俺がバニーになるんだよ!!!   作:不束な不審者

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シャオラッバニー大好き!!


なんだ!若さのバニー!

「買いすぎたな......」

 

 自分の席で手に持った2つのおにぎりを腹との相談でどうするか統次が考えていると、話しかけてくる男が一人。

 直瀬だ。

 

「いやー昨日はすごかったなぁ…」

「えっ…嘘だろお前あそこにいたのか!?」

「い、いや?いなかったけど、さすがに騒動くらいは知ってるよ。一応ニュースにもなったし。というかなんだその反応は」

 

 事件の翌日。

 様々な憶測飛び交う中、当事者が登校する。

 統次が当事者であることは知られていないが、やはり近所で爆発が起きたというのはなかなかのインパクトであり、みんなが口々に考察や陰謀を話している。

 

「お前、あの公園の近くにいたんだよな?」

「お、押忍!」

「だからなんだその返事は…まあ、よく無事だったな…。結構でかい爆発って聞いたぜ」

「あー…バニーのおかげで運良く生き延びれたんだよ。」

 

嘘は言ってない。

 

「バニー強すぎだろ」

「当たり前だろ。バニーは最強なんだから!」

 

 今は12時。まさにお昼時。

 小鳥も囀りいい昼食日和だ。せせらぎのように舞い散る桜もすっかり慣れた景色になった。そして彼らにとっては昼食の時間。昼休みというわけだ。

 

「…統次。隣、いい?」

「もちろん」

 

 イーナも参戦する。

 ごく日常的な机をくっつけ合い、弁当を食べる姿。

 非日常を体験した統次にとってそれは愛するべき日常の一コマであり、大事にしなきゃと思い直す。

 

「イーナ。見てくれよ、これ。逆バニーだってさ」

 

 それはそれとしてバニーだ。バニーにも色々なバニーがある。

 ベーシックなバニーを基礎にした、バニーの改造型。様々な別の衣装を取り入れた、魔改造型のバニー。

 統次が持つ冊子のバニーは、改造型のバニーである逆バニーだった。

 

「.....着るにはちょっと恥ずかしいかも」

「これは流石に俺もお前を変態と評価をせざるをえない」

「なんだとぉ...!別に俺は.....」

「でも.....統次が望むなら」

 

 通常の布面積とは逆になったバニースーツを見ながら彼女はそう言う。

 

「いや別に着てほしいってわけじゃ.....」

「.....じゃあ、着てほしく、ない?」

「.....着てほしいです」

 

「やっぱ変態じゃねえか」

「へへへへ変態ちゃうわ!」

「その態度は無理があるだろ」

「よーし、1発殴らせろ」

 

 ガタッと席を立と統次がした瞬間、制服の裾がぎゅっと握られる

 それをみた直瀬がこういった。

 

「なぁ…なんかおまら、近くない?」

 

「……言ったの。私の想いを伝え続けるって」

「…あーなるほどね」

「なにがなるほどなんだ?」

「おう。無自覚野郎は黙ってろ」

 

ごく一般的な日常。他愛もなく流れていく時間こそが愛するもののように、昼の時間は過ぎていった。

 

「......あ、そうだ。統次、このイベントに行ってみない?」

「それは?」

 

 見せられたのは、コスプレイベントと銘打たれた賑やかそうな広告だった。デジタル化の影響を受け。チラシではなくスマホでという形だが。

 

「......駅前でやるらしいの。どう?私は行ってみたい」

「コスプレイベントかぁ....。楽しそうだな!」

 

 そういうのには行ったことがないため、俺も興味を持っていたとことだ。

 

「どう?」

「行ってみようぜ!」

「やった」

 

 そう思い、統次は行くと返事をした。

 イーナは喜び、直瀬も何故か微笑ましいものを見るかのような目で見ていた。

 

「直瀬も来るか?」

「いや、俺はいいよ。というかその日予定あるんだ」

「そりゃ残念だ」

 

 こうして、統次は次の土曜日にイベントへ行くことになったのだった。

 

 

 

 その日の放課後。いつもと同じようにイーナと帰路をたどる。

 

「うーん。今日も良いバニーだった」

「.....ほんと?」

「いつもより輝いて見えたぜ!」

 

