ロックスの一度目のハラルド勧誘が撃沈した後も、諦めずにエルバフに行って勧誘を続けながら他にも戦力となる者達をかき集めていった。
「ヴォハハハハハハ!!ウチも随分大所帯になってきたじゃねェか!頭数も質も揃ってきた!!──なァ、志々雄?」
「フハハ、まァその御蔭で……あぁいうのも増えたけどな………」
着実に名のある連中を引き入れていっているロックスは、上手くいっている事に上機嫌に笑っている。話を振られた俺もそれには大いに同意するが、今も甲板の上で起こっていることには呆れた視線を向けた。
「おいテメェッ!それ俺の酒じゃねェか!!」
「知るか。テメェが、机に転がしてたのが悪ィだろうが」
「何だと!!」
──と、いった具合に血の気の多い悪党が集まった結果、喧嘩から些細な事で殺し合いにまで発展する。流石に実力のある主力達は、早々殺し合う事はないのが救いだろう。俺も今のところ、この船に乗って以降はシキやニューゲート達と本気で殺し合いになった事はない。
だが、下っ端連中は割とすぐに殺し合いになり、誰かが死体となって海に流れていく。
「チッ!下っ端どもが……!!まァ良い、自分で殺し合いを始めたんなら自己責任だ!」
「おっ?オメェらがそんな事言ってるから、ニューゲートが案の定止めに行ったな……。相変わらず仲間思いなこって」
下っ端とはいえ、一応数として戦力に入る。そんな奴らが削り合う事に舌打ちするものの、自己責任で済ませるロックス。そこへシキが上からフワリと降りてきて、止めに入ったニューゲートに呆れている。シキや俺、ロックスは全員同士の殺し合いを止めようとはしないが、ニューゲートはそれを極端に嫌い、見かけたらどっちもぶん殴って止めている。それを見ていたシキがふと、思い出したかのようにロックスに話し掛け、志々雄もそれに同意する。
「そういやロックス。さっきあんたも言ってたが、そこそこ戦力も集まってきたのに、まだ動かねェのか?」
「それは俺も思ってた。ハラルドは失敗続きだが、他は成功してるからな……!どうなんだ?」
「………ヴォハハ、そうだなァ。あと二、三人は使える奴を引き入れてからだな!!ある程度纏まった戦力を揃えてから、“ハチノス”を占拠する!!」
そろそろ他の船員も気になっていたであろう質問。その答えは、慎重を期すもの。これだけ聞くとロックスらしくないと思うかもしれないが、ロックスの本質は大胆に行動する輩でありながら綿密に作戦を練る策略家の面もあると俺は思っている。つまり、この答えは俺にとって不思議な事ではなかった。そしてそれはシキも同じだったらしく、それ以上を聞くことはなかった。
そうして話を一度区切った俺は、酒を瓶でラッパ飲みしながら新聞をめくっていく。今日の記事は中々面白い内容がないと思いながらめくっていると、一つだけ面白い記事を見つけてニヤリと笑う。
「──なら、次勧誘するのにコイツはどうだ?菓子の為に国すら滅ぼす、イカれた女海賊だ!!」
──偉大なる航路 前半の海
今、この海にはかつてエルバフの村を襲った、生まれついてのモンスターと呼ばれる一人の女海賊が航海をしていた。
「ハ〜ハハママママ…!!今日も元気かい?オレの子供達!」
その名前は、シャーロット・リンリン。つい数年程前に男を襲って赤ん坊を産み始めた女である。既に一人は育ち始め、二人目もつい先日この世に生まれ落ちた。
そんな子供二人の様子を見に来たのだ。
「──あぁ、船長ですか。ペロスペローはお菓子を食べて、カタクリは今ミルク飲んで寝たところですよ」
「そうかい。……可愛い顔で寝ているねェ〜」
「そうですね」
今生まれている二人の子の名前は、シャーロット・ペロスペローとシャーロット・カタクリの二人。ペロスペローはもう二歳になり、カタクリは生まれたばかりの赤ん坊だ。
そんな二人の世話を任せていた船員と子供の事を話していると、外から一人の男が駆け込んでくる。
「──リンリンッ!!!大変だァッ!!!」
駆け込んで来た男──シュトロイゼンは、船長であるリンリンに血相を変えて叫ぶ。その表情からただならぬ事察したリンリンは、努めて冷静に問い掛ける。
「どうしたんだい!?シュトロイゼン。何かあったのかい」
