「ぐっ……っ!」
「潰れちゃうよ、ペニー!」
「負け…ない〜っ!」
「ふふっ、そーれっ!」
カマラは巨大化させた両手を恋人繋ぎのようにガッチリと組み、中に閉じ込めたペニーを力任せに挟み込んでいた。だが、ペニーの粘り強い抵抗を見ると、一度手を解き、今度は大きな両手の手のひらを広げて、左右から正面でパッチン!!と勢いよく挟み潰す!
「さあさあ、潰れちゃえ〜♪」
「ぐぬぬ〜……! 負けないっ!」
大きな手のひらの間でペニーが挟まれながら必死に抵抗する、いつもの賑やかで微笑ましい光景。二人がそんな戯れのような訓練に打ち込んでいた。
まさにその頃――。
アベンジャーズ・コンパウンドの一角では、ピーター・パーカーとクイルが、スティーブ・ロジャースとトニー・スタークへ向けて、昨夜の出来事を報告していた。
「そうか……苦労したのだな、ミズ・マーベルも……」
スティーブは腕を組み、深く痛ましそうな吐息を漏らした。先の戦いにおいてキャプテン・マーベルと直接対決したスティーブは、カマラが憧れだった存在と決別した際の苦悩や葛藤を、誰よりも間近で見つめ、気にかけていたのだ。
トニーもまた、手元にあるグラスの氷をカランと揺らし、複雑な眼差しを落とした。
「ペニーもだが…いつの時代も、若者たちが理不尽に酷な目に遭うのを見るのは…嫌なものだな」
トニーにとって、自分を頼りにしてアドバイスを求めてきたり、SP//drという複雑なロボットの整備をたった一人で完璧にこなしてしまうペニーの天才的な才能は非常に評価しており、目にかけており、密かに親心のようなものを寄せていたのだった。
「でも二人とも、自分たちの過去や悲劇を理由にして閉じこもる気はないみたいです。……お互いに傷を分かち合って、二人で手を取り合って、前を向こうとしていました」
隣に立つクイルも、力強く頷いて言葉を繋ぐ。
「俺たちにできるのは、余計なお節介で過保護にならないことだ。腫れ物扱いなんてしたら、それこそあいつらに怒られちまうからな」
その言葉を聞いたスティーブは静かに立ち上がり、長年チームを率いてきた先輩ヒーローとしての、頼もしくも温かな笑みを浮かべた。
「そうだな。二人の選んだ道は、私は正しいように思う。我々は陰からしっかりと見守り、彼女たちが求めれば、良い方向へ成長できるよう道を示し、導くのが私たちの役目だ」
「同意だね」
トニーもグラスを傾けながら口を揃え、ニヤリと口元を緩めた。
「あの天才少女が壁にぶつかった時は、いつでも最高のアドバイザーになってやるさ。……さあ、見守り役の先輩たちよ、仕事に戻るとしようか」
一歩引きながらも、若い彼女たちの可能性と未来を信じ、温かな眼差しで見守る決意を固めた先輩たち。
先輩ヒーローがそう決めていたことなど、まだ知る由もない二人は――
「ひゃあっ!? 今度は両手で潰された〜!」
「ふふ〜ん! 」
トレーニングルームで、互いの存在と手応えを噛み締めながら、元気に笑い合っているのだった。
「それじゃあペニー次も遠慮なく行かせてもらうわね!」
「うん、いつでも来て――わわっ!?」
カマラは巨大化させた自慢の両手をぐっと広げると、ペニーの華奢な身体を正面から丸ごと抱え込んだ。そのまま掌の間で、まるで柔らかい粘土でもこねるかのようにニギニギ、モミモミとペニーを捏ねくり回し、弄び始めた。
「んんっ…あうっ……! 押し潰さないで〜……!」
「だって ペニーの身体、本当に良い感触なんだもの!」
たっぷり揉みくちゃにして満足すると、ペニーの身体をポーンと天井近くへ向けて投げ飛ばした。
「きゃああっ!?」
無重力のように浮き上がったペニーに対し、カマラは瞬時に右腕をシュルシュルと細長く伸ばし、空中で見事な『肉体ネット』を編み上げてみせた。
ポヨンッ!
「捕まえたっ!」
「あぐっ……!」
落下してきたペニーを網全体で柔らかく受け止めると同時に、カマラは網目をキュッと一気に引き絞る。
網目からは、ペニーの可愛らしい頭や左右の手足が外へ飛び出した格好となった。その網目の位置がちょうどペニーの脇の下や股の付け根あたりにしっかりと当たり、密着したカマラの腕の感触が直接伝わってくる。
(う……っ、ちょっとだけ……恥ずかしいかも……)
ペニーは一瞬だけ頬を赤らめたが、すぐに頭を振った。カマラの表情を見れば、そこに良からぬ下心など微塵もなく、純粋に新しい技の試行とスキンシップを楽しんでいるだけなのは明白だったからだ。
「そしてトドメよーっ! !」
「わーっ! 世界が回る〜!?」
カマラはペニーを捕らえた肉網を、まるでハンマー投げるかのように豪快にぶんぶんと振り回した。遠心力で目が回りかけたペニーを、タイミングを見計らって再び空中高くへパッと投げ飛ばす!
「これでフィニッシュ! 『ラバーバインド』!」
空中で無防備になったペニーに向かって、カマラのしなやかな腕が一直線に伸びた。
シュシュシュッ!!
空中でペニーの身体を頭から足先まで隙間なくぐるぐる巻きに拘束すると、そのままの勢いで一気に床へと叩きつける!
ドスン!!
「ひぎゃっ!?」
床に叩きつけられた衝撃と同時に、ペニーの身体を巻くラバーバインドの帯がぴっちりと極限まで収縮した。全身を襲う強固な重圧に、ペニーは降参の声を上げる。
「ま……参った〜……」
「ふふ、OK! 降参ね!」
ペニーのギブアップを聞くと、カマラは締め上げる力を緩めた。
けれど、巻き付けたラバーバインドを完全に解くことはしない。ペニーが苦しくない程度に、けれど身動き一つ取れないように『ぴっちり』と抱きしめるような密着加減を保ったまま、カマラは床に横たわるペニーの身体の柔らかい感触を満足そうに味わい始めた。
「う〜ん、やっぱりこの抱き心地が一番落ち着くわ♪」
カマラの体温と、じんわり伝わる回復の波動。
何度もカマラの技を受け止めてきたペニーは、本気で力任せに締め上げられてさえいなければ、このカマラの腕のモチモチとした触感や温もりが、どれほど自分を安心させてくれるものかを体感として理解できるようになっていた。
「もう……またこのまま動けなくするんだから……」
口では呆れたように呟きながらも、ペニーの表情はとても穏やかだった。身体を包むカマラの腕の心地よい温もりと安心感に身を委ね、ペニーは逃げ出そうとする気などサラサラ起きないまま、カマラとの温かな時間を楽しむのだった。