俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
「カラバ君。今回の事態を受けて、学園に調査が入ることになった」
ヤウナー教授からの報告は案の定というべきか、ドラゴンとファヴが巻き起こした破壊は隠し通せる物ではなく、国の調査が入ることになったらしい。
アイツが接収されるなんてことは不可能だとしても、マスターである俺が拘束される可能性は十分にある。
「俺はどうなってしまうんですか?」
「事情聴取はされるだろうね。変なことをしない様に」
俺は幾らでも取り繕えるにしても、問題はドラゴンの方にある。こいつの辞書に忖度の文字は存在しない。
俺はデカイ溜息を吐いていたが、彼女は実に楽しそうだった。いつもの様に排泄物の採取は元より、彼女の目を引いたのは地面に落ちている鱗達だった。
「見たまえよ。剥がれ落ちてもなお威光が残っている! 強度も申し分ない! 何より、極上の素材だ! いやぁ、所用が終わったら絶対に来ようと思っていたんだ!!」
「その鱗で鎧とか武器とか作ったらどうですか?」
「断る。なんで、そんな品の無い物に加工する必要があるんだい?」
ヤウナー教授的にはハンティング的世界観は性に合わないらしい。
折角なので、俺も剥がれ落ちた鱗を見る。ファヴの物も盛大に剥がれていたはずだが、落ちているのはドラゴンの物ばかりである。
「ファヴの分は?」
「1枚も見つかっていない。恐らくだけど、彼女が元の姿に戻ったと同時に喪失したんじゃないか?」
「あの時、何が起きていたんだろうな……」
今も、彼女達は研究対象として色々な実験に協力している。現状、分かっているのは『ヴァルザイア』から力を与えられた。ということだけだが。
「(原作的では、ドラゴン化する。なんてことは起きていなかった)」
邪竜信者達を見れば分かるが、ヴァルザイアの力を与えられた人間は疑似的なドラゴン娘となる。(対象が男ならドラゴン男?)
ただ、彼女はドラゴン娘と対峙しているので彼女らに力を分け与えるということは殆どない。原作におけるファヴ達の場合もフェルドに力が与えられ、彼女は付き従うという形だった。
「邪竜信者の教祖に協力して貰うなんてこともできないしね。ならば、できることを進めて行くだけさ」
鱗を持っていこうとするが、1枚でもクッソデカいので持っていける訳もなく。強度も申し分ないので、裁断もできない。どうしたものかと悩んでいると。
「カラバ。何しているの?」
「ヤウナー教授。何しているの?」
シンキ達もやって来た。彼女達は真っ当なマスターなので学園の修繕を手伝っているはずだが、休憩時間だろうか。
「鱗を研究する為に持って行こうとしたんだけれどね。いかんせん、デカすぎて」
「シンキ達は休憩時間か?」
「違う」「案内して欲しいって言われた」
誰を? と思っていると、後ろからゾロゾロと王立の制服を着た一団が現れた。先頭に立つ背の高い威圧的な女性が言った。
「貴様がカラバ・イルマイトか?」
「……ヤウナー教授。これは一体?」
ちょっと待って欲しい。調査が入るとは聞いていたが、今日来るなんて聞いていない。動きが早すぎる。
「だから、言ったじゃないか。調査が入るって」
「直前で言う奴がいるか!!」
時間を貰った所でやることなんて殆ど無いにしても、心構え位はさせて欲しい。かくして、俺は国のえらい人達の対応をすることになった。
――
俺の居住スペースが調査されているが、先日吹っ飛ばされてばかりなので殆ど何もない。彼らの目を引くのは、やはりドラゴンだ。
「この魔獣はどこで?」
「契約の儀を行った際、彼が召喚されました」
「では、コイツと契約したというのか?」
俺は自分の掌を見せた。契約の証である紋様が刻まれている。先日は俺の全身に表れていたが、今は掌に収まっている。
「分かった。では、貴様はこの魔獣を従わせられているのか?」
「いいえ。俺の言うことは殆ど聞きません」
「契約しているというのに?」
「コイツはパートナーであって、僕(しもべ)ではないので」
どちらかと言えば、俺の立場の方が召使みたいな物だが余計なことは言わなくて良いか。チラリとヤウナー教授の援護も期待していたが。
「君達。何をしているんだ。鱗を持って行くなんてやめたまえ」
「貴重な調査資料なので」
