俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
「単刀直入に言う。私達に付け。富、名誉、女。望むものをくれてやろう」
分かりやすい誘い文句だ。当然だが、付く気はない。どうせ付いて行ったって、ドラゴンを奪われて殺されるのがオチだからだ。
「いきなり勧誘されてもな。闇雲に破壊をばら撒くだけの連中に与するメリットを教えてくれ。そもそも、お前達の目的は何だ?」
原作では、人間と彼らに与するドラゴン娘を排除して、自分達が世界を支配するという、スタンダードな野望を持っていたが、その考えを持つに至った理由は描かれていなかった。
「決まっているだろう。我々『邪竜』が世界を支配する為だ。ドラゴン娘等という娼婦共を駆逐し、我らが頂点に立つ」
分かりやすい位の差別主義者だ。彼女が憎んでいるのは人間かドラゴン娘か。下手な問いかけは、文字通り俺の首を絞めることに繋がりかねないが。
「そういうアンタもドラゴン娘じゃないのか?」
空気が張り詰める。この問いが地雷に当たるということは薄っすらと察していたが、同胞を手に掛けようとまで考える経緯が気になる。返事の代わりに、眼前にクローを突き付けられた。
「あの娼婦共と同一視されるのは心外だ。お前らより肉体も知能も全てが優れている我々が、媚を売る必要がどこにある?」
ソシャゲあるあるなツッコミだ。そういう物だと思ってプレイしていたが、実際に彼女達が人間に協力する理由があまり思いつかない。
「……種族の繁栄の為。とか?」
「下らん理由だ。ドラゴン『娘』等という種族故に、股を開かねばならん」」
極普通に接しているが、彼女達は召喚に応えてやって来てくれる訳で。
ならば、元々いた世界もあるはずなのだが、キャラストーリーなどでポツポツ語られる位で全容を聞いたことは無かった。
「そっちの世界に『男』は居ないのか?」
「……いるさ」
「じゃあ――」
「それ以上、喋るな」
首根っこを掴まれた。意識が飛びそうになる。逆鱗に触れたとは、この事か。
「お前らがいるから、我々は生殖という下らない概念に憑りつかれるんだ」
「ゴホッ」
直ぐに解放されたが、呼吸するのが辛い。
だが、何となく彼女の思想が見えた気がする。なるほど、ドラマギというゲームを考えれば、彼女は絶対に分かり合うことのない『敵』だ。
「その点、貴様が持っているドラゴンは素晴らしい。何にも囚われない。自由だ。全てが傅く存在だ。私もかくありたい物だ」
「だったら、ドラゴンをどうにかできると思わない方が良い。アイツは何よりも自由なんだろ?」
俺にもお前にも、どうにもできない。だから、フェルドもヴァルザイアも惹かれるのだろう。
「そうだ。忌々しいことに奴へと干渉するにはお前を介するしかない。そこで、お前の考え方から変えることにした」
机の上にスクロールが置かれた。依頼書だ。国お抱えの調査員からの依頼となれば、断れる訳がない。
「……報酬は?」
「上に報告する調査結果に融通を利かせてやる。受けなければ、お前は監禁されるだけだ」
実質、無償奉仕ということか。どいつもこいつも俺の価値を安く見積もりやがって。依頼を受けることを承諾して、ようやく解放されることになった。
「俺に依頼を出した意図は?」
「貴様が捕縛した信者に『ヒュプノー』という男がいただろう? あのクズが残した物を見て来い。私が言ったことも分かるはずだ」
仮にも自分に貢献して来た男に対する言い草とは思えない。彼女にとって、信者達は全て駒に過ぎないのだろうか。
「……アイツはお前に仕えて来たんじゃないのか?」
「都合よく私を言い訳に使っていただけだ。奴とは二度と会うことはない」
外へと出る一瞬の間で、ヴァルザイアは人間の調査員へと擬態していた。邪竜信者達の教祖。彼女が持つ力と思想の片鱗を見たような気がした。
――
「君、よく生きて帰って来れたね……」
調査がてらに綺麗にされた居住スペースに戻り、先程までの話をしたら、ヤウナー教授ですら絶句していた。
「邪竜信者の教祖。だよね?」