「──ロックスの一団だ!!ロックスを始めに、億超えの賞金首共がゴロゴロしてやがる!!!」
「───何ィ!!?」
そしてシュトロイゼンの口から語られた報告には、流石のリンリンも顔色を変えた。ここ十年足らずで幾つもの大事件を引き起こし、一緒にいる面子もただならない者ばかり。
流石の彼女でも、ロックスを筆頭とした悪の軍団には冷や汗を免れずに思考に耽る。
「どうする!?リンリン!!」
「……こうしていても仕方ねェ。行くぞ!!」
切羽詰まった声でシュトロイゼンが問い掛ける。その声に、思考から立ち返ったリンリンはこうしていてもしょうがないと判断し、接近してくるロックス達に対処するべく船室を後にした。
まるで菓子の様な模様のドクロマークを掲げた海賊船を見つけた俺達は、新聞に載っているのと同じかどうか確認する。
「──海賊船だな、あれか!?」
「……あァ、間違いねェ!シャーロット・リンリンの海賊旗だ!!」
あれかと問い掛けてくるロックスに、俺は新聞に載っている海賊旗と同じ事を伝える。それを聞いたロックスが、皆に号令をかける。
「よし!!あれが今回の標的だ!!接舷するぞ!!」
「命令すんな」
ロックスからの接舷の指示に、ニューゲートが口で反発しながらも舵をきって接近し始める。そして、目の前まで接近した所で向こうの船長─シャーロット・リンリンとその相棒のシュトロイゼンが甲板に現れた。
「ヴォハハハ!!てめぇが、今噂の海賊シャーロット・リンリンだなァ!?」
「そうだ!そう言うお前が、あの有名なロックスかい?」
「あァ、そうだ!!」
互いに目を合わせ、ロックスとリンリンはお互いに自分の認識が合っているかを尋ね、互いに肯定する。そして、自分達の探していた標的だと確信を持てたロックスが、ある申し入れをする。
「よし!!海賊シャーロット・リンリン!!お前達に、“デービーバックファイト”を申し入れる!!!」
「あァ?……ハ〜ハハママママ、面白ェ!!やってやろうじゃねェか!!行くよ、シュトロイゼン!!!」
「……クソッ!!しょうがねェ。だが、正面戦闘なら兎も角、“デービーバックファイト”ならまだ勝ち目はある!!!」
それは、ロックスが優れた人員を手に入れる為、色々な海賊団や組織に挑戦を叩き付けていた─“デービーバックファイト”の挑戦状だった。
志々雄達実力者から見れば、正面戦闘で自分達と戦えるのはリンリンとシュトロイゼンの二人のみ。つまり、勝ち目はゼロと言っていい。だが、シュトロイゼンの言う通りゲーム形式の勝負なら、勝ち目は全くない訳ではない。そして、この距離で逃げられる訳もない。
よって、二人は“デービーバックファイト”の挑戦を受けるのだった。
──結論から言うと、結局ロックスの一団の勝利となり、また新たに二人の船員がこの寄り合いに参加する事となった。リンリン達に勝機があったとはいえ、こちらが圧倒的優位だった事には変わりなく、大分粘りはしたもののリンリン達の敗北で終わった。
「ヴォハハハハハハァ──!!!この調子で更なる戦力増強をはかるぞォ!!!」
リンリンが思った以上の実力者だった事に、上機嫌なロックスが高笑いをしながら、もっとと欲を出す。こうして更なる船員を求め、船を出すのだった。
リンリンを仲間に加えた後更に数年が経ち、大物の人物ではキャプテン・ジョンが加わり、その他雑兵も死んだり仲間になったりで、面子が入れ替わりながらも船を進め、遂にロックスの計画は次の段階へと進む事になった。
「行くぞ野郎共ォ〜〜〜!!!」
次の計画は、ズバリハチノスの襲撃だ。どんな船が近付こうとも、悪党達に身ぐるみ剥がされるのが当たり前。それがハチノスに関する常識だったが、ロックスの船に乗る錚々たる面々にはその常識は通用しない。
ロックスの号令の元、一直線にハチノスへ突き進んだ俺達は、岸に集まっている連中の前に船を着け、ロックスから順に島へと飛び降りる。
「野郎共ォ!!!島の連中を蹴散らし、“ハチノス”を奪い取れェ───!!!」
右手の剣を掲げ、ハチノス占領の号令を下すロックス。それに眉を顰めたのは、命令されるのが嫌いなニューゲートとシキ、そして俺。
「チッ、部下じゃねェんだぞ!!おれァ」
「言われなくても、消してやる!!」
「俺に命令すんな」
