俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
いつものメンバーに加えて、特別ゲストのリンドブルムを加えて久々の討伐に出向いた。驚くべきことに、連中は整列して待ち構えていた。
邪竜信者と言えば、少し強い野盗に過ぎないので、こんなに統制が取れた連中を見るのは珍しい。
「(元は兵士だった連中か?)」
問答無用で蹴散らすのはあまりに野蛮だ。それに、俺に用事があるというのならひとまずは話だけでも聞いてみよう。ドラゴンが彼らの前に降り立った。
俺はラドンに抱えられながら、シンキはハクテイに抱えられながら、リンドブルムは単身飛び降りた。地上に降り立つと同時に、先頭に立っていた男が吠えた。
「そこの男! お前が『カラバ・イルマイト』か!」
筋骨隆々とした坊主頭の男。竜鱗が面頬の様に張り付き、四肢にも浮かび上がっていることから、彼もまた幹部クラスの人間であることは分かった。ただ、妙に既視感がある見た目をしている。
「そうだ、俺がカラバだ」
「我が名は『チョウキョウ』。我が友『プレス』の仇を討ちに来た!」
思い出した。確か、コイツはプレスのコンパチキャラとして出ていた奴だ。
催眠や寝取りで鍛えられたユーザー達にとって、調教はイマイチ刺激が少なかったのか、2Pカラーとかパチモンだとか散々に言われている奴だ。
「(そもそも、名前がダイレクト過ぎる)」
プレスやヒュプノーはまだいい。だけど、チョウキョウは調教過ぎる。
いや、ひょっとしたら三国志的なニュアンスで『趙姜』みたいな感じかもしれないが、それでも名前からビジュまで手抜きすぎる。
「どうした。恐れて、声も出ないか?」
「待て、仇とはどういうことだ。アイツは死んでないぞ」
「とぼけるな! 貴様らが憲兵に突き出したせいで、捕縛され、刑は執行されたと聞いた!!」
「あー、なるほどな」
国としては邪竜信者に脱獄された、なんて知られたら面目丸潰れだ。だから、体裁を守る為にも、刑は執行されたということになっているのか。
「貴様らにとってはクズ野郎だったかもしれんが! 俺にとっては、路頭に迷っていた頃に手を引いてくれた盟友だったんだ!」
周りの信者達も感化されて目頭を押さえているが、普通にアイツはクズ野郎だったと思う。後は、文字通りの糞野郎だとも思う。
自然を改造して淫猥な森にしたり、人のパートナーを寝取ったり(未遂)、ドラゴン相手に狼藉を働いたりと、擁護できる要素は少ない。
「カラバ」「ヘスペリデスの件」
だけど、ヘスペリデスの時はアイツらが居なければ、間違いなくラドンに勝てなかった。たった、1回の癖に滅茶苦茶デカイ貸を作られたのが腹立つ。もう少し、聞いてみるか。
「一体、何をしてくれたんだ?」
「知れたこと! ドラゴン娘の出現で用済みになった、俺達を誘い、世話をしてくれたんだ! かつての同じ騎士団にいた好でな!」
アイツ、騎士団の出身だったのか。道理で強かったわけだ。
案外、そう言った面倒見の良さもあって幹部になったし、こういう慕う奴が出て来るのかもしれない。
「だから、奴にお前の首級を捧ぐ! 1対1だ! 掛かって来い!」
チョウキョウは信者達を手で制して、一歩前に出た。
別に、俺に応じる義務も責任もないし、このままドラゴンを突っ込ませれば片が付くとは思うのだが。
「へっへっへ。カラバだっけ? ここはオレに任せな」
「いや、頼んでいないが」
勝手にリンドブルムが代表面して一歩前に出た。
異次元で疑竜化した彼女と戦った時は、ドラゴンも多少てこずっていたが、ドラゴン娘の形態でも強いんだろうか。
「ほぅ! お前が、あの男のパートナーか!」
「いいや、お前如きに手を煩わせる必要もねェから、オレが出て来てんだよ」
この場は試合でも何でもない。故に、リンドブルムが開始の合図も無く、チョウキョウの顔面を殴ったとしてもルール違反とジャッジする者はいないが。
「なんと、期待外れか。羽毛が俺の顔に舞ったのかと思ったぞ」
「なめんなや!」
全身に蒼電を纏うことで、反射速度なども上げているようだが、チョウキョウを打ち倒すには至らない。体格が優れている彼女は相応の力もあるはずだ。
「クッソ! なんで当たらねェんだ!」
「力任せの戦いか。前座にもならんわ!」
展開したドラゴンクローによる爪撃は、懐に潜り込まれることで回避され、迎撃の為に膝蹴りを繰り出そうとした所で、顎にアッパーを食らっていた。
「(コンパチキャラかと思っていたが、戦いの駆け引きが上手いな)」
ヴァルザイアから分け与えられたという力は、純粋なドラゴン娘の力には劣るかもしれないが、人間として技能が補っているという感じか。
一方で、リンドブルムは力に頼った戦い方という印象を受ける。普通の邪竜信者相手と戦うなら、上から潰せるだろうが。
「うわ!?」
「出直せ!」
チョウキョウという名前は伊達ではなく、まるで拳法家の様な多彩な技でリンドブルムをぶちのめしていた。シンキとハクテイが駆け寄る。
「大丈夫?」「怪我は?」
「や、やられちまったよ。ヘヘッ……」
俺達の為に出てくれたこと自体は称賛したい。ただ、非常に言い辛いが、思っていたよりも弱いな……。
「(今まで見て来たドラゴン娘達が選りすぐりだったってことだよな)」
ハクテイは器用に立ち回れるし、ファヴニールは地力も含めてかなり強かったし、ラドンは言わずもがなだ。リンドブルムみたいな娘こそが平均的なのかもしれない。……だったら、疑竜化した時はどうしてあんな強かったんだろうか?
