TS転生カードアニメ主人公母は、性癖とマナを破壊する 作:匿名
母ちゃんは、もう座っていた。
さっきまでカイトと挟んでいた卓の、向こう側に。
デッキを持っていくと、俺の顔を見て笑った。
「口元、お米」
袖で拭いた。
そっちじゃない、と指を出しかけたので、自分で取った。
「取れた?」
「ええ。優勝おめでとう」
おめでとう、のあとにもう一つ言いそうな顔をした。
俺が椅子を引くと、母ちゃんもデッキを出す。今日は止められない。
卓の周りには、いつの間にかみんなが集まっていた。
バクが腕を組み、ミオはノートを抱えている。カイトは少し後ろで、まだ握り飯を食っていた。
めく郎が、マイクを口元へ持ってくる。
「Lカップの優勝賞品、受け取りのお時間でヤンス!」
「今すぐ開けていい?」
「包装はしてないでヤンス!」
母ちゃんが笑った。
俺は、カイトに勝ったデッキを卓へ置く。
「勝ったら、父ちゃんを探しに行くからな」
「ええ。約束ね」
混ぜた山札を差し出すと、母ちゃんは受け取って切った。
今度こそ旅に出ると言っても、目を逸らさなかった。
「手加減はいらねえぞ」
「したこと、あったかしら?」
ねえな。
一回ぐらい、あってもよかったのに。
「じゃあ、今日もなしだ!」
五枚のライフを並べる。
母ちゃんの前にも、五枚。
「バトル開始でヤンス!」
◇ ◆ ◇
最初の大型を、マナへ置いた。
今は、こいつが出るまで待たない。
《ひのこトカゲ》。次に、《仔竜ドラコ》。
母ちゃんが畑を広げる前に、小さいやつらを出していく。
「トカゲ、行け!」
まず一枚。
母ちゃんのライフが割れた。渡した札を見てから、こっちを見ている。
その目の前で、次のマナを置いた。
「《幼竜グレン》!」
赤い小竜が、トカゲの隣に立つ。
グレンは、出したターンから殴れる。
ドラコも、もう殴れる。でも、グレンを先に行かせた。
「行け!」
火球がライフを割った。
母ちゃんの指が、その札を持ち上げる。
「ライフ・トリガー。《大地なる母》」
まだ殴っていないドラコの足元が、開いた。
小さな身体が土へ沈み、俺のマナにカードが一枚増える。
「そっちかよ!」
「そっちでしょう?」
母ちゃんは、今送ったドラコを選んだ。
マナから戻ってきた同じ小竜が、また俺の前に立つ。
元通りみたいな顔で。
でも、今出たこいつは、もう殴れない。
「グレンなら、もう一回行けたのに!」
「だから、こちらの子よ」
同じ札を戻しただけで、一回なくなった。
ドラコへ伸ばした指を、トカゲの方へずらす。
「まだ、こいつがいる!」
母ちゃんのマナは、《種まき》で増えている。
待ったらまた、でかい竜が出る。
「いい順番ね」
「だったら一回ぐらい通せよ!」
「嫌よ。負けちゃうもの」
トカゲを走らせた。
母ちゃんの残るライフを、もう一枚。
そこからも、光が出た。
「ライフ・トリガー。《畑の大掃除》。パワーの合計が五千以下になるように、まとめて破壊するわ」
緑の火花が、卓を横切った。
トカゲが消える。グレンが消える。まだ殴れてもいないドラコまで、まとめて攫われた。
俺は三枚を、墓地へ置いた。
母ちゃんのライフは二枚。
俺の場は、空っぽ。
「掃除しすぎだろ!」
「残すと、また来るでしょう?」
来るよ。
だから残してほしいんだろうが。
◇ ◆ ◇
次に使ったのは、竜を探すスペルだった。
山札の上から札を確かめ、竜を手札へ持ってくる。使ったスペルも墓地へは行かず、マナになった。
もう一度、並べる。
母ちゃんは野菜を二体出し、そのうちの一体を《大地なる母》で竜に替えていた。
今は、まだ覚醒していない。あいつがでかくなる前に。
「二枚目! 《幼竜グレン》!」
さっきと同じ小竜を、もう一度走らせた。
残り二枚へ、一撃を通す。
「ライフ・トリガー。畑から一枚、ライフへ戻すわね」
