業火の覇王譚   作:覇者

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志々雄とロックス 世界の王を目指す男達

 

 

 ロックス・D・ジーベックと志々雄真実。共に世界の王を目指すと決めた者どうしは出会い、未だ海賊団すら結成していない二人は、新世界の海の上で激突した。

 

 

「……!!!」

 

 

「……うぐっ!!!」

 

 

 ロックスと志々雄の覇気を込めた刀が激しくぶつかり合う。現状、剣術と覇気の練度においてロックスが遥かに志々雄を上回っている。動物系幻獣種の能力者である志々雄はフィジカルの強化が成されているが、それも現時点では同等かロックス以下。

 その為、志々雄は歯を食いしばって耐えているにも関わらず押されており、対するロックスは涼しい顔だ。

 

「ヴォハハハハ!!どうしたァ!?噂の龍の力はこんなモンかァッ!!?」

 

 余裕で笑って挑発までしてくる始末。そしてとうとう押し切られ、志々雄は後ろに吹き飛ばされる。

 

「ぐおぉ……ッ!!!」

 

「──真実!!」

 

 吹き飛ばされていった志々雄を心配するグロリオーサ。だが、大丈夫だと信じているグロリオーサは叫ぶような真似はせず、見詰めるだけだ。

 志々雄は、何とか空中で態勢を立て直すと、人獣型へと変型する。通常型態では勝てない上に、下は海で落ちれば能力者の自分はそこで終わり。よって、即座に変型したのだ。

 

「まだまだこれからだァ──!!」 

 

「ヴォハハ、楽しませてくれよぉ!?」

 

 志々雄が飛翔して突撃し、上段から刀を振り降ろす。ロックスは左足を引いて半身で躱し、右腕を横薙ぎで一閃。それを志々雄は一歩後ろに跳んで回避し、再び距離を詰めて志々雄とロックスが同時に同じ構えを取る。

 

 

「!!!」

 

 左から右への袈裟斬り。✖の字に交差する二人の刀がまたも押し合うが、まだ志々雄が劣勢。だが、志々雄は凶暴な笑みを浮かべて更に力を込めていく。そして、押されていた刃が止まった。

 

(──ほぉ?面白ェ……!さっきと同じ覇気と力じゃこれ以上押し込めねェ………!!)

 

「───フンッ!!!」

 

「ッ!!」

 

 さっき迄と同じ力だと押し込めない。覇気の出力も膂力も増しているの一合で察したロックスが更に力と覇気を込め、志々雄の刀が弾かれる。そして、胴がガラ空きになった志々雄に二撃目を叩き込む。

 

 

「!!」

 

 

「──ゴハァッ!!」

 

 志々雄に叩き込まれたのは刀。つまり、攻撃は斬撃の筈だ。しかし、ロックスの剣技はまるで巨大なハンマーで殴られたかのような衝撃で、腹に叩き込まれた志々雄が血反吐を吐いて後ろに後退する。

 

 

「!ヴォハハハハ!!今のを喰らって倒れねェかァ!!!」

 

 

「──当然だ!!これからが愉しいんだからなァ!!!」

 

 

 口から少なくない血を吐いても膝をつかない志々雄を見て、更に嗤うロックス。志々雄もまた、燃える無限刃の炎を更に燃え上がらせ、戦意を滾らせる。

 

 

「「オラァァアァァァッ!!!」」

 

 

 「!!!」

 

 

 

 滾った戦意を乗せた刀をぶつけ合う二人。そんな二人の戦いを見物しているニューゲートは、ロックスの相手である志々雄に興味を持ち、連れだったグロリオーサに話し掛ける。

 

「おい、オメェ」

 

「………私はオメェじゃない、グロリオーサよ」

 

 ニューゲートが名前ではなくオメェ呼びした為、志々雄達の戦いから目を逸らさないままに名乗るグロリオーサ。因みにニューゲートは、巻き込まれるのはごめんだと志々雄の船に移っている。 

 

