俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
「……分かった。他ならぬ君の頼みだ。引き受けよう」
依頼を完遂した翌日。カンザキ教授は約束を果たしてくれた。
フェルドとファヴを世話役へと駆り出してくれて、排泄物などの処理も植物学研究室で行ってくれる運びとなった。
「フェルド。例の邪竜信者について、何か知っていることは無いか?」
「残念だけど、僕はヴァルザイアに信用されていなかったのでね。何も教えられていない」
邪竜信者同士が全員友好的という訳でも無さそうだ。ヒュプノーは利用されていたと考えるべきか。
「お役に立てなくて申し訳ありません」
「良いんだよ、ファヴ。二人とも、世話は任せたぞ。エサ代は俺の……」
「それ位は払わせてくれ。僕のメンツも立てて欲しい」
「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな」
俺の財布事情的にも助かる。これだけ活躍しているのにずっと貧乏なのが不思議で仕方がない。二人に見送られ、俺は校門前で待機しているシンキ達に合流しに行こうと思ったが。
「フェルド様。もう、仕入れたりとかはしないんですか?」
「ファヴ。彼の食事も学園のサイクルの一つなんだ。ちゃんと食堂の廃棄場から貰いに行くぞ」
ファヴ、か。ヤウナー教授やシンキ達じゃなく、アイツが彼女のことをそう呼ぶのは嬉しいと思う反面。……ちょーっとだけ妬けた。
――
「学園通いのお坊ちゃま、お嬢様達でも人身売買があること位は分かっていると思う。世の中、恵まれた子達ばかりじゃないからね」
数日にも渡る道中で、ヤウナー教授から講義を受けていた。
俺達は学園に通える位に裕福な生まれではあるが、そうでない人達の方が多いことも知っている。
「もしも、世に軍隊が在れば兵士になることで食い扶持は稼げたけれど、そうはいかない。何故か分かるかい?」
「ドラゴン娘達がいるから。でしょう?」
「そう。彼女らは人間達の良きパートナーであり、抑止力でもある」
原作ではあまり触って来なかった部分だ。ここら辺を触ったら、彼女らで戦争をするという流れや物語を避けられなくなるからだろう。
「でも、争いが起きないならそれが一番いい」
「だけど、ドラゴン娘達の存在によって仕事が減り、あぶれた人間が野盗、山賊、あるいは邪竜信者になるということも珍しくはない」
奇妙な話だが、これは俺の前世にも繋がる。便利になればなるほど、必要とされなくなる人間が出て来る。いつの世も、どの世界でも変わりない。
「だから、誰もがドラゴン娘を欲する」
「でも、私達には選ぶ権利がある」
ハクテイの言う通り、人間側で契約は強制できない。結ぶも切るもドラゴン娘側によって行われるからだ。
「君達みたいな子達を斡旋する仕組みがあるんだろうね。そろそろ着くよ。黄金の街『ヘスペリデス』に」
入り口に立っただけで分かる。豪奢の限りを尽くした街の作り。俺の知識的に言えば『ラスベガス』とかに当たるのだろうか。
一応、この街に相応しい装いで来たが、俺達はまだガキみたいな物だ。ヤウナー教授に引率されているが、門前払いされる可能性はまだまだ高い。少しでも馴染むように振舞う必要がある。
「見て。カラバ、あそこ。すごいフルーツが売っている」
「あっちにはキラキラしたジュース」
「田舎娘は観光することしか考えてないのか」
興味津々といった様子で、辺りを見回すシンキ達は観光客その物である。ヤウナー教授も笑っていた。
「いやいや。何もおかしくはない。むしろ、カラバ君みたいに仏頂面して付いて来ている方が景観にそぐわないね」
「遊びに来ている訳ではないので」
「だったら、遊ぶべきだよ。今の我々は、この街で一番浮いているからね」
言っていることは分かるが、ヤウナー教授もシンキ達も分かっているんだろうか? この任務が失敗したら、俺は監禁されるかもしれないんだぞ。
「遊ぶって。何するんですか?」
「ギャンブル! コロシアム! 酒!!!」
「教授。もしかして、本当に遊びに来ました?」
ゲンコツくれてやろうと思ったが、この街自体がそう言う物だから仕方がないと言えば、それまでなのだが。
