転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
兄上から試練を言い渡された後、数日かけて兄上派閥の貴族の顔と名前は一通り覚えたが……このパーティーの規模感を考えるとマジで覚えてきて正解だったかもしれん。
「……現、帝国貴族の当主は5000人ほど。そのうち兄上派閥を公言している貴族は2700人。……マジで勝確すぎるだろ」
あとは中立と現皇帝派が占めている状況。
まあ、父上が退位を匂わせている今、年齢的にも能力的にも皇帝に的確な人物が兄上しかいない……というのもあるのだが、にしても自分は味方ですと公言する人間が2000人以上いるというのは凄い話だ。
俺はこの中から略……以下略をする必要がある。
人の味方を奪うというのは実質NTRでは? 俺は吐いた。
「よ、よし、作戦を立てよう。一先ず兄上派閥の人に接触して、兄上に関する話を聞こう。そんでもって、不満を言った人に皇位継承権狙ってんだよね、って話をするということで……」
雑な作戦だがこれしか無い気がする。
……うーん、でも何か引っ掛かるんだよなぁ……。
皇位継承権を狙ってる前提で味方をつけろと兄上は言った。
「その前提だと、簡単に派閥を鞍替えするようなヤツを味方にしたくねぇよな。普通に考えて」
裏切る人間を信用する時は、自分も裏切られる覚悟を持たなければならない。自分にだけは付き従ってくれるなんて傲慢で甘い考えは捨てなければならない。
「何か匂うな。この試練」
単純に事を急くことは自滅を招く気がする。
とはいえ一旦は作戦通りに動こう。
俺の考え過ぎな可能性もあるし。
「えーと、目ぼしい人は……と」
ふらふら歩きながら兄上派閥の貴族を探す。
できれば単体で行動している人を探したいところ。
すると、窓際でグラスを傾けているイケオジを発見した。
あれは確かサフェル公爵だったか。兄上派閥の中でもかなりの実権を握っている右腕候補……みたいな噂だった気がする。
目つきは鋭く、人を寄せ付けない雰囲気をしているからか周りには人っ子一人いない悲しい状況に陥っている。
もしかしたら普通に一人が好きなだけかもしれないが……俺は話しかけるぞ!!
「よっ、サフェル公爵」
「あん? ……あぁ、レヴィ様ですか。何の御用で」
胡乱げに顔を上げたサフェル公爵は、俺を見ても特に悪感情を抱いてはいないようだった。大概の貴族は俺に話しかけられたら面倒そうな顔をするんだけどな。
「ちょっと話を聞きたいなって思ってな。別に改まった場……ではあるけど、敬語は不要だぜ? 楽にしてくれ」
「そうかい。じゃあ、そうさせてもらう。……俺もあんたには興味があったんだ。一度話してみたいと思っていた」
「そいつは光栄だな。あのサフェル公爵と……あの……えっと、サフェル公爵って普段兄上の何を手伝ってんの?」
「おいおい知らねぇのかよ……」
「そこら辺は今勉強中なんだよ、実は」
呆れた表情を見せるサフェル公爵。
残念ながら顔と名前は覚えたけどプロフィールまでは覚えられなかった。誰がどんなことをしてるとか、帝国の貴族の関係とか……そこらは毎日のお勉強で賄っている現状だ。
く、くそ……サボってた期間がちゃんと仇になってる!!
「ハァ……俺は
サフェル公爵はため息を吐きながら説明してくれた。
……ほーん、出納院……前世で言うとこの財務省の大臣だったのか。なんかチラッと聞いたことある名前だったのはそれが理由か。
てか兄上って父上の公務の肩代わりしてんの? マジ?
あの人常に忙しそうにしてるけどちゃんと寝てんのかな。
「サフェル公爵って出納院の大臣だったのか。どーりで堅物そうな顔をしていると思ったんだよな」
「本人を目の前にして本人が一番気にしてることを言うな」
どうやら気にしていたらしい。
ぶすっと大の男が拗ねてるのはちょっと面白い。イケオジだからか何だかサマになってるし。
「まあ、でもその堅物さが兄上の役に立ってるんじゃない? 人を寄せ付けない雰囲気って誰にでも出せるわけじゃないし。一種の才能でしょ」
「あんた……」
サフェル公爵は俺の言葉に目を見開いた。
そして心底おかしそうに腹を抱えて笑い出した。
「ははっ、はははっ!! あんた、ラビリス様と同じこと言うんだな!! 俺の雰囲気を才能なんざ言う人間はラビリス様以外いないと思っていたが……くく、ちゃんと兄弟だな」
「まあ、兄上は人のことちゃんと見てるからな」
兄上とちゃんと兄弟って言われるのちょっと嬉しいな。
関わりがないなりに俺は兄上のことを尊敬している。
そんな立派な人間と放蕩皇子の俺が兄弟って認められるのは何だか新鮮で嬉しいものだった。
「いいぜ。気に入った。ラビリス様の面白話をいっぱい聞かせてやるよ」
「お、それは普通に気になる。聞かせてもらおう」
それから俺とサフェル公爵は兄上話に花を咲かせるのであった。
──あれ? 試練は?
20分後。
ようやく正気に戻った俺はサフェル公爵との話を打ち切った。
俺も用事があるんだったと去ろうとする公爵に、最後に聞きたかったことを聞いた。
「なあ、放蕩皇子の俺を見ても嫌な顔をしなかったのはなんでだ?」
するとサフェル公爵は意味深に笑った。
「ラビリス様に付き従ってる貴族の
そう言って楽しそうに公爵は去っていった。
……まあ、確かに俺の悪口を言っている奴らのほとんどは貴族の子息や令嬢ばっかりだったイメージはある。
思い返してみれば貴族家の当主で悪口を言ってた人間は少なかった気がするな。
「ぬ、ぬぬぬ、他の人に話を聞く理由が増えたな」
俺は次なる兄上派閥を見つけ出すため徘徊を始めた。
感想ちゃんと見てますヨ。嬉しいですヨ。