ソードワールド二次創作小説(ファリスの聖戦士) 作:シットライヌ
ロマールの中央区画にそびえる軍政庁。その最上階にある執務室の窓からは、寸分の狂いもなく区画整理された石造りの城塞都市が一望できた。
対峙しているのは、先日の酒場で出会った百人隊長の上官にあたる男、ロマール軍総監のヴァルター将軍だった。その胸甲には重厚な装飾が施され、冷徹な双眸はデスク挟んで立つ俺たち五人をじっと値踏みしている。
「巡礼の通行証か。至高神ファリスの神官戦士とその仲間……教団の許可状があるとはいえ、我が国はいま戦時下に準ずる最高警戒態勢にある。見知らぬ流れ者を安易にアノスへの関所へ通すわけにはいかん」
ヴァルター将軍は重々しい声でそう告げると、羊皮紙の文書を一枚、デスクの上に滑らせた。
「だが、例外はある。この国に明確な功績を残した者に対してだ」
「功績……つまり、裏のあるお仕事の引き受け手を探しているということですわね」
ミレーヌが一歩前へ出ると、理知的な瞳を崩さずに微笑みを浮かべた。
「察しが良くて助かる。先日の酒場で部下が報告してきた通り、ここ数週間、グラン・ロマールの夜間で我が軍の重装歩兵が次々と襲撃される事件が頻発している。いずれも一撃で甲冑ごと身体を深く引き裂かれ、命を奪われている。不気味なのは……その傷口だ」
将軍の言葉に、俺は背中のツヴァイハンダーの柄に自然と緊張走るのを感じた。
「レイドの大剣術……それも、極めて高度な『理』を知る者の仕業だ。かつての戦争の残党か、それとも我が国の規律を揺るがそうとする過激派か。軍としてはこの一件を表沙汰にできん。正規軍を動かせば、市民や他国に無用な混乱を与えるからだ」
「僕たち部外者に、その『影』の正体を突き止めて処理しろ……ということだね。そうすれば通行証を発行してくれると」
ジュードがスピアを背中で揺らしながら、確信を込めて尋ねる。
「そうだ。引き受けるなら、即座に特別通行証と、事件現場への立入許可を与えよう」
ヴァルター将軍の冷徹な眼差しが、まっすぐに俺を射抜いた。
かつて師匠の部隊を全滅させた国ロマール。その中心地で、師匠と同じレイドの大剣術を悪用し、暗躍する謎の刺客。ただの辻斬りではない。何者かがかつての戦争の怨念や技術を煽り、この街に新たな惨劇を引き起こそうとしているのは明らかだった。
「引き受けましょう」
俺は迷いなく答えた。
「クライヴ……」
エレノアが心配そうに寄り添うが、俺は静かに首を振った。
「かつて師匠が授けてくれた大剣術は、弱者を守り、理を正すためのものだ。復讐や無差別な殺戮のために振るわれる大剣があるなら、俺の刃でそれを止めなければならない」
「ガハハッ! そうと決まれば話は早いぜ! マイリーの鉄槌で、その陰湿なドブネズミの頭蓋をぶち砕いてやろうじゃねえか!」
バルドが豪快に腕を叩き、ミレーヌも「調査の手順ならすでに頭の中に組み上がっていますわ」と不敵に頷いた。
こうして俺たちは、聖地アノスへの通行証を手に入れるため、そしてレイドの大剣術に纏わる歪んだ影を断ち切るため、グラン・ロマールの暗部に踏み出すこととなった。