「そうか。で、グロリオーサ。オメェ、あいつとは長ェのか?」

 

「いいえ?出会ってからまだ十日も経ってないわ。彼が丁度、天上金を奪った日に出会ったもの……」

 

「じゃああいつが、何であんな事をしたのかも知ってんのか?」

 

「……さぁ?聞いた訳じゃないから知らないわ。でも多分、狙ったんじゃなくて偶然通りがかったから、衝動的に襲って奪ったんじゃないかしら?それまでは彼、私達と話してたから」

 

「グラララ、なるほどな。だとしたらあの志々雄って奴ァ相当イカれてやがる……!!」

 

 名乗られたニューゲートはしっかりと訂正してから、志々雄との付き合いの長さを聞く。だが、グロリオーサが志々雄と出会ったのが天上金強奪事件の際に出会ったと知り、今度は何故あんな事をしたのかをグロリオーサに問う。

 グロリオーサ自身、理由には興味なかったので聞いてはいなかったが、その時の志々雄の雰囲気から思った事を伝える。その答えに納得したニューゲートは笑いながら、志々雄への感想を口にした。

 

「……せめてワイルドと言ってほしいわ」

 

「ワイルドの範疇を超えてんだろ。………ん?そう言えばオメェ、九蛇の船長だったよな?──何であいつと?」

 

「女がたった一人の男に着いていく理由、言わなきゃダメかしら?」

 

「いや……野暮な事聞いたな。忘れろ」

 

 志々雄の事で軽口を叩き合う二人は、それなりに話が通じ合っているようだ。二人共が、ロックス達のように好戦的な性格じゃないのが大きいだろう。

 それからニューゲートが思い出したかのように、何故志々雄に着いていくのかを聞くが、グロリオーサが誤魔化した為それ以上は聞かなかった。

 そんな二人は会話しつつも、ロックス達の戦いからは目線を逸らさず観ており、志々雄が圧倒的劣勢に立たされているのは明白だった。

 

「!!」

 

「うっ!!ゴフッ!!…………グッ!!」

 

「……あん?俺の右手を掴んで何するつもりだァ?」

 

 今も志々雄の腹には剣が突き刺れて血を吐いた。だが、歯を食いしばって意識を保ち、左手でロックスが剣を持っている右手を掴んだ。刺された状態での行動に何をする気かと問い掛けるロックス。

 その答えは、次の志々雄の行動で示された。

 

 

「弐の秘剣・紅蓮腕ァ──!!!」

 

 

「!!!」

 

 

 ロックスを掴んだ左手に添えられた右手の刀を引き、摩擦と能力で起こした火炎を相手にぶつける技─紅蓮腕。武装硬化+人獣型の鱗の硬さでもって自分にダメージなしで使える人獣型専用技だ。

 今の志々雄では、ロックスにクリーンヒットさせるのは至難の業。それを理解した志々雄が、肉を切らせて骨を断つを実践するべく、態と刺された後に腕を掴んで直撃させたのだ。

 

「ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!」

 

「………悪くねェ。……そういうのは嫌いじゃねェが…お前の方がダメージはデカいぜ?どうするよ?」

 

 掴んだ状態からの炎。回避が無理だと判断したロックスは咄嗟に全身を武装で覆い、右手は更に強い覇気で覆ってダメージを最小で食い止めたようだ。

 漂う爆炎の中から出てきたロックスは、右手に多少の火傷を負っているだけで、まだまだ余裕を感じさせる。

 

 

「知れた事言ってんじゃねェ……!!俺はまだ気を失ってすらねェってのに、終わる訳ねェだろ!!こんなに愉しい戦いをよォ──!!!」

 

「ヴォハハハ!!そうだな!格付けは最後まで分からねェ……!!だからここで、分からせてやらァ───!!!」

 

 

「!!!」

 

 

 最初に仕掛けたのは志々雄。壱の秘剣・焔霊で斬り掛かっていく志々雄だが、巧みに躱し防ぎ対処していくロックス。

 その様子を観ているニューゲートが率直な感想を口にする。

 

