俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
チュンチュン、朝が来た。隣ではラドンが寝ている。俺は下着姿だ。
でも、大丈夫。何も無かった。彼女との契約印がギンギン光っているが、何も無かった。頭を冷やす為に外に出ようと扉を開けた時のことである。
「まさか、お前。あんな状況でも抱かんとは。操を立てた相手でもいるのか?」
「なんで、お前がここに!?」
プレスが居た。この宿は郊外にあるので偶然で同じ場所に泊まったとは考えい難い。合わせて来たのか。
「魔獣トーナメントの一件で有名になり過ぎたからな。街中で泊まっては休めんから、街の外れを探していたら見覚えのある奴がいたからな」
なるほど、アイツは目立つからな。他の客避けにもなっていたことを考えたら、主人に申し訳ないことをしてしまった。
「後で、金貨を渡しといた方が良いか」
「その必要はない。今日から、ここは魔獣トーナメントと双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)を制覇した男が泊まった宿となり、満室が予約されるのだからな」
結局、コイツが優勝したのか。本当にワンマンアーミーと化しているな。そんな奴が双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)に出られるなんて。
「でも、お前。元が付くとは言え邪竜信者の幹部だろ?」
「問題ない。友人である市長直々に許可を貰っている」
「いつの間に?」「拳を交わした時からだ」
やっていることが寝取りってことを除けば少年誌に出て来そうな奴だ。だけど、真面目に考えたら良くはない。
「(バカにしているけれど、コイツ自身の戦力はドラゴン娘と同等か、あるいはそれ以上にあるんだよな)」
悔しいが、その点だけは認めねばならない。俺達と当たるかどうかは分からないが、もしも戦うことになった時は遠慮なくやらせて貰おう。
……と、暫く話し込んでいる内に互いのパートナーが目を覚ましたのか、部屋から出て来た。
「入真、随分と楽しそうだな?」
「もしかしなくとも怒っている?」
「女として恥を掻かされて、怒ってないとでも?」
はい。一縷の望みを掛けてプレスの方を見たら、リンドブルムが困惑していた。まさか、本当に寝取ったんだろうか?
「マスター。姐さん、すごい怒っているみたいなんスけど?」
「甲斐性無しのフニャチン野郎は一度折檻を食らった方が良い」
ズルズルと部屋に引きずられて行く俺を助けてくれる奴はいなかった。もしかして、奇跡が起きてドラゴンが助けてくれるかというのも期待したが。
「Zzzzz……」
今日は完全オフなのか、いつもより大きめの鼻提灯を作って寝ていた。そして、部屋の扉は閉じられた。
――
双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)は数日に分けて行われる。つまり、俺は数日も講義を無断欠席することになった訳だが。
「なんで、魔獣トーナメントみたいに1日で終わらねーんだ?」
プレス、リンドブルム、ラドン、俺の4人は屋台で買った朝食を食い歩きながら、そんなことを話していた。
「催しが開催される期間が長い程、街は潤うからな」
ラドンが串焼き肉を齧りながら言った。かつて、ヘスペリデスという歓楽街を運営していた彼女には分かるのだろう。
双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)を目当てに来た観光客も少なくはない。彼らが留まり、滞在するだけで街に金が落ちて行くとすれば数日掛けて行われるのも納得だ。これは前世でも知っている興業の仕組みと変わらない。
「魔獣トーナメントには数日も掛ける意味が無いと判断されたんだろうな」
プレスは朝からエールを煽っていた。マスターとドラゴン娘達を嘗めすぎだろ。俺とリンドブルムは、この後のことを考えて平焼きパンを齧る程度だった。
「そうだとも。やはり、魔獣の動きはどうしても単純になりがちだからね。残虐ショーにもなりがちだから、物好き向けの前座なんだが」
「それが今年は大当たりって訳ェ!!」
