ヒロイン全員を寝取られる鬱世界。脳筋モブが粉砕!破砕!大喝采! 作:無知無知蒙蒙昧たる輩
俺がこの世界を知っている世界だと気づいたのはいつ頃だったか……。一文字ずらしたパチモンのような会社が蔓延っていた時だろうか、まぁ疑念はあったが確信に変わったのは入学式だろう。
桜が舞い散る通学路で二人で歩く少年少女を見かけた。サイドテールの面倒見の良い少女……そしてもう片方の男の顔を捕えた瞬間、電撃が走った。
水上宗太。とあるギャルゲーの主人公をしていた男だ。俺が夜を忘れるほどプレイしていたものだ……しかし、このゲームには問題があった。
最初こそ純愛ものだと信じていたこの作品――
――実は
俺は心底悲しんだ。訳もなく、皇居の周りを100周するほどに。悲しかったのだ。
なぜ、なぜNTRされたんだ……主人公とヒロインは思いを寄せ合っていたはずなのに。そして走り切った俺は気づいてしまった。
全ての原因は主人公が舐められてしまったのが原因だと。
考えてみてくれ、誰がゴリラの横にいる女を取ろうと思う?
だから、この世界があのラブコメの世界だと気づいた瞬間に決めたのだ。この主人公を最強のゴリラにしようと。
昼休みのタイミングを見計らって、机を挟んで談笑をしている水上に近づく。
水上は近づいて来る俺を怯えたような目で見上げる。
「……ど、どうかしたの? 剛田君」
「水上くん、ちょっと屋上行かない?」
そう言った途端、机をバンと向かいの少女が叩く。
「突然やってきて何?」
そう声を荒げた少女はヒロインの一人。小鳥遊美雪、水上宗太の幼馴染だ。勝気で面倒見の良い性格をしているが……主人公が踏ん張れなかったおかげでヤンキーに寝取られる最初のヒロインだ。
小鳥遊は警戒しているようだが、俺からしてみればこの二人を守るためだ。
すまん、と心中で謝罪だけして水上の肩を掴む。
「ちょ、ちょっと!」
今度は椅子から立ち上がり、俺の事を睨め付ける。
しかし、水上は手を軽く振るう。
「僕は大丈夫だから。つ、ついていけばいいんだよね? 剛田君」
「……あぁ」
水上がそう言ったもんだから、小鳥遊もそれ以上何も言えなくなり、黙ってこちらを睨みつけるだけだ。まぁ、ヒロインに嫌われるのは悲しい所ではあるが……この二人が想いを遂げることが出来るなら嫌われたって構うものか。
小鳥遊から視線を外し、振り返る。
「じゃ、行くぞ」
「う、うん」
水上を屋上に連れて行くと、水上は壁際でモジモジと指を遊ぼせ、気まずそうに視線を逸らす。
「あ、あの僕。そんなにお金持ってなくて……」
ん? お金なんでだ?
「俺はただ、水上の体に興味があるだけだ」
「ひっ」
「ちょっと触らせてもらうぞ」
そう言って手を伸ばすが、なぜ水上はそうも怯えた目をしているんだ? 別にカツアゲしているわけでもなかろうに。
まぁいい。
一旦水上の反応は無視して、確認を進めよう。身長はやはり160cmくらいで体重も50kgないぐらいか?
胸板も平べったいし、腕なんてゴボウみたいだ。
ビジュアルだけでも細いなとは思っていたが……こうして現物を見ると、やはり筋肉が足りていない。
舐められるわけだ。
「水上、肉が足りてないぞ」
「そ、そうですか……?」
「あぁ、だがな。安心して良い。俺に任せろ」
実家が小さなジムを経営している。俺も日ごろから鍛えていることもあって、トレーナーとしての技量は安心して良い。
「……せめて、優しくしてください」
水上は目を潤ませながら懇願する。まぁ本来であれば初心者はまず軽いところから始めるべきではある。しかし、もうこの高校に入学した時点でストーリーは開始しているのだ。悠長にやっている時間はない。
でも、別に嫌がらせたいという気持ちがあるわけではない。それを分かってもらうためにも、俺は笑顔で微笑みかける。
「激しくやるが、任せろ」
◇ ◇ ◇
屋上では俺と水上の激しい息遣いが聞こえる。
「ヨォシ! もう1セット行くぞ!」
「ハァ、ハァ……」
水上だけに筋トレをやらせては本人も頑張れないだろう。やはり、一緒に頑張れる人がいてこそだよな。
「まだまだ足りてないよ! 行ける行ける!」
「ハ、ハイ!」
「はい、腹筋を意識して! 板チョコにするんだろ!」
励ましながらも水上はトレーニングに食いついてきた。
腹筋と腕立てを5セット終えたあたりで、水上は立つことすらできなくなった。
全く……まだまだ始まったばかりだというのに。まぁ、でもこの体で良く頑張ったなと褒めるべきだろう。
不意にスマホのアラームが鳴り響く。
っと……筋トレに夢中になっていたが、そろそろ昼休みも終わる時間か。戻らないとな。倒れている水上に肩を貸し、教室へと戻る。
「宗太!」
小鳥遊が戻って来た俺達を姿を見て駆け寄って来るが、突如として脚を止める。
「……なにがあったの?」
「なにって、運動しただけだが?」
俺はそんな汗をかいていないが、水上は制服のシャツがよれよれで肌は上気している。良い汗かいたと思うんだが……。
「そんな、宗太が……寝取られた?」