TS転生カードアニメ主人公母は、性癖とマナを破壊する   作:匿名

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第十三話で優勝賞品が容赦しません

 

 母ちゃんは、もう座っていた。

 さっきまでカイトと挟んでいた卓の、向こう側に。

 

 デッキを持っていくと、俺の顔を見て笑った。

 

「口元、お米」

 

 袖で拭いた。

 そっちじゃない、と指を出しかけたので、自分で取った。

 

「取れた?」

「ええ。優勝おめでとう」

 

 おめでとう、のあとにもう一つ言いそうな顔をした。

 俺が椅子を引くと、母ちゃんもデッキを出す。今日は止められない。

 

 卓の周りには、いつの間にかみんなが集まっていた。

 バクが腕を組み、ミオはノートを抱えている。カイトは少し後ろで、まだ握り飯を食っていた。

 めく郎が、マイクを口元へ持ってくる。

 

「Lカップの優勝賞品、受け取りのお時間でヤンス!」

「今すぐ開けていい?」

「包装はしてないでヤンス!」

 

 母ちゃんが笑った。

 俺は、カイトに勝ったデッキを卓へ置く。

 

「勝ったら、父ちゃんを探しに行くからな」

「ええ。約束ね」

 

 混ぜた山札を差し出すと、母ちゃんは受け取って切った。

 今度こそ旅に出ると言っても、目を逸らさなかった。

 

「手加減はいらねえぞ」

「したこと、あったかしら?」

 

 ねえな。

 一回ぐらい、あってもよかったのに。

 

「じゃあ、今日もなしだ!」

 

 五枚のライフを並べる。

 母ちゃんの前にも、五枚。

 

「バトル開始でヤンス!」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 最初の大型を、マナへ置いた。

 今は、こいつが出るまで待たない。

 

 《ひのこトカゲ》。次に、《仔竜ドラコ》。

 母ちゃんが畑を広げる前に、小さいやつらを出していく。

 

「トカゲ、行け!」

 

 まず一枚。

 母ちゃんのライフが割れた。渡した札を見てから、こっちを見ている。

 その目の前で、次のマナを置いた。

 

「《幼竜グレン》!」

 

 赤い小竜が、トカゲの隣に立つ。

 

 グレンは、出したターンから殴れる。

 ドラコも、もう殴れる。でも、グレンを先に行かせた。

 

「行け!」

 

 火球がライフを割った。

 母ちゃんの指が、その札を持ち上げる。

 

「ライフ・トリガー。《大地なる母》」

 

 まだ殴っていないドラコの足元が、開いた。

 小さな身体が土へ沈み、俺のマナにカードが一枚増える。

 

「そっちかよ!」

「そっちでしょう?」

 

 母ちゃんは、今送ったドラコを選んだ。

 マナから戻ってきた同じ小竜が、また俺の前に立つ。

 元通りみたいな顔で。

 

 でも、今出たこいつは、もう殴れない。

 

「グレンなら、もう一回行けたのに!」

「だから、こちらの子よ」

 

 同じ札を戻しただけで、一回なくなった。

 ドラコへ伸ばした指を、トカゲの方へずらす。

 

「まだ、こいつがいる!」

 

 母ちゃんのマナは、《種まき》で増えている。

 待ったらまた、でかい竜が出る。

 

「いい順番ね」

「だったら一回ぐらい通せよ!」

「嫌よ。負けちゃうもの」

 

 トカゲを走らせた。

 母ちゃんの残るライフを、もう一枚。

 

 そこからも、光が出た。

 

「ライフ・トリガー。《畑の大掃除》。パワーの合計が五千以下になるように、まとめて破壊するわ」

 

 緑の火花が、卓を横切った。

 トカゲが消える。グレンが消える。まだ殴れてもいないドラコまで、まとめて攫われた。

 

 俺は三枚を、墓地へ置いた。

 母ちゃんのライフは二枚。

 俺の場は、空っぽ。

 

「掃除しすぎだろ!」

「残すと、また来るでしょう?」

 

 来るよ。

 だから残してほしいんだろうが。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 次に使ったのは、竜を探すスペルだった。

 山札の上から札を確かめ、竜を手札へ持ってくる。使ったスペルも墓地へは行かず、マナになった。

 

 もう一度、並べる。

 

 母ちゃんは野菜を二体出し、そのうちの一体を《大地なる母》で竜に替えていた。

 今は、まだ覚醒していない。あいつがでかくなる前に。

 

「二枚目! 《幼竜グレン》!」

 

 さっきと同じ小竜を、もう一度走らせた。

 残り二枚へ、一撃を通す。

 

「ライフ・トリガー。畑から一枚、ライフへ戻すわね」

 

