2人のティーンエイジ・ヒーローズ   作:ライゼル

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曇らせは一旦ここまでです。


ペニーの過去

「えっ……」

 

ペニーは静かに、けれどぽつりぽつりと紡ぎ出した。

 

カマラは息が詰まる感じがした。あまりに思いがけず、重すぎる言葉。カマラは言葉を失い、ただペニーの顔を見つめることしかできなかった。

「……こんなこと、カマラに言っても仕方ないんだけどね。この世界に来て、こっちの世界のメイおばさんが生きているのを見た時……すごく嬉しかったのと同時に、ちょっぴり羨ましくて。……ほんの少しだけ、ピーターを妬んじゃったんだ」

 

ペニーは自嘲気味に、悲しげな苦笑を浮かべた。

カマラは何も言えず、「ペニー……」と掠れた声を漏らすのが精一杯だった。そのまま静かに、ペニーの心に寄り添うように耳を傾け続けた。

「9歳の時にお父さんが死んじゃって、その跡を継いでSP//drに乗るために、自分の意思で遺伝子改造されたクモに咬まれて……それから5年後、最近のことなんだけど……新しいロボットの実験があったの。そのテストパイロットの女の子が……私の、生まれて初めての友達だった」

 

ペニーの瞳から、すっと光が消えていく。思い出すだけでも身が引き裂かれそうな過去の記憶。

 

「でも、原因不明の暴走を起こしちゃって……。友達は、増殖する肉腫に飲み込まれてそのまま……。その時の事故で暴走した機体のせいでベン叔父さんも死んじゃって…メイ叔母さんも私を庇って……。目の前で…大切な人たちが…全員……死んじゃった…」

途切れ途切れに話すペニーの声が、微かに震え、涙声が混じる。

「その試作機の名前が『VEN#m(ヴェノム)』だったの。だから、ピーターからヴェノムの話を聞いた時……なんて酷い運命なんだろうって思った。……だからね。さっきも言ったけど、生きているメイ叔母さんに会えた時、本当にとっても嬉しかったんだよ」

 

カマラは息を飲み、言葉を完全に失っていた。

自分だって辛い思いはたくさんしてきた。インヒューマンとして能力に目覚め、迫害や苦悩を経験し、家族と引き裂かれたこともあった。能力の制御を誤って、大切な親友であるブルーノに一生残る後遺症を負わせてしまい、絶交状態になったこと。憧れだったキャプテン・マーベルとの理念の違いによる決定的な決別。

あの時、自分で選択したとはいえ、胸が張り裂けるほど苦しかった。

 

けれど、自分の大切な人たちは、誰も死んではいない。

 

ペニーは自分より年下なのに。そんな華奢で小さな身体で、大切な家族も、初めての友達も、目の前で全て失うという凄絶すぎる悲劇を背負わされていたのだ。

 

カマラの目から、涙がこぼれ落ちた。

カマラはペニーをラバーバインドでペニーを手繰り寄せるようにぐっと腕引き込み、自分ごとペニーの身体をしっかりと抱きしめた。

「カマラ……?」

「ペニー……。あたしもね、両親と離れ離れになったり、大事な親友を守れなくて大きな後遺症を負わせて絶交されたり……大好きな憧れの人と決別したりして、すごく苦しかった」「…」「でも、ペニーが背負ってきた痛みに比べたら、あたしの悩みなんて……っ」

驚いて顔を上げるペニーに、カマラは涙で濡れた顔で小さく笑ってみせた。

 

「……ううん、比べるようなことじゃないわね」

「うん……比べるものじゃないよ、カマラの痛みにだって、ちゃんとした重さがあるんだから」

 

ペニーがやさしく言葉を返すと、カマラはペニーの顔をまっすぐに見つめ、涙を拭いもせずに力強く頷いた。

「ねえ…ペニー。改めてあたしたち、手を取り合って親友になりましょう」

「えっ……?」

「一人で背負うには、スパイダーマンとしての貴方の運命はあまりにも残酷すぎるわ。でも、二人なら……どれだけ大きな力と過酷な運命や使命があろうと、どんな重い責任だって、一緒に背負っていける! 乗り越えていけるわ!」

ギューッと、ペニーを抱きしめるカマラの腕に、強い力がこもる。それはカマラの溢れんばかりの情熱と、絶対にこの少女を一人にはさせないという固い誓いの表れだった。

その優しさがペニーの胸の奥深くに届いた瞬間、ずっと密かに張り詰めていた心の糸が、プツリと切れた。

 

「う……っ」

 

押し殺していた感情が溢れ出し、ペニーの瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。溢れて止まらない涙が、カマラの腕を濡らしていった。

「うん……! ずっと……私たちは……最高の…親友だよ……っ! ううっ……うああああんっ……!」

「……ええ。今まで……本当によく頑張ったわね、ペニー」

カマラは慈しむように、まるで宝物を慈しむようにペニーの頭を優しく撫で続けた。

 

過酷な運命を背負った幼きヒーローと、その傷を受け止め、共に歩むことを誓ったヒーロー。

 

二人の間にある絆は、この瞬間、決して解けることのない「真の大親友」としての固い結びつきへと変わっていた。

 

……けれど、だからといって二人の日々の関係が重苦しいものに変わるわけではない。明日になればまた、戯れ合いながら、笑い合いながら、互いの強さを高め合っていくのだろう。

 

今はただ、二人はお互いの温もりを感じ合い、静かに涙を流し続けるのだった。






MARVEL作品に詳しい人が見たらツッコミどころがある話しになるかもですが、ご容赦いただけると幸いです。
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