次の話からまた展開が動きます。
では、今回もよろしくお願い致します。
別の日。
部屋のソファの上で、カマラとペニーは並んで日本のヒーローロボットアニメ鑑賞に興じていた。
ペニーの首から下は、すでにカマラのしなやかな腕によって抱き枕よろしく『ラバーバインド』でぴっちりと巻き上げられている。けれど、今やペニーにとってこの状態は最も落ち着く「定位置」だ。一切気にする様子もなく、すっかりカマラの腕の温もりに身を委ねながら画面を食い入るように見つめていた。
画面の中で巨大ロボットが必殺技を繰り出して敵を粉砕し、ロボットの後ろ姿と主人公が映った所でエンドロールが流れ始める。
「ふぁ〜っ! 凄かった! ストーリーも熱くって、ちゃんと『ヒーロー』しててすっごく面白かったわ!」
「うん!物語も素晴らしいけど、私はメカニックの構造に目が釘付けになっちゃったよ。SP//drの強化にすごく参考になるアイデアがいっぱいあったな」
ペニーは巻き付けられた腕の中で、SP//drの機体データの計算をするように瞳を輝かせた。
「特に、戦闘中に必要な武器やサポートツールを遠隔から射出・輸送してドッキングさせるシステム! SP//drも予備兵装を別ラインから射出するようにすれば、現地での対応力が段違いに上がると思うんだよね」
「なるほど! 確かにあのツールが飛んでくるシーン、めちゃくちゃ格好よかったものね!」
「でしょ? それにね、あの両手をガッチリ組み合わす必殺技!SP//drのマニピュレーターを伸ばして圧砕打撃を叩き込むのも良いかも」
ペニーが発想を膨らませて提案すると、カマラは「あっ!」と声を上げた。
「それ、 あたしもあの両手を組んだ状態で腕をグーンと伸ばして、超強力な『ズームナックル』としてぶちかませそう! 挟み潰すだけじゃなくて、ダイレクトに打ち抜く打撃技ね!」
「カマラの伸縮能力なら、その状態からでも他の技に派生出来そうだね。二人で合わせれば、新しい合体攻撃にもできるかも!」
「最高のアイデアじゃない! さっそく明日の訓練で試してみましょうよ!」
「賛成!」
画面の前で、熱くメカや技の考察を語り合うふたり。
過酷な運命や厳しい戦いの合間に訪れる、なんでもない日常の一コマ。大好きな親友の温かな腕に抱かれながら、ペニーとカマラは無邪気な笑顔で未来の必殺技に花を咲かせるのだった。
そして別の日
街に現れたヴィランたちは掃討され、残されたのは倒されたヴィランと瓦礫の山だけだった。
だがその時、少し離れた路地の奥から不穏な噴射音が響いた。別のヴィランな小型ジェットに乗り込み、上空へ向けて逃走を図ろうとしたのだ。
「しまった、あの距離じゃウェブも届かない!」
スパイダーマンが焦りの声を上げたその時、SP//drの重厚な機体の中からペニーの声が響く。
「ミズ・マーベル! あれをやろう!」
「あれね。OK、ペニー!」
カマラが頼もしく頷く姿を見て、スパイダーマンは「どうやら秘密兵器があるみたいだね」と期待の眼差しを向け、スター・ロードも「やっちまえ、2人とも!」とニヤリと笑って背中を押した。
ペニーはSP//drのハッチを固く閉ざし、完全な密閉状態へと移行。次の瞬間、カマラの全身がドスンと巨大化した。大きな両手でSP//drの機体をしっかりと掴み上げると、腕を高速回転させ始める。
「いっけええぇぇーーー!!」
豪快なハンマー投げの要領で、空中の小型ジェットに向かってSP//drが猛烈な勢いで撃ち出された。
「チェーンジ、SP//drドリル!!」
コクピットでペニーが力強くボタンを押し込むと、SP//drの両腕が金属音を立てて凶悪なドリルに変形。背部ブースターが点火し、マッハを超える超加速でゴブリンへ襲いかかる。
「うっ、ウッソっだろろろうっっっ!?!?!?」
逃げるゴブリンが絶望の悲鳴を上げる中、ペニーの叫びが空を切り裂いた。
「スーパースパイダー、ドリルーー!! 穿けー!!」
と音を立て、超回転するSP//drとドリルが小型ジェットに直撃し、小型ジェットを貫通し木端微塵に粉砕してみせ、「ギャアアアッッッ!!!」と汚い悲鳴がこだました。
着地したSP//drを見て、スパイダーマンは思わず口笛を吹いた。
「わぁお。あれはゲ〇ターかな? 日本の権利元から怒られないか心配だね」
「……俺様の宇宙船にはよしてくれよ? 」
スター・ロードも感心したように頷く。超高Gと強烈な回転衝撃に耐えられたのは、日頃のカマラによる過酷な圧迫・締め付け訓練の賜物だった。
ハッチを開けて降りてきたペニーとカマラは、弾けるような笑顔でハイタッチを交わす。先輩ふたりは惜しみない称賛を送った。特に、あの殺人的なGのなかでケロッとしているペニーの耐久力に、スパイダーマンが目を丸くする。
「もしかするとペニー、身体能力自体が僕たちみたいなスパイダーマンに近づいてるのかもね」
「前の検査でミューテイト遺伝子は陰性だったでしょ? でもありがと、スパイダーマン!」
「トニーの奴が見たら、自分のスーツより凄いって悔しがるかもな」
スター・ロードも楽しそうに笑い飛ばした。
その日の夜。
部屋のベッドの上で、カマラは巨大化させた温かい両手のひらでペニーをすっぽりと包み込んでいた。
「ふぅ……今日もお疲れ様、ペニー」
「んぁ……気持ちいい……」
昼間の激戦と超Gの疲労を拭い去るように、カマラの大きな手がペニーの身体を優しく揉みほぐしていく。両手に心地よく押し潰されながら、ペニーはとろけた表情で「次はどんなコンビネーションを試そうか」と楽しげに語り合い、ふたりは夜が更けるまで温かな時間を共有したのだった。
だが、ふたりが絆を深めていたその裏で、暗がりの中に佇むひとりの男の姿があった。
男は怪しい笑みを浮かべると、卓上に置かれた禍々しいゴお面をゆっくりと手にとった。
「ハハハッ!……そろそろ、俺様の出番だな!」
湧き上がるノーマン・オズボーンの別人格の暗い眼光が、夜の闇の中で怪しく輝いていた。