえ、分かったわ。相手の望む態度を取ることこそが礼儀、だものね」

「うん。スティアさんも、分かってきたみたいだね」

「エミリのおかげよ。だから、あたしと友達になってほしいの」

「もちろんだよ。よろしくね、スティアさん」

 

 エミリとスティアは、晴れやかな顔で握手をしている。微笑ましいし、良いことではある。

 だけど、ちょっと入っていけない空気なんですけど!?

 

 俺とスティアは、あんなに劇的に戦わないと友達になれなかったのに!

 これが、人気者とぼっちの差だというのか? イベントがないと、俺は友達すら作れないのか?

 

 くっ……。胸を抑えると、ちょっと痛い気がする。

 だが、待て。エミリに嫉妬したところで、何も解決はしない。 

 少しでも、もっとスティアと仲良くする努力をするのが正しい。そうだよな、俺。

 

 決意を込めて、ふたりを見る。

 は、話しかけるタイミングが分からない……。どこで入るのが正解なんだ? 学校では教えてくれなかったぞ。

 声もかけられないままでいると、エミリはニンマリとしだした。

 

「ふふ、すぐに疎外感を覚えちゃうなんてね。やっぱりソール君はそうでなくちゃ」

「俺を対人能力ゼロだと思っていたりする?」

「決める時には決めるとは思うけど……。まあ、普段は?」

「少しくらい否定してくれてもいいじゃないか!」

「あはは……! エミリとソールって、普段はそんな感じなのね!」

 

 スティアはお腹を抑えて笑っている。こんな形で、生き恥をさらすことになるなんて。

 エミリのおもちゃになっている俺を、どうか見ないでくれ……!

 

 そんなことを言ったら墓穴を掘るだけだなんて、いくら俺でも分かる。

 よし、話を変えよう。

 

「そういえば、スティアも訓練しにきたのか? 俺は歓迎するぞ」

「なら、私はお邪魔虫になりそうだね。スティアさん、頑張ってね」

 

 そう言って、エミリはスティアにウインクをしてから去っていく。

 スティアはちょっとだけ手を伸ばして、引っ込めてから俺の方を見てきた。

 

「気を使わせちゃったみたいね。なら、すぐに訓練に移りましょうか。星枢力(スターサイン)の使い方とか、教えてもらって良い?」

「もちろん構わない。そうだな。手を出してくれるか?」

「分かったわ。これでいいかしら?」

 

 差し出された手を、そっと握る。そこから、ゆっくりと俺の星枢力(スターサイン)を送り込んでいった。

 スティアは、まじまじと俺の手を見つめている。

 

星枢器(シリウス)を出さなくても、星枢力(スターサイン)って操れるものなのね……」

「そうだな。今からスティアの星枢力(スターサイン)を動かすから、抵抗しないでもらえると助かる」

「あんた、とんでもないこと言ってるって自覚ある? それって、人の星枢力(スターサイン)を奪えるってことじゃない」

「まあ、できるかできないかで言えばできるが……。本題じゃないから、無視してくれ」

「そうね……。いちいち考えてたら、頭がおかしくなりそうよ……」

 

 空いた手で、なんか頭を抱えている。

 確かに珍しい技術ではあるものの、頭を抱えるほどではないと思う。他にできている知り合いもいたし。

 まあ、そのあたりはどうでもいい。今はスティアに感覚をつかませることだ。

 

 スティアの手を通して、彼女が持つ星枢力(スターサイン)を操作していく。動く感覚を、実際に体になじませるために。

 

「これで、なにか分かるか?」

「ええ。こんな感じで、動いているのね……。なんか、体温が動いているみたいな……。いえ、血かしら……?」

「感覚的には近いと思う。だから、その感じを意識していてくれ」

「ええ。……なるほどね。なんとなく、分かった気がするわ」

「じゃあ、一度動かしてみてもらえるか?」

「分かったわ。むぐぐ……」

 

 スティアは、りきんでいるのか震えている。そのまましばらく待っていると、手のひらから星枢力(スターサイン)の動きが伝わってきた。

 なんというか、早いな。1週間くらいはかかると思っていたんだが。

 

「動かす感覚は、もう分かってもらえたと思う。後は、体の外に星枢力(スターサイン)を出して固めるだけだ」

「そんなにすぐに覚えられるのね……。じゃあ……! ……あれ?」

 

