俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど!   作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!

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11限目:研究室

「これはファヴニール君の毒だね。焼いた程度では分解されないよ」

 

 俺はファヴから受け取った『モンジャヤキ』の分析をヤウナー教授に頼んでみたが、返ってきた答えはあまりに予想通りだった。

 

「なんで、そんな物を俺に渡して来たんだ……」

「そんなの親愛の証に決まっているだろう。ドラゴン娘が自身の物を相手に渡すというのは、それ位の意味が込められているんだ」

「シンキ達と言い、皆。俺との距離の詰め方おかしくない?」

 

 皆、コミュニケーション下手くそ部なのだろうか? と思ったが、俺がそう言った人間とばかり接しているからかもしれない。

 

「にしても。この数日間で随分、彼女に好かれたね」

「学友のパートナーと仲良くなるのは悪いことじゃない」

 

 フェルドがドラゴンと戯れている様に、俺もファヴと戯れている。問題はお互いの関係の進展と言った面では、大きく差が付いていることだが。

 

「このまま。君の相棒君もジーク君に靡くかもね」

「……どうだろな」

 

 忘れがちだが、フェルドは邪竜側に付いている人間だ。

 ドラゴンが向こうに渡れば、学園側の壊滅は免れない。では、俺に何ができるかと言えば、何もない。

 

「あ、そうだ。分析結果以外にも用事があったんだ。これ」

 

 コロンと拳大の種を渡された。例のキャベツ型魔獣を倒した時にポップした品物ではあるが、まさか。

 

「俺に育てろと?」

「そうだよ。もしも、何かあったとしても例のスペースで育てれば相棒君が処理してくれるだろうし、肥料なども上げやすいからね。それに私も観察に行きやすい」

 

 合理的だ。種を手にして、研究室から出た所でファヴが待っていた。なんで?

 

「どうでしたか?」

「うわ!? なんで、ここに居るんだ!?」

「いつもの場所にいなかったから、ここに居るかもと……。マスターはいつもの様に戯れていますし」

 

 シンキとハクテイとは絡む気が無いらしい。なので、交流対象が俺に絞られるのは当然の帰結と言えるが。でも、一応は言ってみよう。

 

「俺以外にもシンキ達と仲良くしてみるとかは」

「あの人達は変なので……」

 

 お前もだよ。という言葉は飲み込んだ。彼女は大人しいから性格が良さそうな気がするが、実際は割と良い性格をしている。

 

「フェルドは何も言ってこないのか?」

「はい。学友と交流を深めるのは良いことだと。この間みたいな物の贈答は、自分に許可を取ってからやる様に。とのことです」

 

 合理的だ。まず、断る理由が無いし、ファヴと俺が懇意になればスワッピ……ではなく、パートナーの交換も行い易くなるだろう。彼女にとっても悪いことではないとは思うのだが。

 

「その割には浮かない顔をしているな」

「……マスターが、今までと違って優しいのが気になって」

「冷たくされたいのか?」

「そうじゃないんです。なんだか、放り出されたような気がして」

 

 言いたいことは分かる。いわゆる『怒られる内が華』という奴だ。それすらも無くなるということは、本格的に関心が離れたことなのだから。

 

「ファヴはフェルドにどうして貰いたいんだ?」

「え?」

「そう言うのを聞いたこと無いなって思って。大切にして欲しいとか?」

 

 もしも、冷遇に愛想が尽きたなら乗り換えるチャンスが訪れているのだ。

 だが、彼女はフェルドに見捨てられたくないと思っている。となれば、そう思うだけの期待や願望があるはずなのだが。

 

「わ、分からないんです」

「頼って欲しい。とか、信じて欲しいとか。好きになって欲しいとかは?」

「そんな気はするけれど、どれもしっくり来なくて」

 

 少なくとも、彼女の中に願望そのものはあるのだろう。ただ、本人でさえ分からない場合もあるので、他のマスターとドラゴン娘を参考にするしかないのだが。

 

「今日もハクテイは可愛いね」

「シンキも可愛いね」

 

 いつものスペースに戻ってみれば、お互いにお互いをメイクして間接的自画自賛に興じる二人がいた。チラッとファヴを見た。

 

「あーいうのはどうだ?」

「何の参考にもなりません」

「俺もそう思う」

 

――

 

 ヤウナー教授から貰ったキャベツ(仮)の種を植えようと考えたのだが、よく考えたら化け物を再生産しても困るので、園芸や植物学に詳しい『カンザキ教授』に話を聞きに行ったのだが。

