誤字報告、感想、評価皆様ありがとうございます!!
最近仕事忙しくて放置しがちでしたが、皆様のおかげでモチベ上がりました。
ギリギリ今月末投稿出来て良かったです。
筆が遅くて申し訳ありませんが、これからも見ていただけるよう、頑張ります!
──【
13年前、廃教会を濁神父が買い取り、以降児童の保護・教育・強化を目的として開かれた孤児院。
現在は基本運営を濁神父が、そして子ども達の教育や強化を【シスター・カロス】と【シスター・ベル】が行なっている。
ちなみに、俺はこの孤児院の古参的立場として、カードの売買で得た資金や大会の賞金をここに入れている。
そもそも俺は濁神父に拾われてなかったら野垂れ死んでたしな。
今でも俺の家はここだし、俺を慕ってくれるチビ共もたくさんいる。
神父やシスターはそんな事しなくていいとは言ってくれるけど、俺がしたくてやってるだけだ。
というわけで今日も元気に帰宅だぜ。
バトルの後、火座さんから煮込み焼きピザをご馳走して貰ったのでもうすっかり暗くなった。
火座さんお手製の煮込み焼きピザは、大量の油で揚げ焼きしたピザ生地に、玉ねぎ人参鶏肉などの具材に、塩コショウ、グレービーソースやトマトソースなどの調味料を加え、そこに片栗粉等でとろみを付けたブイヨンスープでゆっくり煮込む。
最後にたっぷりのチーズを乗せて完成だ。
とんでも無いカロリー爆弾だが、これがまた美味いんだよ。
カリカリの表面にはスープがたっぷり染み込み、もちもちの生地の中までしっかり味が付いている。
とろけ落ちるチーズも纏めて味わうともう手が止まらない!
油は瓶コーラでさっぱりとさせるおかげで気にならないのだ。
それはそれとして、いつも通り大声で帰宅すると、孤児院の中からドタドタとチビ共が出迎えにきてくれる。
「アニキアニキ!オイラ、新しいコンボを発明したので見てほしいでヤンス!」
「兄さん、ボクも良いデッキが出来たんだけど……見てくれるよね?」
「フハハハ!待てお前達。最初に捲と闘うのはこの俺様だ!バトル開始の宣言をしろ、歩美ィ!」
「了解よ!バトル開始ィィ!!」
「いやなんで歩美さんがいるんですか?」
なぜかビシッと片手を上げバトル開始の宣言をしている歩美さんに思わずツッコミを入れる。
歩美さんにはここのことは教えてなかったはずなんだけど……
「ふふふ、ここの神父さんにお話があってね。話の途中で捲はここの子だって言われたから、せっかくだし帰ってくるまでここの子達の相手をしてたのよ。ロリとショタがたくさんの天国だったわ……」
「なるほど……歩美さんといえど、ウチのチビ共に何かしたらぶっ飛ばしますよ?」
「安心するがいい、捲。歩美は俺達のバトルに付き合って貰っていただけだ。」
「オイラの知らないカードがたくさんで知見が深まったでヤンス!」
「アドバイスのおかげで、ボクのデッキも方向性がまとまったよ……」
そんならいいんだけどね。この人小さい子どもを見る視線がヤバい気がして怖いんだよな。
「そういえばそちらの方は?」
「ああ、コイツは俺のメイドですよ。ほら、教えたとおりに挨拶しろ。」
「……お初にお目にかかります。私、捲様にお使えするメイドの【ラクリス】と申します。」
俺の後ろから真印──今は名と性を変えラクリスと名乗らせている──が挨拶する。
淀みないカーテシーの動きは俺が教育したわけでなく、どうやら『メイドになれ』と命令した時に、闇の力により思考インストールされたようだ。
闇の力さんのサポートが手厚すぎるぜ。
「メメメイドですとぉ!?アニキの1の子分はオイラなのにぃ……許せないでヤンス。」
「ふぅん……浮気というわけか……面白い。」
「浮気をする兄さんは嫌いだ……」
……なんかあらぬ疑いをかけられている気がする。
三人娘からじっとりと見られながらも、ラクリスは無表情を貫いている。
「ちょうどいいや。ラクリス、ちょっと三人のバトル相手をしてあげてよ。俺は神父とシスターに会いに行くから。」
「あ、なら私も付いていくわ。捲にもちょっとお話あるし。」
「……了解いたしました。御三方、対戦よろしくお願いいたします。」
「ふふふ、オイラの《
「フハハ、最強はこの俺の《チェストロイ・クイーン》だという事を教えてやろう!」
「《
