とある春の日、早朝と言っても過言ではない朝8時に道を歩く男が居た。
その男が持つスマホのケースには、うさぎを模した機械的な模様を刻んでいた。
そんな男の名は「
彼が愛するのはバニーガールではない。無論、バニーガールも心の底から愛している。
だが、彼はバニーを着る者、バニーを着るべき者、バニーの煌めき、バニーのスタイル、耳の作り、そのすべてを愛しているのだ。
「ふわぁ....。朝はやっぱ眠いなぁ....」
「よぉ、統次。今日も元気か?」
「おはよう。直瀬。今日もバニーが映えるいい天気だ」
「いつも通りだ」
「変わんないなら聞く必要ないんじゃないか?」
「友達にいつも元気で居てほしいと思うのは普通だろ?」
直瀬と呼ばれた少年は笑いながらそういった。
そんな彼のフルネームは「
「ところでさ、今日の英語のテスト勉強したか?今日は小テストだぜ?」
「小テスト.....小テスト.....ああああ!!」
「この様子は.....」
「忘れてたあぁぁ!!!」
「だろうな」
彼らは現在高校二年生の学生である。
そんな今日は新たな始まりを告げる始業式。様々な期待と不安が渦巻く中、彼らは学校に向かっていた。
「どうしよう直瀬!このままじゃ.....」
「知らねえよそんなもん」
「これは...ノーバニーだ.....」
「なんだよノーバニーって」
「けどこれは間違いなく俺史上最大級の危機.....!!」
「....どうしたの?」
まっさらな紙のような白い肌ときれいな青い瞳。そしてさらさらと煌めく銀色の長い髪の毛。宇宙的でどこか底しれぬ不思議さも持つ、宇宙的美しさの容姿をした少女、「イーナグゼル・ラスタート」は統特に抑揚の少ない声で声をかけた。
「おはよう。統次」
「あ、ああ。おはようイーナ」
「.....そんなことより、どうしたの?叫んでたけど....」
「小テストの存在を忘れていたんだ.....!」
「.....そう」
そう言ってスタスタと歩きだしてしまうイーナ。
「......今日もいい天気」
「ああ。最高のバニー日和だ。ってそんなことより!!」
「.....仕方ない。私のノートを貸してあげる」
「ほんと!?」
「代わりに.....」
「代わりに?」
「帰りは私に付き合ってもらう」
▽
「であるからして~」
担任の眠い話を噛み殺しながら、統次は聞き流す。
「うーん。自己紹介は.....」
クラスメイトの顔を見渡すと、いくつか見知った顔もあって完全にアウェイではないという安心感。
これからの学校生活がなんとなくだが見えてくるような気もしてくる。
「よーし。というわけで今日の学活は終わり!帰っていいぞー」
適当なのか厳格なのかよくわからない男性担任の鶴の一声で教室内がざわめき出す。
帰宅するという行為そのものが学生にとってはオアシスのように嬉しいものなのだ。
「統次」
「助かった!」
「.....もう十回は聞いた、よ」
「ほんとうにありがとう!何でも奢るぜ!」
太っ腹な一言。
「でもその前に.....」
彼女の衣装が一瞬にして変わる。
これまで身を包んでいた紺色のブレザーとスカートは一瞬にして光沢のあるぴっちりとしたスーツに早変わり。
上半身が大きく露出しているわけではないが、どこか艶かしさを感じる姿へと早変わりした。
「バニー!!」
「.....あなたの好きなもの」
「グッドバニーだ!めちゃくちゃかわいいぜ!」
「ふふ...肯定。私は可愛い」
ふと時計を見ると、もうすでに針は15時を回っており、お昼時も過ぎてしまっていることがわかった。
「なにか食べて帰ろうぜ。お礼に今日は俺のおごりで」
「.....いいの?じゃあ、ハンバーガーが食べたい」
彼らは扉をガラリと開き、学校から出ていく。
青い空は未だ眩しいままだ。
▽
とある場所に男が居た。
その男はとある商社に勤める男で、今は昼休憩ということで外に昼食を食べに出ていた。
「あー.......疲れた」
その男はひどく疲れた様子で街を徘徊する。
事実、彼は徹夜続きで相当な身体疲労が溜まっている。故に、もう倒れる寸前、精神も目に見えるすべてが悪く見えるほどには疲弊していた。
「みんな幸せそうだなぁ......いっそこいつらを......」
男が不穏なことを考え始めたそのとき、一つの小箱が現れる。
「なんだ....これ.....」
手乗りサイズの小箱と言った風貌のそれは、男に近寄ると、強引に胸の中に自らねじ込んだ!