 サムズアップしながら答える統次。その顔はどこまでも晴れやかだった。

 

「.....うれしい」

「いつもありがとな!」

「.....ううん。元気づけられているのはむしろ.....」

 

 イーナが顔を赤らめ、次の言葉を言おうとしたその時、ぽんと手が叩かれる。

 その音の主はやはりというべきか統次だ。

 

「忘れてた!買い物!」

「.....え?」

「すまん!イーナ!今日買うもんあるからここでお別れだ!また学校でな.....」

 

 嵐の如く去っていく統次に、イーナは。

 

「......バカ」

 

 と呟くのだった、

 

 

「えーっと。みりんは買った....、買い忘れは.....」

 

 スーパーをあとにし、買い忘れを確認しつつ、統次は再度帰路につく。

 

「.....ん?」

 

 その傍ら、うずくまる男を見つけた。

 

「あのー....。大丈夫ですか....?」

 

 明らかに大丈夫じゃない相手に意思疎通のため、大丈夫と投げかけてみる。

 

「し、食料を.......」

 

 すると、男は消え入りそうな声で、そういった。

 

「食料?......なにか.....、あ、あった!おにぎりで良ければだけど.....」

 

 今日は食べ切れないと判断したおにぎりを懐から取り出す。

 それを男へ近づけると、なかなかの速さでおにぎちは彼の手の中へ収まった。

 

「かたじけないっ.....。いただこう....!」

「あ、ああ。俺の手作りだから味は.....」

 

 2つのそれなりの大きさのおにぎりは10秒も立たないうちに男の胃袋へ消えた。

 さらに、男の顔色はみるみるうちによくなり、先程までの目も当てられないような状況とは見違えるように成った。

 

「その優しき御心、感謝いたす....」

「そんな、かしこまらなくても.....」

「某、拙申大正(せつもうおおなり)と申す者。貴殿のお名前をお教え願いたい」

 

 奇妙な喋り方をする男は立ち上がり、頭を下げながら自己紹介を始める。

 大正時代からタイムスリップでもしてきたかのような格好は、彼のスラリと伸びた背と、整った顔により違和感をあまり感じさせない。

 

「お、俺の名前は統次。よろしく....?」

「統次.....!いい名前でござる。某、統次殿に命を救われた身として、貴殿に中世を誓おう.....」

「いやそういうのいいから.....」

「なりませぬ!ここは侍の矜持.....。困ったことがあればいつでもお呼びくだされ統次殿」

「そういうのいいから.....」

 

 そういえばこに人は家とかあるのか.....?。ここまで困窮してるならもしかしたら浮浪の身とかそういうものかも.....。

 

 統次はそう思い、追加で質問をする。

 

「そういえば....家とかって.....」

「ないでござる」

 

 おっとぉ.....。

 

 寸分の狂いのない清々しいほどの即答に、さすがの統次も困惑してしまう。

 

 ないかぁ...。家、ないかぁ.....。でも流石に放っておけないしなぁ.....。

 よし決めた。

 

「俺ん家来る?」

「いいのでござるか!?」

「まあ、流石に放っておけないしな」

「統次殿は本当にいい人でござる...!その厚意、ありがたく受け取らせてもらうでござる!」

 

 ふと、大正が考える素振りを見せる。深く深くの熟考の末、彼は腰に携えてたったなにか長いものを取り出し、殿に献上するかのように差し出した。

 

「統次殿にこれを献上するでござる」

 

 献上するように、ではなく本当に献上するようにだった。

 

「なにそれ。刀?」

「違うでござる。我が愛刀「ヒロムネ」という銃でござる」

 

 銃...?剣じゃないのか?