三人ともやる気満々だな。
彼女達はチビ共の中でも特に強い。
一応ラクリスのデッキ──《悪魔バーン》は邪道カードのヘルべロスを抜いて、ある程度元の動きは残しつつ、《悪魔弾》のカードを入れることで使いやすくしたから相手にはなるだろう。
《悪魔弾》は前世の大会でも時折結果を残していた優秀なテーマだ。
手札から捨てることで、テーマ内の呪文や秘宝をサーチ出来るモンスター、《赤ずきんの悪魔弾》。
種族に悪魔を持つモンスターが出た時に、墓地から装備品扱いでコストなしで装備され、いつでもコストを支払えば自身と相手のモンスターを墓地に送ることが出来る《白雪姫の悪魔弾》。
そして秘宝に対し、自身を生贄にすることでマナを生み出せる効果を付与する、《ガチョウの悪魔弾》。
《悪魔弾》モンスターは共通で、呪文や秘宝を唱えたり、場で効果を使うと相手にダメージを飛ばす効果を持つ。
各ターン1度のみの誘発だが、1体でも1点、2体なら2点、3体なら3点。
そして相手ターンでも誘発する。
初期ライフ20の【バトル・ウィザーズ】では放置出来ないダメージだ。
まぁ一番面倒なのは、細かくダメージが入るせいでライフの記入が面倒なところだ。
前世では自動で計算してくれるバトルディスクなんてなかったから、ライフは紙や電卓で計算していた。
《悪魔弾》使いと闘うとちまちま1点引く作業が入って鬱陶しかったな……
そんなことを思い出しながら、歩美さんと二人で孤児院を進んでいく。
「そういえば歩美さん。俺に話って何ですか?ちょっとした話ならここで聞きますけど。」
「うーん……結構大事な話になるから、神父さん達と一緒に聞いてほしいのよ。今は懺悔室にいるみたいだから、そこで話すわ。」
「分かりました。」
懺悔室か。ここの中身は、廃墟時代の教会とほぼ変わらないから懺悔室もそのまま残っているんだよな。
ただ誰も懺悔なんてしないから物置小屋と化しているけど。
まぁ結構広いしわざわざ入らないから話にはちょうどいいか。
「失礼します。」「お邪魔するわよ。」
「……待っていました。捲よ。」
懺悔室に入ると、奥にいた濁神父がこちらに歩み寄ってくる。
大きくごつごつとした手を差し出してくれたので、そのまま握手する。……やっぱ握力強いな。今年で68になってるはずなんだけど。
「来てくれてありがとう、捲。」
「ベルたちも待っていたぞ。首をながーくしてな。」
糸目巨乳シスター──悪堕ち系薄い本になりがちなタイプであるカロスと、うにょ~んと大げさに体を伸ばしているロリ──といっても25歳にはなってるはずのシスター、ベル。
この二人は俺が7歳の時に出会った。
それまでは子ども達の世話は全て濁神父が行なっていたけど、二人が来たおかげで、神父の負担は軽くなった。
二人ともバトルが強くて、しっかりアドバイスもしてくれるし良きお姉ちゃんって感じだ。
ちなみに男組に人気なのはカロス姉で、女組に人気なのはベル姉である。
やはり男は胸に勝てねぇのさ……
「さて……捲よ。早速ですが、あなたにお話しなければならないことがあります。本来ならもう少し後に話すことにしていたのですが……彼女が来たなら、今こそ話すべきだと思いましてね。」
ちらりと歩美さんに視線を送る神父。
「……今から13年前、私はある組織に属しておりました。その名は【ギルティギルド】。かつて邪道カードの力を使い、世界を征服せんと企んでいた、悪しき組織です。」
ギルティギルド……?あぁ、そういえば火座さんが真印に対して、組織名としてゲートウォーカーと一緒に上げてたな。
アニメではまったく出てこなかったけど、かつてはそういう闇の組織があったわけだ。
「当時、私は幹部として悪虐非道の限りを尽くしました。自らのために闇の力を存分に振るい、人々からカードを奪い、邪道カードのアンティにより、その魂をカードに封じ込め……魂の複製、改造、そして生成を行うため、実験を繰り返しました。」
「……しかし、それは一人の青年によって阻止されたのです。それが彼女の実の父親、【神宣 銀羽】。彼は【カードの精霊】と心を通わし、私達をバトルで打ち破りました。」
えぇ……?まさかの前作主人公ポジションがいたんだ。
アニメ二期とかやったらそこで語られたりしたんだろうか?