「ぐぅ!?.......なんだこれは......力が、力が湧いてくるぞ!!」
彼の身体から強大なパワーが溢れ出す。
そのパワーはやがて、彼の身体を捻じ曲げ変化させていく。禍々しく、歪んだその体はまさに怪人と呼べるほどのものになった。
「この力があれば....!俺は....!」
怪人と成った彼は、駆けていく。
自分の捻じ曲げられた欲望を満たすために。
▽
いつの間にやらイーナと統次は、二人並んで仲良く歩く。
「.....ありがとう。美味しかったよ」
統次たちは、無事ファストフード店から離れ帰宅の途中だった。
時間のせいか、いつもは狭く感じるほどの人でごった返していた店内は、今日は何故か人が少なくすんなりと目当てまでありつけた。そのため、結果として予想より早めの帰りになったのだった。
「ちょっと休んでいこうぜ」
「......うん。いいよ」
「食べ過ぎちまった.....」
道の途中にある大きな公園のベンチに座る。
その公園は、植物園や水族館なども備える、どちらかといえばレジャー施設と言えるも言ほどの大きな公園で、日夜恋人たちの憩いの場として有名だ。
「ねえ、統次。あなたはバニーが好きだけど、どこがそんなに惹かれるの?」
「え?うーん」
「そうだな.....。ちょっと難しいけど、きれいなんだよ。くびれや、スタイルはもちろんだけど、きれいなんだ。どんなに他の要素が混じっても、一緒に共存できる、例えばさ、メイド服と合体したバニーがあるでしょ?。そのバニーは、メイド服という服にバニーが上書きされることもない、それとは逆に、バニーがメイド服を覆ってしまうこともない。奇跡的なバランスを保てる。どんなものにでも染まり、染まらせ、自らを失わない。そんな自由さと強かさが好きなんだ」
統次のバニーへの思いは止まる事を知らない。まるでせき止められ崩壊したダムのようにしゃべり続ける怒涛さは、まるで趣味を語る子供のように真剣で、楽しいそうなものだ。
「もし、この世から色んなものが消えるけど、バニーだけは残るってなったら、嫌?」
「嫌だな」
「即答」
「バニー以外が無くなっちゃったら、バニーはこれ以上発展できないし、何より華がない。バニーがあって、ほかもある。だからバニーは美しい。だから、バニー以外が無くなっちゃうのは阻止しなきゃなんないな」
彼の熱弁を聞く彼女は、耳を傾ける傍ら、転校当初のことを思い出していた。
海外からの転校生としてこの街にやってきた彼女は当初、口下手とこの抑揚のない喋り方が原因で、あまり周囲と打ち解けられずにいた。
いつも自分の席で食べる弁当は、エアコンの風が友達のように自分を撫で続け、会話のない寂しい昼食だった。
そんなときに唯一、話しかけて絡んでくれたのが兎服統次という男だったのだ。
最初は明るくてバニースーツが好きな若干、いやかなり変な人だけどいい人だな程度の認識だったのが、だんだんと彼と話していくうちにそれは好意へと変わっていったのだ。
ちなみに同学年の大抵の人にはその好意というのはバレバレである。気づいていないのは統次くらいだ。
「イーナのバニーはさ.....」
彼が自分の姿や自分のバニーガールの姿を褒めてくれるたび心が疼く、熱くなる。
そんなドキドキに彼女は心地よさすら感じ始めていた。いまだってそうだ。彼が語る姿を見るだけでこんなにも心臓が早鐘を打ち鳴らす。これを恋と言わずになんというか。
「いやまてよ....?俺もバニーを.....」
彼の横顔を見れば見るほど頬は赤くなり、鼓動が早くなる。
慣れたはずのその状態が初めて感じるようにドキドキへと変わっていく。
ずっと隣にいて欲しい。私のものにしたい。彼の姿はブラックホールのように感情を吸い取り、黒い感情を渦巻かせてしまう。
そんな乙女の恋心を憂う時間も今この瞬間に爆音によって破られる。
「爆破爆破爆破ァッ!!!!幸せはすべて爆破バクねえ!!」
無数のコードを体にまとい、大きな胸部の禍々しい意匠を作り出しているその怪人「キョウキンノイター」は自らを爆破させるようにしてその公園に突っ込んできた。
「キャァーッ」
野太い叫びが当たりいっぺんにこだまし、空気を震わせる、その空気が爆発に変わるかのように、公園の全域に爆発が響いた。
「なんだ!?」
「幸せは爆破ァァァ!!!!」
「なんだかわかんないけど、なんかやべえ!逃げるぞイーナ!」
「……わかった!」
統次はイーナの手を取り逃げようと駆ける。
「キャアッ」
しかし急に駆け出したのが悪かったのか、キョウキンノイターに見つかってしまう。瞬間閃光瞬き、狂気なほどの破裂と突風が体を襲う!
