ガートルード・ロックハートの慨嘆 作:スマイル
「決闘クラブへようこそ!」
ロックハートの声が響きわたる。期待に燃えた生徒達でひしめく大広間は、いつもの長テーブルが取り払われ、床にマットが敷き詰められていた。ハリー、ロン、ハーマイオニーは、できるだけ最前列に陣取った。
「こんなに多くの一、二年生にお集まりいただき、大変うれしく思います。この私、『闇の魔術に対する防衛術』のガートルード・ロックハートが講師を務めます!」
ロックハートが拳を振り上げ、生徒達の歓声が上がる。
「指導にあたり、ゲストの先生を二人も、無理を言ってお越しいただきました。まずは、私のレイブンクロー時代の恩師にして、大英決闘大会元チャンピオン、フィリウス・フリットウィック先生!」
ロックハートが指し示すと、とても小柄で穏やかな風貌の「呪文学」教授が微笑みながら両手をあげる。生徒達からの喝采と口笛。
「そして、若き
スネイプは仏頂面だった。スリザリン生からのみ拍手があった。ハリーはロンと、なぜスネイプがここにいるのだろうと顔を見合わせた。スネイプが「闇の魔術に対する防衛術」の職を狙っているというのは周知の事実だ。
「さて。始める前に一言、『防衛術』教授としての注意を。――本日の決闘とは、護身術ではありません」
生徒の熱気に冷水を浴びせるようにロックハートは言う。
「決闘の勝敗で様々な物ごとを決めていた時代は今は昔です。あなたの運命を決めるここぞという場面で、決闘をすることはないと思ってください。あなたがたがゴドリックとサラザール、ダンブルドア校長とグリンデルバルドのような頂にいない限り」
ロックハートは皮肉に微笑む。
「なぜなら、怪物は律儀にお辞儀をしてくれない。そして『闇の魔術師』があなたに一対一の決闘を申しこむのだとしたら、既に決着が着いています。あなたを仕留める仕込みが既に終わっているか、あなたがよほど格下であるからです」
ロックハートは生徒の顔を改めて見回した。
「――しかしそれでも、決闘という形式が、実践の訓練に大いに役立つことは間違いありません。そして何より、
生徒たちの歓声が再び上がる。
「決闘とは何ぞや、の面倒な講義は省き、まずは実演を皆さんに見てもらいましょう。この私と、スネイプ先生が行います。審判はフリットウィック先生に行っていただきます」
仏頂面のスネイプが、壇上に上がった。
「まずは、向かい合ってお辞儀をします。決闘で最も大事なポイントです」
ロックハートは大げさな動きで一礼し、スネイプは不機嫌にぐいと頭を下げた。
「ご覧のように、私たちは作法にしたがって杖を構えています。三つ数えたらスタートです。今日の決闘は、どちらも相手を殺すつもりがない決闘ですので、ご安心ください」
(ロンが呟いた。「スネイプの奴、ロックハートを殺すつもりじゃないか?」)
「いち――に――さん――はじめ!」
フリットウィック先生のキーキーした声が響くと、スネイプは杖を肩より高く振り上げ、叫んだ。
「
スネイプの杖から目もくらむような赤い閃光が奔った。ロックハートは、右にひらりとステップを踏み、その光をかわした。
「
「
ロックハートの杖から青い閃光が奔ったが、スネイプの杖から展開された見えない壁がそれを阻んだ。
「
そしてスネイプの杖から飛んだ強烈な赤い光を、ロックハートは正面から浴びた。ロックハートの杖が吹き飛ぶとともに、ロックハートも後ろ向きに吹っ飛び――ハーマイオニーや女子たちの悲鳴が上がった――宙でくるりとしなやかに回転すると、壁を両足で蹴り、床に静かに着地した。
「そこまで!」
フリットウィック先生の声が響いた。ロックハートは髪を手でいちど梳きながら、再び前に歩き出す。
「とまあ、私の杖が奪われたので、この試合はスネイプ先生の勝ちです。非常に強力な『武装解除呪文』でした。――スネイプ先生に拍手!」
