こんにちは、ランスロットです。 作:フェイト・デハ・ナイヨゥ
こんにちは、ランスロットです。
転生して王子生活を謳歌してたら、父親の国が滅んじゃった。
逃げるようにして馬車に乗り込んだら、気づいたら湖の精霊に連れ去られてました。
こんにちは、ランスロットです。
湖の精霊様に魔法の国で教育してもらって、ある程度の騎士道と礼節、戦い方について学べました。
精霊様曰く、『現代でも最高に等しい』とお墨付きを頂けたけれど、正直実感が湧きません。
ランスロットです。
ランスロットです。
ランスロットです……
「ランスロット、何を呆けているのです? 」
「……精霊様。これは失礼致しました」
ボーッとこれまでの出来事について思いを馳せていると、私の養母であり恩人、恩精霊? の湖の精霊様が話しかけてくる。
精霊様との付き合いも、かれこれ十年ほどになるのだろうか。
死にかけ、行くあてもない私を救って頂いて、更に教育を施してくれた彼女には感謝をしてもしきれない。
「ランスロット。これから貴方は人の世界へ戻り、騎士として過ごすことになります」
「正直、このまま精霊様と生活したいです」
「……騎士になります」
断定されてしまった。
私に拒否権はないのだろうか?
「ですが、貴方のことです。誰に騎士として仕えるか深く考えていないでしょう? 」
「はい。普通にこのまま精霊様の世界で気楽に過ごすつもりでした」
「……貴方は最高の騎士になるのですが、何故どこか不真面目なのでしょう? 」
そうは言われても、私は前の私からこの気質だったしなあ。
眉間に皺を寄せる精霊様。だが、私がこの性格を蹴るつもりはさらさらない。
面倒な俗世に関わるくらいなら、精霊様と安全な世界で気楽に過ごしたい。
「今、人の世界では『アーサー』という王が騎士を求めているそうです。
貴方はアーサーに仕え、騎士として名を上げなさい」
「嫌で──わかりました。覚悟を決めました。だからその剣をゆっくりと下ろして下さい」
精霊様が振り上げた剣をゆっくりと下ろし、そして私に差し出してくる。
「貴方のこれからの騎士道の助けとなるよう、この剣を差し上げます。
『アロンダイト』。その剣に見合う、立派な騎士となりなさい」
え、この精霊様養子に渡す剣で養子を斬ろうとしてたの?
怖……。
「はい……謹んでお受けいたします……」
「よろしい。──ランスロット。長い別れになりますが、貴方に良い生が在らんことを」
精霊様のその言葉と同時に、視界が白く薄れていく。
自分がこの世界から押し出されているのを感じ取っていた。
「……ありがとうございました精霊様。また、逢える日を待っています」
「ええ、立派な騎士になるのですよ」
精霊様の笑顔を見届けて、視界が完全に白く染まる。
次の瞬間には、私は森に立っていた。
背後には程良い大きさの湖。
周囲を見渡せば、木、木、木。
うん、森。
ここ何処だよ精霊様。
てかアーサーって誰よ? 何処にいるのよ?
その王様に仕えろって言ってもなあ……せめて場所だけでも教えてくださいよ……。
──ま、いっか。
歩けば道も開くだろう。
とりあえず西に進もう。
人間迷ったら西に進めばなんとかなるって母上(故人)も仰ってたしな。
足を踏み出せば地面の硬い感触、気づかずに踏んだ枯れ枝がぽきりと折れる。
うーん。精霊様の世界では感じなかった自然の新鮮さ。
十年ぶりだなあ。
暫く歩く。
腰に下げた剣が鎧とぶつかってカチャカチャと音を鳴らし、静かな森には、その音だけが響いていく。
……重いなあ、この剣。
アロンダイトだっけ? 精霊様が授けてくれたって事はきっと凄い剣なんだろうけど。
……重いなあ。
流石にここで外して置いていくのは罰当たりだしなあ。
なんて事を考えていると、森の出口が眼前に見えてきた。
「お、彼処が出口かあ。割とすぐに出られたなあ」
一時間くらい歩いたな。
でもまあ、一時間歩いて森の外なら、精霊様も良心的な位置で私を出してくれたんだな。
感謝感謝。
「──て!? ──れか!? 」
あ、悲鳴。
助けなきゃ。
森の出口から悲鳴が聞こえたから急いで走り出す。
世界が瞬間的に加速し、暗い森から一瞬で飛び出す。
声の高さから、悲鳴の主は女性だろうか?
年齢は大体二十代前半、口調から察するに、貴族の従者だろう。
切迫した印象だった。
こりゃ急がないとまずいぞ。
走りに走って少しだけ。
悲鳴のもとまで駆けつけると、そこには草原で止まっている馬車と、それを襲う盗賊が居た。
馬車の周囲には兵士もいるが、盗賊の方が数が多く、苦戦している。
すぐ側では、盗賊に従者の女性が慰み物にされようとしていた。
うーっす。
助太刀しまーっす。
腰に下げたアロンダイトを抜き、女性を襲う盗賊を背後から斬りつける。
バターが切れる感触で、盗賊が上半身と下半身で真っ二つ。
え……凄い切れ味。
なにこれ……怖……。
「へ? ……ひっ!? いやああああああ!? 」
「お!? 落ち着いて!? 助けに来たのです!! 味方です!? 」
「いや!? いや!? いやああああああ !? 」
ああ、ダメだこりゃ。
パニックになっちゃった。
そりゃそうか、だってはんぶんこした盗賊の返り血が彼女を染め上げているんだから。
私が悪いな。
どうもすいません。
……仕方ない。
混乱する彼女を守りつつ、盗賊を制圧するか。
「な、なんだよお前!? 何者だよ!? 」
盗賊が声を荒げる。
二つに分かれた味方を見て、酷く恐怖しているらしい。
曲刀を私に向けて怒鳴り散らしている。
何者、かあ。
いやまあ、私はランスロットだけど。
確か精霊様曰く……
「未だ騎士の身の上では無いが、敢えて名乗ろう。
──我が名はランスロット! ランスロット・デュ・ラック!!
いずれ、最高の騎士となる男である!! 」
騎士は名乗りをしっかりとするものなんだっけ?
良くわからないけど、鎌倉武士みたいな風習があるものだなあ。
ここはファンタジーな異世界なのに。
「騎士がなんぼのもんじゃ!? クソッタレええ!? 」
盗賊共が勇んで私に突撃してくる。
数は大体十人と少しか。
馬車を襲っていた盗賊も、どうやら私の方へ集中しているらしい。
僥倖。
ひとまず、人の世界で最初の仕事と行きますか。
私はアロンダイトを構え、盗賊を次々と切り倒していった。