制服のブレザーがはだけ、中からバニースーツが露出する。バニースーツは傷つき、イーナの綺麗な髪の毛すらも煤だらけになってしまった。
「…!イーナ!」
「おっぱい…幸せ…爆破ァァァ!!!!」
瞬間、閃光煌めく、眼を思わず瞑ってしまうような輝きは、いつしか刺激的な爆発音にかわり、体を突き抜けるほどの威力で殴りつけてくる。
それは爆発。音の破裂から風の破裂まで、さまざまな破裂が彼らを襲った。
「だめだっ!」
身を挺して統次はイーナを庇う。破裂的な痛みが猛烈に彼の体を襲う。
「グァァァァ!!」
「統…次…?」
イーナは自分を庇うべく爆発を一身に受けた想い人の名を呟く。
土煙混じった黒いモヤの中に、彼の体は見えない。
きっとモヤがかかっているからそうなのだろう。彼女は必死にそう納得しようと言い聞かせる。だが、鼓動は早くなるばかり。時間が経つ度に最悪の想像の最悪が更新され続ける。
想像が現実味を帯びて来た、その時だった。
煙の中から、統次は立ち上がる。身体中ボロボロ、制服は見るも無惨な姿。だが、その立ち姿はまるで闇を照らす一筋の光のように、絶望の中の唯一の希望のように見えた。
「なぜ生きてる…?」
満身創痍という状態で統次は歩む。
「お前…今、バニーを傷つけたな?」
「な、何ィ…?」
「バニーを…彼女を…傷つけたな!」
怒気を孕んだその一声が、空気を、爆風さえも揺るがす。
「な、何が悪い!?俺はただ自分の欲望に素直に幸福を破壊しているだけだ!その豊満なおっぱいもな!!」
「まだ壊す気か…?」
「全部ぶっ壊すまで俺は止まらねえ!!」
「そうか…」
「お前はどうして立ち上がる!?」
統次は怪人を睨みつける。
「バニーが傷つけられた…、バニー守る、バニーがあるこの世界を守る!それだけで立ち上がるには十分だ!!!」
統次がそう叫ぶ。
「やって見せろぉぉぉ!!!」
怪人も叫び、閃光が轟く。大きな大きな破裂音は、ノイターの怒りを体現するかのように大きく広がる。炎上する地面。その炎上の後に地面などというものはなく、ただ大きな穴となるだけだ。
無論、統次は避ける間もなくその爆発に飲み込まれる。
「統次っ!」
イーナの叫びも虚しく、統次の体は炎に飲まれてしまった。
▽
そこは白い場所。初雪より白く,白紙よりも美しい。何も存在しない白。例えるならば空白、スペース。何かを待つために存在するためだけ虚空。
時間の流れも感じない、時空さえも掴めない。
故に何も見えず何もない。ただ、二つを除いては。
「あんたは…?」
「
機械とドラゴンをマッチさせたような体躯の赤い生き物。自らをラーヴァラーグと名乗るその生物は、自分をドラゴンだと言い張っている。
「ドラゴンにしては…なんか体が機械っぽい気がするんだけど…」
「昔人間の世界に降りた時にアニメとやらに出て来た同胞の姿を気に入ってな。適応しこの姿になったんだ」
「なるほど。で、ここはどこなんだ?」
「我が存在できる世界だ。いかんせん、我の存在は大きすぎる。貴様らのいる世界に顕現しようものなら世界が崩壊するだろう。だから我がお前を呼んだのだ」
「うーん。よくわからん。それより!外の世界が大変なんだ!今俺が無事なら現実の俺も無事なんだろ!?じゃあ早く…」
