俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
今回はいつもみたいに依頼が待ち受けている訳でもないし、リンドブルムをアレクシオンへと送迎すれば終わる話……なのだが。
「(本当にリンドブルムのマスターはアレクシオンにいるのか?)」
あくまで本人の証言でしかないし、確かめる術がない。こういう時にネットやスマホを使えたらとは思うが、そんな物はアカデメイア限定でしか存在していない。
なので、ドラマギ学園の広報や届いているパンフレットなどを調べていた所、ちょうどアレクシオンに関わる物を見つけた。
「『最強のマスターとドラゴン娘は誰だ! 双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)がアレクシオンにて開かれる!』……か」
事務員に聞いてみた所、それなりに権威のある大会でもあるらしい。見れば、優勝賞品も割と豪華だ。
「ウチからも優勝者が出たりしているのよね。アンタも参加するの?」
「いや、遠慮しておきますよ」
ドラゴンはもちろん参加できないし、ラドンは有名になったら色々と困る。なので、リンドブルムを送迎したら、適当に遊んで帰って来るつもりだ。
双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)が開催されるまでに彼女が解放されたのは幸いだが、マスターが都合よく現地にいたりするだろうか? いや、そもそも。
「なぁ、リンドブルム」
「どうした?」
場所を変えて隅っこスペース。極当然の様にラドンの舎弟みたいな立ち位置に収まっているのは一旦置いとくとして。
「なんで、総長の手配を断って、俺達の所に来たんだ?」
「なんで、って。オレ達で実験した奴を信じろってのか?」
それはそうだ。散々好き勝手して来た奴が反省しました、なんて言っても信じられる訳が無い。むしろ、俺達に付いて来る方が自然か。
「じゃあ、もう一つ質問。お前のマスターは『アレクシオン』にいるって確証はあるのか?」
「応! マスターは最強を目指していたからな! アレクシオンの大会にも出るって言っていた!」
楽しそうに語るが、先日のチョウキョウ戦を鑑みるに優勝は難しいだろうとは思う。ただ、挑戦するのは彼女達の選択なので、サポートするつもりはない。
「そうか。じゃあ、送り届けたらそこで終わりだな」
「え!? ラドンの姐さんと一緒に出るつもりねぇの!?」
「興味がない」「妾も同じだ」
名誉とかそう言った物に興味はない。むしろ、有名になれば余計なリスクを抱える可能性が増えてしまう。……手遅れな気もするが。
「一緒に出ましょうぜ~」
「引っ付くな、鬱陶しい」
心温まる遣り取りを傍目に、俺はアクセス方法についても考えていた。
今回は依頼とかではなく、完全に個人的事情で行くので講義なども休まなければならない。……ドラゴンに連れて行って貰えれば話も早いのだが。
『ウルルル……』
行った先でコイツの要求を満たす物が無ければ、もれなくDV(ドラゴン・バイオレンス)を食らう羽目になるので、できれば遠慮したい。
何か、他に面白そうな催しが無いかと、アレクシオンのパンフレットを見ていると、隅っこの方に目が行った。
「『魔獣トーナメント?』」
「聞いた話だと、魔獣を取り扱う奴らでの闘技場みたいなのがあるらしいぞ。でも、アイツらは基本的に制止も利かねーし、殺し合いみたいなモンだから人気は無いって聞いたぜ」
リンドブルムが苦笑いしながら説明してくれた。連れて行って貰える口実ができ上がった。何となく気配を察したのか、ドラゴンもこっちを見ている。
「よっし、日帰り旅行になりそうだな」
「なら、妾とゆるりと遊んで帰ろうか」
そっと腕を抱き寄せられた。……アカデメイアの時はあまり彼女に構ってやれなかったし、偶には良いだろう。
「お? ラブラブっすか?」
「それがどうした?」
「いや、いいっすね」
なんか、いつもより元気がない言い方なのが気になったが、アレクシオンへの旅行プランは決まった。
ドラゴンに飛んで行って貰って、リンドブルムを送り届けた後は、魔獣トーナメントで捕食して、遊んで帰って終わり。
「(予定通りにいかない気がするけれど)」
どうせ、現地で面倒臭い事態に巻き込まれる。確信に近い予感があるが、彼女を送り届けると決めたのだ。
