一応、許可は取ってありますのでご安心下さい
〝オリジナル〟としてありますが、これは二次小説とするには原作という原作が無いのでそうしているだけです
あしからず
ここ、〝ヴァルデニャン王国〟に裏社会を牛耳る一つのマフィアがあった。
その名も〝赤猫ファミリー〟……ボスである〝モカにゃん〟こと〝モカ・ニャンルージュ〟を筆頭に、一癖も二癖もある幹部達がファミリーを纏めており、日々敵対組織の壊滅や市民の守護に勤しんでいた。
そんな赤猫ファミリーの
「うにゃー!!毎日毎日、書類書類書類……うちの頭はどうにかなりそうや!」
大量の書類を前に遂に限界が来たモカが手元にあった書類をぶちまけながらそう叫ぶ。
「そうは言ってもそれが姐さんの仕事なんだからしょうがねぇでしょうよ」
そう言いながらナイフや剣の手入れをしているのは赤猫ファミリー大幹部の一人、〝
元兵士である彼は主に敵対組織のボスの暗殺や、麻薬カクテルの壊滅など、戦闘任務を担当している。
常に隻眼の髑髏の覆面と黒い帽子を目深に被っている為その素顔を知る者はモカを初めとした大幹部や一部の幹部のみである。
「シグマさんは書類仕事を全くしないからそう言えるんよ!一回だけでもやってみたら、うちと同じ事絶対に言うで?」
「じゃあ代わりに俺がやってる事やってみるか?」
「せやな。何事も適材適所やな」
「秒で意見を変えるなや」
二人は割と歳が近い為、実の姉弟のように仲が良く、周囲もまたこの二人をたまに本当の姉弟なのではと思うほどであった。
そんな仲の良い二人の会話を聞きながらコーヒーを一口啜る眼鏡をかけた和服の男性……彼もまた大幹部の一人であり、主にモカの用心棒をしている極東出身の剣士〝
「まぁまぁ。シグマ君の言うことも分かるけど、こう毎日大量の書類と睨めっこしてたらモカの気が滅入るのも仕方の無いことやで?」
「叔父鬼……あれだけ書類があるのは今まで姐さんが何かと理由付けて逃げ回った結果やで?何もフォロー入れる必要無いて」
「ホンマか?」
「ゔっ……で、でも、孤児院の子供達と触れ合うのも?市民の皆さんとのコミニケーションを取るのも?ファミリーのボスとして必要な事ですし〜?」
「ほぅ?ならこの領収書はどういう了見なんだろうなぁ?」
言い訳を始めるモカに対しシグマが一枚の領収書を取り出しヒラヒラと揺らしながらそう問いかける。
その際にチラリと見えた店の名前を見て、途端にモカが慌て出した。
「なっ……なんでシグマさんがそれ持っとるんや?!」
「経理の子が〝これは経費じゃ落ちないです〟言って、俺に姐さんにそう伝えるよう頼まれたんスよねぇ〜?え〜と、ここに記載されてる〝ラブ♡ジュエリー〟って確かここらで大きなキャバクラの店だよなぁ?日付けは昨日の夜10時……確かその時、姐さんは〝会合に行ってくる〟って言ってたっけなぁ?」
「い、いや……会合の場所がその店で……」
「下部組織のリーダー達に確認したらその日に会合なんて予定は無かったって言ってたんだが?ちなみに店に確認取ったらその日は午後1時に店に来て、夜10時に帰ってったって聞いたが……おやおやぁ、確か姐さんが屋敷を出た時間は昼の12時だったなぁ?」
「ぁ……ぅ……」
ダラダラと汗を流し何も言えなくなるモカ……するとそんな彼女の目の前に新たに書類の山が築かれる。
「そういう事なら遠慮要りませんね?」
そう言ってにっこりと笑みを浮かべるのは大幹部の一人であり、モカの秘書兼執事である〝サイファー〟だった。
「ささささ、サイファーさん?!」
「日々ファミリーのボスとして様々な業務に勤しんでいるモカ様のお身体のことを考えて遠慮しておりましたが、いやはやまさかそんな理由で外をほっつき歩いて回っていたとは思いませんでした。なので今日はこの書類全て片付けるまでこの部屋から一歩も出しませんのでお覚悟を」
「そんな!今夜はお店のユキちゃんに会う約束が─────あ……」
サイファーの言葉に思わず口を滑らせるモカ……その事に気付き口を噤むも時既に遅し。
見ればシグマ、斬鬼丸、サイファーの視線は凍てつく冬の寒さのように冷たいものとなっていた。
そんな時執務室の扉が開き、僅かに開いたその隙間から一人の小柄な女性が顔を覗かせ、潤んだ瞳でモカを見ていた。