生徒たちはパラパラ拍手をし、スリザリン生は口笛を吹いたが、グリフィンドール生を中心に、多くの生徒が、不満そうな顔やがっかりした顔、ショックを受けた顔をしていた。ロックハートが負けるところを見たいと思っていなかったのだ。
「ロックハート先生、スネイプ先生」
そのときフリットウィック先生がニコニコ言った。
「一・二年生に向けた実に模範的な演技でした。――が、より実戦的な動きを見せても良いのではないかな? ホグワーツ教師が真剣に戦う姿はふだん見れるものではない。私も見たいのでね」
「――なるほど。仰る通りかもしれません」
腕を組みながらロックハートがゆっくり言ったが、薄くにやりと笑ったことにハリーは気づいた。
「スネイプ先生、どうです? ルールCをベースに、生徒への配慮は最大限に」
「…………構わん」
スネイプは目を細めた。
「では、フリットウィック先生、観衆の防護の結界をより強固にお願いします。――ああ、もちろん、皆さん、この手合わせの後も皆さんの『魔法薬学』の先生はちゃんと存在するので、ご心配されませんよう!」
ロックハートが笑顔で挑発し、スネイプの上唇がめくれあがり歯が剥き出しになった。
「――そして私も同様、ちゃんと存在します。スネイプ教授の強さと恐ろしさは、私も昔からよく知るところです」
ロックハートは静かに言葉を刻んだ。
「いち――に――さん――はじめ!」
スネイプとロックハートの杖が目にもとまらぬ速さで動いた。
「
「
青と赤の光が衝突し、跳ね返った。
ロックハートは斜め前に歩きながら続けざまに唱えた。
「
赤い光、横からの烈風、青い鳥の群れが、同時にスネイプを襲った。
「
スネイプは呪いを打ち返し、鳥を黒いコウモリと変えてロックハートに襲わせた。コウモリの群れがロックハートに迫り、生徒の悲鳴が上がる。
「
ロックハートは杖を床からすくいあげると、コウモリの飛ぶ軌道を天井に逸らした。
「
しかし同時にスネイプが床に向けて唱えた。ロックハートの足が滑り体勢が後ろに崩れる。生徒の悲鳴が上がる。
「
ロックハートは杖を両手で握り、奔流を呼んだ。その水の勢いで体勢を立て直す。
「
スネイプは足元に迫りくる水流をゼリーに変え、粉砕した。
「
ロックハートの呪文によって、ゼリーの破片がブルーに染まり、巻き上がった。スネイプの目元を覆う。
「
スネイプとロックハートの詠唱が重なった。しかし視界が塞がっていたほうの狙いがわずかに逸れ、スネイプの杖が宙を舞い、ロックハートの手におさまった。
「そこまで! ――良い試合でした! ガートルード、セブルス!」
フリットウィック先生の声とともに、生徒の拍手と歓声が上がった。ロックハートが片手で応えながら杖をわたすと、スネイプは苦虫を噛み潰したような顔でそれを受け取った。
「スネイプ先生、ありがとうございました! …………皆さんに念のため言っておきますが、二人ともまったく本気を出してはいないので、くれぐれも誤解なきよう。――真剣な戦闘であれば、お互い、『無言呪文』を使います。魔法薬も使うかもしれません。『闇の魔術』も使うでしょう。『死の呪い』は非常に強力です、問答無用で死ぬのですから。それでなくてももっと有害で殺傷力のある呪文を使います。あとは精神に作用する魔法ですね」
生徒たちが息を呑む。ロックハートは続ける。
「このあたりの話題は『闇の魔術に対する防衛術』の授業で扱いましょう。今日は清らかな決闘をやっていきます。」
それから決闘術の基本について指南があり、二人一組で呪文をかけあった。あちこちで喧嘩や取っ組み合いになりかけた――マルフォイと組まされたハリーも含む――が、そのたびにロックハートやフリットウィック先生が呪文で鎮圧した。
「……さて、今日はもう時間ですね。最後に、いくつか演技を見せてもらいましょう。皆の前で決闘をしてみたい! という組はありませんか?」