 

 統次の困惑をよそに、どうぞと言わんばかりに差し出す大正。

 

「いや...いらない」

「そうでござるか.....」

「と、とりあえず、行こっか?」

 

 そんなに悲しそうな目をしないでくれ....。

 

 捨てられた子犬のような目をする彼を心が痛みながらもスルーし、次の発言をする統次。

 しかし、あまりの困惑により語尾が疑問符になるのは避けられないことだった。

 

 とりあえず、風変わりな二人組は、歩き出したのだった。

 

 

「ただいまー」

「......誰も居ないのでござるか?」

 

 もぬけの殻となったリビングの明かりをパチンとつける。

 いつもと変わらぬ空間に、言葉を投げかける。

 

「親が外出中でね。帰るのは明日になるらしい」

「そうでござったか。では明日の朝、ご両親に某もあいさつに参らねば」

「そう気張らなくていいぜ。父さんと母さんには俺から連絡しといたから」

 

 どう連絡するか迷ったけど....。とりあえず死にそうな人を見つけたらからうちに泊まらせると送ったら、犬のスタンプ一個で返信が来た。

 なかなかにマイペースだな。うちの両親は。いつものことだけど。

 

「こっちが大正の部屋。汚くてごめんな」

「ご気遣い感謝いたす。しかし某とて、掃除くらいはすでにマスターしておりますゆえ」

 

 

 彼はサムズ・アップしながらそういった。

 まるで統次のくせのようだった。

 

「じゃあ、あとは好きにしてて。飯出来たら呼ぶから」

「ふっふっふ....。それには及ばぬ。某も手伝うでござる」

 

 おう。それはありがたい。じゃあその厚意に甘えさせてもらおう。

 

「じゃあよろしく頼むよ」

 

 

 数分後.....。

 

「大正!鍋!鍋!」

「うわぁぁぁぁ!!火が!泡が!新手の忍術でござるか!?」

「い、いい、いいから消火!消火!」

 

 鍋から吹き上がる炎。泡もおまけのように出てきて大惨事だ。

 まるでアルコールに引火したようだ。

 

「お任せあれ!ハァァァ!!」

 

 ブオッ!さらに炎が燃え上がった。

 

「お、おお、大正!なにした!?」

「いや某はそこの水を.....、ってこれ油!!」

 

 あちゃーとばかりに額を叩く大正。いやなんでそこに油が....。そういや俺が昨日置いたんだった。

 自分もあちゃーと思いつつ、統次は急いで水をぶっかける。

 しかし火の勢いはますばかりだ。

 

「なんでぇぇぇ!?」

「最終必殺.....!また水を!!」

「あっちょ待て....」

 

 大正が桶いっぱいの水を放とうとした瞬間。後ろから布のようなものが飛んできて、炎が食い止められた。

 統次の最終奥義が間に合ったのだ。

 

「あっぶねぇ…」

「助かったでござる」

 

 騒がしい夜は、騒がしいまま更けていく。

 

 

 とある場所、とある女がいた。

 その女はある高校で教師をしており、校則に厳しいことで有名であった。

 

「どうしてみんなあんな破廉恥な格好を.....。けしからんわ!そこ!直しなさい!」

 

 放課後の校則チェック。

 一人ひとりを厳しく指導していくが、どの生徒もどこ吹く風。

 そう、彼女の校則基準というのが狭すぎたのだ。

 

 校則を満たしていたとしても、自分が破廉恥だと思った者は片っ端から厳しく指導。これはかなり教師の中でも問題になっており、ついた異名は「マナー講師」。

 そんなこんなで彼女の指導は行き届くことはなかった。

 

「どうして....どうしてどうしてどうして!どうしてみんな私の言うことを聞かないのぉぉ!!」

 

 彼女の叫びが吸い付けるように小箱を寄せ付ける。

 その小箱はいつしか彼女と融合し、怪人に変化させていく。

 

 まるで包帯で全身をがんじがらめにし、上から鍵で押さえつけたような異形。

 

 今の彼女の名は「ロシュツノイター」。人々の露出を咎める者だ。

 

「全員....指導してやるわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 翌日。

 人が増えている気配を感じ、統次は自らの両親が帰宅していることを感じ取った。

 

「ふわぁ…。今日もいい天気…とは言えないな。ノーバニー…」

 

 外の曇天はうねり、今日の天気を嫌というほど伝える。

 

 今日はどうやらバニー日和じゃないらしい。困ったもんだ。やはりバニーというのは晴天にこそ映えるもの。

 バニーを貶す事象は全て俺が消し去ってやりたいほどだ。

 

 統次はそう考えながら、出かける準備をする。

 そう、あの日イーナから誘われたコスプレイベントに行く準備だ。

 

「父さーん!母さーん!俺もう出るから!」

「いってらっしゃいでござる。統次殿!」

「うわぁ!大正!居たのか.....」

「いたでござるよ?」

 