「真面目に言うとだね。この街の勝手も知らないまま本命に突っ込んでも足下を掬われる。君も、この街を調査するべきだ」
「納得いかねぇ」
言っていることは正しいのに、同意ができない不具合がすごい。一縷の望みを託して、シンキとハクテイを見る。
「買っちゃった」「美味しい」
「駄目みたいですね」
手には珍しいフルーツやキラキラしたジュース。販売員が最上級のスマイルを浮かべていることから、恐らくはぼったくられている。
「よしよし、これも調査だからね。仕方ないね。街を見て回ろう!」
もしかして、教授。俺の窮地に手を差し伸べてくれたように見せかけて、遊びに来ただけじゃないだろうかという疑念が浮かんでいた。
――
「うぉー!! 行けェー!! ぶっ殺せー!!」
俺達は街を遊び回った。ヤウナー教授が魔獣同士のコロシアムに熱狂し、『環境・異種生態学』で培った観察眼で的中させまくり、大勝ちしていた。
「うぉおおお! この女つぇええええ!」
また、大食い勝負なんて物もあったので、シンキが出場してからハクテイに入れ替わってぶっちぎりで優勝するなど。悪目立ちする様なことばかりしていた。ヤウナー教授からは作戦だと聞いているが。
「もう、私達。この街に根を下ろしても良いんじゃないかな?」
「いいかも」「そうかも」
皆で魔獣のステーキを頬張り、趣向を凝らしたスイーツを堪能している。あぶく銭で豪遊して回る俺達は、一般的にはどう見えるのだろう?
「すみません。お客様、よろしいでしょうか?」
「ム? なんだね?」
この教授、いつもより尊大だな。それはさておき、ようやくか。これだけ悪目立ちをしていれば嫌でも目に付くだろう。
「お客様達の遊興ぶりを見て、オーナーが大変ご興味を持たれまして。よろしければ、お会い頂けませんでしょうか?」
「構わないよ。な? 目立っただろ?」
すげぇドヤ顔だ。なのにちゃんと機能しているのがやっぱり不具合すぎる。
ウェイターに案内されて、店の奥に入る。VIPルームに待ち構えていたのはプレスやヒュプノーの様な屈強な大男。……ではなかった。
「貴殿らが『カラバ・イルマイト』一行か」
息を呑んだ。腰まで伸ばしたブロンドヘアは、1本1本が獲物を狙う蛇の様に思えた。獲物を嬲らんばかりに黄金の瞳孔は引き絞られている。
何より、目を引いたのは彼女の首から下が金色の竜鱗に覆われていたことだ。頭頂部には鎌首をもたげた爬虫類の様な角が二本。傍にはドラゴン娘を侍らせている。
「驚いたな、ドラゴン娘か。マスターは?」
「おい、連れてこい」
傍らに立っていたドラゴン娘が奥へと消えて数秒後。何かを引き摺りながら戻って来た。
「ンゴォオオオオオ!!」
髪を剃られ、目隠しをされ、ギャグボールを噛まされ、首輪を付けられた男が引っ張って来られた。パンツを履かされているのはせめてもの慈悲か。彼女は容赦なく踏みつけていた。
「美貌から何まで全てに劣るコレがマスター等と。笑わせる」
「そういうプレイって訳じゃなさそうだな。俺達が誰か知っているってことは、目的もご存じで?」
「そう早まるな。妾は敵対する気などありはせん。本当に仕留めるつもりなら、貴殿らが街に入ってから遊び呆けている間にどうにでもできた」
ですよね。となれば、俺達は敵対するかもしれない相手の懐で豪遊していた間抜け共になるが、一旦目を逸らすとして。
先程は初対面を装ったが、俺は彼女を知っている。第3章から幾度も相対していく、邪竜信者達の大幹部。
「自己紹介が遅れたな。妾の名は『ラドン』。信者共からは『黄金のラドン』と呼ばれている」
ヤウナーやシンキ達も言葉を失っている。邪竜信者達のトップ連中の殆どはドラゴン娘だ。彼女達に何があったかは原作的な設定は知っているが、正直。あまり当てにならない。何故なら。
「何故、俺達をこんな所に招いた?」
「交渉じゃ。貴殿らは妾に着け。そして、共にヴァルザイアを討とうではないか」
こんな展開。原作には無かったからだ。そして、彼女の提案の背景には俺を通して見ているドラゴンの存在があるのだろうということは直ぐに分かった。
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