「やっぱり……やっぱりそうだったんだ……」
「レイちゃん?!違っ……これは違うんよ!」
扉にいた女性の名前は〝レイ〟……モカの〝正妻〟であり、このファミリーにとって〝母親〟のような存在だった。
そんな彼女は目に涙を溜めるとその場から勢いよく駆け出す。
「やっぱり私はモカさんにとってただの遊び相手だったんだ!!」
「ちょっ、待って!待ってレイちゃ────ん!」
「自業自得だバカタレ」
「すまん……流石にこれは擁護のしようが無いわモカ……」
「二人に同じく」
「うぐぅ……」
三人の辛辣な言葉にモカは机へと沈む……すると駆け出して行ったレイと入れ違いにまた新たに一人の女性が執務室へと入ってきた。
「は〜い、なんかレイちゃんが泣きながら走り去ってったけど〜……何かあったん?」
和やかにそう話すこの女性はシグマ達と同じく大幹部の一人である〝クレリア・ウルフィー〟……夫と息子と共にこのファミリーに所属しており、おっとりとした性格からは想像がつかない程の戦闘狂である。
それ故にファミリーでは戦闘員として活躍しており、そして何よりモカの親友でもあった。
そんなクレリアは先程のレイの様子に首を傾げていたが、次のシグマの一言で納得してしまう。
「節操無しが泣かせただけっスね」
「あぁ……モカにゃん、浮気はいい加減にしないと本当に嫌われちゃうよ?」
「浮気ちゃうわ。これは……そう……色んな女性を愛でとるだけ「それを世間では浮気って言うんだがなぁ」シグマさんはちょっと黙っといてや!」
もっともな言い訳をしようとしてシグマに遮られたモカは〝シャーッ!〟という猫の威嚇のような表情になる。
しかし当のシグマは何処吹く風で武器の手入れを再開していた。
「そんでクレリアさんはどうしたん?」
「あ、そうそう。なんか部下の方達から報告があって〜……なんでもここ最近になって出てきたギャングがうちを潰すって話してたそうよ〜?」
クレリアがそう言った瞬間、その場の空気が張り詰める。
笑みを絶やさなかったサイファーの表情は冷え切り、斬鬼丸の刀の鍔は鳴り、そしてシグマの眼光が危険な光を帯びる。
「へ〜……ふ〜ん……ほ〜……なんやそら面白い報せやね」
クレリアから手渡された資料を手に取り危険な笑みを浮かべるモカ。
その資料にはクレリアが話していたギャングについての情報が事細かに記載されていた。
「ギャングの名前は〝ハッピースマイル〟……すっごく良い名前だけど〜、やってる事はすっごく危険なのよね〜」
「どれどれ……違法薬物の売買に亜種族を専門とした奴隷売買。中には借金を理由に強制的に違法風俗店で働かせている、と……」
「見せてみ?んん?このギャングのバックに付いとる言うマフィアはうちの下部組織やないか?」
「〝ルーズドギーファミリー〟やね。そういや最近、そこも良くない噂をよく聞くようになったな〜」
資料を順番に目を通しながらシグマ、斬鬼丸、そしてモカがそう話す。
「どうしますモカ様?」
「決まっとるやろ?先ずはルーズドギーファミリーにお邪魔しに行こか?」
そうしてモカは立ち上がるとサイファーへと命令を言い渡した。
「サイファーさん、クロノさんとハチワレさん、あとみっちゃんを連れてきてくれへんかな?」
「モカ、小狐丸はどないする?弓弦羽でも紺菊でも何時でも呼べば来るで?」
「ん〜……今回はうち、斬パパ、シグマさん、サイファーさん、クロノさん、ハチワレさん、みっちゃん、クレリアさんだけでええかな。流石にその子達も連れてったら過剰戦力やろ」
「それもそうやな」
「特攻隊長は俺に任せろ。秒で鎮圧したるわ」
「あらあら〜、私にも残しておいてくれると嬉しいわね〜」
「まぁ俺はいつも通りモカの護衛をするだけやしな」
「おやおや可哀想に……しっかり手下の教育を怠ったばかりに地獄を見る羽目になるとは」
「まぁ時間も惜しいし、さっさと行こか〜」
「モカにゃんは早くレイちゃんのご機嫌を直さなきゃいけないしね〜」
「クレリアさん……それは言わんとってくれや……」
「うわぁしまらない」
真剣ながらも何処か緩い感じでモカは数人の大幹部達を連れて件のルーズドギーファミリーへと足を運ぶのであった。
