転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
「あ゛ぁぁぁぁああああいやぁぁぁああああ゛!!!」
俺はn回目の脳破壊によって無事に死んだ。
ストレス耐性がどれだけあってもNTRだけは耐えられない。
「はぁ……はぁ……クソ! 今回も失敗か……。口を開くよりも股を開く方が早いと言われてるだけあるな……!!」
──"逆襲皇子は純愛ハーレムを作りたい"というR18のエロゲがある。
これは主人公の皇子が婚約者をNTRされたことによって覚醒し、絶対に自分を裏切らないようにヒロインを調教しながら純愛(?)ハーレムを形成するというシュミレーション恋愛&バトルもののエロゲである。
エロゲにしては死ぬほど容量が重いことに気づいたことがきっかけで始めたゲームだったが、その重さが納得できるほどにエンドやルートの分岐が死ぬほど多く、プレイヤーの自由意志の高い選択次第で物語が大きく動いていくサマはかなり面白かった。
「このゲームのルートの多さなら行けるはずだ……。現に
俺には推しキャラがいた。
『レヴィ様。わたくしと、愛を紡いでくださいな』
画面には上目遣いでプレイヤーを見つめる銀髪ロングの美少女がいた。
青い瞳を潤ませ、頬が上気したその姿は率直に言ってメタクソにエロくて、薄着でプレイヤーに迫る際にこぼれ落ちそうなほど豊満な胸元は、昨今のエロゲのヒロインの中でも最上級の可愛さだった。
──物語は主人公と婚約者の公爵令嬢、ユルル・レズバアがベッドの上で愛を紡ぐところから始まる。
互いに愛を囁きながらガッツリ行為をするシーンを見た初見プレイヤーは、間違いなくユルルのことをメインヒロインだと
「この時ばかりはNTRの傷を癒せるんだ……」
いつもこのイベントで過酷な労働に走る俺だが、残念ながらn回目のNTRシーンのせいで鬱勃起すらできなかった。
「ここから、だな……」
行為を終え、一晩明けたタイミングで主人公の自語りとユルルの補足によって操作説明やゲームのコンセプトが分かる仕様になっている。
プレイヤーは1年間のうちに10個の行動を選ぶことができ、それぞれ『修行』『会話』『依頼』『買物』『調教(灰色)』があり、ヒロインの好感度を一定度合い上げることで『デート』が解放され、更に上げることで『愛を紡ぐ』イベントが発生する。
『調教』イベントはユルルが寝取られてから解放されるので、最初の1年はそれ以外から選ぶことでストーリーが進行する。
──そう、1年はチュートリアル的な意味でユルルを攻略することしかできないのだ。
それ自体は構わない。推しキャラだしイチャラブ純愛だし、何一つストレスを抱える展開が降りかかってこないし。
最初から好感度が高いお陰で最初から『デート』イベントはある上に、1回デートしただけで『愛を紡ぐ』イベントが発生するチョロインっぷりと、最高級のイベントシーンのエロさは全プレイヤーが歓喜したことだろう。
『レヴィ様! わたくし、今日は街を二人きりで回りたいのです! ふふ……巷ではデートと言うのでしたね』
『お慕いしておりますわ、レヴィ様。あなたと交わした遠い昔の約束は決して忘れませんもの』
『もぅ、わたくしのことを放って修行ばかりして。でも、そんなレヴィ様の強くてカッコいいところも……その……好きですわ』
『修行』『会話』『買物』『依頼』のどの選択肢を選んだとしても、好感度ほぼマックスのユルルがひたすら愛を囁くイベントを見ることができる。
プレイヤーはユルルの可愛さのあまり、コンセプトとの違いに疑問を抱くことなく1年間をプレイし──
『──あんっ♡ あっ♡ れ、レヴィ様のよりおっきくてぇ……太くてぇ……♡ お国を守る護国ち◯ぽ気持ちいいのぉぉおお!!♡』
──というNTRムービーが唐突に流れ全人類が発狂する。
たとえ一個前の選択肢で『愛を紡ぐ』イベントが発生し、イチャイチャラブラブしながら主人公とセックスをするユルルを見たとしても、次の瞬間には容赦なくアへ顔のユルルが帝国の大臣のちんちんを受け入れるシーンが開始する。
絶ッ望ッ──!!!