 スティアの星枢力(スターサイン)は、体の外に出たまま霧散していく。

 そこも引っかかるポイントではあるが、一度失敗したのなら話は早い。

 

「じゃあ、また俺の星枢力(スターサイン)を受け入れてくれ」

「固めるように動かしてくれるのね。分かったわ」

 

 ということで、スティアの星枢力(スターサイン)を操って珠の形にしていく。

 後は、これを自力でできるようになれば完成だ。

 

「こんな感じだ。後は練習を繰り返せば、いずれできるはずだ」

「じゃあ、試してみるわね。むぐぐ……」

 

 また星枢力(スターサイン)を出して、また霧散していく。

 とはいえ、前が霧みたいに広がる感じだとすれば、今は雲くらいに固まっていそうではある。

 やはり、コツをつかむのが早いな。

 

 その調子で見守っていると、少しずつスティアの星枢力(スターサイン)は塊に近づいていく。

 何度も繰り返して、20回目くらいには成功させていた。

 少し息を荒くしているものの、順調と言えるはず。むしろ、かなり才能があるんじゃないだろうか。

 わざわざ他国に強くなるためにやってくるあたり、熱心だとは思っていたが。

 

「できたわ! どうよ?」

 

 スティアは自慢げに胸を張っていた。やや強調されていて、つい目が向かいそうになってしまう。

 ダメだぞ、俺。本気で努力している人に、失礼だ。

 軽く頬を噛んでから、スティアの目をまっすぐに見る。

 

「さすがだ、スティア。俺なんて、三ヶ月もかかったって言っただろ?」

「まあ、1から編み出すのと補助を受けて覚えるのとじゃね……。というか、あんた……」

 

 なんか、スティアはジトッとした目で俺のことを見てきた。

 ちゃんと技は教えたし、スティアは成功させている。間違いなんて、ないはずなんだが。

 

「どうかしたか?」

「あたしね、前に海から流れてきた遊びをしたことがあるのよ。あやとりって言うんだけど。ヒモを指で操って、複雑な形を作るのよね」

「それと今の話に、なんの関係が……?」

 

 俺が首を傾げた瞬間、キッとにらみつけられた。

 なんか、この話のずらし方は覚えがあるな。ユミナさんとの話を思い出す。やっぱり、似ているところが多いんだな。きっと仲良くなりそうな気がする。

 

 いや、そもそもなんで俺はにらまれているんだ?

 今回に関しては、俺は悪くないはず。証人を呼んでも、きっと俺の味方をしてくれるはず。

 じゃあ、本当にどういうことだ……?

 

 首を傾げそうになる俺に、スティアは言葉を続ける。

 

「あの珠を一個出すのに、同じくらい苦労したのよ……」

「まあ、確かに集中力がいるか」

「あんた、自分が何言ってるか分かってんの!?」

 

 太ももを叩きながら、声を荒らげている。

 スティアには、太ももを叩くクセがあるみたいだな。何度も見てきた。

 痛そうだし、注意した方が良いだろうか。赤くもなってないし、平気には見える。まあ、強い人は頑丈だからな。大した傷にもならないか。

 

 というか、なんで太ももを叩くまで……?

 本当に心当たりがない。自覚のないところでコミュニケーションに失敗しているのなら、とんでもない大惨事だぞ。

 まさか、ひとりで訓練し続けたせいで、人との話し方が分からなくなってしまったのか?

 そうだとすると、まずい。いや、まずいどころじゃないぞ。

 

 だが、良い言葉も思い浮かばない。俺はどうすれば良いんだ?

 エミリ、助けてくれ……!

 

「えっと……?」

「出すのに集中力がいる珠を100個どころじゃない数出せるってことよ! ほんと、どうなってんの!?」

「あっ……」

「あっ……じゃないわよ、あっ……じゃ!」

「いや、だってなんかできるし……」

「そんな話をしてるんじゃないわよ! あんた、ひょっとして大バカなのかしら……」

「いくらなんでも、ひどくないか?」

「ひどいのはあんたよ! どれだけメチャクチャしてるのよ!」

「えぇ……。悪いことはしてなくないか?」

「悪くはないわ。メチャクチャだと言っているだけよ! ほんと、なんなの!?」

 