 差も当然のような顔で答える大正。

 そんな大正に驚きながらも微笑み、統次は言った。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

 

 

 

「今出たよ....っと」

 

 統次は、イーナに連絡を取る。機械的ながらもどこか温かみのある文字が、デバイスを通じて彼女に届く。

 返信は、すぐに来た。

 

『私もいま出たところ。逆バニー着たほうが良かった?』

 

 どうしてそんな思い切りがいいんだ。

 

 統次は顔が見えない少女を思いながら苦笑する。

 

「とりあえず急ごう」

 

 彼はお気に入りの自転車に乗り、駅へ向かって爆走し始めた。

 

 

 

 

 数十分後。

 

「ついたぁ....」

 

 彼は自転車を適当な駐輪場に止め、イーナとの待ち合わせ場所に向かう。大規模な立体駐輪場をダンジョンを攻略するかのように歩きながら、イーナの格好に思いを馳せる。彼女がどんな格好をしているかは聞かされていない。

 だが、統次のバニーに関する第六感が、彼女がバニースーツで訪れておると言っていた。

 

「さてと....どこかな....?」

 

 統次がイーナを探している頃、その張本人といえば....。

 

「ねえねえ。俺達といいことしようよ」

「.....人を待ってる」

「でもさあ、結構待ってるんでしょ?じゃあこないって」

「.....来るよ。.....私が楽しみにしすぎただけ」

 

 ナンパされていた。

 金髪褐色の素行の悪そうな男数人に囲まれ、彼女も嫌そうな顔をしている。

 

「じゃあ俺達がもっと楽しいことをさせてさせてあげるから......」

 

 下劣な笑いを浮かべた男たちは彼女の腕を強引に引く。

 

「やめてっ....!」

「なにがやめてだ!そんな格好誘ってるようなもんだろ!」

 

 彼女は強引に連れて行かれそうになる。

 

「おい!か弱い女の子に何してんだ?」

「誰だ?」

「俺の名前は兎福統次だ!覚えとけ」

「立場をあかせって言ってんだよ!」

「そりゃ、そこの女の子の待ち人だけど……」

 

 統次の声を聞くと、彼らはバツが悪そうに顔を背ける。

 

「....ちっ、来たのかよ」

「その手を離せよ」

 

 ぐっと男の手首をつかみ、強引に離させる。

 

「なんだぁ?やんのか?」

「やらないよ。ほら、イーナ行こうっ。逃げるが勝ちだっ!」

 

 そしてイーナの手を握り、彼らは会場へと駆け出していった。

 

 

 

 

「へー、ここが会場.....」

「すっごくどきどきする.....」

 

 あのときの統次かっこよかったな.....

 

 イーナの恋心は先程の一件で加速する。

 

 そんなことよりコスプレイベントだ。

 人があふれる駅前の広場。いつもは広大で探索しきれないほどに感じる駅前も、こんなにも人が多いとまるで狭く感じる。

 コスプレは、肌色が多いものから果には甲冑で身を包んだものまで多種多様なコスプレイヤーが集っている。そんな豪華で豪胆な場所は、賑やか以外の何物でもなかった。

 

「すごいなぁ...」

「.....私の姿も、普通?」

「いや、イーナもめちゃくちゃ輝いてるよ」

「....ふふ」

 

 そういえば、結構バニーもいるな。

 眼福も眼福。これだけで来た甲斐があるというものだ。

 

「.....むう」

「お!あれは....噂の逆バニー....?」

 

 その中でも一際めだつ肌面積。

 そう、逆バニーだ。

 あるべきところに布がなく、ない場所に布がある。そんな特異な格好がそこそこのかずいる。

 もう春とはいえ、まだ肌寒いだろう。しかし彼女らはなかなかの胆力で旋回していた。

 

「おお…!マッチョメェン……」

 

 胸筋をピクピクさせながら威風堂々と歩くぬらり光る筋肉を携えた男もいた。

 さすがマッチョメン。全ての動作がボディビルだ。

 

「.....私着替えてくる。統次、ついてきて!」

 

 今度はイーナが手を引く番だ。

 彼女は近くの更衣室に彼を連れていき、バタンと扉を閉めると、眼の前で衣類を脱ぎ始めた!