普段そこまでストーリーに影響を受けないタイプの俺でも三日三晩熱が出て寝込んだ。用意周到なイチャイチャから生み出される唐突なNTRは人を殺しかねないね。
「うっ……くっ……抜けない……抜けないよぉ……」
闇堕ちしてユルルのNTRシーンで鬱勃起射精ができれば楽になれるなんて、俺はとっくの昔に知っているんだ。
だが俺は主人公とイチャイチャしてるユルルが推しだ。見た目もそうだし、一途で献身的な性格が俺のストライクゾーンど真ん中だったのだ。
──だから俺は何千回もやり直して、ユルルのNTRを回避するために様々な検証を行ってきた。
『修行』『会話』『買物』『依頼』『デート』。
この5つの選択肢を10回選ぶことがユルルのNTRまでの期限だ。
全ての組み合わせは976万5625通りある。
検証しきるには途方もない数字だが、俺はパソコン3台を同時活用し、数年かけて5万通りほど試すことはできたが、まだまだ先が長いことは明らかだった。
「一体どうすれば……ユルルを純愛堕ちさせることができるんだ……ってかなんで寝取られてんだよぉ……!」
逆襲が始まってもなお、ユルルが寝取られた原因は作中で明らかになることは無かった。大臣が悪いのか、はたまたユルルが悪いのか。
逆襲編が開始してからも、ことあるごとにユルルは色んな男に股を開き続けたけとは示唆されていたが、結局的に主人公が幸せになってユルルの実家が没落するという何とも味気ないエンドばかりだった。
「くそ……さすがに目が霞んできたな。ここまでにするか」
連休で仕事が休みだからって三徹はやりすぎたか。
アドレナリンが切れたせいか、眠気と頭に鈍痛が走った俺は椅子から立ち上がった──その瞬間、途轍もない痛みが心臓を襲った。
「ぐぁッ……ぐっ……ハッ、ハッ……あぁぁあッ!!!」
痛い痛い痛い痛いッッッ!!!
マジかよ俺死ぬのか……!? まだ……まだ見れてないのに!! ユルルが
そんなエロゲに脳が支配された後悔を胸に、俺の意識は完全に消失した。
◆◆
「俺は誰だ? 俺は……そうか──俺がレヴィだ」
融合ッ完了ッ!!!
ふぅ……転生したら主人公になってた件ってか?
「レヴィとしての記憶は歯抜けだがある……あぁ、完全に前世の記憶が無かっただけの俺だなこりゃ」
どうやら前世の記憶を思い出した時点で転生を果たしたというわけではなく、記憶を無くした状態で最初から転生していたことが今になって明らかになった。
転生に関する驚きが無いのはそれが理由である。
「あー、めっちゃ頭痛い。いきなり大量の情報が脳に詰め込まれた感じ」
事細かにレヴィとしての人生を振り返ろうとすると頭痛が起こる。特にここ1年間の記憶がザックリ歯抜けになっている。
前世の記憶を思い出した影響かな、これは。
「……ハァ。俺、これから婚約者寝取られんの?」
前世の記憶を思い出した。
それすなわち、抗えない
──ユルル・ズレバア。
今世でも彼女は俺の婚約者だった。
まあ出会い方とか過ごし方は本来のレヴィと違うだろうが、婚約者になった経緯とか周りの関係だとかはゲームの設定そのままだ。
「う、うごごごご……今15歳ってことはあと2年で寝取られんじゃねーかおい!! ……そもそもいつからユルルが股を開いてたのかは明らかになってないしな……」
ゲームの序盤ではラブラブだったレヴィ×ユルルだが、あの寝取られ状態を見るに前々から股を開いていてもおかしくはない。
そういった二面性が最初からあったという前提だが……。
「い、いやじゃ!! いやじゃ!! 寝取られとうない!! なまじ記憶があるせいでちゃんとユルルのこと好きなのに!! ってか今世の俺が童貞なせいで寝てすらいない!!」
自分で言ってて普通に泣きそうになった。
俺は寝てもいない婚約者を寝取られるのか。
大臣の護国ちんぽに呆気なく敗北するのか。
……護国ちんぽってなんだよ。
「……ど、どうすれば……」
途方に暮れること数十分。
不意にコンコンコンとノックの音が響いた。
「レヴィ様、入りますよ」
「うぇっ」
俺の返事も聞かずに入ってきたのは、現時点での悩みの種である婚約者──ユルル・ズレバアだった。
日に照らされてキラキラ輝く美しい銀髪に、見るものを虜にするマリンブルーの瞳。
……でっけぇ胸とほっそい腰。
画面上と記憶でしか見ていなかったユルルの姿は、あまりにも美しすぎてちょっとだけ勃起してしまった。
……う、うおおお生ユルルだぁぁ……!!
記憶にはあったけど生で見るとまた違うな……!!
というか記憶が歯抜けなせいで、何が起こったとか出来事は覚えてるけど細部の話したこととか憶えてないし!!
「……? そんな珍妙な格好でどうされたんですか?」
「い、いやノックの意味あるのかなーって」
「わたくしとレヴィ様の間に確認など不要でしょう?」
「ア、ハイ」
……なんか性格違くない……?
こんなサバサバしたクール系ヒロインだったっけ?
必死に過去の記憶を掘り起こす──と、様々な俺が仕出かした奇行と、それに呆れた表情を見せるユルルのことを思い出した。
──これガキの俺がやらかしたせいだ!!!
婚約者だけど好感度とか無いやつだコレ!!!
う、うわぁぁぁぁあ……。
俺は泣いた。クールなユルルも新鮮でギャップがあって良いものの、俺が見たいのは
……いや待て。
好感度が低いということは、裏を返せばどんなことを言ってもある程度は奇行とみなされて許される可能性がある。
俺は一先ず絶対に確認しなければいけないことを聞くことにした。
「ユルル。どうしても聞きたいことがある」
「な、なんですの?」
どことなく固い表情のユルルに、俺は至極真面目な顔で問いかけた。
「ユルル……君はまだ処女か……?」
「は?」
視線で人を殺すことはできるのかもしれない。
そう感じるほど凍てついた目だった。