 

「キャベツが魔獣……?」

「何を言っているかは分からないと思いますが、事実なので」

 

 当然の如く、怪訝な目で見られた。事実であることを証明するために拳大の種を見せれば、彼女は興味深そうに観察していた。

 

「……こういうのって。まず、ボクに見せに来るべきじゃないか?」

「ヤウナー教授の人間関係は、俺にもよく分からないので。他の教授と仲良くはないんですか?」

「そもそもの話。教授同士は全員、そんなに仲が良くない。研究費と学生の取り合いだからね」

 

 世知辛い。……と思ったが、ここで疑問ができた。

 

「ヤウナー教授の研究室。本人以外、誰もいなかった気がするんですけど」

「彼女は誰もやらない研究ばかりやるからね。将来性の不透明さから、誰も彼女の研究室に行きたがらないのさ」

 

 ここら辺は、前世の大学でも似たような物だった。役に立たなさそうな研究室のゼミに生徒が集まらなかったことを思い出す。

 ゲームだとこういったキャラクターは強化画面に表示されて終わりだが、アレって本当に1人しかいなかったんだな。

 

「つーか! なんで、ボクに通さないで肥料とか園芸関係の物を勝手に流通させているの!?」

「藪蛇突いた感がすごい」

「報告、連絡、相談って大事ですよね」

 

 ファヴと顔を見合わせた。この調子だとカンザキ教授に話を聞くことはできなさそうなので、退室しようとした所で引き留められた。

 

「待った、待った。植物学の教授として、そんな面白い物を放置する訳無いだろう! でも、学園内で育てるのは止めてくれ!」

「じゃあ、どこで?」

 

 適当な村で育てるにしても、逐次管理する必要があるし、魔獣が生まれる可能性がある物を育てたがる村があるだろうか?

 

「ボクにいい考えがある。まず、手ごろな所にある邪竜信者の拠点を潰して」

「そうですか。誰がやるんですか?」

「やってくれないの?」

 

 ヤウナー教授がヤバい奴だと思っていたけれど、この学園の教授全員がヤバいんじゃないかという疑念が湧き上がって来た。

 プレスと対決する前に、多くの邪竜信者達の拠点は潰したのだが、それでも奴らはめげずに拠点を作っている。そのスピリッツをもっと市井に生かしてくれたら良き市民になれるだろうに。

 

「これは周辺住民の安全の為も兼ねているんだ。こんな危険な物、放置しておく理由が無いだろう? その跡地をね!」

「目的と手段が逆転していますね……」

「善良な市民は得をするんだから無問題だよ!」

「この人、大分野蛮ですね……」

 

 ファヴがボソッと呟いた。ドラゴン娘にも野蛮と言わせる。それが教授という奴なのだ。

 

「じゃあ、研究室の依頼として出しておくよ。ヤウナー教授には話を通しておいてくれ」

「自分で話を付けてくれませんか?」

「君が受けたことにしてくれないと、面倒臭いことになるから。そうしてくれ」

 

 あまり教授達とは顔見知りにならないでおこう。そう決めた。

 それは、兎も角として。最近のアイツは食っちゃ寝ばっかりだし、偶には運動して貰わないとな。俺はカンザキ教授に例の種を預けて、この依頼を受けることにした。

 

――

 

「もちろん! 僕も行くよ!」

「私達も行く。暇だし」

「私達も行く。すること無いし」

 

 いつメンに声をかけて見た所、全員出席の確認が取れた。フェルドに関しては邪竜信者の身内なので同行させるか迷った所だったのだが。

 

「カラバ君。前回、ファヴニールと組んで依頼を達成したようだね。だったら、今回は僕が彼と組んでみよう。お互いのパートナーと連携が取れたら、今後もできることは増えるだろうしね」

「そ、そうか。気を付けろよ。言うことは聞いてくれないからな」

 

 駄目だ。恐らく、コイツ。身内相手にも盛大にぶっ放すつもりだ。

 だが、懸念もある。フェルドは自分がドラゴンのパートナーに相応しいと思っているのかもしれないが、アイツは決して言うことを聞かない。そうなったとき、コイツは対応できるのだろうか? という不安はあった。

 かくして、俺達はアカデミックな研究の為に邪竜信者達の拠点を襲うという蛮族、そのものと言える行動を起こそうとしていた。

 




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