生徒はざわめき、互いをつっついたが、誰も手を挙げずにいた。
「それでは――ロングボトムさんとフィンチ=フレッチリーさん。どうですか?」
「ロックハート先生、それはまずい」
スネイプが猫撫で声で遮り、薄ら笑いを浮かべる。
「ロングボトムの日ごろの授業の惨事を思えば」
ネビルのピンク色の丸顔がますますピンクになった。ロックハートが首をかしげる。
「そうでしょうか? 私は『闇の魔術に対する防衛術』のネビル・ロングボトムさんとジャスティン・フィンチ=フレッチリーさんしか知らないので、二人とも良い模範を見せてくれると思っていますがね」
ネビルの顔が真っ赤になった。ロックハートはネビルにウィンクする。
「ロングボトムさん。私を信じてくださいね」
ネビルは耳まで赤くなったが、頷く。ハッフルパフのマグル生まれの少年と向き合い、
「
撃ち合いの末、丸顔を歪めて叫んだネビルの呪いはジャスティンに命中し、杖を奪い取った。
「おー、よくやりました! さすが!」
ロックハートが笑顔で手を叩いた。
「もう一組、いきましょうか。どなたかやりたいかたは――」
ロックハートの目がハリーをとらえた。
「そうだ、ポッターさんとマルフォイさんはどうですか!」
ハリーの胃が緊張でざわりとした。
「名案ですな」
スネイプは呟くと、マルフォイに近づいてかがみこみ、耳元でささやいた。マルフォイはにやりとする。
そのさまを見て、ハリーは何か呪いの一つでも教えてもらえないかと、期待をこめてロックハートを見上げるが、ロックハートは手をひらひら振るだけだった。
「ハリー、君のいまの実力がどんなものか、楽しみにしていますよ。がんばってくださいね!」
ハリーの表情を見て、マルフォイが嘲笑して低く呟いた。
「怖くなったのか? 新しいママに助けてもらえなくて」
ハリーの頭は、マルフォイを叩きのめしてめちゃくちゃに恥をかかせてやるという決意で満たされた。
「お前なんか、僕だけで十分だ」
ロックハートが声を張り上げる。
「いち――に――さん――はじめ!」
「
「
ハリーの杖から銀色の光が
蛇は怒り、鎌首をもたげた。生徒たちの悲鳴があがる。蛇はハリーではなく、近くのジャスティン・フィンチ=フレッチリーのほうに滑り寄って牙を剥き、嚙みつこうとした。
ハリーは思わず駆け寄って、なぜか蛇に叫んでいた。
「手ヲ出スナ。去レ!」
すると、ヘビはおとなしくなり、平たく丸まってハリーをおとなしく眺めた。ハリーは、もうヘビは誰も襲わないと安堵した。
ハリーはジャスティンを見てにっこりしたが――ジャスティンの顔には恐怖の色が浮かんでいた。
「何の悪ふざけなんだ! ヘビをけしかけるなんて!」
「
ジャスティンが叫ぶとほぼ同時に、ロックハートが叫んだ。バーンという音とともに、ロックハートの杖から、漫画みたいに目が大きくひょうきんな青い大蛇とピンクの大蛇が出て、ケタケタ笑った。スネイプが杖を振ると、ロックハートの蛇もマルフォイの蛇も、色とりどりの煙となって消えた。
生徒たちが呆気にとられているうちに、ロックハートは声を張り上げる。
「さてさて、ポッターさんもマルフォイさんも、優秀な魔法でした、ありがとうございました! ――時間なので今日の決闘クラブは以上としましょう、また会う日まで! 解散!」
ロックハートは大広間の魔法の夜空にむけて花火を打ち上げたが、生徒は大広間から出てひそひそハリーのほうを見て囁き合っていることにハリーは気づいた。
「あいつヘビと話してたぜ……!」「ポッターが『継承者』なんだ!」「嘘でしょ、信じてたのに」「マグル嫌ってるって聞いたぞ」
スネイプも暗い瞳を細めてじっとハリーを見つめている。ロンも神妙な顔つきをしていた。
「――――スネイプ先生、フリットウィック先生、すみませんが後をよろしくお願いします、校長には私から報告します。――ハリー、ついてきなさい。『目くらまし』で君の姿を隠します」