「あのロックス相手にここまで喰らいつくとはなァ……。だが………」

 

「……えぇ、勝てないわね」

 

「何だ?てっきりあの野郎が勝つって言うかと思ったんだが?」

 

 志々雄は勝てない。そうニューゲートが言おうとしたところへ、意外にも同意を示したのはグロリオーサ。それに疑問を感じたニューゲートは、不思議そうな顔をする。

 

「今の真実はまだまだ発展途上よ。真実の潜在能力はこんな物じゃないわ。……死なないかだけが心配だけど………」

 

「なら何で止めなかったんだ?」

 

「あの人は言っても止まらない事くらい分かってるわ……。それに真実は死なない(・・・・・・・)って信じてるから……!!」

 

「……そうか」

 

 死なないかを心配しているが、志々雄を理解しているが故に止めずに信じているグロリオーサ。その信頼性を聞いたニューゲートは、肩を竦める。

 そして、視線を戻した二人の視線の先には、致命傷を受けて全身から血を流している志々雄と、全身に傷ができても致命傷には至らず、血を流しながらも笑って立っているロックスがいた。

 

「ヴォハハハハハハ!!まだ立つか……!?そうまでして何で戦いやがる!!?」

 

「ハァ…ハァ…ハァ…。馬鹿な天竜人どもが、いつまでも上にのさばってちゃァ目障りだからな…!!俺がその世界の王の座を奪い取る!!それだけの事だァ──」

 

「……面白ェ!奇遇にも俺と同じって訳だ。……だが、世界に王は二人と必要ねェ!!お前もそう思うだろ?」

 

「フハハハハ!ハァ…ハァ…。確かにな」

 

 全身から血を流し、致命傷も負っている志々雄と所々傷を負い、血も流しているがまだ余裕のあるロックス。互いの信念を共有し合った二人は、同じ答えへと辿り着き、互いに最後の一撃を放たんと刀を構え、覇気と力を込める。

 

 

「行くぞ!!ロックスゥ──!!!」

 

「来い!!志々雄ォ───!!!」

 

 

 互いに血を流しながらも嗤う二人は、雄叫びを上げて距離を詰めていき、互いの技を繰り出した。

 

 

「──終の秘剣!!火産霊神(カグツチ)ィィ──ッ!!!!」

 

 

「───深淵の呪い(パンデモニウム)ゥッ!!!!」

 

 

「!!!!」

 

 

 無限刃に纏わせた炎の竜巻による志々雄の一撃と大上段から振り降ろされた強烈な覇気が乗ったロックスの一撃。それらの衝突は、今日一番の衝撃波を生み出し、激しい轟音と共に周囲の海と軍艦を揺さぶった。

 

 

「オラアァアァァァッ!!!!」

 

 

「───ウオリャァァァッ!!!!」

 

 

「ッ!!!!」

 

 

 激しくぶつかり合った志々雄とロックスの一撃が拮抗したのは数秒であり、やはり覇気の練度で圧倒的に上なロックスが押し勝った。

 志々雄の一撃は弾かれロックスの一撃が直撃し、船の外まで吹き飛ばされて海に落下した。

 

「真実ッ!!!」

 

 

 それを見たグロリオーサは慌てて海に飛び込み、沈んでいく志々雄に向けて潜っていく。そして追いついたグロリオーサは志々雄を抱え上げ、上昇して船の甲板に横たえる。

 

「大丈夫!?」

 

「──ゲホッ!ゲホッゲホッ!………ハァ──。くそ……もう体が、動かねェ」

 

 戦闘の蓄積ダメージと最後の一撃のダメージ。更に海水に浸かった事で力が抜け、流石に動物系の能力者の志々雄でも意識を保つのがやっと。最も、意識を未だ保てている志々雄が異常なのだが。

 

「ヴォハハ!まだ生きてるどころか、意識まであるとはな!……で、まだやるか?」

 