 叫びながら感情が高ぶってきたのか、また何度も太ももを叩いている。さすがに赤くならないか心配になってくるくらいだ。

 

「ま、まあまあ。あんまり叩くと、痛いだろ」

「別に大したことじゃないわよ。あたしは頑丈だもの。それより……!」

 

 再び、キッとにらみつけられた。

 話をそらすことにも失敗したし、やっぱり俺は会話が下手なのでは? この調子だと、せっかくできた友達を失ってしまったりして……。

 想像して、強く震えてしまった。スティアは、ただ変なものを見てくるような目を向けてくるだけだった。

 

 くっ……。コミュニケーションってやつは、戦いで勝つよりよほど難しい。

 でも、やれるだけやるしかない。いくぞ、俺。

 

「とりあえず、訓練を続けたら慣れるんじゃないか? いったん練習してみよう」

「そうね。あんたはどれくらい練習してたの?」

「出せるようになってから、毎日10時間を追加で三ヶ月くらい?」

「毎日10時間!? あたし、さっきまでで息が上がったんだけど!? 30分も経ってないんだけど!?」

 

 スティアは目を白黒させている。確かに慣れないうちは厳しいとは思うのだが、慣れてくればどうにかなるライン。

 まあ、スクワット100回とかも、初心者にはとんでもない難題に思えたりする。そんなものか。

 

「ひとまず、少しずつ増やしていけば良いと思うぞ。さすがに、限界を超えるのは良くない」

「そうね……。あんたに付き合ってたら、疲れるどころじゃ済まなそうだわ……。誰が真似できるって言うのよ……」

「まあ、心当たりはいなくもないか……?」

 

 一応、以前に俺と訓練してくれていた人はいる。まあ、今ぼっちな時点でお察しなのだが。

 

「そんなやつもいるの!? ほんと、リゲル学園にやってきて良かったわ……」

「スティアが嬉しそうで、良かったよ」

「ええ、ありがとう。ところで、その人には会える?」

「それは……」

 

 あまり、良い別れ方とは言えなかった。話しかけても、応じてもらえるかどうか。

 

「ソール……? あっ……。なんでもないわ。ごめんなさい」

 

 慌てた様子で、スティアは深々と頭を下げる。やっぱり、優しい人だ。

 だからこそ、あんまり気にしてほしくはない。ひとまず、手をパタパタと振っていく。

 

「いや、大丈夫だ。話題に出したのは、俺だったからな」

「ありがと。とりあえず、あたしはソールのマネはしないわ……」

「うん、良いと思う。無理に俺に合わせても、慣れないうちは怪我につながるだろうからな」

「ほんと、そうなりそうよね……」

 

 スティアはものすごく冷たい目で見てきた。

 弁解してもダメそうな気がしたので、俺は訓練に戻る。そうすると、とりあえずスティアも合わせてくれた。

 

 それからは、剣を振りながら星枢力(スターサイン)を操る訓練をしていく。

 スティアは横で星枢力(スターサイン)の珠を作っていた。

 

 この調子で進めていけば、いずれスティアも同じ技を覚えるかな。

 

 空の色が変わるくらいまで続けていると、スティアは勢いよく座り込んだ。

 

「はぁ、はぁ……。もう限界ね。部屋に帰って休むわ……」

「ああ。俺はもう少しだけ続けて、また明日も訓練するよ」

「じゃあ、また明日ね。しっかり寝ないとね……」

 

 あくびをしながら、スティアは去っていく。夕焼けに照らされる頬は、とても輝いて見えた。

 見とれそうになったが、首を振って剣を握り直す。

 俺は、空が暗くなってもしばらく訓練を続けていた。なんとなく、いつもより剣を振る腕が軽かった。

 

 もしかしたら、ユミナさんを誘っても良いかもしれない。スティアとは似ているように感じるし、仲良くできるかも。そんな期待を抱きながら、眠りにつく。

 

 そして次の日。いつもの場所に向かうと、ふたつの気配を感じる。嫌な予感を覚えながら近寄っていくと、こちらを見たユミナさんが頬を膨らませていた。

 

「ズルいです! 私の方が、先にソールさんと仲良くなったのに! ソールさんは、渡しませんよ!」

 

 ユミナさんはスティアの方を向いても頬を膨らませたままだし、スティアはユミナさんをじっと見ていた。

 

 ……これ、まさか修羅場というやつなのでは!?

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