志々雄とロックスが出会ってから、早くも数年の月日が過ぎた。未だ海賊団を立ち上げてすらいないロックス達は、次々と海賊船を標的にしていった。
海賊の世界に古くから伝わるゲーム──その名もデービーバックファイト。これは、海賊団同士が様々な勝負をし、“仲間”や“旗”を奪い合う無慈悲なゲームだ。だが、ロックスはこのゲームを利用し、目ぼしい船員達をかき集めていった。
そのメンバーは───。
海賊 エドワード・ニューゲート
殺し屋 志々雄真実
元九蛇海賊団船長 グロリオーサ
極道 シキ
科学強盗 ミス・バッキン
“西の海”のギャング 首領・マーロン
海賊教祖 王直
密輸海賊 ガンズイ
──今の時代を騒がせる若き悪党のオールスター。未だ“旗”を掲げず“悪党”達の寄り合いとして、次の仲間を誘うべくロックス達は船を進めていた。
「すげェ奴がいるんだ!!お前らもビビるぜ」
─とは、ロックスの言葉。そんなロックスの言葉に興味を持った船員達も楽しみにしながら、ロックス達はエルバフへと辿り着いた。
「ここがエルバフ。……の筈だ!!」
「おいおい……確信がねェのかよ」
「……ハァ。ロックスの適当さは今に始まった事じゃねェだろ?諦めろ、ニューゲート」
「そうよ、生き当たりばったりなんだから」
自信満々にエルバフへ行くと言っておきながら、筈だなどと言うロックスに呆れるニューゲート。その横で溜め息を吐いた俺と肩を竦めるグロリオーサ。
「──おい!ふざけんなよ志々雄、グロリオーサ!!俺ほど計画性がある奴ァいねェだろ!?」
「フハハハッ!!だってよ!ニューゲート、グロリオーサ!!」
「グラララララァ──!!!」
「──ウフフフ!!ツボに入っちゃいそう……!!」
「てめェら、ぶっ飛ばすぞ!」
堪らず俺とグロリオーサに突っ込むロックス。ロックスの計画性かあるという突っ込みには、認識が違いすぎて笑う俺。そしてニューゲートとグロリオーサに話を振ったが、ニューゲートは大声で爆笑し、グロリオーサも右手を口に添えて笑いを堪えきれていない。これにはロックスも、額に青筋を浮かべて怒鳴り散らしていた。
「ジハハ、じゃれ合うのもいいが、遠くから何かが来るのが聞こえるぞ?ロックス」
「……どうするの?」
「逃げるかぶっ倒すか……」
「全部ぶちのめして進むに決まってんだろォ!!そいつらで、憂さ晴らしだァ!!!」
「マジかよ!」
ロックスに呆れるニューゲート達を余所に、見聞色で島内を探っていたシキが遠くから近づく気配の事をロックスに伝え、バッキンが顔を向けてどうするかと聞く。王直が一人どうするか考える中、ぶちのめすと告げるロックス。ガンズイがツッコミを入れるのが早いか、何かの猛獣の咆哮が響いてきた。
「グオオオオォォォッ!!!」
「!周りの木とかもでけェが、獣共もでけェんだな……」
その咆哮と共に姿を表した全貌は、とにかく巨大な首長竜のような獣、角を生やした獣、翼竜の如く飛ぶ獣などなど。計八匹程の猛獣の列が俺達の居る方に走ってくる。そこで俺達は気付いたが、周囲の木々から生物に至るまでが巨大なのだ。
「……さて、誰がやるよ?」
「フン、面倒だから一人一殺でいいだろ……」
「八匹しかいねェが──」
「じゃあ私が観てるわ!」
「早ェな、オイ!ジハハハ!!」
無限刃を抜きつつ口角が上がるのを感じながら、誰がやるかと問い掛ける俺に面倒臭そうに鼻を鳴らして薙刀─“むら雲切”を担ぐニューゲート。一人余る事を指摘しようとした王直の言葉に、食い気味に観戦を宣言せるバッキン。その速さに笑いながら刀を抜くシキ。
そうこうしている間に、大分距離が縮まってきた事で、各々武器を抜いたり構えたり、戦闘態勢を取る。
「っしゃ、行くぜェ!!───オラァ!!!」
「邪魔だァ!!!」
真っ先に突っ込んだのは、好戦的なロックスとシキ。振りかぶった刀を横に一閃し、斬るというより吹き飛ばすロックスと、二振りの刀を交差させるように振るって斬り裂くシキ。
「しょうがないわ───ねっ!!!」
「シャラァ──!!!」
「──フン!!!」
次に動いたのがグロリオーサ、俺、ニューゲート。
グロリオーサは薄刃乃太刀を猛獣の首に巻き付け、首を輪切りに切断。俺は下から上に無限刃振るって猛獣を焼き斬り、ニューゲートが地震の力を込めた薙刀を一閃。
「この距離なら……即死だッ!!!」
「退けぇ!!!」
「デカいだけの雑魚がァッ!!!」