それから時間が経ち……ルーズドギーファミリーのアジトは地獄絵図と化していた。
部下達は床に倒れ伏しており、その周囲には人体の一部や骨が散乱していた。
そしてルーズドギーファミリーのボスについては両手両足をナイフで椅子ごと貫かれ固定されており、更にはフックで鼻と瞼も後ろへと引っ張られ固定されていた。
「ひぃ……ひぃぃ……ひぃ……」
涙を流し、涎を垂らし……挙句には自身の小水によってズボンを濡らしているボスに、モカがゆっくりと近づいて行く。
「も、モカの姐御……な、何故私めにこんな仕打ちを……?」
「〝ハッピースマイル〟……知っとるやろ?」
「し、知りません!そんなギャングなんて知らな─────うぎゃあ!」
〝知らない〟と話すボスの右手小指をシグマがへし折る。
「あかん……あかんなぁ。うち、ハッピースマイルがギャングの名前だなんて一回も言うとらへんやんか?なんでそれがギャングの名前だなんて分かったん?」
モカのその一言でボスは自身が言葉を間違えたことを理解する。
「うちのファミリーの……その傘下に至るまでの共通のルールってなんやったっけ?」
「か、カタギ……一般市民への迷惑行為及び危害を加えてはならない……」
「あとは?」
「ま、麻薬や奴隷の売買はしてはならない……」
「あとは?もう一つあるなぁ?」
「い、以上の決まり事を……や、破った組織は……そ、即時処分を下す……」
「せ〜いか〜い♪︎」
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
組織の決まり事を全て答え終えたボスの右目に万年筆を突き刺すモカ。
「あかん……あかんなぁ自分。そんな決まり事をしっかり覚えとるのに破るだなんてあかんやん?ハッピースマイル、あんたが可愛がっとるギャングやよなぁ?」
「は、はい……」
「そのギャングがな?うちを潰す言うとんねん……どういう事やろな?」
「そ、それは……」
「もしかして……あわよくばうちらの……赤猫ファミリー潰してトップに君臨しよう思うとったんか?」
「そ、そんな事は……ひぎぃ!」
モカは右目に突き刺していた万年筆を今度は左目へと突き刺す。
両目を潰されたことでボスの身体はその場でビクビクと痙攣していた。
そんな時、部下の死体に身を潜めていた者が二人、その場に飛び出しモカへと襲いかかる。
「死ねぇこのアマァ!」
「くたばりやがれ獣人風情がァ!」
しかし二人の凶刃がモカの身体に届くことなく、二人はシグマと斬鬼丸によって即殺された。
「遅いわ」
「ノロマ過ぎるだろ」
斬鬼丸は一刀のもとに男の首を刎ね飛ばし、シグマは素早い動きでもう一人の男の頭蓋骨と背骨を抜いた。
首を刎ねられた者は血を吹き出しながら地面に落ち、骨を抜かれた者は身体をぐにゃりと歪ませながら地に落ちた。
そしてビクビクと痙攣する男の頭をシグマは踏み砕く。
その際にぐちゃりと不快な音がして、飛び散った血がモカの靴へとかかる。
「シグマさ〜ん、かかったんやけど〜」
「あぁすまん。別に頭を踏み抜く必要は無かったな」
「モカ様、そのままで……今お拭き致しますので」
ボスの目に万年筆を刺した時点で返り血がどうのこうのは今更ではと思ったシグマだったが、あえてそこに触れないのがいつものやり取りであった。
そしてサイファーが靴に付着した血を綺麗に拭き取っている中、モカはボスに向かって訊ねる。
「……んで、ハッピースマイルのアジトが何処にあるか知っとるやろ?」
「は、はい……」
「なら素直に教えよか?そしたらあとは苦しませずに楽にしたるわ」
「い、命だけは勘弁……」
「するわけないやろ?決まりを破る奴は例外なく〝の
「ひ、ひぃぃ……」
「はよ言えや」
「は、はいぃぃ……」
そうしてボスはギャング〝ハッピースマイル〟のアジトの場所をモカへと告げた。
それを聞いたモカは踵を返してドアへと向かう……その場に居た者達もその後ろをついて行った。
ただ一人、シグマを除いては……。
「ほなシグマさん、あとはよろしくな〜」
「おぅ。さてと……それじゃあ殺りますか」
「……!……!」