「どんな人だった?」
この場にフェルド達がいなかったのは幸運だったか。どんな人だったかと言われたら、イメージ通りの奴だった。傲慢で差別主義者なのだが。
「カラバ?」
「どうしたの?」
シンキとハクテイを見て思う。コイツらもヴァルザイアと似たようなことを言っていたな。ヤウナー教授もそうだが、もしかして。
「ここにいる奴ら。この学園のこと嫌い?」
「急にどうしたんだね」
「嫌いでもないけれど」
「好きでも無いよ。なんで?」
そして、ファヴことドラゴン娘を差別していたフェルド。一般的なマスターとドラゴン娘というイメージから外れた奴らばかりだ。この質問の意図を理解してもらうべく、先程の対談の内容を伝えた所。
「やっていることは賛同できないけれど、意見には理解を示す」
「ドラゴン娘はもっと気高くあるべき」
「まずい。邪竜シンパだ」
やっぱり話すべきではなかったか。ただ、やっていることは賛同しない位の倫理観があることは救いか。ハクテイの方を見た。
「ハクテイはどうして契約に応えたんだ?」
あまり気にしたことはなかったが、彼女はドラゴン娘の中では非常に特殊だ。他人であるはずのシンキと瓜二つなのだから。
「私が会いに行くと決めたから」
「私も会いに来るって分かっていたから」
「それはいわゆる。運命とか?」
二人して首を横に振った。思えば、俺はシンキ達とそれなりの時間を過ごしているが、彼女達のことを殆ど何も知らない。
「ウム。教授として言うことがあるならばだね……」
「カラバ。渡された依頼の内容って?」
「どんなことするの?」
「これなんだけど……」
「ねぇ。私の考えも聞いてくれよ」
全員で依頼文を見た。ヒュプノーが関わっていたとすれば、内容は予想できる物だったが、シンキとハクテイの顔が険しくなっていく。
「ドラゴン娘の売買と斡旋を行っている組織の捜査と」
「捕まっているマスターとドラゴン娘の解放」
ヒュプノーがマスターやドラゴン娘を売買していたということは、買っていた奴らがいるのは道理だ。……一介の学生に任せることではないと思うが。
「うん? でも、おかしな話じゃないか。ヒュプノーはヴァルザイアに仕えていたのだろう? どうして、彼女がこんな依頼を?」
「仕えてなんかいないと思う」
「都合よく利用していただけ」
実際、ヴァルザイアもクズ呼ばわりしていた。お互いにとって、お互いを利用するだけの関係で信頼なんて微塵も存在していないのだろう。
「カラバ。この依頼」
「私達も一緒に行っていい?」
「本当は許可したくないんだけれど……」
内容的にも、俺一人ではどうにもならない物だ。彼女達に頼むしかないのだが、気は進まない。この依頼の先に待ち構えている光景が予想できるからだ。
「この依頼は受けるべきでない。学生を向かわせるような物じゃない」
先程のボケとは一転して、ヤウナー教授が真面目なトーンで注意を入れて来た。理由も察する。
「拠点を作っている様なチンピラ達。じゃなくて、組織として運用できる程に体制が整っている連中は危険だから。ですかね?」
「分かっているじゃないか。カラバ君。これは依頼に託けて、君を亡き者にしようとする策謀だ」
人身売買なんて簡単にできる物じゃない。特にドラゴン娘なんて物を取り扱う連中がいるとすれば、裏社会でも顔が利いて、なおかつ表沙汰にしない程の手腕を持っているのだから、相応の戦力も持っていることだろう。
「でも、断れません。仮に俺が捕まったら、実家の両親にも影響がでる。家名に泥を塗ることに繋がりかねない」
「……そう言うことなら、私も付いて行こう」
「え?」「え?」
「なんだって?」
ふざけてなどいない。教授は至って真面目だ。
「やるにしても。君達みたいな子供が行った所で、マトモに取り合って貰えると思っているのかね。ん?」
道理だ。今回のメンバーは居住スペース組となるのだが、唯一参加できない奴がいる。
「ガァアア……」
いつもの様に。ドラゴンは微睡んでいた。
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