まず、準備を進めようと必要な物が無いかと、もう一度書類を見た時、俺はあまりに重要なことに気付いた。
「……なぁ、リンドブルム。大会って何時からだ?」
「詳しくは知らねーよ」
「日付、明日になっているんだけど」
エントリーも考えたら、今から行かないと間に合わない。
俺達は直ぐに必要な道具をまとめて、ドラゴンの背中に乗った。マジで、誰にも言うことの無い出立だった。
「(早速、悪い予感が的中している!)」
こればかりは俺の不注意で済む話だったのだが、不運や不幸とは不思議な物である。確率やら何やらを無視して、積み重なる物なのだから。
――
ドラゴンフライトのおかげで陽が沈む前にアレクシオンに辿り着けた。
魔獣トーナメントの関係もあって、彼を連れて行く必要もあるのだが、やはり滅茶苦茶注目を集めた。
「デケェ……」
「なんだ、あの化け物!?」
「まさか、魔獣トーナメントの?」
若干、来たことを後悔した。当たり前だけど、ドラゴンの存在は日常に相応しくない。リンドブルムを送迎して、トーナメントに出て……ラドンと遊んだら帰ろう。そう思って、ドラゴンを待機させて、受付のある建物に入った時のことである。
「ですから! 魔獣の方を連れて来て下さいよ!」
「俺だ! この四肢に満ちた活力! 鍛え上げられた肉体! 畜生などに引けはとらんぞ!!」
ハゲ頭の大男が受付で叫んでいた。滅茶苦茶見覚えがある見た目をしている。幾らなんでも回収が早すぎる。
ラドンも嫌そうな顔をしているが、見て見ぬ振りはできない。どうせ、外にドラゴンを待機させているんだから、直ぐにバレる。声を掛けた。
「……おい」
「なんだ! 今、俺は……おぉ! 小僧か!」
姿を消したと思ったら、奴はこんな所にいた。元・邪竜信者の幹部。プレスその人である。
「お前は、何をしに?」
「分からんのか、腕試しだ。お前と別れた後は、することも無かったので修行に明け暮れていた。この力を……試したい!」
「働け」
いや、コイツを雇う所は無いだろうが、野盗になられても困る。修行するだけで抑えられるなら、ある意味穏当か?
「ただの人間では相手にならんから、魔獣トーナメントにエントリーしようとしたのだが、ごらんの有様でな」
受付の人も『知り合いなら何とかしてくれ』みたいな目で俺のことを見ているが、俺だって何とかして欲しい。
「そうなんだ。諦めて、観光して帰れ」
「ふざけるな! ならば、この力はどこで発揮すれば良い!」
そうだった。コイツ、無駄に強いんだった。とは言え、運営的にも魔獣が死ぬのは良いが、人間に死なれたら困るということなのだろう。
「(そもそも、コイツ。こんなバカだったっけ……?)」
「いや、待て。お前は何故、魔獣トーナメントの受付場にいる? まさか!」
「嫌な時にだけ知能を回復させるな」
何を待機させているのかを理解したプレスは直ぐに表に出た。待機していたドラゴンを見るや、彼は大いに喜んだ。
「おお! 久しぶりだな! 俺のことを憶えているか!?」
両手を広げてアピールしているプレスを見るや、ドラゴンは非常に静かに前足を突き出して彼を圧し潰(プレス)していた。一斉に悲鳴が上がった。
威嚇も警告も何も無いからこそ、ガチで殺意に満ちた攻撃だった。ドラゴンはちゃんとプレスのことを憶えていたのだ。怒りと一緒に。
「はっはっは! 激しいな!」
だが、プレスは死んでいなかった。地面に人型の跡を作っていたが、潰れてはいなかった。コイツだけギャグマンガ並の耐久力をしている。これが往来の中で行われたのだから、衆目は騒めいていた。
「おいおい、あんな化け物に踏まれても大丈夫だなんて」
「あの男は何者だ!?」
「もしや、人型の魔獣か?」
まるで、何かのパフォーマンスだ。騒ぎを聞きつけて、受付のスタッフも様子を見に来たようだが、こんな物を見せられたら認めざるを得ないだろう。
「分かりましたよ。分かりましたよ! 登録を認めます!」
「本当か!? やはり、お前は俺の幸運の……女神だな!」
両手を広げた所でもう一度、圧し潰(プレス)された。
先日、コイツの知り合いだったという『チョウキョウ』と戦ったばかりだというのに。多分、魔獣トーナメントだけではなく『双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)』の方でも何かある。そう、確信せざるを得なかった。
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