「ここは学園なんだ。調べるのには一番適していて、私は教授。預けるべき場所は分かるよね?」
「国の調査機関です」
役人相手に争っていた。彼女にとっては死活問題なんだろう。
シンキとハクテイも調査の手伝いをしている。国からの命令に背く理由なんてないことは分かるにしても、ちょっと位は味方して欲しい。
「では、あの魔獣はコントロールできる物ではないというのだな?」
「はい。ですが、無意味に暴れる奴ではありません。この世界で一番長くコイツと一緒にいるのは俺です」
国としても、いつ暴れ出すかも分からない力を放置している訳にはいかない。という理屈は分かるが、ドラゴンは俺のパートナーでもある。物みたいに扱われたりするのは、防がなければならない。
「なら、この魔獣のことも調べさせてもらう。もしも、調査中に我々の内誰かに危害を加えようものなら、お前を重要参考人として連行させて貰う」
「え?」「カラバが?」
「待ちたまえ」
さすがにシンキ達も反応したが、俺は手で制した。ここで抗議すれば彼女達の立場も危うくなりかねない。
「どうぞ。俺も分からないことだらけなので、何か分かったら教えて下さい」
調査員達がドラゴンの体も調べ始める。ヤウナー教授に調べられまくっていて、慣れていたのか。大人しい物だった。
そして、彼らも俺を拘束しに来た悪徳集団。という訳でもなく、極力ドラゴンを傷付けないように慎重に調査をしている。先頭に立っていたリーダーと思しき女と一緒にドラゴンをぐるりと見て回る。
「とんでもない大きさだな。こんな魔獣、私も見たことが無い。名前は何と言う?」
「名前?」
「書類上、魔獣とだけ書いても分かり辛いからな」
名前を聞かれたのは初めてかもしれない。相棒君や彼と呼ばれることが普通だったし、態々言う必要もあるかと思っていたが。
「ドラゴン。ドラゴンって呼んでいます」
「ドラゴン。か……」
ほんの一瞬、彼女が笑った。妙な胸騒ぎを覚えたのも束の間。俺達はちょうどドラゴンの背面部分に来ていた。ファヴニールを沈めた尾の勇壮さは元より、肛門辺りがおかしな挙動を見せている。
「まずい」
「は?」
防御壁を張った。数秒後、生物として当然の排泄行為が行われ防御壁に降り注いだ。ただし、プレスの時とは訳が違う。
あの時は宙に放り出されていたので、排泄の勢いで吹っ飛ばされていたので掛かるのを防ぐだけで良かった。今回は降り注いでいるのだ。つまり。
「おい!! このままじゃ割れるぞ!」
「む、無理。重い……」
あの巨体から排出される量はとんでもない訳で。単純な物量という凶器に防御壁が悲鳴を上げていた。ここで、俺はファヴ戦の時を思い出した。
「(そうだ。あの時みたいに力が目覚めて、防御壁が滅茶苦茶硬くなって……)」
ビキッ、バキッ。俺は堤防が決壊する瞬間を間近で見ることになる。復興したばかりの居住スペースに悲鳴が響き渡った。
――
「終わった…・…」
シャワーを浴びた後、俺は絶望していた。加害行為という訳でないにしても、役人を糞まみれ(比喩抜き)にしたともなれば、どんな抗議が来ることか。
調査結果を話すから応接室で待機していろと言われたが、どんな罵詈雑言を吐かれるのかと思っていると。扉が開いた。
「もう来ていたのか」
「あ、はい……」
後ろ手に鍵を閉めた、瞬間。扉に幾つもの刻印が走り、部屋全体を覆い、この空間が周囲から切り離された。こんな高等術式は見たことが無い。
「叫んでも無駄だ。誰も助けに来ない」
頭頂部から禍々しい竜角が姿を現し、来ていた衣服が赤黒い竜鱗へと置き換わった。背中に怖気が走る。俺は、彼女を知っている。
「ヴァルザイア……!」
「よどみなく、私の名を言ったな。どこかで会ったことがあるのか? まぁいい。貴様が飼っているドラゴンについて教えて貰おうか」
俺の中には二種類の緊張が走っていた。1つは、邪竜信仰の教祖が目の前にいること。2つ目は。
「(どうしよう。俺、ラスボスを糞まみれにしてしまった……!)」
今は興奮しているから気にしていないっぽいが、後で冷静になったらなぶり殺しにされるんじゃないんだろうかという不安が俺を襲っていた。
ちょっと執筆リズムがズレて来たので、暫くは夜投稿になると思います。
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