俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
黄金のラドンがまさかの仲間入りを果たした。悪逆非道を尽くしていた彼女には罪の報いもあるだろうが、背負って行って貰わねばならない。
「アイツ、ヘスペリデスぶっ壊して来たんだろ?」
「しかも、街を支配していた邪竜の大幹部を手籠めにしたって話だ」
「マジかよ。化け物を飼うだけじゃなくて、邪竜すら手なずけるなんて」
俺も巻き込まれている。だが、経歴だけを見れば事実しか言っていないのだから仕方がない。とか思っていると、そっと抱き寄せられた。
「構わんで良い。妾がおるぞ」
「授業中……」
彼女の距離感はバグっている。基本、教授達は生徒とドラゴン娘がイチャイチャしていても何も言わないが、中には文句を言う者もいる。
「カラバ君。最前席でいちゃつくとは良い度胸しているねぇ」
「ヤウナー教授。俺は真面目に授業を受けています」
「なんじゃ。嫉妬か?」
「煽らないで……」
バチバチと火花を散らすので、後方にいるマスター達はイチャイチャも忘れて真面目に板書している。横目でシンキ達に助けを求めた。
「真面目に授業を受けて」「今は授業中」
「孤立無援」
かくして、左右と前方のイライラを受けながら授業に励んでいたが、俺の胃がシクシクと泣いている気がした。
――
そして、昼休み。1日ぶりに食堂から残飯を受け取り、台車に乗せて引いていた所、ラドンがチラチラと俺を見ている。
「引っ張ってやろうか?」
「……対価は?」
「ハハハ」
頑張って自分で引っ張ろう。いつもの様に隅っこスペースに移動すると、ヤウナー教授と見覚えのある顔がいた。血の気が引いた。
「カラバ君。お客様だ。先日の調査結果について話したいことがあるらしい」
「そう言うことだ。いや、見事だったな」
調査機関のトップを装い、国の中枢に潜り込んでいる邪竜の教祖、ヴァルザイアだ。ラドンとの間に一触即発の空気が流れる。
「邪竜の大幹部を娼婦へと貶めるとはな。どうやって、手籠めにしたんだ?」
「ほぅ。人に説教を垂れておいて、結局『娼婦』という発想しか出て来んとは、何とも貧相な想像力じゃな」
ラドンが構え、ヴァルザイアも迎撃しようとして、ドンと地面が揺れた。ドラゴンが地面を叩いていた。
「飯時に喧嘩するからだよ」
普段は、俺達のことなんて一つも気にしないが、自分の飯時に暴れられるのは不快であるらしい。いつもの様にシャベルで残飯を口に放り込む。
この時、早く終わらせたいからって雑に放り込みまくると怒られる(n敗)。これを繰り返し、無くなった後はゴミ箱を洗った水も放り込む。すると、もう用済みだと言わんばかりに関心が逸れる。
「で。俺に何の用だ?」
「カラバ君。この空気でシリアスぶるのは無理があると思うよ」
シリアスぶるも何も、俺にとっては死活問題の給仕作業なのだが……、ゴホンと咳払いして、場を仕切り直した。
「学園で起きたドラゴンの件は上と話を付けたが、今度はヘスペリデスの件で問題が生じた。売買されたマスターとドラゴン娘達の行方だ」
「ちょっと待て。もしも、全員を見つけ出せとかなら依頼内容が個人の範疇を超えている」
俺の疑問などを見過ごしたかのように封筒を渡された。中を見れば、学園の資料が入っている様だったが、これは。
「特に、購入者が多かった場所だ。そこの教授なら分かるだろう?」
「学術都市『アカデメイア』だね。この世界で最もドラゴン娘に関係する研究が進んでいる場所だ。その他の分野でも世界中から英才、天才を集めている」
語源は『アカデミア』だろうな。この世界にも存在していたのだろうか? 調査して欲しい理由は分かるが、気になることがある。
「前回のヘスペリデスの時もそうだったが、お前はどういうつもりで俺に依頼を出しているんだ? これじゃあまるで」
「私がドラゴン娘を助けようとしている。と、考えただろう?」