無表情のロックハートがそばに来て、静かに言った。
ハリーは茫然としながら、ロックハートの後をとぼとぼ歩き、ロックハートの部屋に通された。そこにはダンブルドア校長が既に座っていた。ロックハートは校長の隣に座り、ハリーは向かい側に座った。
ダンブルドアとロックハートのブルーの瞳がまっすぐ見つめていて、ハリーは背筋が冷えた。
「ハリー、君はヘビと話せる『
「ええ。自分が魔法使いだって知る前にいちどだけ、動物園でオオニシキヘビと話しました。ブラジル産だけどブラジルなんか一度も見たことがないって言ってて。それで、そんなつもりないけどヘビを逃がして、いとこのダドリーにけしかけちゃったことがありました」
「……そうですか。非魔法界の蛇とも」
ロックハートの声が深刻なので、ハリーは不安になった。
「あの、ヘビと話せるって、ふつうじゃないんですか?」
「『
「僕は蛇がジャスティンを襲うのを止めたんです!」
「そうでしたか」
「そもそも、自分が話せるってことさえ知らないのに、聞いたこともないのに、何でいきなり?」
ロックハートは首を振る。
「わかりません。だからこそ特殊な能力です。意思疎通なのか? だいいちマグルの常識では、動物園の蛇にはブラジルを理解できる知能が備わっていない。すべての蛇が魔法的な力を帯びているのか、『蛇語使い』は蛇にヒトの知能を投影できるのか、私にはわかりません。それはさておき、重要なのは」
ロックハートは言葉を区切ってハリーの瞳を見る。
「サラザール・スリザリンその人が最も有名な『蛇語使い』だったということですね。実際に彼は蛇を非常に好み、寮を銀の蛇で象徴した。その子孫も蛇語を話すことができたと言われ、逆にそれ以外の話者はほぼ確認されていない」
「…………」
ハリーは背筋が寒くなった。
「…………でも僕じゃない。僕は違います!」
「どうでしょうね。君がスリザリンの子孫である可能性は否定できないと思いますよ。それどころか、たぶん君は子孫だと私は思いますよ」
「先生!」
ハリーは絶望して声を上げた。ロックハートに信頼されないと思っていなかった。
「そして同様にスリザリンの子孫である可能性が高いのはウィーズリーさんですね。私の記憶一年を賭けても良いですが、ほぼ確信しています」
ハリーは信じられない気持ちで叫んだ。
「ロンが!? ロンの家は代々グリフィンドールですよ」
「ハリー、君はマグルの小学校で数学を習っていましたね? 君の先祖の人数をかぞえてみましょう。一代上のお父さんお母さんは二人、二代上のおじいさんおばあさんは四人――そして十代上の先祖はざっと千人います」
ロックハートが杖を振ると、ハリーの頭上に、円と線だけであらわされた金色の家系図が樹木のように広がった。
「ホグワーツ創設の千年前まではざっと四十代はさかのぼれるでしょう。ちょうどその世代のご先祖様は延べ一兆人いる計算です」
樹木は天井を覆いつくして見えなくなった。
「当然、その当時の地球上のマグル全員を足してもまったく追いつきません。だから家系図は樹木のように二股に割れてるのではなくて複雑に合流しまくってるんですよね。母方の四十代上のおじいさんと父方の四十代上のおじいさんはおなじ人」
ロックハートが杖をふると、樹木の枝はくねりながら網の目のようになった。
「ここからは単純な数学ではないですが。まじめに先祖や子孫の親子関係をたどっていくとですね。千年前のブリテンに住んでいた魔法使いの血は、現代までに途絶えているか、さもなければ婚姻を重ねていくなかで、現代の魔法使いのほぼ全員に流れているといえるんですよ。ブリテン魔法界は非常に狭い世界です。海外から来た人や、あるいはグレンジャーさんのようなマグル生まれは例外かもしれませんが」
「…………」