両目を潰され何も見えない状態で椅子に固定されたボスにシグマが腰に差していた軍用様式の
そして─────
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ─────」
ボスの悲鳴が聞こえてくるのとドアが閉まるのはほぼ同時であった。
それから数時間後、悲鳴を聞いた市民の通報により駆けつけた警察が中へと入ると、そこには椅子の上でバラバラに解体されたボスの無惨な姿があった。
それを見た若い警官達はその場で嘔吐してしまうが、そんな中で二人の捜査官だけは冷静にボスの遺体を見ながら話をする。
「どう思うイサミ?」
「どう思うも何も、こんな事をするのは一人しかいないだろメオ」
この二人の捜査官は凶悪犯罪を担当している捜査官であり、スーツに身を包んだ男性の名は〝根賀田メオ〟、そして熊の獣人である男性の名は〝熊ノイサミ〟である。
二人はボスの遺体を前にこんな事をしたのは誰なのか予想がついていた。
そんな二人に一人の警官が声をかける。
「お疲れ様ですメオ捜査官、イサミ捜査官!」
「お疲れさんカーティス警部」
二人に声をかけたのはこの街の警察である警部〝カーティス〟である。
彼女は女性ながら若手の警部として活躍していた。
「いったい誰がこんな酷いことを……」
「間違いなく赤猫ファミリーのシグマの仕業だな」
「では逮捕状を─────」
「いや、その必要は無いよ」
「何故です?」
「赤猫ファミリーはマフィアだが、犯罪行為をしていない、逆に犯罪に手を染めるマフィアを潰しているマフィアだからね。これは秘匿情報だけど、赤猫ファミリーと警察は協力関係にあるんだ」
それを聞いたカーティスは目を見開いて驚いていた。
メオとイサミはその事をよく知っていたので驚きはせず、話題を〝誰がやったのか?〟から〝何故やったのか?〟について変えていた。
「なんでルーズドギーファミリーを潰したと思う?」
「どうせファミリーの掟を破ったからだろ?しかしここまでやったとなると……他にも目的がありそうだ」
「……と、申しますと?」
「彼の両目を見てご覧?左目に万年筆が刺さってるたろう?」
メオに促されカーティスが確認してみると、ボスの左目には未だにモカが突き刺した万年筆が残っていた。
「これは彼女達なりの尋問だ。つまり何かを聞き出すついでに粛清したんだろうね」
「ここまでやるんですか……」
「掟を破った者には容赦しないのがモカ・ニャンルージュという女性だよ。ちなみに身体の部位になぞってここまでバラバラにしたのは彼女の部下で赤猫ファミリー大幹部の一人シグマによるものだろうね」
「シグマ?すみません……私は警部に昇任してからまだ日が浅く……」
「シグマ……シグマ・レヴナント。元兵士で退役後は傭兵として活動し、その後は暗殺家業で悪党を殺して回っていた。この国の政府からも任務を受けていたけどある日を境に消息不明に。その後赤猫ファミリーのモカと行動を共にしている姿が確認され、赤猫ファミリーの大幹部として働いている事が判明した」
「強いんですか……その人?」
「強いと言うより〝ヤバい〟ね。いったいどんな手を使っているのか分からないけど、ほらそこに骨が散らばってるだろ?」
「たしかによく見たら骨が散らばってますね……」
「それもシグマの仕業だから。シグマは相手の体から骨を抜き取る術を持ってるんだよ。それ故に〝抜骨の亡霊〟なんて異名もあるくらいだからね。あとは……なんだったっけイサミ?」
「〝
「あぁそうだったそうだった」
「戻りし者……ですか」
「どんな死地だろうと平然と無傷で帰ってくるからそう呼ばれてるらしいよ?まぁどちらにせよ敵対したくはない相手だよね」
メオはそう言うとカラカラと笑った。
「まぁともかく今は彼女達の次の標的を割り出すのが先かな?とは言ってももう手遅れだと思うけれどね」
「このボスの男が生きていたならば聞き出せたんだがな」
「掟を破る者は即刻処刑ってのが彼女達のルールだから仕方ないね。まぁとりあえずここの捜査も一応しておこうか。もしかしたらこうなる理由が見つかるかもしれないしね」
そうしてメオはイサミとカーティスと共に他の警官達に指示を出しながら捜査を始めるのであった。