しばらく辺りをうろついてわかったことがある
この世界にまともな人間はほぼいない
というのも人間らしきものの大半はいきなり容赦なくこちらに襲いかかってくる奴らばかり
数少ない話の通じたやつといえば白い仮面を被った怪しげな男と商人を名乗る馬を連れたやつくらいだ
幸い商人は通貨こそルーンという独特なものではあったが取引はしてくれそうだった
白仮面の方は...道案内こそしてくれたが会話の節々からこちらを見下しているのがはっきりとわかった
信用するのは避けたほうがよさそうだ
正直襲ってくるなら殺してしまっても問題ないような気はするがグロリアに絶対ダメです!と止められたので面倒ではあるがこそこそと隠れながら進むことになった
「話なんかまるで通じなかったし別に襲ってくるなら返り討ちにしたっていいだろうが...」
「ダメですよ!万が一彼らが正気に戻った時にどうするつもりですか!」
いきなり目の前に飛び出していって私達は敵ではありません!なんてでかい声で叫ぶもんだから大量に兵士らしき連中が集まってきてしまった
なんとか撒いたもののなんで俺はまた説教をされてるんだ...
「とはいえこれではっきりしただろここで騎士団なんて作るのは無理だ、諦めろ」
「いいえ諦めません!話が通じる人だっていましたし助けを求めている力なき市民だっているはずです!」
またこれだ
俺はもう後悔し始めていた
気軽についてきてもいいなんて言うもんじゃなかった...
そんな思考は聞き飽きたデカい声に遮られた
「あ!あそこにご老人が倒れています!かなり弱っているみたいです!私ちょっと行ってきます!」
老人なんているわけないだろと思いつつもほっておいてあいつが襲われるのも寝覚めが悪い
俺は諦めてついて行くことにした
なるほど確かに老人はいた
弱ってもいる
しかしこの血は...
「大丈夫ですか?私達は騎士団です!助けに来ました!」
「騎士...団...?」
「そうです!すぐに治療しますね!」
そういうと彼女は祈りの体制を取り
ブツブツと何かを唱え始めた
すると周囲に黄金の光が輝き____
「おぉ...傷が塞がっていきます...」
老人の怪我が回復していく
ついでに俺の傷もだ
逃げ回った時に怪我をしていたらしい
どうやら騎士を名乗るだけの力はあるらしい
「もう大丈夫です!しばらくは安静にしていてくださいね!」
「あ...あぁ...」
「それで提案なんですけど...
あなたも私たちの騎士団に入りませんか?」
俺は思わずグロリアを二度見した
老人もあまりの唐突さに目を丸くしている
「な、何言ってんだグロリア!?」
「え?でもこの方明らかに強そうですよね?」
そう言われて改めて老人の姿を確認する
なるほど確かに彼女の見立ては間違っていない
最初はあまり注意深く見ていなかったものの明らかに重い甲冑を着込み、何年も使い込まれたであろうところどころ刃こぼれした刀を身につけている
しかしこの男は...
「悪いことは言わん、そいつはやめとけ」
「何故です?彼が人を何人も殺しているかもしれないからですか?」
驚いた
「気づいていたのかよ...」
「えぇまぁ、血の匂いが染み付いてますからね
でもまぁあんまり悪い人には見えないですし戦力は少しでも増やしたいですから!」
あっけらかんとそう言う
俺には殺すなと言っておきながらそんな適当な理由で自分の仲間にしようとするのか...
俺はこいつのことがますますわからなくなった
「過去の過ちは無視していいものではないですが、全く改心の機会がないのも良くないと思うんです、だから騎士として人生をやり直してほしいんですよね!」
「まぁもう好きにしてくれ」
俺は投げやり気味にそう言うとその辺にあった木にもたれかかった
こいつといると退屈しないが恐ろしく疲れるな...
「で?どうですかお爺さん?」
老人は怪我が治ったらしくゆっくりと立ち上がる
そのまま武器に手をかけるとこう言い放った
今度は俺たちが目を丸くする番だった
「手合わせ願いたい」