 

「いや、え、まって....」

 

 な、何してんだ。俺がまだいるんだぞ!?

 

 彼の困惑をよそに、艶めかしい衣擦れが大きくなっていく。

 ぷるんとはじけるその豊満な胸は、興味関心を関係なく釘付けにしていく。ぷるんとした張りとはまた別にマシュマロのように柔らかそうでふわふわな丘の真ん中辺りにいちする薄桃色の突起の主張が激しい。

 

「.....これを着るわ」

「うわぁこっちみるな」

 

 慌てて目を背ける。

 きれいな肌色がほぼ、いや完全に全裸となった彼女から輝かしいほどに放たれる。

 そしてその手には、あまりにも服と言うには布が小さすぎるラバー素材の服。

 

 逆バニーだ。

 

「ふふ....」

 

 彼女はほほえみながら着ていく。あまりにも露出が多く、俗っぽいが、あまりにもえっちすぎるその衣装の破壊力は抜群だった。

 

「どう?」

「.....その、すごく、かわいいです」

「.....よかった。じゃあ、これ」

 

 カチリとイーナは自らの首にチョーカーのようなものをつける。

 そのチョーカーは不思議なもので、なぜか縄でつながっていた。

 そしてその縄を、なぜか統次が持っている。

 

 え....なぜ.....?

 

「行こう。統次」

「いやちょっと待ってこの紐は何ほんとに何いったい何」

 

 統次の疑問は解消されない。儚いものだ。

 縄を持たされたまま、彼はイーナに連れて行かれる。

 まるでそれは飼い主とペットのよう。

 

 しかしそんなイーナはというと。

 

 なんだろう....。この気持ち、なんだか、嬉しい。

 統次に支配されている.....。

 

「これ本当にする必要ある?」

「......兎に飼い主は必要でしょ?」

 

 周りを見る目が痛い。

 

「.....ふふっ。楽しいね。統次」

「あ、ああ」

 

 彼らは実に楽しんだ。 

 様々な物品を巡り、さまざまな写真を撮った。

 

 しかし、そんな楽しい時間も一瞬にして崩れ去った。

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

 そう、現れたのだ。

 怪人が。

 

「なんだ!?」

「.....また怪人?」

 

 包帯でがんじがらめになったようなその異形が、ムチを振り回し襲ってくる。バシュンバシュンと風を切り裂く音は、茶色いムチの残像を描く。

 

「そんな露出の服は破廉恥!死刑よ!」

 

 そんな言葉とともに繰り出されるムチが、包帯やベルトのようにぐるぐると巻き付いていく。

 まるで、強制的に露出をなくすように。

 

 

「死刑死刑死刑!!」

 

 すまきのようになった彼、彼女らは、まるで人形のように動かない。

 

「ラーグ。これって.....」

『ああ。やつを倒さなければ全員このまま死んでしまうだろう』

「んなのまかり通るかよ!」

 

 そんな理不尽に、彼は思わず叫んでしまう。

 しかし、それが悪かったか。

 

「そこのあなた!破廉恥すぎるわ!!直しなさい!」

 

 標的がイーナに向いていしまった。

 ムチがバビューンと飛んできて、イーナに直線的にただ真っ直ぐに向かう。

 

「ハアッ!」

 

 間一髪。腕でムチを弾き、イーナをなんとか守ることに成功した。

 今だじんじんとムチの跡は痛むが、そんなことを言ってる場合ではない。

 

「イーナ!俺の後ろに!」

「う、うん!」

「バニーを縛るなんて許せねえよ!ラーグ!行くぞ!」

『待っていたぞ!相棒!』

 

「....ふぅ...。変身!」

『キコナシアップ!』

『跳ねるぜバニー!魅せるぜラヴィット!ラッヴァード!!』

 

 デバイスから耳がぴょこんと伸び、勢いよく展開される。

 それに呼応するように、跳ねるようにかけまわある汽車がアンダースーツとなったラッヴァードに融合する。

 

「いくぜ...!」

 

 まるでヒロイックなバニースーツのようなラッヴァードが、瞬き煌めき地を蹴り駆け出す!

