俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
「今回の検査は、皆さんの魔力(マナ)を確認する為の物になります」
アカデメイアに来てから3日目。また検査を受けることになった。
2日目の検査は健康状態などを確かめる為の物であったらしく、今日の検査こそが本番であるらしい。
「なので、ドラゴン娘の皆さんも調べさせて欲しいのですが」
「無礼者。妾を畜生の様に扱うというのか。恥を知れ」
「いや」
速攻でラドンとシンキが拒否していた。残ったファヴも口にこそ出さないが嫌そうな顔をしている。これには研究者も困っていた。チラリとマスター達を見た。
「じゃあ、ハクテイの検査は私が手伝う」
「それならいい」
「わ、分かりました……」
研究者も困った顔をしていたが、落とし所としてはこんな物だろう。ファヴもフェルドの方を見た。
「フェルド様?」
「分かったよ。僕も検査に付き添わせて貰えるか?」
「え? シンキさんみたいに手伝ってくれないんですか?」
「僕は男だよ!?」
すごい。元がエッチなブラゲーなのに、この貞操観念に満ちた発言。原作で寝取りしていた時は滅茶苦茶嫌だったんだろうなと思う。にしても、意外だ。
「シンキとフェルドもだけど、検査を受けることに抵抗が無いんだな」
「うん。私も自分のことを知りたいから」「僕もね」
科学の恩恵としては忘れがちだが、自分の健康状態を知れるというのは大きい。特に俺達は、マスターになったことや疑竜化などの件もあって、自分のこともよく分かっていない状態なのだから。
「ラドン。俺が付添うとか手伝うとか言ったら、受ける?」
「受ける訳がないだろう」
ですよね。研究者も無理に従わせるような真似はせず、まずは俺達から検査を受けることになった。
通された部屋の中央に大きな円筒状の装置があった。周囲では科学者達が機材を操作している。
「これから、魔力走査を行います。こちらにお入りください」
「どこに?」
シンキが首を傾げている。SFチックな装置だが、初見では何か分からないのが普通だ。なので、まずは俺が先に入った。
『深呼吸をして、リラックスして下さい』
機械音声の指示に従い、リラックスした状態で全身をスキャンされた。5分にも満たない時間で終わった。同じ様に、フェルドとシンキも検査されて行く。
2日目の検査で多少の耐性はできていたのか、スキャンされる時に避けるみたいなことはしなかった。
「続いては、ファヴニールさんとハクテイさんも」
「フェルド様?」
「大丈夫だって。何も無かったよ」
「シンキ?」「ヘーキヘーキ」
検査方法的に手伝方法が無かったので励ます位しか無かったが、直ぐに終わったので特段トラブルになることも無く、そのまま別室に通された。
「皆さんの体を検査した結果ですが」
モニタに映し出されたのはシンキとフェルドのデータだった。……表示されている数字の意味は全く分からないが。
「これらの数字は平均的なマスターよりも魔力(マナ)の容量が大きいことを示しています。呪文を行使できる回数や、どれだけドラゴン娘達を制約無く動かせるかという物ですね」
ここはそんなに意外でもない。フェルドが優等生なのは言うまでもないし、シンキもドラゴン娘と元・マスターの娘であるからサラブレットではある。
「そして、カラバさんのデータですが」
表示されたデータには、先程よりも三回りほど大きい数字が表示されていた。ついでに『D因子』という気になるワードも。
「この『D因子』というのは、高純度の魔力(マナ)の塊がある状態だと思って下さい」
「人体への影響とかは?」
「確認した限りではありません。これはマスターだけではなく、パートナーのお二人もありました」
ファヴとハクテイのデータにも『D因子』と書かれていた。
これが本当のことかどうかを確認する手段は無いが、疑竜化という現象を見ている以上、何かしら関係があるのは間違いないだろう。
「もしや、これがあれば疑竜化できる。みたいな物か?」