「さぁ! これで終わりか!」
「フン。前座を倒した位で満足するでない」
次はラドンが出て行った。チョウキョウの顔も締まった。どうやら、相手が強いかどうかはちゃんと分かるらしい。
「強いな」
「当然だ。では、死ね」
初っ端、手加減無しで魔力(マナ)による分身体を生成して、一斉に襲い掛かった。多勢に無勢であるが、チョウキョウもよく対応していた。
「うぉおおおおお!」
近くにあった大木を蹴り倒して、丸太を振り回して薙ぎ払っていたが、当然の様に捉えられる訳もなく、ボコボコにされていた。
「これで、プレスの盟友を名乗るのか。奴はもっと強く、果敢であったがな」
「なんだと?」
「その、なんだ。プレスの奴は生きているぞ」
ここでネタバラシ。という訳ではないが、チョウキョウに説明した。
プレスは脱獄して元気で生きていると。そして、ヘスペリデスの騒ぎで自分達を助けて、何処かに消えたということ。
「生きて、生きているのか!?」
「そうだ。第一、お前が信じる盟友はそんな簡単に死ぬ奴なのか?」
認めたくは無いが、奴は人類最強の男だ。強くなった原因については何も話さないことにする。チョウキョウの部下達にも動揺が走った。
「そうか、奴が簡単に死ぬ訳がないか!」
「納得したか?」
「ああ、確かめに行かねばならんな。知らせてくれたこと、礼を言う!」
「そうか。でも、その前にやることがあるんだ」
「やること?」
スーっとスクロールを出した。チョウキョウ達の討伐が記されたスクロールだ。俺の背後にいるドラゴンは涎をボタボタと零している。
「大なり小なり近隣に迷惑を掛けたんだから、捕縛させて貰うぞ。横にいる魔獣共は昼食としていただく」
「そんな! 横暴だ!!」
1対1の戦いを終えて、ドラゴンによる捕食大会が始まり、チョウキョウおよび部下達は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。これに懲りたら、犯罪は止めて欲しい。
「カラバ」「逃がしたら果樹園に突っ込まれるんじゃ?」
「……あ」
スクロールでは脅し文句として使っていたが、勝負に応じたらそんな姑息な真似はしないだろうと、思っていたが、所詮は邪竜信者だしな。
心配になったので、近隣にあるカンザキ教授の果樹園の方に足を運んでみれば、研究生と邪竜信者が入り乱れてパニックになっていた。
「なんだ、お前ら!?」
「出ていけ!!」
「うぉおおお! 自分達だけで、こんなに美味いモン食っていてずるいぞ!」
「ちょっとは寄こせ!」
まるで、逃走がてらに果物を取って去っていく様は、害獣めいていた。俺達が追って来たのが分かるや、逃げに徹する冷静さもやや腹立たしい。
嵐のような一団が過ぎ去った後は、ちょっとだけダメージを受けた果樹園が残されていた。……帰ったらカンザキ教授になんて言おうか。
――
「えー……」
怒られる訳でもなく、労われる訳でもなく、物凄く不満そうな顔をされた。俺が悪いって言いたいのか。
「いや、でも、そこで捕まえようとしなければ被害が出なかったんじゃ? どうせ、連中なんて捕まってもすぐに出て来るだろうし」
「体制側にあるまじき順法精神の低さ」
久々に依頼をこなしたというのに、どうにもスッキリしない終わり方だった。いつもの様に隅っこスペースに戻ると変化が生じていた。
「ラドン姐さん! どうやったら、そんな風に強くなれるんっすか!?」
「擦り寄るな、鬱陶しい」
リンドブルムがラドンに懐いていた。当の本人は鬱陶しそうにしているが、特に気にした様子もなく後輩魂を炸裂させていた。
「カラバ」「良いのかな……」
シンキとハクテイが心配していることは分かる。
リンドブルムがアカデメイアで実験体になっていたのは、ヘスペリデスで買われたからだ。そして、彼女が商品になっていたのはラドンが値付けをしたからだ。そのことを知った時、何を思うんだろうか?
「やっぱり、アレっすか? 魔力(マナ)の使い方とか?」
「使い方も何も。お主は雑に放つだけであろう。あんな物、使っているとすら言わんわ!」
堪りかねたラドンから一喝されていたが、リンドブルムは楽しそうにしている。
……彼女の罪も一緒に背負っていくと言ったが、ここで打ち明けることは正しいことだろうか?
「(このまま二人が仲良くなったとして、俺はどうするべきだ?)」
真実を打ち明けることは彼女達の為になるのだろうか? リンドブルムとラドンを傷付けるだけで終わってしまうだろう。しかし、黙っていてもリンドブルムを蔑ろにすることには変わりない。
打ち明けるべきタイミングは何時か、微笑ましい光景とは裏腹に選択を迫られていた。
もしも、面白いと思って頂けたら、お気に入り登録、評価、感想などを頂けると……モチベーションが上がります!