母ちゃんが、マナから一枚抜いた。
鎌の描かれた札を見せ、今割った一枚の代わりに、ライフへ伏せる。
また二枚だ。
「減らねえ!」
「マナは、減ったわよ」
「そっちじゃねえ!」
殴り終わったグレンが、母ちゃんの竜の前にいる。
俺は残る手札を確かめ、ターンを返した。
母ちゃんが一枚引く。
マナを置き、こっちの場を見た。
手札の一枚を出しかけて、隣の札へ替える。
「覚醒。《地母神竜ヴァジュラ》」
七枚のマナが休んだ。
母ちゃんの竜へ重ねた札から、太い根みたいな爪が伸びる。
ガイア・ランじゃない。
出た時に二枚焼いて終わりじゃない。
「この子は攻撃するたびに、相手のマナを二枚、墓地へ送れるの」
一回で済ませる気も、なくなったのかよ。
来いよ。
俺のライフは、まだ五枚ある。
カイトとやった時みたいに、こっちにも札が来れば。迎撃竜が出れば、あの覇竜までつながる。
母ちゃんが、攻撃先を示した。
「その子を攻撃します」
指が向いたのは、俺じゃなかった。
休んでいるグレンだ。
先にマナが二枚、抜かれた。
竜の爪が、グレンへ振り下ろされる。
相棒の札を墓地へ置いても、俺のところへは何も来なかった。
ライフは五枚とも、伏せたまま。
「俺を殴らねえの?」
「手札、欲しいでしょう?」
俺のライフを見て、そう言った。
残る野菜も動かさず、ターンを終える。
自分のライフへ、手を置いた。
もう少しだった。ここが割れれば、手に入ったのに。
◇ ◆ ◇
引いた大型も、マナへ置いた。
焼かれた分を、もう一度ため直す。
手札を使い切って《爆走王ブラスト》を呼べた時、やっと一体、残せた。
でも、すぐには殴らせなかった。
ライフを割っても、次の竜に喰われる。もう一体、隣に出してから、一緒に行きたい。
次の手番には、竜を探すスペルをもう一度使った。
グレンヴァルドを見せて、手札へ加える。今度はマナへ置かず、残した。
「来ないの?」
「そっちこそ」
母ちゃんの竜なら、俺のライフを一度に三枚割れる。
こっちへ来い。マナを焼いてもいいから。
母ちゃんは休んでいない爆走王を見た。
それから、俺の五枚のライフを。
「ターン、終わり」
またかよ。
割ってくれなきゃ、迎撃竜も出ない。
「母ちゃんのくせに、全然くれねえな」
「対戦中ですから」
いつもなら、食いすぎだって言うまで出してくるのに。
俺の欲しいものが分かるから、出さない。
引いた札を、手札へ入れる。
ため直したマナは、七枚まで来た。
グレンヴァルドが、手札の端にいる。
カイトを倒した竜だ。
でも、爆走王には重ねられない。下に置くドラゴンが要る。
隣の紅蓮竜なら、四マナで出せる。
今日はまだ、一度も呼んでいない竜だ。こいつを出して、上に重ねる。
四と、六。
今の七枚じゃ、一緒には出せない。
母ちゃんは、俺が数えるのを待っていた。
残ったマナを何に使うか、どのモンスターを休ませるか。出したあとに何をするかまで、見ようとしている。
手札のもう一枚を、前へ出した。
五枚並んだ、俺のライフを見る。
母ちゃんが割ってくれない札が、そこにある。
「二マナ。《斬火人形コダマ》!」
小さな人形が、卓へ降りた。
刃を持った腕が、相手ではなく俺のライフへ向く。
「じ、自分のライフを、自分で割るでヤンスか!?」
めく郎の声が裏返った。
出た時に、自分のライフを一枚、手札へ持ってこられる。ただし、その札がトリガーでも使えない。
「次は、私のターンよ」
母ちゃんのヴァジュラを見る。
あの竜が三枚。横の野菜が一枚。
こいつを使えば、残るライフは全部、あいつらで割れる。
手札には、まだ出せない覇竜。
その隣へ、もう一枚欲しい。
一枚を抜いて、手札へ移した。
爆走王だった。
母ちゃんが、俺のライフを数え直している。
「俺のライフだ。俺が決める!」