最後はマーロン、王直、ガンズイ。マーロンが貫通力の高い狙撃銃を眉間に構え、覇気を込めた弾丸で撃ち抜く。
王直は頭上から組んだ両手を振り降ろして猛獣を地面に叩き付け、ガンズイが覇気を込めた爆発する拳で殴り飛ばす。
「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
斬られた所から血を噴き出し、殴られて血を吐きながら倒れていく計八匹の猛獣達。
各々一匹ずつ倒した俺達(バッキン以外)は、倒れる猛獣達には見向きもせずに歩き出す。
「しっかし、どうなってんだこの島。入り口は何処だ!?」
「さァな……。だが、海と反対方向に進んでけば島の中心辺りに行けるんじゃねェか?」
「それもそうね」
明らかに入り口ではない場所から入った俺達は、入り口から向かった方が早く巨人の村に辿り着けるだろうと見渡す。
しかしそれらしいものはなく、案を出したニューゲートに、さらりと会話に入ってきたバッキンが頷く。それに便乗してまずは中心を目指そうと、俺達は先へ進んでいく。
雪の降る山を越え、森を越え、歩いているとデカいガキが泣いているのが見えてきた。
「おお!!いたいた!!見ろ、巨人のガキだ!!やっぱここはエルバフで間違いねェだろ」
「ジハハハ、このガキ悪魔みてェな
「巨人にしてもデカすぎだ。泣いてんのか?コイツ……」
「そこらのガキとは目つきが違う……!相当な人生を歩んでそうだな」
巨人のガキを見つけた俺達は、近付いていく。巨人のガキを見たことでここがエルバフだと確信するロックス。シキ、ニューゲート、そして俺もその顔を見てそれぞれの感想を零す。
「よし!!ハイと2回答えろクソガキ!!なぜならそれが俺の求める答えだからだ!!」
島に上陸して初めての話の通じる相手を見つけたロックスは、人差し指と中指の二本を立てて二つの質問を口にする。
「──1つ目!!ここは“エルバフ”だよな!?」
ロックスの一つ目の質問は、ここがエルバフかどうかの確認。そして二つ目は───
「2つ目!!いるよな!?ハラルド!!」
──ハラルドという男の動向だった。顔の前までいってズイッと顔を寄せて覗き込むロックス。すると、泣きながら寝転がっていたガキは起き上がり、地面に腰を下ろして話し始めた。
「──ここはエルバフだ。──でも、親父はいねェぞ!!遠征中だ…!!」
「待て待て“親父”ときたか!ハラルドのガキって事か!?」
「お前達チビ人間か!?…初めて見た、本当に動いてる」
「アハハ、かわいい♡」
「そうねぇ。私も真実といつか……♡」
ここがエルバフなのを認めたガキだが、ハラルドとやらは居ないようだ。だがロックスはそれよりも、ガキの言った親父という言葉に驚いている。
ガキの方も、どうやら普通の人間を見るのが初めてらしく、その様子を見たバッキンとグロリオーサはかわいいと意見を一致させている。グロリオーサの方は別の事も妄想しているようだが。
そんな中、話を進めようとロックスがガキに話し掛ける。
「遠征っつっても連絡くらい取れんだろ。お前、名前は?」
「ロキ」
「よし、ロキ。俺の言う通りにしろ。今から家に帰って誰かに“親父”と連絡を取って貰え、用件はこうだ!!」
続けて告げられるロックスの話の内容は──
「ロキが大ケガをしたから、至急エルバフへ帰還されたし」
──要するにハラルドを連れてこい、という事だった。それを聞いたロキが怒鳴り散らす。
「はァ!?何で俺が人間族の言う事聞かなきゃならねェんだ!!」
それから目を吊り上げたロキが左拳を握り締め、無謀にもロックスに向かっていく。
「それに親父が俺のケガくらいで、いちいち帰ってくるか!!弱そうなくせに俺に命令しやがって!!」
「止めとけガキ」
「いてェ!!」
「言わんこっちゃねェ」
「ヴォハハハ、ホラ見ろ大変だ!!ロキが大ケガした!!」
そんなロキに返ってきたのは、言葉ではなくロックスの剣だった。振るわれたロックスの剣が腹のド真ん中に命中して見事に大ケガを負い、ロックスは大笑いをする。因みにニューゲートが止めようとしたが、全くの無駄だった。
こうしてロキは、ロックスに言われた通りに連絡する事になった。
──エルバフ“アウルスト城”
ロキの怪我を知ったハラルドという男はまず最初にロキに会いに行き、その後ロックス達の所にやって来た。