 

「はぁ!」

 

 繰り出す拳。対象に明らかに直撃した!だが、その拳に手応えはない。

 例えるならば虚像を掴んだというべきか。あったはずのそれが、あるべき場所にないのだ。

 

「なに!?」

「レディを殴るとは破廉恥ね!!死になさい!!」

 

イカれた一言とともに繰り出されるむちが切り裂くように、ラッヴァードを斬りつける縦横無尽に走るムチの斬撃。風の刃のようにあちこちを切り裂き掴んで離さない!

 

「ぐぁぁぁぁ!!」

『これ以上は持たないぞ!統次!』

 

「終わりね!」

 

 まるで台風のような旋風斬撃が、当たりを巻き込みラッヴァードに襲いかかった!!。嵐をその身に、ただ拘束され切り刻まれることしか出来ない。

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

 まるで災害に手も足も出ないように、嵐から解放され落ちてゆく。

 疾走感漂う落下がその身に一身に感じさせる。

 

「ハァ…ハァ…」

 

 着地はできたものの、かなりのダメージだ。地面にも、自分のスーツにも、まるでバニーのラバー部が入れ替わるように傷が走っている。

 

「ん?これは....」

『統次!次が来るぞ!』

「....!まじかよ!」

 

 圧倒的な速度で迫り来るムチ。螺旋模様さえ描くその一撃への防御は間に合わない。そう思った瞬間、閃光瞬く。まるで小さな爆竹を爆発させたかのような、それでいて、確かな火力と威力を放っているかのような。

 閃光が、ムチを退けた。

 

「危なかったでござるな....!統次殿!」

「大正!?」

「某の愛刀は飾りじゃないでござるよ?」

 

 まるで古風な喋り方。昨日も聞いた青年の声。そして、大正時代からタイムスリップしてきたような格好の男。

 そこに居たのはまさかの人物。大正だった。

 

「さあ、ここは任せるでござるよ、殿!」

「俺は…殿じゃねえ…。けど、任せたぜ!」

「不肖、拙申大正、助太刀いたす!!」

 

 バキュンバキュンと、音がなり響くごとに瞬く閃光。ばら撒かれる鉄の弾丸が、ムチを全て退けるどころか撃ち抜いていく!

 地面に落ちる薬莢が、カランカランと落ちる度に撃ち抜かれ数も長さも減らしていくムチ。愚直に一直線に吸い込まれるように飛んでいく弾丸は、ついにノイターへ命中した!

 

「なに!?」

「まだまだ行くでござるよ!」

 

 ノイターの包帯の間の闇を縫うように、玉が当たっていく。

 まるでひとつの糸に四方八方から弾丸を浴びせるように、しかしその姿は一筆をしたためる書道家のように、瞬く煌めきが、飛び交う弾丸が、鳴るはずのない弦音が、あるのはずのない居合が、ノイターを追い詰める!

 

「やはり正体は、闇の中、でござるか。さらには包帯へ当たる攻撃はなかったものにされると、厄介でござるね」

 

 乱射乱撃雨あられ。絶え間ない砲撃も、いつしか終わる。

薬莢の排出が一瞬、止まったのだ。

 

「レディに鉛玉なんてマナーがなってないわぁ!!!喰らいなさい!!!愛を凌駕するムチ(ブラボー・ラブラッシュ)!!」

「がぁぁぁ!?」

 

 一瞬は命取りだった。復活したムチが風のように隙間を縫い、嵐の如く斬撃を押し付ける。

 吹き飛ぶ大正。突風のようなムチは止まることを知らずに当たりを巻き込み瓦礫さえもぶち壊しながら迫る。

 

「ぐうっ……!これでは…!」

「セイヤッ!」

「統次殿!!」

 

 ムチが切り裂かれる。煌めく赤の閃光携えた、刃がムチを切り刻んだのだ!

 

「あらぁーっ!?どうやら特別罰則が必要なようですねぇ…!?」

「そんじゃあお仕置バトルと洒落こもうじゃねえか…!」

 

 ムチが、弾丸のように射出される!斬撃纏う鎌鼬のようなムチが、全方向から襲い掛かる!

