風鳴翼が恋を識るまで   作:タク-F

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最近の自分があまり手を出して無いコメディ路線のシンフォギアに挑戦です!


魔術師(ウィザード)さんは平穏に過ごしたい

 

 

「ハァ……なんで俺の店にトップアーティストが普通に座ってるんだ……」

 

 俺(元F.I.Sの研究員)は転生者だ。この世界がどんな世界かは識っている。故に頭を抱えながらカウンターで胃の痛みに耐えコーヒーカップを磨いていた。

 

「あんな事をしなきゃ……良かったのか……?」

 

 僕は元々F.I.Sの職員だった。だがいつだったか前世の記憶を取り戻し覚えのある力に気付いた。

 

「コレ……デート・ア・ライブの天使と顕現装置(リアライザ)じゃん。何? 僕は戦うの? 戦わないと生き残れないの?」

 

 そんな展開はまっぴらごめんなので逃げようと思った。幸いこの力があればノイズに襲われても撃退できる。そう楽観した時だった。

 

『ネフェリム暴走! 隔壁を閉鎖します!』

 

 慌ただしく声が聞こえる。だが抱いた気まずさに流されてこの後に軽率な行動をしたのが間違いだったのかもしれない。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 そうして現在は郊外の路地裏にカフェ『シュヴァルツバルト』を開店して静かに暮らすはずだった。

 

「それで平穏に過ごせる筈だった。だったんだよ……僕が余計な事をしなければ」

 

 過去にF.I.Sが崩壊した際、僕は暴れるネフェリムを随意領域(テリトリー)の空間固定と、絶滅天使(メタトロン)を使い力技で奴を撃破。幸か不幸かまだ無傷で倒れていたセレナを抱えて日本へ逃亡した。とはいえただ行方不明にしたのではただの原作ブレイクだ。すぐさま破軍歌姫(ガブリエル)を発動させ研究所にいる全ての人物を対象に

 

『セレナは暴走したネフェリムを止める為に絶唱を発動し、研究所の崩落に巻き込まれて死亡した』

 

 という偽りの記憶と念の為に破損させたアガートラムのギアペンダントを転がして研究所を後にした。そして現在……

 

「よっマスター! 飲みに来たぜ!」

 

「かなでぇ……何度も来ては迷惑よ……」

 

 だが、目の前のカウンター席には、私服姿の風鳴翼と天羽奏が並んで座っている。人気絶頂のユニット『ツヴァイウイング』の二人が、なぜかお忍びで通い詰める溜まり場になっていたのだ。

 

 入り口には、セレナが掲げた木彫りの看板がある。

 

『※この店は平穏を提供する場所です。騒ぎを起こしてはいけません。兵器・武器の持ち込みは固く禁止します。また、当店では仮に対立陣営の方と居合わせても争う行為は禁止します。他人の空似として接しましょう。違反者は強制退店となります』

 

「マスター! いちごパフェおかわり〜!」

 

「……奏、お前たち明後日、大移動ライブ(ツヴァイウイングライブ)だよ。こんなところで油売ってていいの?」

 

「いいさいいさ! 弦十郎の旦那には『私服で甘味処に行って集中力を高める』って言ってるから!」

 

 奏はニヤニヤしながら、隣で顔を真っ赤にしている翼の肩を小突いた。

 

「それよりさ〜。さっきマスターがセレナちゃんと楽しそうにおしゃべりしてた時、翼の殺気がすごかったな? 重い空気出すのやめなよな〜?」

 

「な、何を言っているの奏はッ!?」

 

 翼はドタバタと慌てながら、必死に俺から目を逸らした。

 

「私、私は別に……! 看板娘のセレナ嬢とマスターさんが仲良くしていたからといって、不満なわけではないわ! ただ……その、マスターには私のブレンドを早く淹れてほしいと思っただけで……ッ!」

 

「翼。嫉妬してるのは別にいいけどさ、頼むから重い空気出さないよな? 」

 

「い、依存などしていないわ! 私は……いや、一人の客として……!」

 

 顔を真っ赤にしてモジモジする翼。

 

 横で「くすくす、翼ってば分かりやす〜い! マスター、逃げられないね!」と爆笑する奏。

 

(……はぁ。明後日のライブで奏が絶唱して死ぬの、知ってるんだよなぁ……)

 

「あの……マスター……お話が……」

 

「お給料の話かな?それとも今夜の食事当番かな?」

 

「明後日の……「お休みが欲しい?それなら融通するけど?」そうですね。確かに大事な予定があります」

 

駄目だぞセレナ……その先を続けてはいけない。

 

「マスターがっお話を!遮るなら!私にも考えがあります……」

 

 嫌な予感がするがどうにか惚けて話を逸らすしかない!僕は絶対にライブに行きたくはない!

 

「Gatrandis「良し待ってくれセレナ!わかった!一緒に行こうライブに行こう!!ツヴァイウィングのライブを観に行こう!」」

 

 それは反則だセレナ!この2人の前で聖詠や絶唱のフレーズを聞かれる訳にはいかない!二課のメンバーに関われば原作に関わらされてしまう……そう思って抵抗してみたが無駄だったようだ。

 

「即オチかよマスター!いやこれはセレナちゃんが尻に敷いてるな〜」

 

 目の前で無邪気にパフェを食う奏を見ながら、俺は人知れず溜息をつく。正直に言えば関わりたくない。だが、目の前で楽しそうにしている常連客が見殺しになるのは──あまりにも寝覚めが悪い。

 

「へぇマスター……明後日のライブ、セレナちゃんと見に来るんでしょ? 楽しみ?」

 

「……ああ。……まあ、期待しないで見てるよ」

 

「はぁ!? プレミアの値がつくライブだぞ!? 期待しろよ!」

 

(……やるしかないか。最悪の場合はテリトリーで絶唱の圧力を強引に逃がして、二課の前にポイ捨てして逃げよう……)

 

 ちなみにこの店では、以前店内で暴れようとした行儀の悪い客がいた際、マスターが超高速のテリトリー演算で壊れないグラスを額に叩きつけ、激痛で悶絶した隙に全身を空間固定(金縛り)にし、襟首を掴んでドアを開け、物理的に裏路地へポイ捨てした実績がある。

 

 そのため、後にやってくる二課の弦十郎も、ノイズも、いずれ来るF.I.Sの面々も、この店の中だけは『他人の空似』ルールを絶対遵守することになるのを、今の翼と奏はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 




元々は身内に見て貰う用でしたが読者様が喜んでいただける作品であれば光栄です。

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