「その際に私の実験成果も殆どが破壊され、私は
「……え?」
「……あなたには長らく嘘を付いていました。この孤児院の門前に捨てられていた……と伝えていましたが。あなたの正体は、私が人間から魂を抽出し、それをカードの精霊に孕ませることで、我々に従う最強の【バトル・ウィザード】を生み出す実験により産まれた唯一の成功作。それがあなたなのです。」
──悲報、ワイ人間ではなかった模様──
え?今まで俺はいわゆる虫野郎ポジションにいたつもりだったけど、実際はイグニスみたいな実験の産物ポジションって……コト?!
てかこの世界の俺の母親って精霊だったのか……
今明かされる衝撃の真実がヤバすぎるだろ。
でもこういうのにありがちな破壊衝動とかもないし、神父も別に何かしろとか言ってこなかったはずなんだけど……。
「この廃教会を買い取り、あなたを育てはじめた時は、私はあなたを心持たぬ人形として教育し、ゆくゆくは新しい組織の長として世界を統べる計画でした。孤児院はその隠れ蓑のようなものであり、他の子ども達も組織の構成員として育てると……その経過家が狂ったのはあなたが5歳の時です。」
5歳っていうと、確か俺が転生したって自覚がついた頃だったはずだ。
懐かしいな。あの時は前世の彼女が寝取られたショックで自殺した後だったから、何故か生きてることに絶望して、たまたま手に持ってたカードで首を切って死のうとしたんだよな……ん?
「いつものように邪道カードをあなたに持たせ、バトルロボによる無限バトルの実験を行なっている最中でした。あなたは何故か途中で手を止め、その手に持ったカードで首を切り裂き、自害を試みたのです。」
「まったくの想定外でした。当時のあなたは、意思持たぬ私の操り人形にしかすぎません。食事、睡眠、排泄といった行動さえ、私の指示が無ければ行うことすら出来なかったというのに。」
「こんなことで最高傑作を失ってはならないと、私はあなたに1枚のカードを埋め込みました。それは邪道カードの1枚、《新たなる生命体、Neo》。その闇の力により、あなたの体は修復され、さらに人並み外れた力を持つ存在になる……はずでした。」
「覚えていますか?あなたが目を覚ました後、何故か私が教えていない知識をあなたは持っていた。ここを病院と勘違いし、私のことを医者だと思って話しかけてきましたね。」
「私の説明を聞くと、何故かあなたは飛び跳ねて喜んだ。そしてすぐ実験に戻りたいと言い、そのままあっさりバトルを始めていました。……そして、あなたとバトルロボの戦いが、百戦は超えたでしょうか。当時あなたのデッキに入っていた邪道カードの力に耐えきれなくなりバトルロボが壊れた時、あなたはこう言いました。」
『おもちゃが壊れちゃった。新しいのありませんか?』
「……その言葉を聞いた時、私はとんでも無い化け物を生み出してしまったと思いましたよ。その後、あなたは自主的に学習を始め、自らの意思でカードの取捨選択を行い、デッキをいくつも作り上げました。私も教えを請われ、あなたに知識を叩き込むうちに、ある思いが湧いてきたのです。」
「それは、楽しいという感情でした。長い人生の中で、物事を楽しむ気持ちなど殆ど沸かなかった私にとって驚くべきものです。一つのカードを教えれば、十のデッキを作ってくる。簡素な料理を作って与えれば、美味しいと言って平らげる。……そして、隠れ蓑に過ぎなかった孤児院に集まってきた他の捨て子に対し、バトルを教えている姿を見ていると、自然とそう思えたのです。」