 母ちゃんが、マナから一枚抜いた。

 鎌の描かれた札を見せ、今割った一枚の代わりに、ライフへ伏せる。

 また二枚だ。

 

「減らねえ!」

「マナは、減ったわよ」

「そっちじゃねえ!」

 

 殴り終わったグレンが、母ちゃんの竜の前にいる。

 俺は残る手札を確かめ、ターンを返した。

 

 母ちゃんが一枚引く。

 マナを置き、こっちの場を見た。

 手札の一枚を出しかけて、隣の札へ替える。

 

「覚醒。《地母神竜ヴァジュラ》」

 

 七枚のマナが休んだ。

 母ちゃんの竜へ重ねた札から、太い根みたいな爪が伸びる。

 

 ガイア・ランじゃない。

 出た時に二枚焼いて終わりじゃない。

 

「この子は攻撃するたびに、相手のマナを二枚、墓地へ送れるの」

 

 一回で済ませる気も、なくなったのかよ。

 

 来いよ。

 俺のライフは、まだ五枚ある。

 カイトとやった時みたいに、こっちにも札が来れば。迎撃竜が出れば、あの覇竜までつながる。

 

 母ちゃんが、攻撃先を示した。

 

「その子を攻撃します」

 

 指が向いたのは、俺じゃなかった。

 休んでいるグレンだ。

 

 先にマナが二枚、抜かれた。

 竜の爪が、グレンへ振り下ろされる。

 

 相棒の札を墓地へ置いても、俺のところへは何も来なかった。

 ライフは五枚とも、伏せたまま。

 

「俺を殴らねえの?」

「手札、欲しいでしょう?」

 

 俺のライフを見て、そう言った。

 残る野菜も動かさず、ターンを終える。

 

 自分のライフへ、手を置いた。

 もう少しだった。ここが割れれば、手に入ったのに。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 引いた大型も、マナへ置いた。

 焼かれた分を、もう一度ため直す。

 

 手札を使い切って《爆走王ブラスト》を呼べた時、やっと一体、残せた。

 でも、すぐには殴らせなかった。

 ライフを割っても、次の竜に喰われる。もう一体、隣に出してから、一緒に行きたい。

 

 次の手番には、竜を探すスペルをもう一度使った。

 グレンヴァルドを見せて、手札へ加える。今度はマナへ置かず、残した。

 

「来ないの?」

「そっちこそ」

 

 母ちゃんの竜なら、俺のライフを一度に三枚割れる。

 こっちへ来い。マナを焼いてもいいから。

 

 母ちゃんは休んでいない爆走王を見た。

 それから、俺の五枚のライフを。

 

「ターン、終わり」

 

 またかよ。

 割ってくれなきゃ、迎撃竜も出ない。

 

「母ちゃんのくせに、全然くれねえな」

「対戦中ですから」

 

 いつもなら、食いすぎだって言うまで出してくるのに。

 俺の欲しいものが分かるから、出さない。

 

 引いた札を、手札へ入れる。

 ため直したマナは、七枚まで来た。

 

 グレンヴァルドが、手札の端にいる。

 カイトを倒した竜だ。

 でも、爆走王には重ねられない。下に置くドラゴンが要る。

 

 隣の紅蓮竜なら、四マナで出せる。

 今日はまだ、一度も呼んでいない竜だ。こいつを出して、上に重ねる。

 

 四と、六。

 今の七枚じゃ、一緒には出せない。

 

 母ちゃんは、俺が数えるのを待っていた。

 残ったマナを何に使うか、どのモンスターを休ませるか。出したあとに何をするかまで、見ようとしている。

 

 手札のもう一枚を、前へ出した。

 五枚並んだ、俺のライフを見る。

 母ちゃんが割ってくれない札が、そこにある。

 

「二マナ。《斬火人形コダマ》!」

 

 小さな人形が、卓へ降りた。

 刃を持った腕が、相手ではなく俺のライフへ向く。

 

「じ、自分のライフを、自分で割るでヤンスか!?」

 

 めく郎の声が裏返った。

 出た時に、自分のライフを一枚、手札へ持ってこられる。ただし、その札がトリガーでも使えない。

 

「次は、私のターンよ」

 

 母ちゃんのヴァジュラを見る。

 あの竜が三枚。横の野菜が一枚。

 こいつを使えば、残るライフは全部、あいつらで割れる。

 

 手札には、まだ出せない覇竜。

 その隣へ、もう一枚欲しい。

 

 一枚を抜いて、手札へ移した。

 爆走王だった。

 

 母ちゃんが、俺のライフを数え直している。

 

「俺のライフだ。俺が決める!」

 

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