「焦るな」
ラヴァラーグは諭すようなどっしりとした声でそう言った。
「貴様の予想は概ね正しい。現実世界の貴様はまだ死んでいない」
「じゃあ…」
「だが、このまま返してしまえば貴様は爆破に巻き込まれ死ぬだろう」
「…嘘だろ?」
「本当だ。だから我はここに貴様を呼んだ」
「なんのために…」
「気に入った人間を見殺しにするのは惜しいと思ってな」
二つの瞳が交差する。
赤い体躯のドラゴンは、沈黙を破るように口を開く。
「貴様に一つだけやろう。あの世界を救う方法を」
「あるのか!?」
「そのために呼んだんだ」
統次とラヴァラーグの間に光が生まれる。その光はやがてひとつのメカニカルな板へと姿を変える。
大きなトリガー兼持ち手を備え付けたような感じのそれは、ゆらゆらと統次の方へ寄ってきて、手中に収まった。
「我と契約しろ」
「契約?」
「なに、契約と言っても厳格なものではない。我の力を貴様に貸す。要するに、一緒に戦う、相棒というわけだ」
ラヴァラーグの輪郭が揺らめく。
「どうだ?悪い提案ではないだろう?」
「いいぜ、乗った!」
「ふっ。ノリの良いやつだ。ますます気に入った!!」
ラヴァラーグの身体がそのデバイスへと取り込まれる。
一層煌めくそのデバイスを統次は構えた。
「ともに戦おうではないか、相棒!」
「いくぜ....!」
「「変身!!」」
『RED!DRAGON!ACCESS!!!』
『RAVVAAD STARTED!!!』
トリガーを思いっきり引き、デバイスが展開される。
ヒーローの絵柄がデバイスが展開されると同時に露出し、光が統次を包んだ!
▽
炎が統次の体を包む。
誰がどう見ても死を直感させるその状況は、イーナの心に深い衝撃と負荷を与えた。
「統次....?」
呼びかけても返って来るのは返事ではなく、炎が巻き上がる音だけだ。
もう、自分の好きな人は帰ってこない。奪われたんだ。
そのどうしようもない想いだけが募り、感情を外に押し出すように涙がこぼれてくる。
「ははははっ!!邪魔するからそうなるんだぁ!!」
キョウキンノイターは炎に近づく。トドメを刺す。その妙に疑い深い心理を実行しようとした瞬間。
輪郭が現れる。
メタリックレッドを基調としたバイザー型のシンプルながらもヒロイックな頭部と姿。
まさにヒーローと呼ぶにふさわしいその姿の名は「ラッヴァード」。
ラヴァラーグと一体化した統次の姿だ。
『我の力を一時的に鎧にしたものだ。しかし....」
「ハァッ!」
拳を握りしめ、渾身の正拳突きを繰り出す。
それはキョウキンノイターの胸筋に正確に鋭くぶつかるが、受けた張本人はびくともしない。
幹を相手にしているような感覚すら覚える。
「何だその姿は....!?まあ、いい。痛くも痒くもないからな!!」
体の真ん中、土手っ腹に破裂音が走る。凹むほどの衝撃と、気を失いそうなほどの轟が、ラッヴァードの体を襲う!
「ぐぁぁ!」
地面を覆い尽くす程の閃光と爆発、誰もが認識することすら叶わぬ大きく素早い突風が、爆裂的な突風となりラッヴァードを襲った!
もちろんどんな超人であろうと無事ではすまず、大きなダメージを負ってしまった!
