九回裏、最後の攻撃。
マウンド上の井口はまだまだ余裕そうである
打順は一番からの好打順
加藤は本来は左だが今回は右に入る
理由は左だと井口のシュートが打てないからだ
井口のシュートは普通のシュートとは違う。
高速シュートだ
しかも変化量がかなり大きい。
左だとまず打てないだろう
加藤の努力もむなしく三振
そして、二番の松下もツーナッシングに追い込まれた
井口が投げる
ゴォーーー
「(アウトロー。一回のノーコンが嘘みたいだ。踏み込んで打つ。ん?)」
ギューイーーン
「(シュート)」
井口自慢のシュートが松下の懐をえぐる
「ストライク。バッターアウト」
「(何か打つ手はないのか)」
「あ〜あ。二回以降で塁に出たのってキャプテンと左の加藤さんだけだもんな。ひ、だ、りの加藤さん」
「(まてよ。確か加藤のやつさっきの三振以外は全てファーボール。もしかして)」
「タイム。西田」
谷口が西田を呼ぶ
「何ですか?」
「お前、左打席にたってくれ」
「左?左打席でうったことないですよ」
「いいからたのむ」
西田が左打席に入る
すると
井口の表情が曇る
心なしか井口のフォームに狂いがみられる
井口は急にコントロールを乱した。
「(やっぱりあいつの左嫌いはなおってなかったんだな。小学校の頃からの弱点)」
「タイム」
江田川キャッチャーがタイムをかける
「どうする?敵さんお前の弱点に気がついたみたいだぞ」
「大丈夫だ。相手の四番は右打席に入ってる」
「(ここで決める)」
谷口が勝負をかけてきた
井口がランナーがいるのにもかかわらずワインドアップで投げる
「ランナー走れ」
谷口が叫ぶ
西田は驚いたが走った
「このやろう」
急いで二塁に送球しようとする
「ま、まて、投げるな」
江田川キャッチーが投げるのを止める
「タイム。おいキャッチャー、ちょっと来い」
井口がキャッチーを
止めたんだよ?オレの肩なら刺せたぜ」
「わからないのか?アイツは盗塁をさせることによってウチの守備のまずさをつこおってんだ」
「なるほど。どうする?三盗もあるかもしれんぞ」
「な〜に三塁くらいくれてやるよ。オレが打たなきゃいいだけだからな」
「プレイ」
井口がまたワインドアップで投げる
「ランナー走れ」
西田は楽々三塁へ
これでランナー三塁
しかしツーナッシング
「タイム。キャプテン」
「どうした五十嵐?」
「キャプテン、アイツは遊び玉なんかしませんよ。三球勝負できます」
「分かった」
「プレイ」
「(五十嵐のやつ、余計なことばかり言いやがる。さて、どうするか?シュートを投げたいのは山々だがキャッチーが取れないからなストレートでいくか)」
井口が投げる
ゴォーーー
井口懇親のストレート
「(打つ)」
カッキーーン
打球はセンターへ
フェンスに直撃してボールが跳ね返る
しかし、
江田川センターはそれをトンネル
井口が慌てて拾いにいく
谷口「(チャンスだ)」
谷口が二塁を蹴って三塁へ
「早くオレによこせ」
井口が外野まで走る
谷口が三塁蹴ってホームへ
井口がバックホームする
「この!」
ゴォ―――
ダイレクトでキャッチャーへ
「(絶対セーフになる)」
谷口が頭からすべる
キャッチーも谷口にタッチする
「アウト」
「よっしゃー」
「いや、セーフ」
よく見るとキャッチーがボールを落としていた
「やった。勝ったんだ。父ちゃん、オレやったよ」
「(やっぱりキャプテンはすごい。9回の裏、ツーアウト、ツーナシングの状況からあんなに堂々とスイングできるなんて。すごい勝負強さだ。オレもキャプテンみたいになりたい。もっともっと練習して上手くなりたい)」
新生墨谷二中初勝利
そして、墨谷二中十年ぶりの一回戦突破!!