「直系子孫を途絶えさせず拡散を防ぎたいなら、外部とのつながりの一切を閉ざし、逃亡を防ぎ、さらに近親婚の防止のため結婚相手を外部から迎えつづけなければならない。――あるいはそれが『秘密の部屋』なんですかね? スリザリンの直系子孫が一生を暮らす恐ろしい『部屋』。そういう怪奇小説が書けるかもしれません」
ロックハートは天井のほうをおもしろそうに見た。
「もちろんそんな『部屋』は非現実的です。スリザリンの子孫が今に生きているとしたら、あなたも私もダンブルドア先生もスネイプ先生もウィーズリーさんもマルフォイさんもみんな子孫と言えるでしょう。――ただし、スリザリンの血が入っているからといって、『継承者』の資格を持つというわけではないでしょう。長子に限られるとか、特別な儀式が必要とか、なにか魔法道具を持っているとか、きまりがあるのかもしれません。君は当然、そんな心当たりは無いですよね?」
ハリーはぞくりとした。ハリー自身、父親の貴重な「透明マント」をダンブルドアから渡された。とても貴重な道具だとロンが言っていた(ダンブルドア先生やロックハート先生は「マント」が無くても透明になれるみたいだけれど)。でも、あれがスリザリンの継承者だということはあるのか? ハリーがダンブルドアをちらと見ると、ダンブルドアは小さく首を横に振った。ハリーの脂汗を気にせず、ロックハートは続ける。
「それに、かりに『継承者』だとして、なにか問題があるんでしょうか?」
「え?」
「ハリー、あなたは自分は、いま暮らしている親戚と同じような人間だと思いますか?」
「違います!」
「私の親や家族が仮にクズだとして、私が粗大ごみだと思いますか?」
「思いません!」
「じゃあ、君が千年前の魔法使いの『継承者』だとして、とくに気にすることないでしょう」
ロックハートはあっさり言った。
「血に縛られる必要はありません。グリフィンドールはそう考えます。そうでしょう、校長先生?」
「その通りじゃ」
黙ってロックハートとハリーの会話を聞いていたダンブルドア先生が、重々しく口を開いた。
「ハリー、大事なのは、どうであるかではなく、どうなりたいか。蛇と話せるのはきわめて稀な才能じゃが、それは君の進む道を何ら規定しない。蛇と会話し――少々操れるというだけじゃ。残念ながら、魔法界ではその才を『闇の魔術師』の証としてとらえる者も多いが――君がそうではないことを、わしらは知っておる」
ハリーの心に少しばかり安堵の気持ちが流れた。
「…………しかし稀であることはたしかです。よりによってハリーに蛇語の才能が発現したのは偶然でしょうか? 校長先生の見解をここでお伺いしても? あるいは職員室で」
ダンブルドアは目をつむり、しばらく黙った。そして、口を開いた。
「わしはハリーが『蛇語使い』であると、今日まで知らなかった。しかし、心当たりは大いにある。そして、他の多くの物ごともつながったと思う。……セブルスの意図せざることだったじゃろうが」
ダンブルドアはそこで言葉を切った。
「なるほど」
ロックハートは短く呟いた。ハリーの額をちらりと見て、しばらく黙り込み、もう一度呟く。
「なるほど」
ロックハートはダンブルドアに向き直った。
「…………蛇に縁が?」
ダンブルドアとロックハートの視線がしばらく交錯した。
「蛇を非常に好んでおった」
「半世紀前の『継承者』と同一ですか?」
「そう睨んでおる」
「今回の『継承者』も半世紀前と同一ですか?」
「それは確信が持てぬ」
「しかし、下手人の正体は――犠牲者をあの状態にするとなると――マグルの伝承ならともかく――」
「それも謎じゃ」
「あの」
ロックハートとダンブルドアの話している意味がいまひとつつかめず、ハリーが口を挟んだ。
「どういうことなんですか?」
「すみませんねハリー、その前にすこし、もういちど蛇語を教えてみてくれませんか?」
ロックハートは笑いかけた。