「全然だめじゃねえか!」
『話を聞け。こっちに適応させる際、なにかの強大な力が貴様から出ていて100%を出しきれなかったんだ』
「俺のせいってかよ!」
『端的に言えばそうなるな』
バン、バン、バァン。と小規模な爆発が連続して起こる。
旋回するように、ぐるぐると回る爆発が間近に、骨と皮の距離に迫る。あたりの静けさは爆発の音は関係なく雰囲気によるものだろう。どうやら、人はイーナを除き誰一人していないようで、狙いは確実にラッヴァードだけだった。
近くにいるのはイーナのみ、彼女は必ず守らねばならない。その執念だけが、今統次を繋ぎ止める唯一のものだった。
「どうにかできないか....?」
『.....我には何も』
「くそっ」
(考えろ....俺。なんとかなる気がするんだよ.....)
「そうだ!」
ラッヴァードは何かを思いついたようにぽんと手を叩く。
「ある意味賭けだけど.....。イーナ、その切れ端をくれないか?」
イーナが固く握っていた、バニースーツの布端をラッヴァードが受け取る。
そして、それを固く手で握った。
『何をする気だ?』
「おもったんだ。俺がバニーを着れば最強だってな!」
『はぁ?』
ラヴァラーグが呆れたような声を出すが、統次はお構いなしだ。
「いくぜ!想像しろ.....今の俺のバニー姿を......!!!」
統次の頭に、いまのラッヴァードがバニーを着た姿が想起される。
白いスーツに赤いボディ。朱と白のコントラストはやがてきれいなシンフォニーとなり、一つの完成形を作り出す。
「見えた!これが俺のバニー!!」
パチンと手をたたき合わせ、サムズ・アップする。
「何ができたかしらねえがお前はここで殺す!!!」
キョウキンノイターが自分を爆破させながら突っ込んでくる。破裂する空気が、震え、走り、乱舞し、狂気する。自らを爆弾とする狂人のような必殺技が、今目前に迫る。
轟く轟音。日常などとうの昔に消え去った。
触手が伸びる。否、それはコードだ。無数に絡まる赤と青のコードが今にもはち切れんば仮に煙をあげ、迫ってきた!
『シュポー!!!』
イカれた爆発がラッヴァードに届く、誰もがそう予感する。だが、それが叶うことはなかった。
撃ち落とされたのだ。本物のような輝きと、おもちゃのようなワクワクを孕むその手のひらサイズの汽車に。
「よしきた!」
『それは....?』
「逆転の一手だ!」
『しかしなぜ鉄道.....』
「夢を運んでくるのはいつだって電車だ!」
『ブレイズヴァニー!!!』
近未来的な汽車の上部のボタンを押し、起動、そして展開させる。
さらに、デバイスのスロットへ装填!
『セットアップ!!STEP UP!STEP UP!』
イカした待機音が流れ始め、兎をメカニカルに落とし込んだ汽車がラッヴァードの周りをぐるぐると守るように漂う。
「さあ行こうか!」
拳を握り直す。
変身に必要なのはトリガー……故に!
「変身!!」
トリガーを握り引き切る!
『キコナシアップ!!』
『飛び跳ねバニー!魅せるぜラヴィット!!ブレイズヴァニー!!』
汽車が貫くようにラッヴァードと合体!上からアーマーが被せられるように脚から胸にかけては白く、腕から首にかけては素肌のようにメタリックレッドで、胸には機関車の機関を。
さらに頭部には兎を象徴させる白い耳と汽車にもあったV字の装飾が!
様々な要素入り交じる最強のバニーヒーローがここに誕生した!!
『まさか....貴様の強いバニーへの思いが我の鎧を作り変えたというのか.....!?ククク.....ああ、まるで予想さえしていなかった....!!最高だ!!相棒!!』
「俺の名は、「ラッヴァード」!!覚えとけ!」
最強のバニーの力を手にしたラッヴァードは声高らかに名乗る。
「はっ!また姿が変わったところで無駄ぁ!!」
「そいつはどうかな!!」
爆発する腕との殴り合い。腕がぶつかりあい爆発が起きる。突風重なり、土煙どころか地面そのものが捲れ、破壊される。
空気震える中に一筋の閃光が走る。それはエネルギー。ラッヴァードのバニーへの思いが、無尽蔵のエネルギーとなり、爆発などものともせずに拳を突き返し、キョウキンノイターの腕もろとも爆発を返上する!