そうとしか思えない。前回の依頼もそうだが、ヴァルザイアが依頼したからこそ多数のマスターとドラゴン娘が助けられた。
邪竜と言えば、マスターやドラゴン娘達および人間とも敵対している存在であり、世界の敵であるはずだが。
「違うのか?」
「娼婦になり果てた連中は軽蔑するが、かと言って粗末に扱う連中を許している訳でもない。何より、人間如きが我々を探ろう等と烏滸がましい」
ラドンは『価値』で動いていたが、ヴァルザイアは『尊厳』だろうか? どいつもコイツも分かりやすい悪党じゃないんだからややこしい。
「ラドン。アカデメイアにも邪竜の大幹部がいる。とか、そういうオチは」
「知らん。仮に邪竜だとしても、自ら買い付けに来て足跡を残すような真似はせんだろう。我々、邪竜同士は……」
「仲が良い訳ではないのでな」
俺の友人同士、知り合いの教授同士、邪竜同士、なんで全員仲が悪いんだ。しかし、学術都市か。ジィっとパンフレットを見る。短期留学案内だ。
「誉だろうね。何故なら、学術都市に入れるのは世界でも有数のエリート。きっと、ご両親も誇らしく思うだろうね」
ヤウナー教授が滅茶苦茶チラチラと俺を見ている。もしかして、再び保護者枠で潜り込もうとしているのだろうか?
「こういった物に付き添いで入れるのは、パートナーである妾位じゃろうな」
ラドンもまた権利を主張している。先日、来たばかりだというのに相棒面がすごいことになっている。
このパンフレットは俺宛ということもあり、誰が付いて来て良いかも明記されていた。徹底されている。
「まず、相棒であるドラゴン娘と『パートナー』。そして、所属している研究室の教授。以上だそうだ」
「ウム。『環境・異種生態学』の研究生がこんなに出世してくれて嬉しい限りだよ。ちなみに、ヘスペリデスで君を助けに来たマスター達が装備していた杖や魔法道具一式を取りそろえた資金は、私の財布から出ているよ」
「抜かりが無さすぎる」
そういう伏線回収要らないから……。となると、今回は珍しくシンキ達を抜きにした外出になるのか。
「じゃあ、フェルド達と一緒にドラゴンの面倒を見て貰うことに」
「何を言っているんだ。ドラゴン娘と『パートナー』と書いているだろう」
ヴァルザイアに指摘されて、文章を読み直す。そう書かれている。じゃあ、今回はコイツもお出かけするのか。
「グガァアア……」
食事を終えて満足しているのか、うつらうつらしている。
だけど、悪い話ではない。学術都市とまで言われている場所なら、少しはドラゴンのことも分かるかもしれない。とか思っていると、いつもより遅れてシンキ達もやって来た。二人はヴァルザイアを見て硬直していた。
「邪魔をしたな。これからも私の為に働くがいい」
一瞬、瞬きをした間に姿を消していた。やはり未だに得体が知れない。そして、俺も良い様に利用されている気がする。
「カラバ」「今のって」
「次のご依頼を渡された。学術都市に行けってさ」
「妾が付添うから、小娘共は行儀よく留守番しておるのだぞ」
ラドンが煽り散らかす中、シンキも無言で封筒を取り出して中身を見せていた。学術都市の短期留学案内だ。
「私達も」「案内が来た」
シンキ達は真面目ではあるし、テストの点も良いが、こういった物に推薦される程の成績の持ち主ではないと思う。
思い当る節があるとすれば、先日に見せた疑竜化の件だろうか。あるいは俺の関係者として? 何も分からない。というか、この調子だとまさか。
「お。なんだ。人が集まっているじゃないか」
「なんかあったんですか?」
「もう、ここに研究室建てた方が良い気がするぞ……」
フェルドとファヴ。そして、彼らを引率するカンザキ教授まで現れた。まさか、他の連中もだろうか。
「もしかして、三人も学術都市にご案内される報告を?」
「え?」
「なんで分かったんですか?」
「もしや、お前らもか?」
間違いない。今回の件は俺達を狙い撃ちにしている。正に総出といった様相になりそうで、今まで以上の騒ぎを予感させた。