「その時から私は計画を捨て、あなた達を育て上げることだけを考えることにしました。そうした中で、私と同じように闇の組織から抜け出してきたカロスとベルをシスターとして匿い、共に歩んできたのです。」
「あの時はまさか、かの【汚濁】が神父として活動しているとは思いもしていませんでした。」
「ベルたちはもう闇の力なんぞに関わりたくなかったからな〜。逃げ出してきた先で汚濁に見つかった時は死を覚悟したけど、なぜか行く当てがないならここで働けって言われたからビックリしたぞ。」
「かつての私なら躊躇なく二人を消していたでしょうね。……以上があなたの出自と私の罪です。長くなりましたが、理解できましたか?」
「……まぁだいたいは理解できました。つまり、濁神父は俺のお父さん……ってことでいいんですよね。」
「事実上そうなりますね。」
「なら結局今までと対して変わらないじゃないですか。俺は今のあなたを尊敬していますし、どこまでも付いていくつもりです。」
「……ありがとう。」
「私はあなた達が全員ここを卒業した後、警察に自首します。が、その前に一つやらなければならないことがあるのです。」
「それに関しては私から説明させて貰うわね。」
スッと歩美さんが前に出る。
「先程私の父については聞いたわね。父は今の私と同じように、悪の組織に対し反抗する、レジスタンスの一員だった。……だけど、今から5年前に、父はどこかに消えたの。」
ギリリと歯を食いしばりながらも、歩美さんは話を続ける。
「父は複数の邪道カード使いから恨みを買っていたわ。ただ父はどんな時でも負けることはなかった。だからきっと、何者かの卑劣な手によって連れ去られたに違いないと思ったの。そいつに近づくために、私は片っ端から邪道カード使いをぶちのめしてるってわけ。」
「5年前、私とベルは彼に敗れました。なのでその時までこの街に居たのは確かです。」
「裏社会では、アイツが精霊付きって呼ばれて恐れられてたからな。今では歩美の通り名になってるけど。」
「……本題に入るわ。今まで打ち倒してきた奴らからは大した情報は手にはいらなかった。だけど、この前倒した【イリアスティール・アインツディーズ】とかいう組織のザコが、こんなことを言ってたの。」
『オレ達は上からの命令で、アジトに精霊付きを集めている。その中にオマエの父親も居るかも知れない。』
「聞けば5年前から密かに活動していたっていうんだもの。可能性としてはあり得なくもない。だから今度、そいつらに対して襲撃を仕掛けることにしたわ。そして──その時に、あなた達にも戦ってほしいの。」
「……それは、神父たちだけじゃなく、俺も含めてですか?」
「勿論よ。捲、気がついていないかも知れないけど、あなたは精霊から産まれ、その血と埋め込まれた邪道カードの力を持っている。あなたが命じれば、闇の力も精霊の力もあなたに従うでしょう。」
もしかして、ラクリスの性転換メイド化が成功したのって、その影響があるのかな。
流石に至れり尽くせりがすぎるとは思ったけども……
「そして、あなたはまだまだ強くなれる。心の奥底に眠る、二人と会話をすることでね。」
ここから先は通行禁止!だけどオレたちは無視してオッケー!
──《規正無視・フィルダーイミョウバチ》