「なにっ!?」
「バニーとなった今の俺は.....無敵だァァァ!!」
ラッヴァードが炎を切り裂くように右ストレートを放つ、障害物など全てぶち壊さんばかりの勢いで、キョウキンノイターの右頬を殴りつけ、彼をぶっ飛ばした!
「ぐわぁぁ!!」
「まだまだ!」
吹き飛ばされる敵に追撃をかけるべく、その兎のような跳躍力で距離を一気に詰める。
風を切り裂き、疾風怒濤にただ一つの
「ヴァートブレイド!」
剣型の武器にデバイスを装着し、トリガーを引く。
『ギラギラーン!!』
すると刀身に赤いキラメキが宿り、炎のように広がっていく。
「ハァッ!」
一太刀。
閃光とともに大きな斬撃がキョウキンノイターを襲い、大きく弾き飛ばす。煌めく粒子が大地を殴りつけ、空の彼方へ一部を飛ばす。
「決めるぜ!相棒!」
『乗るしかないか!わかった!相棒!!』
『ラヴィットビート!!セイ!セイ!セイセイセイ!!!』
デバイスのトリガーを3回引き、待機状態にする。
虹色の輝きが刀身に宿る。煌めく刃は、神秘のように、広く、強くその粒子をはためかす。刃を地面に突き刺し、炎のように虹色の粒子が右足に伝わる。
漲り滾るバニーの力を、跳躍へと変換する。
「いくぜ.....観念しやがれ.....!!!」
『ブレイズラブバーストォォォ!!』
高く、高く飛び上がる。吹き飛ぶ地面も、煌めく粒子さえも、ノイターさえも越え、炎も、風さえ置き去りにするほどの一撃が、遥か1000倍の力が滾る兎のすべてを貫くほどの蹴りが、キョウキンノイターに炸裂し、貫いた!!!
「反省しますぅ.....」
キョウキンノイターは反省の言葉を口にしながら四方爆散し、依代となっていた人間だけが残された。
▽
「これほどとはな....」
先程の戦いを眺める男が独り。
「さすがだ、愛の竜神.....」
その男はそう呟くと風に消えていった。
▽
「おお....。すげー治っていく.....」
『ふむ。我の力もここまで使えるようになっていたとはな....。まあ、事後処理は我に任せろ』
頼りになる言葉を発しながら、赤と白に変色したデバイスから放たれる光が街を修復していく。
これもどうやらラヴァラーグの力らしく、思わずイーナも感嘆を漏らしていた。
『では、我は少し寝る。久々に振り回されて疲れてしまったのでな』
そう言ってラヴァラーグは声を消した。
「......統次。ありがとう。私達を、守ってくれて」
「どうってことないよ。イーナと、バニーを守れて」
中断されてしまった帰宅の再開。
あたりはすっかり茜色だ。
「結局、バニーで帰ることになっちゃったなぁ.....」
「.......私は統次が嬉しそうだから全然これでもいい。.....明日からこれで登校は、ちょっと恥ずかしいかも」
イーナはボロボロになったバニースーツで帰宅を進めていた。
大事なところは隠せてはいるが、際どい格好であることに変わりはないので、統次のブレザーを上から被せてはいるが。
「しっかし、これは良く無事だったよなー」
イーナに被せたブレザーを見ながら統次が呟く。
そんな一言を意に介さないように、イーナが立ち止まり、振り返る。
「......私、あなたが炎に飲まれたとき、すごく悲しかったわ。だから、後悔しないように.....、これは私からの最初の意思表示」
むに、と唇が唇に押し付けられる。
それはまごうことなきキス。どんな国でも愛を示す深い深い甘美なキスだった。
「.....これから、どんどんアピールしていくから。楽しみにしてて,ね?」
少し赤くなりながらもいたずらっぽく微笑んだイーナの顔はこれ以上ないほどにかわいかった。
あとがき
このバカみたいな物語にお付き合いありがとうございました。反響.....まあブックマーク一件でもついたら続き書きます