「ハァ…ハァ…バカ……言うんじゃねェ。俺はもう……指一本…動かせねェ…!俺の………負けだ…!!」

 

「じゃあ、俺の船に乗るよな?」

 

 志々雄の船に乗り込んできたロックスは、志々雄の意識があることに笑い、まだ続けるかを問う。しかし、志々雄は最早一歩も動けない状況な為、大の字に寝転んだまま負けを宣言する。それを聞いたロックスは、元々の目的だった勧誘を改めて行う。

 

「あァ……、ハァ…ハァ…。負けた以上は勝者に従う。………だが!!」

 

「──?」

 

「テメェが死んだらそこまでだ…!!その後の玉座は、俺が貰う……!!!」

 

 敗者の生殺与奪の権利は勝者の手に委ねられる。勝者のロックスが船に乗れと言うなら、志々雄は断ったりはしない。だが、ロックスが死んだ時はまた自分の好きにすると宣言する。

 

「──あァ、そんときゃ好きにしろ。俺が死にゃあこの集まりも解散だろうからな……。まァ、そんな事はねぇけどな!!──ヴォハハハハハ!!!」

 

「……チッ」

 

「おい、悪ィがお前の船を使わせて貰うぞ?奪ってきた軍艦は、お前らの戦いでぶっ壊れちまった」

 

「好きにしろ」

 

 ロックスにとっては己の死後に志々雄が何をしようが関係ない。死ぬことはないと笑いながらも頷く。

 そうして話しているロックスと志々雄の元に、今度はニューゲートが近付き志々雄の船を使うと言い出した。それも最もな話で、ロックスと志々雄の戦いはロックス達の乗っていた軍艦の周囲で行われたもの。だが、その激しい戦闘に船は耐えられず、最早船として機能しないのが素人にも分かる状態になっていた。

 その為、ニューゲートが船にあったであろう物を担いで持ってきたのだ。そして、それは志々雄のせいと言えなくもない。幸い部屋は余っており、ニューゲート並みの巨体でも問題ない。よって、受け入れた。 

 こうしてロックスの一行は、志々雄とグロリオーサを新たに加え、船を発進させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロックスとの戦いが終わった後、動けるようになった俺は、自分で体の傷の処置をしていた。長く独りで戦っていた俺は、医月の爺さんに傷の手当てについて教えを受け、ある程度なら自分で処置出来るようになっていた。ゾオン系の能力なのも相まって、回復は早い。

 

「──随分と上手いなァ。誰かに教わったりでもしたのか?」

 

「──ロックスか。なに、世話になっていた医者の爺さんに少しな…。それより、何か用か?」

 

 そうして包帯を巻いていると、ロックスが話し掛けてくる。内容は雑談程度の物。だが、その為にロックスが来たとも思えず、俺は何の用かと問い掛ける。

 

「なに、お前の知ってる奴に使えそうな奴がいねぇかと思ってな。……どうだ?良さそうな奴を知らねぇか?」

 

「…………出来ることに条件は?」

 

「そりゃ勿論、強ェのが最低条件だなァ」

 

 どうやら次に勧誘する人材を探すのに、俺が誰かいい人材を知らないかと思って聞きに来たようだ。生憎とヤノ国から出てきたばかりの俺に紹介できる奴は限られるのだが、強ければ良いと言うなら話は早い。

 

「それなら俺の故郷に一人、うってつけの奴がいるぜ」

 

「……ほぉ?強ェのか?」

 

「今まで俺は散々そいつと戦ってきたが、まだ決着がついてねぇ………」

 

「……つまり、お前と互角って事か。決まりだな……!!……そいつの名は?」

 

「ヤノ国の極道──シキ!!」

 

 俺の言葉に興味を持ったロックス。俺と互角だと知って、次に仲間に誘う事を決めたのだろう。ロックスはニヤリと笑って名前を問い、俺も肩越しにロックスに名前を告げた。

 この瞬間、特に行き先も決まっていなかった俺達の目的地が決まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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