ロックスの船には乗っているが、部下になった覚えがないというのが三人の共通認識。もっとも、内心で思っている奴も結構居るだろうが、中にはバッキンの様に気にせず流している者もいる。
とはいえ口に出すのは俺達くらいで、軽口を叩きながらもそれぞれ武器を構えて、戦闘を始める態勢を整えている。
「潰すのは早いに越したことァねェ。オレからやらせてもらうよ?──プロメテウス!!」
俺達を殺そうと集まってくる島の連中を前に、俺達を無視して前に出たリンリンが先陣を切る。炎の化身─プロメテウスを呼び、右手で掴む事で燃え盛るプロメテウスを放った。
「
「!!!」
「「「ギャアァァッ!!!」」」
「熱ィッ!!」
「熱が……!!」
放たれた巨大な炎の塊が直撃し、絶叫を上げる悪党達。その膨大な熱が余波となってその周辺も超高温になり、熱気に充てられた者達が離れていく。
それを見ていた俺も連中を蹴散らす為に変型を始める。
「──おっ、派手にやるなァ。ならこっちも……派手に征くかァ!!」
全身逆鱗の龍─アルバトリオンの姿に変身した俺は、派手に蹴散らすリンリンに便乗して派手に逝こうと、獣型になって角に青白い雷を込める。
「神龍招雷ッ!!!」
「!!!」
「「「グアァァアァァッ!!!」」」
「…こっちもエゲツねェぞっ!!!」
込められた雷が列を成した落雷となって、悪党達に降り注いでいく。一撃雷が降るごとに黒焦げになっていく連中の叫びは、如何にも三下以下の雑兵のようだ。
そうして俺やリンリンが攻撃した後、宙に浮いてその様子を見ていたシキが、ゆっくり手を上に持ち上げていく。
「ジハハ、あんまり派手にやり過ぎんなよォ?オメェらァ」
シキの手が上に上がっていくのと同時に、悪党達を取り囲むように島の地面少しずつ持ち上がっていき、巨大な複数の獅子の顔を形作る。
「獅子威し!!地巻ィィ──ッ!!!」
「!!!」
「「「な、何だこりゃあァァァ───!!!」」」
「の、呑み込まれちまった………ッ!!」
巨大な獅子に全方位から襲われ、呑み込まれていった奴らは地面の中に消え、変わりに渦巻きながらそびえ立っていく一本の土柱が立つ。
その表面には、野郎の顔がところ狭しと並べられ誰の得にもならない絵面となったが、俺にはそれ以上にシキに言うことが出来た。
「「テメェ……どの口が言ってんだァッ!!!」」
リンリンも同じ事を思っていたらしく、俺達に派手にやるなとか言っておきながら、自分が一番広範囲に影響を及ぼし、ハチノスの町にまで被害が及んでいる。その事に全力で突っ込んだ俺達のセリフが、綺麗にハモった。
「──おう?それもそうだな!!ジハハハァ──!!!」
「笑い事じゃねェよ、シキ!!この島は俺達のモンにするんだ、町の形を変えるんじゃねェよッ!!!」
「!!!」
俺達のツッコミに惚けた顔で笑うシキだったが、この島を所有するつもりのロックスにとっては笑い事ではないようで、宙にいるシキに怒鳴りながらこの島のボスを吹き飛ばす。
だが、ニューゲートがすぐに切り替えて口を開き、ロックスもそれに追随した。
「──だが、これで分かっただろ!?これ以上俺達に歯向かっても、無駄に死体を増やすだけだ!!」
「分かったら武器をさっさと捨てて、惨めに命乞いをしろよ!!ヴォハハハ!!!」
「…………分かった。降参する」
ニューゲートが諭すように伝えるが、ロックスは嘲る様な物言いで笑い飛ばす。ロックスの嘲笑に、額に青筋を浮かべて拳を握りしめるハチノスのボスだった男は、それでもここで再び挑めば今度こそ全滅もあると理解したのだろう。
目の前に佇む龍の俺、太陽を掴んで立つリンリン、宙に浮いて腕を組んでいるシキ、最後に剣を肩に担ぐロックス。最初に攻撃を仕掛けた俺達を一瞥した男は、最終的に降参を選択肢した。
「ヴォハハハハハァ───ッ!!!それで良い!!これで、今日からこの島は──俺達のモンだァッ!!!!」
「「「ウオオオオォ〜〜〜!!!!」」」
ボスの判断気を良くしたロックスが、高らかにこの島の所有を宣言し、下っ端達の雄叫びが島中に木霊した。
──後に、“海賊島占領事件”と呼ばれるロックス海賊団のハチノス襲撃から、早くも数ヶ月の月日が流れた。その間にも仲間は増え続け、その中には数年前に話題になった“ウォッカ王国最強の少年兵”─カイドウの姿もある。