 風さえ切り裂き風の妖怪を突き通す斬撃が、ラッヴァードに届く。刹那、刃が抜刀される。白の閃光は銀の刃の光。

 瞬く間にパラパラと落ちるムチだったもの。それは鎌鼬のように襲いかかるムチの弾丸そのものだ。

 

「いったいどこからそんな力が……」

「考えたんだよ」

 

 この状況を打開するには、なによりも隙間を縫うという力が必要だ。

 そしてさっき見かけた肌の露出。やはり、肌の露出は感覚を鋭くするみたいだ。

 ならば、それにあったバニー。最高のバニーは唯一つ。

 逆バニーだ。この露出は感覚をするどくすると同時に、最高に可愛いくてかっこいんだ。

 だから.....!

 

「バニーについて考えてたらめっちゃくちゃ感覚が鋭くなった!!」

「何を馬鹿な!?」

「馬鹿でもなんでもいい!今の俺ならお前の攻撃を全部見切れるぜ!!」

「ほざくなぁ!!!!」

 

 水のように強かで自由なムチが、音もなく、強大な気配を発しながら近づく。まるで自由な刃がラッヴァードを囲うように肉薄する。切り裂き、嵐が巻き起こる…ことはなかった。

 

「セイヤァッ!」

 

 貫く一刃。ただ一つの線にすら思える太刀筋が、空を震わせ風を切り裂きムチを切り裂いた!!

 

「なんですって!?!?」

「よっしゃあ!見えた!!最強のバニー!!」

 

 隙を見つけ、仕留めるかのごとく豪胆で隠匿に、大胆に透明に迫るムチ。圧倒的でこれまでを凌駕する斬撃が、肉迫する…!

 しかしそれは、大正に当たることはなかった。

 

 そう、銃を携えた手のひらサイズの汽車がムチを撃ち抜き吹き飛ばし、突撃してきたのだ!

 

『ギャクト!!』

「いくぜ!再変身!」

 

『キコナシアップ!』

『想像の発展!最後の逆転!ギャクトバニー!!』

 

 色が変わっていく。

 これまで白かった場所は赤く、赤かった腕が白く。

 バニーを逆転させ、因果すらも超越するように、まるで、逆転するかのような姿はまさに、逆バニー。

 頭部の耳のようなアンテナが、より強く周りの音を拾う。その感覚はより鋭利に、さらに俊敏に。

 肌で感じる逆バニーを握りしめ、銃を構えた

 

「行くぜ…!引き金は…」

 

 ブレイブソードがガンモードへと変形し、あたりの空気を、気を、バニーへの思いを集めるように銃口に力が溜まる。

 

「許さないわぁぁぁ!!!」

 

 弾丸の形を形成し、ただ一撃を用意する。狙うは1点。

 

「二度引かねえ……!」

 

 デバイスのトリガーに手をかける。それを思いっきり引き、エネルギーさらに貯める。

 滾る力は銃身を伝わり銃口へ。バニーへの思いが、弾丸を引き止める留め具になるように強くなる。

 

「1発が全てだ!!!」

『バックザラヴァーニッシュ!!!!』

 

 撃鉄がドラマチックに響き、弾丸を射出する。バニーへの思い、そして逆バニーを知った喜びが、弾丸を加速させるように、威力を高めるように、防御するかのように固められたムチをぶち破り、ロシュツノイターを撃ち貫いた!!

 

「ぐぁぁぁぁ!!!やりすぎたわぁぁぁ!!!」

 

 そうして、変身者だけを残し、爆散したのだった。

 

 

「ありがとうな。大正」

「いえいえ。某はあなたの家臣。このくらい.....」

「いや、友達に感謝を伝えるのは普通だろ?」

「友達?某が?」

 

 差し出した手を、ゆっくりと受け取る大正。

 

「ああ」

「......ありがとうございます。では、某はこれで」

「一緒に帰ろうぜ?」

「いえ、ご両親から買い物を頼まれていて.....」

「ああ。そういうこと.....」

 

 彼は歩いていく。

 そのさり姿はまさに文化人という雰囲気だった。

 

「......統次。帰ろ?」

「ん?ああ、イーナか....ってその格好はまさか....!」

 

 その格好は、あのときと同じ。

 そう、逆バニーだった。

 縄付きで。。

 

「そうだよ。じゃあ、一緒に帰ろ?御主人様」

 

 結果として、帰路の周りの目は、かなりどころじゃなく痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

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