俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
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アカデメイアの短期留学に向けて、学園長と話を付けたり、親にも一報を入れたり、色々と準備を進めていたある日のことである。神妙な面持ちをしたシンキとハクテイが訪ねて来た。
「カラバ。大変」
「叔父さんが学園に来るって」
「確か。シンキのお父さん代わりの人だったっけ?」
頷く。彼女の母親は『ハクジャ』というドラゴン娘だったが、今は元の世界へと帰っており、父親は消息不明となっている。……それらの原因はというと。
「それで。妾のマスターにどうしろと?」
現在、俺のもう1人のパートナーとなっている『ラドン』の仕業である。
完全に改心した訳ではないし、罪の清算を終えた訳でもない。各方面にもわだかまりが残っている。
「カラバに会いたいって」
ラドンのことなど、気にも留めていないのか。彼女は話を続けた。
なんでも、普段から手紙のやり取りで俺のことは知らせていたらしいが、ヘスペリデスの一件で特に気に入ったらしく、近くに寄る用事もあったそうなので、一度会ってみたいということらしい。
「俺は別に問題ないけれど……」
「妾に席を外せということだろう?」
シンキ達からすれば、ラドンは一家を離散に追い込んだ仇敵だ。本来なら、この場にいることすら我慢ならないことだろう。シンキがスゥっと目を細めた。
「それだけじゃない。ラドンがパートナーであることも黙っていて欲しい」
今度はラドンの目がスゥっと細くなった。
シンキはラドンの過去を知らないはずだが、前のマスターから見捨てられた経歴を持つ彼女に対して、実にクリティカルだ。
「それは我慢ならんな。カラバ……いや、『入真』はお主の物ではないだろう。そこまで指図される謂れはない」
「イルマ?」「イントネーションが違う」
その名前を口論の場で持ち出すのは止めて欲しかった。どちらにしても、俺は彼女の要求を呑み込む気は無いが。
「シンキ、ハクテイ。聞いてくれ。ラドンと契約すると決めたからには、都合の悪い時だけ隠すなんて真似をするつもりはない」
ラドンをパートナーにした以上、必ず俺にも弊害は降り掛かるだろう。それも織り込み済みで彼女のマスターになったのだから。
現に学園では生徒や教授達から好き勝手に言われているが、ドラゴンと契約した時からずっと言われているので気にしてはいない。
「イルマってなに?」「イルマイトじゃなくて?」
「気になるの、そっち?」
「そうか。教えとらんのか!」
ラドンがニヤニヤしていた。とは言え、俺も彼女の過去を勝手に覗き見た人間なので、強くは言えない。見えて、見られてお互い様だ。
「会っても良いけれど、叔父さんが嫌な思いをするかもしれないってことだけは言っておくよ。俺が会うなら、それが条件」
我ながら融通が利かないとは思うが、これまで苦楽を共にして来たシンキだからこそ正直に伝えた。
「分かった。それでもいい。会って欲しい」
承諾してくれた。でも、人の親御さん代わりの人に会うとなるとちょっと緊張してしまう。と、同時にどんな人かも気になる。前にチラッと話を聞いた時は、ドラゴン娘好きってのは聞いたけれど。
「それで。いつ来るんだ?」
「1時間後」「手紙来たの、結構前」
「ヤウナー教授と言い、ほぼ事後承諾みたいな形は止めろ!」
もっと早くに言って欲しい。俺はシャワーを浴びて、身支度を整えて、来訪者と面会する為の部屋へと向かった。
――
1時間の間にドラゴンの給仕をする際に付いた臭いを落とし、更には購買部で茶菓子を用意して、後は来てくれるのを待つだけだ。
「シンキ。何か、しちゃ駄目な話題とかはある? マスターのこととか」
「多分、無い」
シンキも話し上手な方ではないから、そういう細かなことを聞くのは向いていないか。気を揉んでいると、コンコンとノックされた。