「可能性は高いと思っています。実は、この因子の発見に協力してくれたのは、カンザキ教授なんです。彼女が保管していた植物型魔獣から発見できたのです。これらの共通点はお分かりですね?」
ファヴはキャベツ型魔獣を捕食していたし、シンキもリンゴマンを齧っていた。
では、奴らはどうやって発生したか? 畑や果樹園だ。しかも、特別な肥料が蒔かれていた。
「ドラゴンの排泄物で作った肥料が蒔かれていた。か?」
「その通りです。疑竜化の秘訣は彼の排泄物にあったのです」
恐らく、発見的にはマジで世紀の発見なんだろうが、俺達は顔を歪めていた。幾らなんでも字面が酷い。更に、酷い可能性が浮かんだ。
「じゃあ、もし作物とかみたいな間接摂取じゃなくて、直接浴びたりとかは」
「それはもう、すごい効果があるでしょう。何か、心当たりが?」
邪竜信者の幹部だった男を思い出す。アイツが異常に強くなっていた理由が判明したと同時に、滅茶苦茶不味い事実が浮かんだ。
「(ヴァルザイアの奴!! 思いっきり浴びている!!)」
ヴァルザイアの依頼をこなし、奴に疑竜化の力を与える。
もしや、俺はあいつの懐刀的な立ち位置に収まっているのではないかという懸念が過ったが、目を背けることにした。
「疑竜化の仕組みが一部分かったとして、どう使うんです?」
こう言ってはなんだが、汎用性は無いと思う。有体に言えば、疑竜化で得られるのは戦闘力だけで、市民の生活向上などには関係がない。
「使い方次第ですよ。もちろん、戦争や諍い等といった使い方ではなくね」
「どう使うんですか?」
「それはまだ秘密ということで」
嫌な予感がする。ドラゴン娘の契約を破棄させるように仕向けて、次元を開くだとかしていた奴らの使い方なんてロクでもなさそうだが、指摘する材料がない。
今日の検査は終わりらしく、また検査の必要があれば呼ぶということだが、恐らくは、もう必要とされない気がした。
「(疑竜化をぶっこぬかれたんだからな)」
後は、適当な理由を付けて帰されるか、あるいはドラゴンを奪われるか。あまりモタモタしている暇はなさそうだ。俺達が額を突き合わせて考えていると、嬉しそうに部屋に入って来る人がいた。
「なぁ! 聞いてくれよ! 私の研究成果が認められて、アカデメイアに正式に所属しないかって! これも、お前らのおかげだな!」
テンションの高いカンザキ教授だった。彼女はバシバシと俺の肩を叩いていた。取らぬ狸の皮算用すぎる。
「でも、その成果ってドラゴンの排泄物のおかげでは?」
「……カラバ。お前も、こっちに転入しないか」
「何を言っているの?」「ふざけないで」
シンキとハクテイからの牽制が入った。フェルドとファヴは立場が微妙なので何も言えないし、ラドンは問題無さそうにしていた。彼女はパートナーなので、俺が転入しても付いて来るだけだし。
「カンザキ教授。それでは、残して来た研究生達はどうなるんですか?」
「忘れていた!」
俗人すぎる。自分のことしか考えていないのか。彼女の研究室の生徒達は大変そうだと思った所で、もう一つ気になることが。
「ヤウナー教授は?」
「特に勧誘を受けたという話も聞いていないな。ただ、研究棟で見るアイツはどうにもやる気が無さそうだったけど」
今日の発表はヤウナー教授の研究が発展した末に判明したと思っていたのだが、違うのだろうか?
「どうして?」
「今、お前の相棒の研究はアカデメイアの奴らが主体でやっていて、ヤウナーは別のことをしているよ。パラル教授の所に行っていたが」
契約破棄の実験の時にいた教授だ。『環境・異種生態学』なんて物をやっている彼女がどうして?
昨日、総長に連れて行って貰った場所にいるならまた行こうかと考えていると、ラドンとシンキに肩を掴まれた。
「今度は独りで行かないでね?」
「妾も行くぞ」
束縛されるということは気にされているということでもあるのだろうが、こうして自由は無くなって行くんだなって。皆で、昨日向かった場所に行くことした。
最近、少し寒くなって来たなと思うこの頃。コメントや評価を頂けると、筆者のテンションと体温が上がります!