そして、俺達が壊した町の修繕も終わり、本格的な海賊団としての日々が始まろうとしていた。
「!!!」
「見ろよこの見晴らし!!この景色!!やっぱ穴を空けた方がいい。なァ、お前ら!!」
今居る海賊団の主要なメンバーを集めたロックスが、島の中心にある魚みたいな岩山の3箇所に剣を振るい、穴を空けてヒレのような岩を削る。
そうして、自分好みの外観にしたロックスは上機嫌に語り出す。
「───つまり、おれの手に入れてェ“悪魔の実”は二つ!!その内一つは恐らく【エルバフ】にある!!そいつは、ハラルドが食ってこそ力を発揮する!!」
「──そして、【大槌戦団】だろ?伝説としちゃあ知ってるが……」
「おれの情報網で探してるけどさ、“氷漬けの巨人軍団”なんて、何処にもいやしないよ」
「いたとしても、死体だろう」
「確かに!復活する訳がねェ」
「黙れ!!夢の話をしてんだろ!!」
悪魔の実は兎も角、【大槌戦団】に関してはジョンもリンリンも存在を疑っている。ニューゲートとシュトロイゼンも、笑って復活はないと言った事にロックスが噛みつく。
「それに万が一生き返ったとして、そいつらがお前の言う事を聞く理由がない!!」
「その為に現エルバフの王、ハラルドの力が必要なんだろ!!」
「全部“力”で捻じ伏せるんじゃダメなのか?ハラルドって奴も、ブチのめして言う事きかせりゃいい」
「あァ!?二度と言うな、コノヤロー!!」
「おいよせ、ロックス!」
「!!」
バーベルは懸念点を指摘するが、その為のハラルドの勧誘でもあるとロックスが言う。すると今度は、カイドウが力付くでと言い始めるが、それを聞いたロックスがカイドウを蹴り飛ばす。
「コイツ…!!」
「カイドウ、お前もだ!止まれ!!せっかく手に入れたこの島を廃墟にする気か!?お前ら!!こんなチームは、どの道すぐ崩壊するだろうが…!!」
「──そうだ、もう少し稼いでからにしようぜ?ツノの新入り君…!」
「ハラルドはダチなんだよ!!おかしな事言いやがったら、てめェから消すぞ!!カイドウ」
危うくキレたカイドウとロックスの喧嘩が起こるところだったが、シキとジョンが二人を諌めた事で両者共に矛を収める。
「いいかお前ら!!【エルバフ】は、聖地陥落の重要な鍵になる!!信じられねェ奴ァ、今すぐに消えろ!!!」
ロックスが語ったのは、【エルバフ】の重要性。信じられないなら去っても構わない、そう言うロックスの表情は真剣そのものだ。
「──だが、腹を決めたなら!ちょっとおれに付き合えよ…!!世界の頂点を見せてやる!!!!」
ロックスの信念が込められた咆哮が島に木霊し、背後に居る海賊団のメンバーに響く。
この、壮大な野望に着いていくのは、やはり怪物級の実力者達──。
『海賊見習い─カイドウ 懸賞金3億1110万ベリー』
『科学強盗─ミス・バッキン 懸賞金3億3300万ベリー』
『海賊─シュトロイゼン 懸賞金3億9000万ベリー』
『密輸海賊─ガンズイ 懸賞金4億5000万ベリー』
『海賊─バーベル 懸賞金5億2000万ベリー』
『海賊─キャプテン・ジョン 懸賞金6億1010万ベリー』
『西の海のギャング─首領・マーロン 懸賞金6億7800万ベリー』
『海賊教祖─王直 懸賞金7億3000万ベリー』
『元九蛇の皇帝─グロリオーサ 懸賞金9億6200万ベリー』
『極道─凶 懸賞金10億ベリー』
『海賊─シャーロット・リンリン 懸賞金12億8800万ベリー』
『極道─シキ 懸賞金13億4900万ベリー』
『元殺し屋─志々雄真実 懸賞金14億4400万ベリー』
『海賊─エドワード・ニューゲート 懸賞金15億4600万ベリー』
『ロックス海賊団船長─ロックス・D・ジーベック 懸賞金30億6930万ベリー』
──この場に集った者の全員が3億越えの賞金首という事実。海兵がこの光景を見れば、否、誰が見ても恐れ慄くであろう程ののメンバーが集結。
今ここに、世界に激震を走らせる海賊団─“ロックス海賊団”の新たなる伝説が始まった。
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