俺の隣では鉄仮面を被ったマスターの隣には緑色の竜鱗を纏ったドラゴン娘がいた。彼女もまたエールを煽っている。……いや。
「市長!?」
「おお。君も覚えてくれていたのかい。視察と朝食がてらに回っていたら見知った顔があったのでね」
「カンパァイ!」「乾杯」
プレスと市長のドラゴン娘が朝から乾杯していた。自由過ぎる彼らに苦笑いを浮かべていると、ラドンから耳打ちされた。
「入真、そこにいる小娘は邪竜だ」
エールを煽っている彼女に視線を向けた。俺には二者の境目がよく分からないが、かつて邪竜だった彼女が言うなら間違いないのだろう。
「貴女には分かりますか」
「当然だ。貴様ら、何を企んでいる?」
なんだか雲行きが怪しくなって来た。どうして、栄えている都市の中枢部には大体邪竜がいるんだ。
ただの送迎で終わるはずだったのに、突如ポップした邪竜のせいで何やら面倒な陰謀へと発展しようとしている。勘弁して欲しい。よし、先手を打つか。
「もしかしてだけど、双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)を通じて、強力なマスターとドラゴン娘を確保して、ヴァルザイアに献上するとか……」
「ハッハッハ、そんなことする訳無いだろう」
「ですよね」
「どうして奴に渡さねばならない?」
「すいません。今からでも棄権は間に合いますか?」
両肩に手を置かれた。痛くならないけれど、逃げられないし、威圧の効果がある位の力の入れようだった。
「プレス君なんてダークホース、ラドンやダハーカを従える君。今年は本当に楽しみだよ。私は『何処かの誰か』みたいに数さえあれば良いという成金趣味ではないのでね。至高の一品さえ手に入ればいいのだよ」
そのままススーっと肩から胸元に入り、鎖骨を通り、胸辺りに来た所でラドンが市長の腕を掴んだ。
「スキャンダルで垂れ込んでやろうか?」
「市長の危険な火遊びと言うことで街を盛り上げる要素にしかならないね。ヘスペリデスを盛り上げてくれたように、ぜひ『双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)』を盛り上げてくれたまえ。オロチ、行くぞ」
「うめェー」
プレスと共にエールを飲みながら串焼き肉やソーセージを頬張る彼女はただの観光客にしか見えないが、あのヤバそうなマスターのドラゴン娘で邪竜なのだから察する所はある。というか、そもそも。
「(邪竜って何なんだ?)」
邪竜信者やヴァルザイアなど、極当たり前の様に存在しているが、彼女達とドラゴン娘の違いはよく分かっていない。
最初は人間を憎んだドラゴン娘が邪竜になるのかと思っていたが、ダハーカは憎む所かマスターを愛していたし、先程のオロチと言う娘は……何も分からなかった。ここら辺は原作でも言及されていなかった。
「(二部で開示されて行く予定だったのか、そもそも作っていなかったのか)」
元より、ラドンの時から原作の知識は殆ど役に立っていない。アカデメイアの話も全く違っていたし、ダハーカも原作と違っていた。
アレクシオンが出て来るのは本編でも無ければ、イベストでも無い。ここはいわば『対人戦』コンテンツの舞台なのだから。俺は殆ど触ったことが無いコンテンツだったが、一応シナリオとかはあったらしい。
「いったい、獲得したマスターとドラゴン娘をどうするつもりだ」
先程の市長の接触を上塗りする様に、ラドンは体を擦りつけて来た。……幾ら、理性君が働いてくれていても、徒に刺激されることには慣れていない。昨日の未遂で終わったことも尾を引いているかもしれないが。
「ここまで連れて来て貰って言うのはどうかと思うんスけど、カラバさん。甲斐性無いっすね」
「全く、女は侍らせ勲章にする位の気概は見せんか」
前世だと燃える奴~! でも、この世界的な価値観で言えばプレスの方が普通なんだよな。やはり、俺の方が変なのはそうなんだが。
「まだ、色々とあるんだよ。色々と!」
でも、やはり恋愛だとか家庭だとかそう言うのを軽率に考えることはできない。という、この世界の常識と致命的なギャップを抱えたまま、俺達は双竜の円舞(ドラゴン・ワルツ)が行われる会場へと向かった。
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