「ロックス!!悪評は聞いてるぞ。何をしに来た!?」
「ハラルドォ!!会いたかったぜ!!!」
本当にハラルドとロックスは知り合いだったようで、挨拶もそこそこに本題へ入った。
「俺の仲間になれ、ハラルド!!!世界政府はお前の要望なんざ聞かねェだろ!?分かったろ!?あの時!!!」
「バカ言え!!悪名高いお前らなんかと手を組んだ日にゃ、他国からの信頼も一気に失う!!!」
単刀直入なロックスの勧誘はあっさりとハラルドに断られる。ハラルドの言っている事も最もで、悪党の寄り合いであるロックス一行と手を組めば、普通の人間の国家は距離を取るだろう。
「何だよ、じゃあ世界政府に支配されてェんだな!!?」
「そうはならねェ道を模索してる!!皆対等であるべきだ!!」
「眠てェ事言うなよハラルド!!エルバフは最強の戦士の国だぞ!!!気に食わなきゃ叩き潰せばいいんだよ!!!」
「昔の話だ。エルバフは変わる!!」
「人の本質は変わらねェ。戦いの血が滾ってるハズだ!」
「おい、メシくらい楽しく食えねェのか!?」
志々雄を含めて皆が酒や食い物を馳走になる中、ロックス達の話し合いは平行線を辿る一方。遂には、ニューゲートが苦言を呈する程だったが、今度はハラルドの話先がシキ達にも広がった。
「お前らだって、こんな男についてったら破滅するだけだぞ!!」
「ついてく!?このバカに!?ジハハ、笑わせんな。ウチは独立してんだ!!ロックスが死んでも俺達ァ何も揺らがねェ!!」
「ええ、だけど彼の“計画”が魅力的なの。大儲け出来そう♡」
「ロックスは仮にも、俺に一騎討ちで勝った男だ!死ぬまでは船に乗ってやるが、ロックスが死んだら俺達は好きにやる!!何も問題はねェ…!!!」
「私は真実についてくだけだもの♡ ロックスについてく訳じゃないわ」
ハラルドの破滅という言葉を笑い飛ばすシキは、仮に船長のロックスが死んでも何も変わらないと言う。それに同意するのはバッキンと志々雄だ。グロリオーサに至っては、志々雄について行っているだけでロックスについて行っている訳ではないと指摘した。
「あんた“ハチノス”という“流刑島”を知ってるか?別名海賊島。各国の監獄でも手に余る凶悪犯達が“島流し“にされる島だ」
「食糧もなく、ただ死を待つ為の無人島だったハズだがなァ」
「近年、そいつらが生き残って徒党を組み始めたんだよ!!何故だと思う!?」
「何とその島に“金鉱脈”があったんだよ!!それを聞きつけた闇の組織が手を貸して、罪人達が巨万の富を得たんだ!!それに怒ったのは政府よ!!」
「島に向かうも屈強な罪人だらけ!!近づきゃ身ぐるみ剥がされちまう」
次に口を開いたのは、マーロン、ニューゲート、王直、ガンズイだ。それはこれからの自分達の計画に関わる話。海賊島ハチノスとそこに住む罪人達が行ったこと。そして最後にロックスが話し出す。
「そこで俺達ァ政府と交渉よ!!あの島取り返したら幾らくれるか?ってよ!!金貰ったらボッコボコにしちまうね“海賊島”!!財宝は俺らで山分けだ!!──しかし、島も罪人も政府にゃ引き渡さねェ!!“ハチノス”は俺が支配し!!!島のバカヤロー共と一緒に“海賊の楽園”を作るのさ!!!政府・海軍の唖然とした顔が目に浮かぶ!!!ヴォハハハ」
ロックスの口から語られたのは、ロックスの思い描く計画。ある程度計画を話しておかないと頷く訳がないのに加え、ハラルドに対するロックスなりの誠意というものだろう。
「これが俺の人生の序章よ!!その島を拠点に海軍を殲滅、“聖地”を陥落させ!!末は…“世界の王”に俺がなるんだ!!!」
「敵が巨大すぎるな…“世界”だぞ」
ロックスの覇気に溢れる力説もハラルドには響いておらず、野心も感じられない表情で料理を口にしながら否定的な言葉を返した。
「何とでも言え!!いつか誰かがやるんだよ!!!永遠に続く権力などこの世にゃねェんだ!!!行こうぜハラルド!!俺とお前が組めば無敵だ!!!」
ロックスはハラルドの意見など聞く耳持たず、諦めずに誘いをかける。
「誘うな、俺は国王だぞ!!」
「構わねェさ!!獲るんだよ!!!“世界”を!!!」
結局その日ハラルドは首を縦に振ることはなく、あしらわれて終わったが、ロキがこの話をしっかり聞いており、救われた表情をしていた。
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