「どうぞ」
「失礼す……」
「ほぅ」
現れた男性は品の良いオジサマという印象だった。彼はラドンとハクテイの方を見ると、少しだけ固まったが、コホンと咳払いした。
「彼女達がドラゴン娘か。こちらはシンキにそっくりだ。彼女がハクテイかい?」
「うん」「そうだよ」
「そうかい。となると、こちらのドラゴン娘は」
「……そちらにいるマスターのパートナーじゃ」
ラドンが俺のことを指差していた。名前を言わないのは気遣いからか、それとも有象無象に教えるつもりはないという意思の表れか、併せて俺も挨拶した。
「初めまして。カラバ・イルマイトと申します。シンキには仲良くして貰っています」
「君がカラバ君か。なるほど、利口そうな青年だ」
素直に褒められて反応に困る。とりあえず、愛想笑いを浮かべておいて用意していた茶を淹れた。
「ありがとう。カラバ君、シンキは学園の方ではどんな風に過ごしている?」
「そうですね。真面目だと思います」
これは事実だ。彼女は授業中にいちゃついたりとかはしないので、他の学生よりは真面目である。成績に結び付いているかと言われたら微妙だが。
「友人は?」
「休み時間と放課後は普段から一緒にいますけど。……他には?」
「いない」「別に問題ない」
折角、来てくれた叔父さんになんてことを言うんだ。ハクテイも追い打ちをしないで欲しい。フォローを入れなければ。
「ハハハ。すいませんね、独り占めしちゃって」
「良いんだよ。この子は少し気難しい所もあるから、学園生活が送れるか心配していたんだけれど、君が手紙通りの子で良かったよ」
「どんな風に書かれているんですか?」
チラッと悪戯っぽく笑いながら、シンキを見た。当人は首を横にプルプルと振っている。内容は言うなということか。……気になる。
「そうだな。じゃあ、君はシンキ達をどう思う?」
なるほど、交換条件という訳か。この叔父さんは中々強かだ。シンキとハクテイの関心がこちらに向いた。ラドンもチラチラ見ている。
「今まで、二人には何度も助けられて来ました。俺が、この学園のことを嫌いにならずに済んでいるのも彼女達のおかげですし、大切な友人だと思っています」
全員が黙った。言ってから、頭から湯気が出そうな位に恥ずかしくなるが、それだけ感謝しているのは本当だ。
叔父さんは感じ入っているのか、目頭を押さえていた。シンキとハクテイもニマニマしている中、ラドンは面白く無さそうな表情をしていた。
「実はね。先日のヘスペリデスの件は聞いていたんだ。君がドラゴン娘達を解放したのも、ハクテイがシンキの妹だということも。恩人に礼を言いたくて足を運んでみたが、来てよかったよ」
「それは良かったです。よろしければ、席を外しましょうか?」
ここに来るまで時間も旅費も使っただろうし、三人で話したいこともあるだろう。と思っていると、ハクテイが小さく手を上げていた。
「お母さん。こっちにお姉ちゃんがいるって言っていた。それと、お父さんのことを愛していた。って」
「……そうか」
これ以上、同席するのも野暮な話だ。扉を閉めた。後は、家族水入らずで話し合うべきだ。応接間から遠ざかり、いつもの隅っこスペースに戻って来た。ヤウナー教授もおらず、昼寝しているドラゴンがいる位だ。
「お主も気付いとったろうが、あの叔父を名乗る人物。ハクジャと一緒におったマスターじゃ。何故、叔父と名乗っているかは知らんが」
「複雑な事情があるんだろう。……ラドン、アレがお前の引き裂いて来た物だ」
きっと、ラドンの件が無ければ、シンキにはドラゴン娘がいる温かな家庭があったハズだ。その場合、彼女はどんな人間になっていたのだろう?
「あの小娘も妾を許さん訳だ」
「直ぐに反省できるとは思わないけど、自分がやって来たことは受け止めてくれ」
「そうじゃな」
淡々と受け止めていた。三人が応接室で話している間、俺達は何も喋らずに過ごしていた。
明日は投稿が難しいかもしれません。